今回ご紹介するのは、toolboxがオーナーと一緒に取り組んだ賃貸ワンルームのリノベーションプロジェクト。

賃貸ワンルームの内装というと、画一的で個性の無いものがほとんど。

ワクワクできるような物件には残念ながらそうそう出会うことができません。

だからこそ目指したのは、その空間で自分が暮らしているイメージが沸き起こってくるようなワンルーム。

そのためにtoolboxがまず着手したのは、ここに住む人の暮らしをとことん妄想すること。

持ち物はたぶんこんなかんじ、生活リズムはこんなかんじと具体的にひとつひとつイメージしていき、この空間に住む人のストーリーを描いてから、空間デザインを行なっていきました。

生まれたのはコンパクトなのに豊かなキッチン

賃貸ワンルームで残念に思うことのひとつが、小さくて使いにくいキッチン。

ワンルームだからといって小さなキッチンでもしょうがないと諦めたくはない。

そうして生まれたのが、どーんと大きなキッチンカウンター。

空間を圧迫しないギリギリの寸法を攻めてデザインしました。

カウンターはキャスター付きなので簡単に動かすことができます。

このカウンターで調理をするのはもちろん、ダイニングテーブルやデスクとして使ったり、友達が遊びにきたときはカウンターを囲んで一緒に料理をしたり、お酒を飲んだり…

ワンルームだけど、料理も食事も、友達を招いて一緒に盛り上がることもできるキッチンが生まれました!

キッチンとくつろぐ場所が同じ空間というのもワンルームが使いにくい理由のひとつだけど、こんなカウンターがあれば空間をゾーニングしやすくなって、生活にもメリハリが生まれます。

足元はすべて収納にして使い勝手良く。調理しながら必要なものをさっと取り出せます。

タオルやツールがかけられるようサイドには『ハンガーバー』を。

棚は、収納するものに合わせて高さ調整ができる仕様に。

大きなカウンターのおかげでキッチンまわりがぐっと豊かな空間に。

キッチン自体はコンパクトですが、水切りカゴを置くスペースがない分、シンクの上に水切りラックを設置したり、マグネット式のナイフラックや、キッチンツールを掛けられるハンガーバーを取り付けて、小さくとも機能的なキッチンに仕上げました。

合言葉は『空中戦』

この企画を行うにあたり、初期段階からオーナーとの打ち合わせで出てきたのが「空中戦」というキーワード。

賃貸物件だと壁にビスが打てないということもあって、床に家具やものが並べられがちですが、少しでも床から解き放たれ、空間を立体的に使えるようにと、今回は空間のあちこちに「空中戦」ができる装置をちりばめました。

窓際の天井に取り付けたのは『アイアンハンガーパイプ』。

室内干しに使えるのはもちろん、グリーンなどのインテリアを飾って自分らしさを演出できます。

キッチンカウンターの上にはコンセントを設置しました。

ブレンダーなどのキッチン機器を使ったりPC作業をしたり、カウンターを様々な作業の場として使うことができます。

奥の空間の天井には『シーリングダウンライト』、ヘッドボードには『ウッドウォールパネル』を使いました。

空間のアクセントになるだけでなく、小物を飾るちょっとした棚としても重宝。これも空中戦の一つ。

もともとついていた長押(なげし)は、オーナーの計らいで自由にビスを打ってもOKとのことだったので、そのまま残すことに。

壁全体をDIYするとなると何からすればいいのか困ってしまうけど、打てる場所が限定されていると、DIYのハードルが下がって気楽にトライできそう。

玄関側には『インダストリアルフック』をつけて、バッグやコートを掛けられるようにしました。

実は、このお部屋の近くには銭湯があるんです。

そんなロケーションに住んでいたら、普段はシャワー、湯船に浸かりたいときは銭湯に行くよね、ということで、もともと3点ユニットだった浴室は、潔く浴槽をなくしてシャワーとトイレのみに変更。

トイレ側は『ワイヤーラック』や『ミニマルペーパーホルダー』『ハンガーバー』などtoolboxアイテムで揃えました。

目指すべきワンルーム

「賃貸でも、もっと豊かな暮らしを描けるはず」という思いから、住まい手のことをとことんリアルに考えてつくったワンルームプロジェクト。

誰しもに気に入られる空間ではないかもしれない。けど、ひとりに深く届く。

「この部屋だから住みたい」と選ばれた部屋であれば、たとえ人生の一時しか住まない部屋だとしても、きっと愛着を持って暮らしてもらえるはず。

オーナーにとっても住まい手にとってもハッピーな空間がもっと増えていってほしい。そう心から願っています。

物件情報

専有面積:29.2㎡
所在地:東京都大田区蒲田