木製室内窓』は室内の壁に木の窓をつけられる人気商品。特にリノベーションの場合、外部の窓位置は変えられませんが、室内に窓があれば、隣の部屋に光を届けたり、風を通したりすることが可能に。それだけでなく、家族の気配を伝えるのにも一役買います。

発売から約10年。素敵な事例写真はたくさん拝見するけれど、改めて、その使われ方の実態を知りたくなりました。実際どれくらい覗いたり、開け閉めしたりするものなんだろう。子どもが成長した時に部屋の中を見られて嫌じゃないのかな。室内に木の窓があることの良さってなんだろう。

ということで、木製室内窓の商品を担当するメンバーで実際に使っている方のお家に訪問して、実際の様子やリアルなお声を伺ってきました!

case1:生活時間が合わないパパが「いってきます」を伝える窓

S邸 戸建て

居住年数(2024年取材時):約9年
面積:87.77㎡
家族構成:夫婦+子ども2人(小学6年生・2年生)
間取り:2LDK+ルーフバルコニー
設置場所:子ども部屋と玄関土間の間
タイプ:上部押し出しタイプ(クリアガラス) 1つ
仕上げ:クリア塗装

内装をセルフビルドしたSさんファミリーの新築戸建て。ラーチ合板を壁や床の仕上げにつかったお家です。設計は、木製室内窓の開発パートナーのAIDAHO。

木製室内窓が導入されているのは、玄関土間と子ども部屋の間。7.5畳の子ども部屋は小学6年生と2年生の姉弟が2人で使っています。

竣工当時は上の子が2才とまだ小さかったため、おもちゃを置いて遊び場としたり、収納に使ったりしていたそう。それから9年が経ち、今は就学したお子さん2人のデスクとベッドが置かれています。

竣工時のお写真(画像提供:AIDAHO)

子ども部屋となっている現在のお部屋

間取り

ユーザーレビュー

ー 木製室内窓の採用理由は?

玄関を入って左側に子ども部屋があり、右側に収納があるのですが、玄関が閉塞的になってしまうということで、木製室内窓を採用しました。室内窓の位置は、土間側は玄関から入った時に立って自然な目線の高さに設定してもらいました。

左手が子ども部屋、右手が収納。

通りすがりに自然に覗き込めるような高さに設定。

ー 木製室内窓はどのように使っていますか?

仕事柄、深夜に帰宅したり、朝5時とか早朝に家を出ることが多いので、帰ってきた時や家を出る時に子ども達が寝ているところを見るのが日課になっていますね。暗くても玄関土間側の照明をつければ見えますし、子どもが起きちゃうこともないです。

出勤時、帰宅時に、寝ているお子さん達に「行ってきます」「ただいま」を起こさないように伝えられる距離感。

覗き込めば寝ているお顔が見えるくらいの位置。

ー お子さんが室内窓から覗くこともありますか?

自分で開け閉めしたりということはないですが、子ども部屋でゲームをしている時に、親の気配を感じて、勉強しているフリをしていることはありますね。子どもの友達がきて、室内窓から部屋の中を覗いて声をかけたりしている姿をよく見ます。今はまだ大丈夫ですが、上の子はもうすぐ中学生なので、勝手に部屋を見られたくないと言う時がそろそろ来るかもしれません(笑)

お子さんの学習机から見た木製室内窓。玄関のドアが開いたらすぐにわかるような距離感です。

ー 上部押し出しタイプを使っていますが、普段から開け閉めしていますか?

