toolboxスタッフである、私の自邸リノベーション実録です。中古マンションの購入から完成までを、全3話の連載でお届けします。
20代と30代の夫婦で、おなかの中にはまもなく産まれる第1子。時間も予算も余裕のなかった私たち夫婦が、最速期間でやりきった4ヶ月間。
家づくりって楽しいけれど、タイトな時間で決めることが多くて、知識もイメージもないところからのスタートは、なかなか大変なことです。だから、できる限り準備をしておくことをおすすめします。
私たちの経験が、これからリノベーションをしようと検討している方の参考になれば幸いです。
第1話では、物件購入するに至った経緯と、物件探しの条件や購入の決め手になったことについてお話ししました。
第2話はプランニングについて。限られた予算の中で理想を叶えるための裏技やアイデア、判断のポイントをお伝えします。
本契約を終えて
購入と同時に、翌月からローンの支払いが始まります。今住んでいる賃貸の家賃と二重の支払いになるため、工事期間は短いに超したことはありません。
というわけで、早速プランニングを始めました!
イメージボードをつくってみる
やりたいことをあれやこれや図面に書き込んだり、口で伝えても、イメージが工務店さんにきちんと伝わるかは、なかなか難しいもの。
できあがって、イメージと違った…なんて経験をした人の話も聞いたことがあります。
なので、WEBやインテリア雑誌から事例写真を集めて、近いイメージを画像で見せて伝えるのがおすすめ。写真から読み取って、素材や施工方法を考えてくれるはずです。
たとえば、お部屋や素材から検索ができる空間づくりのアイデア集【imagebox】は、等身大の事例が多く、toolboxユーザー好みのリノベ事例ばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。
私たちはPinterestも使いましたが、海外の事例の場合、天井の高さや、そもそもの建物の造りの違いで実現不可能なことも多いので要注意。
とりあえずイメージ画像を見せてみて、プロに判断してもらいましょう。全く一緒にはならなくても、近いイメージにできる方法を提案してもらえるかもしれません。
「イメージボード」なんてちゃんとしたものでなくてもいいので、部屋別にイメージ写真を並べてみると、ついついやりたいことを盛り込みすぎて、ちぐはぐなインテリアに…なんてことも防げます。
立ちはだかる予算の壁
なんてったって持ち家、自由です!スケルトンにして自分たち好みにフルチェンジもできます。インテリア好きとしては、ついつい夢(妄想)が広がります。
しかし、そこまで予算に余裕があるはずもなく、やりたいことを書き出して見積もってもらったら、予算オーバーになりました…(苦笑)。
一般的に、フルリノベーション費用は平米10〜15万円といわれています。あくまでボリュームゾーンの平均であって、どこまで手を入れるか、どんな素材を使うかでピンキリです。
今回は69平米だから600万円〜くらいが相場ではあるのですが、結婚式とハネムーン直後ということもあり、お恥ずかしながら正直そこまで予算はありません。
引っ越したら、家具も家電も買わなければならないし、出産準備費用もかかります。工務店さんはたくさん提案してくれますが、浮かれた気持ちを抑え、一旦冷静になって考えました。
印象を変えるのは床と壁!
少ない予算で家の印象を変えるには、広い面積を占めている「床」と「壁」を変えるのが効果的です。そして、広い面積にどんな材料を使うかで、全体のコストが大きく左右されます。ビニールクロスのエンボス感が嫌いな私は、壁紙を剝がして白塗装することを選びました。
床材は、LDK、廊下、家事室、書斎(将来の子供部屋)を『ラスオークフローリング』、同じオーク材で、寝室だけ『スクールパーケット』にしました。
ラスオークフローリングは価格も手頃で雰囲気も良く、本当に助かりました!
