toolboxスタッフである、私の自邸リノベーション実録です。中古マンションの購入から完成までを、全3話の連載でお届けします。
20代と30代の夫婦で、おなかの中にはまもなく産まれる第1子。時間も予算も余裕のなかった私たち夫婦が、最速期間でやりきった4ヶ月間。
家づくりって楽しいけれど、タイトな時間で決めることが多くて、知識もイメージもないところからのスタートは、なかなか大変なことです。だから、できる限り準備をしておくことをおすすめします。
私たちの経験が、これからリノベーションをしようと検討している方の参考になれば幸いです。
第1話では購入までの経緯と、購入時の物件の様子について。
物件選定の基準は人それぞれですが、私がどんな条件で物件を選んだのか、何が決め手だったのか、マンションの契約前にしておいた方が良いことなどを綴ります。
そもそものきっかけは妊娠
それは、ハネムーンの2日前に発覚しました。
海外旅行から帰国した翌日、婦人科でエコーに映る赤ちゃんを見て、喜びとともに湧きあがったのは焦りでした。
やばい‼︎今の部屋では育てられない‼︎
新婚の夫婦ふたりで暮らしていたのは、もともと私がひとり暮らしをしていた部屋。お互い荷物の少ないふたりは、30平米の1Kに何とか収まっていたのでした。
明らかに増えるであろうベビー用品を想像すると、収納は限界。バストイレ一緒で、ひとりで入るのがやっとなお風呂。インテリアは気に入っているけれど、ここでの子育ては不便が多い。
「子どもが生まれる前に、もう少し広い家に引っ越そう!」
そうして、妊娠発覚と同時に家探しが始まりました。これってきっと、世間ではよくある展開ではないでしょうか。
普通の部屋では満足できない!
私たち夫婦にはひとつ問題がありました。
toolboxで働く妻と、リノベーション物件の仲介をしている夫。
そう、そこにはもう“普通の内装のマンション”では満足できない私たちが居ました。
いわゆる職業病かもしれません…。
独身時代から自分好みにリノベーションした部屋に住んでいた私は、これから産休・育休で毎日居ることになる家が「気に入らない空間」だとストレスになることは容易に想像がつきます。
賃貸も検討しましたが、「自由に内装がいじれる」ファミリー向け物件は少なく、希望のエリアと価格で見つけることができませんでした。だから、中古マンションを購入してリノベーションすることを決意しました。
立地よし、コストよし!
お腹が大きくなる前に環境を整えることを考えると、物件探し~物件購入~業者選定~見積もり~工事~引っ越しまで半年くらいしか時間がありません。
急いで物件探しをスタート。
お互いマンション派のふたり。知らない土地に家を買うのは怖かったので、以前暮らしたことのあるなじみのエリアで探しました。
リノベーションする前提なので、新築には興味がなく、築40年、69㎡、3LDKの中古マンションが目に留まりました。
夫が不動産業であることをフルに生かし、短期間でものすごい数を探したものの、希望する条件に一致した唯一の物件でした。
通勤の利便性はもちろんのこと、隣は公園、2階以上の角部屋で日当りも申し分ない。ゆくゆくは売却する可能性も視野に入れて立地を選びましたが、人気のエリアにしては割安の物件でした。
しかもこの物件は「リノベーション済み!」と売り出されていたもの。なのに、なぜか売り出しから4ヶ月も買い手が決まらず、値下げされていたのです。
怪しい。これは、なにか「理由(ワケ)」があるに違いない。
内見は必須!
そう思って、さっそく内見へ行きました。
外観は社宅を彷彿とさせる築年数並の建物ですが、リノベーション済みの部屋は、ダークブラウンを貴重とした都会的な内装でした。
アーバンなインテリアが好きな方には魅力的なのかもしれませんが、天然素材や古材に囲まれて働いている私には、新建材だらけのツルピカ空間はちょっと好みではないのですよね。
それはさておき、ワケありな箇所がないか捜査開始です。
現物を確認できるのが、中古物件の良いところ。広さも充分、思った通りの日当りの良さと、窓から見える木々がとっても素敵。静かで道路の騒音も気になりません。
お部屋だけでなく、マンションの管理状況やご近所さんの雰囲気、周辺の環境チェックも必須です。
スーパーやコンビニ、クリーニング屋さん、小中学校などはもちろんですが、エントランスや集合ポスト、駐輪場やゴミ収集所などがすさんでいないか、道路側からベランダをチェックして、ゴミ屋敷みたいな部屋はないか、掲示板に苦情の注意書きなどがないかもチェックすると安心です。
特に築年数の古い物件は、大規模修繕や修繕積立金などの情報も不動産屋さんに確認しましょう。
落とし穴がいっぱい・・・
そして見つけた、内見に行かなければ気づかなかったであろう落とし穴が以下でした。
その1:頭がぶつかる浴室ドア
身長160cm以上の人は必ず頭が当たる高さです。私は当たらないけど、夫はかがまないとぶつかる。
その2:キッチンに電子レンジが置けるところがない
単身用のコンパクトな冷蔵庫ならその上に置くという手もあるけれど、ファミリータイプの冷蔵庫ではそれも無理。
その3:二重サッシの取り付け方が妙
断熱と防音効果があり、うれしい二重サッシですが、外側は3枚窓なのに内側が4枚窓で、サッシ位置が合わずガチャガチャした印象。
その4:エアコンの謎
リビングのエアコンの配管が、なぜか寝室を通っている。外壁を見ると、リビングエアコン用の穴は、ちゃんとリビング側の壁に空いているので取り付け時の間違い?