ずっと開けていますね。そんなに外気が入って寒いと思ったこともないです。子ども達もここが開いているのが普通なんだと思います。

訪問してみて

家を出る時と帰る時に必ず通る玄関土間。こことお子さん達が過ごす部屋をつなぐ位置にクリアガラスの室内窓があり、常に少し開いているからこそ、家族の様子がなんとなく伝わったり、「ただいま」と「おかえり」が自然に生まれるきっかけになっているように思います。

夜遅く朝も早いお仕事だと、お子さんと生活時間がすれ違い、起きてる時間に顔を見られないこともあるかもしれませんが、窓越しにかわいい寝顔が見れるのは、最高のパワーチャージになりますね。思春期の窓辺の行方が楽しみです。

case2:気配がある方が集中できる。ワークスペースを囲む窓

U邸 マンションリノベ 

居住年数(2024年取材時):約5年
面積:73.26㎡
家族構成:夫婦
間取り:1LDK+WIC
設置場所A:ワークスぺースとLDK、玄関土間の間
設置場所B:ファミリークローゼット(部屋)と玄関土間の間
タイプ:780角 引き違いタイプ(設置場所A:クリアガラス3つ、B:チェッカーガラス2つ) 5つ
仕上げ:オイル塗装(他の木部に合わせて着色)

コロナを経て、現在は週の半分はリモートワークというUさんご夫婦の家。itoma design.が設計を手掛けたマンションのリノベーションです。なんとこちらのお家では、木製室内窓を計5つ使用しています。

玄関から左右に広がる土間を設置。夫婦で使う2.5畳のワークスペースとクローゼット部屋を室内窓で繋いでいます。ワークスペースは、LDK側に向け室内窓3つを連結してガラス張りのブースのようなつくりに。

間取り

ユーザーレビュー

ー 木製室内窓の採用理由は?

リビングが西向きなので、朝起きた時に光が入らないのが嫌だったんです。だから、玄関側の東からの光を入れるようにしたいというのは譲れないポイントでした。クローゼットにつけたのは設計の方におすすめしていただいて、換気のために入れています。

キッチン越しに見えるのがワークスペースです。

西向きのリビング。

ー ワークスペースの壁を室内窓にしたのはなぜですか?

光と風の抜けが欲しかったからですね。リビング側は西陽が暖かくて光も入るので、その光を取り入れたいと考えました。
あと、私は人の気配がある方が安心するタイプで、夫もそうなので。

木製室内窓で囲ったワークスペース。

部屋が多いと使いこなせないというのもあり、なるべく家全体を仕切らず、広く繋げた空間にしたかったんです。共用廊下側(土間側)は寒くて、マンションは道路沿いなので音も気になる。そこで、玄関土間をつくって、ワンクッションおき、ワークスペースはリビング側と半分つながっているような形にしました。

ー 土間はどのように使っていますか?

この土間は広々としているので、旅行の準備する時に荷物を広げたり、掃除道具やちょっとした荷物置き場としても活用しています。夫は筋トレグッズを買ってここに置いたりしていますね。

靴も見える形で収納しています。シューズインクローゼットに詰め込んでしまうより、全部見える方がいいんです。靴を取ってベンチで履いています。

土間はベンチや窓、街灯のような照明が合わさって、小道のような雰囲気。室内窓のガラスはチェッカーガラスで、来客時も中の様子はわからないようになっています。

ハンガーパイプもあるので洗濯物も干せます。室内窓枠の下に棚板をつけて、小さなものが飾れるコーナーに。

土間に面する室内窓を、ファミリークローゼット側から。

ワークスペース越しに見えるのが土間側についている室内窓。

ー 窓を開けて使うことはありますか?

ワークスペースのリビング側はほとんど開けたままですね。エアコンの風も通りますし。

仕事でオンラインの会議をしている時はどちらかがダイニングに行くので、その時は閉めますが、それくらいです。

土間側は基本閉めていますが、たまに開けて換気をしています。

ワークスペースから、リビングにいるUさんと取材陣を。話し声は聞こえますがスペース自体は区切られているので、こもった感覚はあります。ざわざわしているところで仕事が捗る人には向いていそうな仕事環境。

最初は押し出しタイプにしたいと思ったのですが、高層階なので風が強すぎるから引き違いの方が良いと設計の方からアドバイスをいただきました。

引き違いにしたおかげで、風を通すだけでなく、窓を開けてやりとりすることができています。

床暖のスイッチをワークスペースの室内窓の下に設けているので、仕事が始まる前に窓を少し開けてスイッチを入れています。夫に窓越しにコーヒーを渡したりということもありますよ。

室内窓を開けて床暖オン。

ー 掃除はどうしていますか?