トイレと洗面の床は、水に強いグレーのPタイルにすることに。
ちなみに、各部屋をそれぞれ違う仕上げにするよりも、なるべく同じ仕上げにすると材料の無駄が出ず、職人さんも一気に作業ができるため、費用を抑えられます。また、同じ素材に統一することで各部屋につながりが生まれ、広々と感じる効果もありますよ。
優先順位を決める
私が優先したかったのは、何と言っても家事動線。見た目は素敵なインテリアでも、使い勝手が悪ければ部屋が散らかる原因にもなりかねません。
まずは、これからのライフスタイルを想像して、引っ越し後の自分が、朝起きてから寝るまでのあいだ、どんな動きをするのかをシュミレーションしてみます。
例えば、洗剤はどこに置いたら便利なのか、ストックはどのくらい置くのか、キッチンはどこに何があったら料理がスムーズにできるのか、家電はどこに置くのか、コンセントは足りるのか。
大きな収納があれば良いというわけではありません。必要な場所に必要なものが収納できるほうが格段に効率良く、綺麗な状態をキープできます。そのためには、新居へ持っていくもの、捨てるものを明確にすることも大切。自分の持ち物がどのくらいあるのか、プランニングの段階で整理しておきましょう。
私の場合は以下を優先しました。
【優先1】使い勝手の良い理想のキッチンを造作!
【優先2】洗面室とつながった「家事室」をつくる。
【優先3】寝室にクローゼットを増やし、夫婦別々のクローゼットにする。
使い勝手とデザインにこだわったオリジナルキッチンです。
タイルは『ラスティックタイル』、ステンレス天板は『オーダーキッチン天板』を使いました。
キッチンは必要なものをぴったりすっきり収納できるつくりに。シンク側にはレンジ・炊飯器・ゴミ箱・カトラリー引き出しが納まり、リビング側は食器棚になっています。毎日頻繁に使う食器は、すぐに取り出せるよう、シンク上の吊り棚へ置きます。
洗面室と行き来ができる家事室は、乾いたタオルと下着を移動の手間なく収納できて、入浴後も便利。寝室のクローゼットは、ハンガーパイプスペースを広めに確保。洗濯物はハンガーに吊るして干して、下着類以外はそのまま畳まずにしまうことで、家事効率がアップしました。
軸を決める
プランニングのコツ。今度は見た目のお話です。
リノベーションでは多くの人が「足し算の発想」になりがち。ですが、同じ空間にあれやこれや盛り込むと、インテリアに統一感がなく雑多な印象になってしまいます。そんな時は、自分なりの軸をつくり、それに合わせて広げていくのがおすすめです。
私たちの場合、以下の3つを軸に他の素材や仕上げを決めました。
・壁は白塗装で床はオーク
・キッチンに黒いタイルを使う
・アンティークの丸いダイニングテーブルを置く
また、ソファや本棚など大きな家具の配置はあらかじめ決めておき、家具や家電が入った部屋の状態を想像することで、プランニングがスムーズになります。そして、インテリアが好きな人ほど、飾りたい雑貨も多い。だからできあがったお部屋は、家具がないと寂しいくらいがちょうど良いのだと思います。
くれぐれも、やり過ぎには注意です。
使えるものは使い回す!
リノベーション済み物件は販売価格に内装費が含まれているので、新品をすべて壊すのは正直もったいない状況でした。
なので、優先順位の低い玄関まわりの収納と、高い費用のかかる設備(トイレ・浴室・洗面台・レンジフード)は既存を活かして節約しました。
本当はキッチンもそのまま使えば費用を抑えられるのですが、理想のキッチンはどうしても譲れず!!
こだわりのポイントにはきちんとお金をかけて満足度を上げておくことも、愛着の湧く家にするために必要なことです。
塗装の魔法 その1
それでは、どんな技を使ったのかご紹介していきましょう!
