本は、こんな文章からはじまります。
身に着けている洋服や靴、スマホやカバンなど、これらはすべて自分で選んで手に入れている。では、素足で触れる自宅のフローリングや部屋を覆っている壁紙は、自ら選択したものだろうか。
自ら選択したという方は、すでに素敵な「マイホーム」に暮らしているのかもしれません。
でも、もしここまで読んで、少しでもハッとする部分があれば、ぜひこの本を手に取っていただきたい。
目指したのは、読んだ人が「家に対する常識から解放される」そんな本。これから家づくりを考える人が、自分の家と向き合うきっかけになればと思い、つくりました。
自分に素直に暮らしをつくった11組にインタビュー
本の中では、家に人柄が滲み出ているような、住み手主導の家づくりを体現している11組にtoolboxがインタビューし、その内容を載せています。
インタビューでは、家そのものというよりも、「なぜこの家を選んで、この暮らしをしているのか?」家に求めていることの本質に迫る問いかけをし、住み手にその答えを言葉にしてもらいました。
その会話の中で、一見不便そうだったり、風変わりに見える家も、住み手にとっては「この家でなくてはならない」ということに気づかされます。
この写真の夫婦は、廃墟同然となっていた元海の家を借り、住みながら自分たちの手で少しづつ改装して暮らしています。
私たちが訪れたときは、家の中には海の家時代の残置物がつまれ、お風呂もないので車で15分の公衆浴場に通う生活を送っていました。
人から見れば不便な生活と捉えられて終わってしまうかもしれませんが、この夫婦にとっては、“不便をより良くしていく過程”が面白く、クリエイティブな遊びなんだと教えてくれました。
家賃が安いからといって、面白みのない家には住みたくないですし、逆に、都心の家賃が高いところに住める状況だったとしても、すでにできあがっている家に住むのも面白くないので、自分で手を入れて好みの家にできるというのは、私たちにとって必須なのかもしれません。
この人たちは、自分に素直に暮らしをつくっている。だから幸せなんだなと。
自分が住む家に、世間の常識や他人からの評価なんて関係ない。
そんなことを、本に出てくる11組から感じていただけるのではないかと思います。
多様な家から「自分だったらどんな家に住みたいか?」を考える
本当にいろいろな家に住む方に、お話を伺うことができました。
廃屋のような家に住んでる方もいれば、有名建築家設計の家に住む方。
物を全く持たない家に住んでいる方や、真逆に収集癖のある人の家など。
家自体は全く逆でも、本質では通じる部分があったのは面白い発見でした。
また、モバイルハウスに住んでいるのに「家は移動しちゃダメだと気づいた」なんて言う人も。
一部の家を見出しで紹介するとこんな家々。
・自給自足な家
・シェアオフィスを併設した家
・生活を削ぎ落とした家
・蓄えられた家
・引き継いだ家
・移動できる移動しない家
・撮影スタジオな家
・家づくり自体が目的の家
正直真似できるか、真似したいか?と問われたら、そうではないかもしれません。
紹介している家は、住み手にとっての「マイホーム」です。
家に対する常識を解放し、自分が本当に住みたい家、「マイホーム」を探すきっかけづくりとして、この本が活用されれば嬉しく思います。