枠を持って開け閉めできるのでガラスは基本的に触らないです。大掃除の時にまとめてやるくらいで、掃除はほとんどしないですが気にならないです。

訪問してみて

「なるべく広いワンルームのような空間が良かった」というUさん。視界としてはリビング側からひと繋がりの空間を実現しつつも、会議の時には家族の声が入らないような、ワークスペースを設けるという要望を、木製室内窓を間仕切りとして採用することで叶えました。玄関土間越しの室内窓はベンチがセットで印象的。玄関を入ってすぐに目に入る、この家の象徴のような一角になっていました。

引き違いタイプを使い、窓越しにスイッチを入れたりキッチンからモノを受け渡したりと、動線上でも窓の存在が効いている事例でした。

case3:寒くて狭い玄関を開放!玄関からバルコニーをつなぐ窓

S邸 マンションリノベ

居住年数(2024年取材時):約10年
面積:84.18㎡
家族構成:夫婦+子ども1人(小学3年生)
間取り:2LDK+WIC
設置場所:予備部屋とリビング、玄関土間の間
タイプ:780角 引き違いタイプ(クリアガラス) 2つ
仕上げ:クリア塗装

ご夫婦と小学校3年生になる娘との3人暮らしのSさん邸。case1と同じく設計をAIDAHOが手がけた、マンションリノベーション。

木製室内窓は、リビングと玄関土間側を繋ぐ縦長の部屋の南北に2ヶ所設置されています。約8畳の部屋は、収納をメインに予備部屋として利用。

実はこちらに使われている木製室内窓は、開発段階のもの。現在販売しているものとはサイズや仕様が異なりますが、参考としてご覧ください。

間取り図

ユーザーレビュー

ー 木製室内窓の採用理由は?

実家が同じ団地内にあり、北側の共用廊下沿い、玄関側の部屋が寒いイメージはありました。共用廊下に面する部分は玄関土間とし、プライバシーを守りつつ、部屋側に木製室内窓をつけることで通風と採光を確保してもらいました。採光が南側に限られるので、リビング側からの光が取り入れられるように、リビング側にも木製室内窓を設置しました。

子どもが傘やおもちゃをガラスにモノをぶつけてしまって割れるのが不安で、緩衝材をつけているそうです。窓の下は収納になっています。

オンライン会議などで窓が映ると、家の中に窓があると驚かれることも多いです。コロナ禍は家族で参加してる習い事もオンラインになることが増えたのですが、その際に室内窓越しに、収納用品たちが見えてしまうのが気になり、窓の上にハンガーバーをつけていたので布をかけて内側が見えないようにしていました。中が見えるのは少し気になりますが、窓らしいという意味ではクリアガラスは良いと思います。

リビングの一角がお子さんのスペース。室内窓枠に習字作品を飾っています。

ー 広めの玄関土間の使い方は?

子どもが小さい頃はベビーカー、成長につれて、子供の遊び道具がそのまま置けて便利です。アウトドア用のものや、趣味の畑仕事用の長靴をそのまま乾かしたり、傘を広げて干したりして、広々と使っています。同じマンションの友人に、玄関が広くて羨ましいと言われることも多いですね。

室内窓を開けると、カウンターになっているので、マスクや傘を置いたりして、出かける前の準備に便利な場所になっています。

窓を開けたところに、マスクや折り畳み傘などをおいて、玄関土間側から手に取れるようにしています。

ー 予備部屋はどのように使っていますか?

