10周年を迎えたtoolbox。
僕らがここまでやってこられたその裏では、現場で何度も職人さんたちに助けられてきました。普段はスポットライトが当たらない職人さん。だけれど、toolboxの回りにはセンスがよくものづくりを極めようと日々切磋琢磨するめちゃくちゃかっこいい職人さんたちがたくさんいます。
そんな職人さんたちの魅力を全5回に分けて紹介できれば!と思います。
まずはじめは、専門分野によりアイテムが異なる『職人愛用の道具編』。見たことのある定番アイテムから、初めて見る道具まで。前編は、大工、家具職人、塗装職人の3名が登場です。
TOOL01「旅する玄翁の柄は拾った枝」
toolboxがリフォーム工事を請負ったり、商品の設置をするときに、よく頼りにしているのが、大工の渡邉光さん。toolbox商品の取り付け方法を解説するHow to makeコラム「木製室内窓を取り付けてみた」や「寝室にヘッドボードをつくってみた」でも登場してくれました。
渡邉さんは独立したひとり大工で、仕事の依頼があれば遠方へ行くことも。国内はもちろん、時には学校を建てるために海外へ出向くこともあったのだとか。
そんな渡邉さんに、お気に入りの道具を聞いてみると、使い込まれた玄翁を見せてくれました。
玄翁(げんのう)といえば釘を打つのに、大工さんになくてはならない道具のひとつ。釘を打つ以外にも、木造の軸組をしっかり組み込むときや、ノミを使うとき、カンナの調整をするときなど、色々な場面でちょくちょく顔を出す大切な道具です。
手にとって道具をよく見てみると…んん?柄が曲がっている!?
5年以上前に購入された玄翁。ただ、オリジナルは頭の金属部分のみで、木でできた柄の部分は1年くらい前に交換したとのこと。
なぜいびつな形をしているのかというと、実はこの玄翁の柄、兵庫県の山間部での仕事があった際に、現場近くの山の中で拾った木の枝を加工して、渡邉さん自ら作ったものなんです。
毎日玄翁を使う大工さんにとって、柄は消耗品。使っているうちに割れてしまったりするそうで、柄が壊れる度に交換しながら使っていくのだとか。
数ある枝の中から、自分の手にしっくりくるものを選んで作ったので、使い勝手は抜群!「柄はちょっと曲がっているほうが使いやすい」のがポイントかも。
現場が完成すると、まるで旅人のように、また次の現場へと出向いていく渡邉さん。愛着ある道具たちも、渡邉さんと一緒に次の現場へと旅立ちます。
TOOL02「愛用のパテベラを収納するレザーのドクターズバック」
「パテ処理」って聞いたことありますか?
ペースト状のものをヘラで伸ばして、下地の表面の段差や凹凸を平滑にするための処理のこと。
内装の壁は一般的に石膏ボードを繋ぎ合わせてつくられていて、そのつなぎ目やビス穴を見えなくするためにパテ処理が行われ、そこから塗装をしたり、クロスで仕上げが施されます。
華がある仕上げの工程と違ってものすごく地味で大変な作業なのですが、これをキレイにやることで、仕上がりに大きな差がでるとっても大事な工程なのです。
エイジングされた風合いを出す特殊塗装など、塗装仕上げの技を色々と追求しながらも、一周回っていまはパテ仕事が一番好きというのが、塗装職人の工藤文紀さん。
壁・天井やフローリングなどの内装塗装から家具塗装、外壁塗装まで、キレイな新築現場から、荒々しいリノベーション現場までいい按配で仕上げてくれます。
愛用の道具は、パテ処理をするためのヘラを収納するレザー鞄。
パテヘラは先端の刃先が曲らないよう収納する必要があり、塗装職人さんは、A4の書類ケースを転用しているケースが多いらしいのですが、工藤さんが使っているのは「ドクターズバック」と呼ばれるもの。昔のドラマで出てくる、お医者さんが往診セットを持ち運んでいるバックです。昔、たまたま行きつけの古道具屋でみつけて以来、愛用しているのだとか。
