一般社団法人リノベーション協議会が開催する、2024年を代表する魅力的なリノベーション事例を選ぶコンテスト「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2024」の授賞式が2024年12月12日(木)に行われました。
全国からエントリーされた計226作品中から選ばれた特別賞14点のうち、toolboxの「ReMAKE」 -既存の内装を活かす試み- が総合グランプリを受賞。
通常のスケルトンリノベーションとは一線を画すリメイクする手法や、循環型社会を目指すサーキュラー・エコノミーの考え方に呼応した点、そのノウハウの公開という点が審査員の皆様に高く評価されました。
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■選考委員長講評(島原万丈/LIFULL HOME’S総研 所長)
この作品の主張をひとことで言えば、「極力ゴミを出さないように作る」である。既存の内装設備で使えるものは徹底的に活かすことを前提に、解体した材を再利用し、あるいはリメイクして再生するなど、解体ではなく二次加工で空間を再構成することに挑戦した実験的プロジェクトだ。I型キッチンを切断し左官で繋いでL型に再生するなど、スケルトンに解体した後でまっさらな住空間を再構築する通常のリノベーションに比べて、現場の職人のアイデアやスキルはもちろん、なによりコンセプトへの共感なくしてはなし得ない仕事だったことは想像に難くない。
このアプローチは、最先端のサーキュラー・エコノミーのコンセプトに呼応したものと評価できる。サーキュラーとは循環を意味し、近代化以降の大量生産・大量消費・大量廃棄の産業モデルを反省し、資源の循環利用を重視して最小限の資源投入量で最大限の豊かさを得ようという考え方である。建築領域で言えば、資材の再利用(リユース・リサイクル・アップサイクル)を繰り返して廃棄物を最小化することを重視する。また建築に用いる資材は解体時にも再利用可能な素材を選び、将来的にはトレーサビリティを確保し資源の追跡管理することも模索されている。
受賞プロジェクト『studyroom#1』とは
『studyroom』は、toolboxの施工チーム「ツールボックス工事班」が、内装加工技術や内装建材の研究・開発を目的とし、自社事業としてリノベーションした実験プロジェクトです。
その第一弾である『studyroom#1』では、「ReMake(再構築)」をテーマに、既存の内装を素材と見立て、極力壊さずに、2次的に手を加えることで空間の質を変えるアプローチに挑戦しました。
舞台となったのは、築57年のマンション。
2LDKのメゾネット住戸で、各部位は比較的新しく機能面としては継続使用が可能な状態でありながらも、断片的なリフォームにより意匠の統一性を欠いていました。
現場の職人のアイデアやスキル、コンセプトへの共感を軸に、既存内装建材、設備を撤去せずに活用する手法を見出しながら、全体を再構築。解体による廃棄物や下地の再制作費用を軽減すると同時に、スケルトンを前提としない新たなリノベーション手法を見出しました。
試行錯誤のプロセスやノウハウ、公開してます
今回の受賞では、WEBでのノウハウの公開といった点も評価いただきました。
プロジェクトの全容は、「工事班の現場通信」として、全10シリーズに分け、記事を公開。
また、「I型キッチンを切ってL型キッチンにつくりかえる」「既存のフローリングを上から塗装する」といったその手法を「how to make」記事として公開しています。
リノベーションにはもっと可能性があると思っており、新しい手法を編み出せたらという思いで望んだプロジェクト。2024年のリノベーション作品を代表する総合グランプリという名誉ある賞に選んでいただけたのは、審査員のみなさまの未来への希望と期待と受け止めています。
「studyroom」は第2弾、第3弾と続く予定です。これからもリノベーションを手がけるプロの皆様とともにリノベーションの新しい可能性を追求していきます。
工事班の現場通信
既存を活かしながら、どこまで空間を変えられる?「ReMake」なリノベの実験開始!
toolboxの新たな試み「studyroom」の第一号物件『studyroom #1』。“壊すこと”を前提にせず、既存内装に手を加えて空間を変えていく実験的リノベーションに、ツールボックス工事班が挑戦します。
どこまで活かせる?何が出てくる?「なるべく壊さない」解体
既存の内装を極力活かし、手を加えながら変えていく空間づくりの実験『studyroom#1』。どこまで既存を活かせるのか、考えながらの解体工事が始まりました。
床を切る!天井を切る!キッチンを切る!既存を「切ってリメイク」に挑戦
前回の解体で、既存のまま残したフローリングと和室の天井、キッチン本体。とはいえ『studyroom #1』のリノベテーマは「ReMake」。当然そのまま使うわけではなく……リメイクの足掛かりとして、切ってみることにしました。
電線とポリ管が踊る!電気の先行配線と水まわりの先行配管
解体を終え、既存内装をリメイクしていくための“仕込み”も進んだ『studyroom #1』。続いての工事は、電気の先行配線と水まわりの先行配管。空間が仕上がってからではわからない床の下や壁の裏には、工事班と職人さんのこだわりと技が潜んでいました。
大工工事がスタート!同時開催は仕上げのディテール検討会
いよいよ大工工事が始まった『studyroom #1』。壁や床の下地づくりが進む中、工事班は現場で細部の仕上げ方を検討。間柱はどこまで見せる?ブロック壁の荒々しい断面は見せちゃう?「リメイク」をテーマにしたリノベ、だからこその仕上げ方を考えていきます。
和天井のリメイク、どう仕上がる!?大工工事後もお披露目!