その5:リビングの壁装飾と間接照明
おしゃれを演出したかったのはわかるけど、付いている位置が微妙で、家具をどう配置していいかわからない。ソファを合わせるとテレビ線のある壁が逆側だし、テレビボードを置くとソファが寝室のドアと干渉してしまう。
内装に詳しくないと4と5は引っ越してから気付くくらいのレベルかもしれませんが、こうして「使い勝手の悪い部分」に気付いたのでした。
デメリットはリノベーションで解決
それでも、私たちはこの物件の購入を決めました。
これだけ落とし穴とか言っておいて意外かもしれませんが、上記のデメリットが、私たちのデメリットとして直結しなかったからです。
なぜなら、もともと内装工事をする前提だったので、【その1】以外は解決や緩和ができる範囲だったから。
リノベーション前提で物件を選ぶなら、既存の見た目に惑わされず、変えられるところ、活かせるところを探しましょう。
決め手は間取り
そして決め手となったのは、欲しかった「家事室」を設けるのに最適な間取りだったこと!
見た目のデザインはいくらでも変えることはできても、間取りを変えることはそう簡単ではありません。
私の求める家事室とは、物干しバーを天井に設置して、洗濯物を干しっぱなしにできるスペースのことです。
「家事室」が欲しい理由は花粉症。私の花粉症は、スギ・ヒノキ・イネ科と、2月から7月まで休みなく続きます…。また、夫婦共働きなので夏は外出時の急な雨が心配だし、冬の外干しは寒くてツライ、という理由から、我が家は1年中ほとんど部屋干しでした。
リビングに洗濯物を干してると生活感がものすごく出てしまうので、専用のスペースが欲しかったのです。
納戸かよ‼︎とツッコミたくなる、居室と呼ぶにはあまりに狭い4畳の洋室は、キッチンと洗面所に面していて、洗濯機の横に新たにドアを付け、洗面室→家事室→キッチンと、ぐるりと通れて家事動線もバッチリ。
ドアを閉めてしまえば、来客時も安心!
物干しスペースだけでなく、棚を置けばキッチンに納まらない食品ストックを置く「パントリー」としても使えます。
東向きで朝の洗濯タイムは陽が明るく、とっても気持ちよく家事ができそうでした。
購入前に工務店を探しましょう
心を決めたら、申し込みを済ませておき、ローン審査に入ります。この時点では、物件はひとまずキープの状態。
まだ休む暇はありませんよ。次は急いで工務店(内装業者)を探します。
私たちがお願いしたのは、お仕事で付き合いのあるリノベーションに慣れている業者さん。
センスを伝えるのって難しいですから、自分好みの空間を理解してくれそうなところに依頼するのが、スムーズにいくポイントかも。
toolboxには【imagebox】という空間づくりのアイデアを集めたコンテンツがあり、その空間をつくった設計・施工会社さんの情報も載せていますので、参考にしてみてください。
理想のリノベーションができるか、事前に確認を!
リビングの床はオークにして、ここにソファを置いて、寝室には収納を増やして、キッチンにはタイルを貼りたい。内見の日から、毎日妄想が止まりません。
マンションの契約前から、気が早すぎだと思いますか?いえいえ、早すぎることはないのです。マンションを買ったあとに、叶えたいインテリアが実現できないことが発覚してしまったら、悲しすぎます。
いち早く物件購入を決断するためにも、引っ越し後の暮らしをイメージして、やりたいことを事前に考えておくことがとても重要。マンションの管理規約でも、内装に制限がないか先に確認をしておきましょう。
可能ならば、物件購入の前に、工事のプロに現地を見てもらうことをおすすめします。
例えば我が家の場合、フローリングの貼り替えは、現状のフローリングの上から貼れるのか、一度剝がさないといけないのか、それによって工事価格や工事期間がどのくらい変わるのかを確認しました。
本来の正しい床の貼り替えは、一旦既存の床を剝がし、下地をやり直してから新しい床を貼っていきます。
現状の床の上に重ねて床材を貼ることを「増し貼り(ましばり)」と言い、本来の施工よりもコストを抑えられますが、どんな物件でもできるとは限りません。
築古物件の場合、床が痛んでいたり、フローリングの貼り替えタイミングで床下の給排水を交換した方が良い場合もあります。
この物件はリノベーション済みで給排水の配管がすでに新しくなっていたこと、また、床が数cm高くなってもドアを新しくしたり、ドアをカットすることで調整ができたので、玄関から洗面・トイレ・リビング・各居室に至るまで、すべて増し貼りで施工が可能でした。
これも購入の決め手になりました。
他には、天井を高くしたかったので、天井を剝がせるかを確認してもらいました。
浴室ドアは5cm高くするのに20万くらいかかることがわかり、だったらと他にお金をかけることにしました。たとえ変えられない部分があったとしても、納得して前向きに諦めるか、もやっとしたままかでは気分的に違います。
購入を決断
そうして、大体のリノベーション費用を見積もってもらい、物件購入と合わせての費用と工事期間がどのくらいかかるかを把握してから購入を決断。
平行して進めていたローン審査も無事に通り、本契約に至りました。
ここまでたったの1ヶ月の出来事。人生っていつ何が起るかわかりませんね。(※一般的には2ヶ月くらいかかるのが通常です。余裕をもって動きましょう。)
次回はいよいよプランニング!第2話では、限られた予算と工事期間の中で、理想の部屋をつくるためのアイデアを紹介します。