持ち物にこだわる理由を聞くと、「どうせなら、ありきたりなプラスチックのコンテナやケースよりも革のトランクやレザーのバックを積んで現場に出入りする方が、高級マンションの受付けのお姉さんにもウケがいいじゃないですか。」と、にやり。
ドレッドヘアのアーティストのような風貌で、見た目は飄々としていて掴み所がなさそうにみえる工藤さんですが、毎年地元山形の美味しいジュースを差し入れてくれたり、現場で落ち込むtoolboxスタッフを励ましてくれたりと、人情味あふれる一面も。
何に対してもこだわりのあるそのスタンスは、常に持ち歩く仕事道具入れからも伝わってきました。
TOOL03「秘密基地に並ぶ、色鮮やかなテーブルソー」
toolboxで『木製カーテンレール』や『ラーチのサイドキャビネット』などの木製品を製造してくれている、家具職人の石岡鉄平さん。東京・渋谷にほど近い池尻大橋の建物の地下に、石岡さんの工房はあります。中に入ってみると狭いけれど道具や材料が整然と並ぶ空間が。
なんだか工房というより、アトリエや秘密基地というような言葉が似合う空間。この場所で、石岡さんのモノづくりは行われます。
使っている道具たちに目を向けると、赤や黄色など派手な見た目に目が留まります。殆どが海外製で、アメリカやドイツから石岡さん自らお取り寄せ。
最近では取り扱う代理店も増えたそうなのですが、昔は自分で輸入するしか手に入れる手段がなかったそう。
中でも目を引く、DeWALT(デウォルト)のテーブルソーは石岡さんが工房を作るときに最初に取り寄せたもの。規格サイズの合板や板を、希望のサイズに切り出すためのマシンです。
『木製カーテンレール』は、まさにこのテーブルソーで注文が入るたびに希望サイズに切り出して、つくられているのです。15年くらい使っているけど、一度も壊れたことがないというタフな奴なのだとか。
約120kgと重量のあるテーブルソーは、足元にキャスターをつけて移動できるようカスタマイズ。大きな材料を切る場合など、状況に応じて工房内を自由に動かすことができます。都心の狭い工房ならではの工夫ですね。
台の上の歯がでている部分にはめるカラフルなアジャスターも石岡さんの自作品。わざわざ塗装、しかもブルーにするあたりのセンスがさすが!工房の壁のくすんだピンクに、壁の黄色の棚といい、石岡さんはとにかくセンスがいいのです。
話しを聞いていて、僕らが印象に残ったのは「お気に入りの道具で仕事すると、自然とテンションが上がる」ということ。
大量に注文が入った時には、何十何百と同じ作業の繰り返しになるんだとか。どんな仕事でもモチベーションを高くコントロールすることで、愛情を注いで作っていく。石岡さんの道具たちには、そんな石岡さんの仕事術が少し垣間見れたような気がしました。
取材を終えて
かっこいい職人さんのそばにかっこいい道具あり!
普段、仕事をしている時は寡黙な職人さんたちも、愛着ある道具に関しては楽しそうに詳しく説明してくれたのが印象的でした。
次回は、「愛用の道具ー後編」4名の職人さんを取材してきました。お楽しみに。
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toolboxでもお世話になっている頼れる大工さん。
設計から施工までまとめて行ったり、建築家案件の施工などをしてます。
壁一枚から家一棟、店舗一式工事までお気軽に。
株式会社アングロ | ANGULO
toolboxの初期から活動を共にしてくれているオーダー家具屋、石岡鉄平さん。
デザイン性の優れた家具製作のみならず、現場での施工や空間デザインも手掛けています。
家具の郵送対応の場合は、全国ご相談可能です。
塗りlabo+ 工藤文紀
アイアン塗料などの特殊塗装から、内装、家具、外部塗装まで、頼れる塗装職人さん。
例えば空の青がいいと言われた時に、その人の青はどんな青だろうというイメージのすり合わせのような言葉を交わして同じ青をみつける。そんなやり取りをずっと大切にしたいと思っています。