大工工事が終盤に差し掛かった『studyroom #1』。今後の仕上げ工事に備えて、切って外していたフローリングの復旧と、切りっぱなしだった和天井のリメイク仕上げに着手。「和天井を切り抜いて折り上げ天井にする」というアイデアはうまく決着するのか⁈
表情は変わるのか?フローリングに溝を彫る!ステンレス天板を研磨する!
内装仕上げのフェーズに突入した『studyroom #1』。既存フローリングをリメイクしていくにあたって、工事班が選んだ初手は「新しく溝を彫る」!また、2つに切ったキッチンは、ステンレス天板の「研磨」にチャレンジ。果たしてどんな表情に変わるのでしょうか。
フローリングは塗りつぶし、荒板は縁側に再利用。「床リメイク」の実験!
今回、挑戦するのは「床リメイク」。フローリングを塗装して色を変えてみたり、既存の荒板を使って縁側をつくってみたり……。内装仕上げが追い込み段階に入り、目まぐるしく変化していく現場をレポートします。
タイルと左官で仕上げの追い込み!家具造作もラストスパート
キッチンや造作家具が組み上がり、完成が近づいてきた『studyroom#1』。内装仕上げはいよいよ大詰め!シャワーブースへのモザイクタイル貼りはさながらパズル。左官工事では、オリジナルの左官材を使って仕上げます!
『studyroom#1』ついに完成。“既存を活かすリノベ”でここまで変わった!
ツールボックス工事班による新しい空間づくりの手立てを探すリノベの実験『studyroom#1』が完成。既存内装に手を加えていく「ReMake」なリノベーションで、空間はどう変わったのか!?
「how to make」職人たちによるチャレンジの詳細
I型のシステムキッチンを2つに切って、L型にリメイクしてみた
理想の間取りには合わないけれど、捨てるにはもったいないキッチン。どうにか使えないかなと考えて、真っ二つに切ってレイアウトを変えてみました。
キッチンのステンレス天板を研磨してリメイクしてみた
「天板が気に入らない」という理由でキッチンを丸ごと捨てちゃうのはもったいない!ステンレス天板を研磨して表情を変えることができないか、挑戦してみました。
フローリングを塗装でリメイクしてみた
「床の色味が気に入らない」けど、貼り替えるのは大変。じゃあ、塗って色を変えられないか?ということで、塗装で違う表情の床にリメイクしてみました。
和室の天井を切って、折り上げ天井にリメイクしてみた!
よくある“昭和な和室”の天井。「塗る」でも「撤去する」でもない、「切る」という加工で、現代的な印象が感じられる天井にリメイクしてみました。
コンクリートブロック壁に穴を開けて、洗面台をつくってみた
コンクリートブロック壁に囲まれた、洗面所のない狭い水まわり。ここに、気持ちの良い洗面所をつくり出してみたい。全部を壊してつくり直すのではなく、「必要なスペース分だけブロック壁に穴を開ける」というやり方で、洗面台をつくってみました。
畳の下の荒板を使って、土間に縁側をつくってみた
畳を撤去して土間空間にする。……だけじゃちょっと面白みがないから、畳の下の荒板を使って、窓辺に「縁側」をつくってみました。
間仕切り壁に穴を開けて、開放感をつくってみた
空間に閉塞感を生んでいる間仕切り壁。壁を全て壊すのではない方法で開放感をつくる方法を考えて、やってみたのは「壁に穴を開ける」という方法。壁の中にあった間柱は、飾り棚にアレンジしてみました。
掃き出し窓にベンチを添えて、窓辺をリメイクしてみた
ちょっとコンパクトなリビング空間。掃き出し窓の手前まで“居場所”として有効活用できるようにしたい!ということで、窓辺にベンチをつくってみました。
完成した空間紹介コラム
「リメイク」なリノベーションで“既存内装”と眺めを活かした空間
既存の間取りや内装をなるべく壊さずに、“素材”として活かしてリノベーションしてみたら?ツールボックス工事班が取り組んだ実験空間『studyroom#1』をご紹介します。