今はメインとして荷物置き場になっています。あとは、家族がインフルエンザなどになった時の隔離部屋として使ったこともありますね。クリアガラスなので、隔離されていてもリビングの様子がわかったりテレビが見られたのはよかったです。こちらも様子を覗けるので、安心できました。

家づくりをした時はまだ子どもは生まれていなかったのですが、家では個室にこもるということをせず、家族みんなで過ごしたいという思いが強かったので、室内窓からのぞきこめる部屋のありようは自分たちに合っているなと思います。今も、常にこもるような使い方はしていません。
子どもはまだ8歳なので、家族みんなで寝ていますが、いずれ個室が欲しいと言われたら、この部屋の一部を子ども部屋として使う予定です。

予備部屋で家事をしていてもリビングの子どもの様子がなんとなくわかる距離感。

ー 普段から開け閉めしていますか?

予備部屋は湿気がこもりやすいので、よく共用廊下側(北側)、リビング(南側)の外部窓をあけ、室内窓も2ヶ所しっかり開けて換気しています。将来的に予備部屋の半分を子ども部屋にするとしても、湿気が気になるので、壁を立てるのではなくパーテーションなどで区切る程度にして風通しはよくしたいと思っています。

訪問してみて

湿気対策や玄関側の寒さ、光の抜け方を考慮して室内窓が設置されていて、まさにマンションリノベーションにおいては、よく問題となる点を木製室内窓を使うことでクリアしている事例です。

家族一緒に寝て部屋にこもらずに過ごしている3人家族。面積のある空間が予備部屋として今は収納スペースになっているという家族の仲の良さに驚きました!お子さんの成長や趣味の広がりによってこの空間はどんどん変わっていきそうですが、木製室内窓がそれぞれの空間を繋ぐことで、個室をもつことになっても、家族との距離感を近く保っておけそうです。

取材を終えて

販売当初は室内窓というものがあまり浸透していなかったリノベ黎明期。まさに今回ご紹介したように、採光や通風の観点からリノベーションで活躍する室内窓というものを広めようと、AIDAHOさんとtoolboxで、絵本の世界に出てくるような四角くて十字の格子がある、窓らしい姿のデザインを商品化しました。そのフォルムと温かみのある木のぬくもりが、住空間と馴染み、光と風だけでなく家族のコミュニケーションも生んでほしいと考えていたのです。

今回取材したお客様のお家では、それぞれの家族ごとに使い方に違いはあれど、当初思い描いていたように家族をつなぐ存在になっていました。壁に、視界を通し、届けたい時に声をかけられる窓があることで、「ただいま」「おかえり」「おやすみ」「コーヒー飲む?」「何してるの?」といった何気ないコミュニケーションが自然と生まれている。フィックスガラスのパーテーションや、カーテンなどで間仕切るのとはまた違う、人と人をつなぐ役割が、木製室内窓にはあるのだと思います。

部屋の雰囲気に合わせて塗装をしたり、ベンチや飾り棚と合わせたり、カウンター窓のようにしたりと、各々アレンジを加えながら木製室内窓を使いこなしてくださった3つの事例。「自分の暮らしに木製室内窓があったらどんな風に使えるだろう」と妄想するきっかけになれば嬉しいです。

木製室内窓
木製室内窓
¥35,000~
部屋越しの光と風を取り込む
風、光、そして家族の気配を届ける室内用の木製窓。引き違いタイプ、上げ下げタイプ、押し出しタイプ、はめ殺しタイプがあり、設置場所や目的に応じて空間のつなぎ方を選べます。

紹介している商品

株式会社AIDAHO

実現したいヴィジョンに対して最適な空間を提案する建築設計事務所。施工に関しても、自分達で請け負ったほうが無駄がなく、いいものが出来ると判断した場合、AIDAHO工務店として部分的に請け負うことも。

itoma design. / イトマデザイン

住宅・店舗・オフィスの設計・インテリアデザイン
男前なかっこよさと、使いやすさなど細やかな女性らしさの按配がお上手な女性デザイナー 勝又みづきさん。
素材の組み合わせや金物づかいは、とても参考になります。

・工場と駅のタイルと金物に心踊ります
・植物に囲まれた生活に癒されております
・猫科な性格です

担当:来生 / テキスト:庄司