優先順位の低い玄関、廊下は、お金をかけずになんとかしたい。玄関からつながる収納扉・トイレドア・洗面ドアは、幸いなことにもともと白いドアが使われていました。
ドアの質感は嫌ではなかったのでそのまま活かしましたが、気になるのはピッカピカなクロームの取っ手。こちらは金属にも下地なしで塗れる『アイアン塗料』を塗って、質感を一新しました。
塗装の魔法 その2
トイレの壁は、既存の壁紙を剝がし、塗装でホワイトとグレーのバイカラーに仕上げました。
本当はタンクレストイレですっきりさせたい派。手洗い一体型はあまり好きではないのですが、新品の便器を捨てるのももったいない。
そこで、壁の上側をグレーで塗装し、アイアン棚で“見せる収納”にすることで、目線をそらしました。
例えば壁全体をカラーで塗ってしまうと、白い便器が浮き出たように目立ってしまいます。だから壁の下半分は白く塗装して便器を同化させ、小物もホワイトとグレーで統一感を出しました。
面材交換で印象チェンジ
面材とは、収納の扉や天板のこと。全部つくり変えると費用がかかる収納も、扉や天板だけを変えることでガラッと印象が変わります。
下足入れは天板だけを『フリーカット無垢材』のホワイトオークに交換。洗面台は『ラワンの洗面ミラー』を合わせたかったので、収納扉を同じラワン材に交換しました。
全部をつくり変えなくても、一気に温かい雰囲気の空間になりました。こだわりのキッチンも、レンジフード側は既存を活かし、面材交換で節約しながら印象チェンジをしています。
素材を変えて金額セーブ
廊下からLDKに入るドアは、当初はアイアンフレームのガラスドアにしたいと考えていました。しかし、アイアン製にするには問題がふたつありました。
ひとつは、重量。既存のドア枠では耐荷重がもたないので、枠からつくり変える必要があること。もうひとつは、想定していた金額より、はるかに高額になること。
そこで再び「アイアン塗料」の登場です。木製ガラスドアの木枠をアイアン塗料で塗ることで、理想の雰囲気を出しつつ予算内に収めました。この塗料は本当に便利。古いアルミサッシの内側の塗装にも使用しました。
ゴミを捨てるのもお金がかかります
これは意外と知られていませんが、必ず知っておいてほしいこと。そう、ただ捨てるだけでもお金がかかるんです。
工事で出たゴミは産業廃棄物なので一般ゴミでは捨てられません。産廃業者に有料で引き取ってもらいます。例えば畳1枚で2,000円程度かかります。
床を剝がしたり、天井を剝がしたり、壁を壊したりすると、驚くほどゴミが出ます。壊せば壊すほど、施工費とは別にお金がかかるので、「解体を最小限にする=既存を活かすと節約になる」ということも頭に入れておきましょう。
下の写真は、我が家の既存内装解体時に出たゴミの一部。(この量でも一部です!)
後悔はしていませんが、新品のキッチンをお金を払って捨てていると思うと心が痛い。また、天井解体はリビングダイニングだけに絞って工事しましたが、それでもこんなにゴミが出ました。
DIYで安くなる?
なるべく自分でDIYしたら安く済むんじゃないか?
この答えは難しいところ。なぜならその人の腕前にもよるから。クオリティーと完成までの早さを求めるなら、断然プロに任せるべきです。
また、基本的に工事を業者さんにお願いするのであれば、工事期間中に素人が現場に入るのは、工程が組みづらい上に作業の邪魔になってしまうので、ほとんどの場合断られることでしょう。
工事期間が長引くとローンと賃貸家賃の二重払い期間も延びるため、DIYをするなら引っ越してからでもできる作業がおすすめです。
それと、たとえDIY上級者でも、災害やトラブルのもとになりかねませんので、設備と電気工事は専門の資格を持っているプロに依頼してくださいね。
材料や道具を揃えるとなるとコストメリットはあまり見込めませんが、DIYの良さは、自分で手を加えたことで生まれる愛着だと思います。
家づくりは、工事が終わった時点が完成ではありません。暮らしてみて気づくこと、その後のライフスタイルの変化で、追加したいのものや変えたいことも出てくるでしょう。壁の色を変える程度なら、工事終了後や引っ越してからでもできます。のちのち棚を付けたくなりそうな場所があるなら、釘が打ちやすいベニヤを壁の下地にしておいてもらうのもおすすめです。
それに、工期に追われてやるよりも、気が向いたときに家をいじるくらいのほうが断然楽しいです。
私たちは業者さんによる工事の完了後に、寝室の壁の一面のみをDIYで塗装しました。妊娠中だったので、危険な作業はできず今回のDIYはこれだけでしたが、とても良い想い出になりました。
ビフォーアフターをお見せしつつ、プランニングのコツをお伝えしてきましたが、すべて工事前に決めたというわけではなく、実際は工事を進めながら、細かい仕上がりを決めていきました。
次回の第3話では、リノベーションあるある的な「工事を進めてわかった問題点」と「施主支給」についてをお届けします。