火をいれるということ
雑誌コンフォルトとの連載企画vol.5。
およそ100万年前から、人類は唯一「火」を道具として使える動物といして火を使いこなしてきました。今回のテーマは「火の入った素材」。分かりやすく、すぐ思いつくところでは、「焼き杉」などがありますが、タイルや鉄、ガラスも成形過程で火はかかせません。
タイルというと量産品のイメージが強いですが、今回は、オリジナルタイルを制作している、 タイル職人 白石普(あまね)さんを訪ねました。
白石さんは、Tシャツに書かれた「ユークリッド」というアトリエ工房を中野区鷺宮に構え、工房の中にある窯でタイルを焼いています。
モロッコで学んだ永遠をつくりだす世界
白石さんは、陶芸家の父と、画家の母を持ち、イタリア留学中の21歳で教会のモザイクタイルに触発され、職業訓練校でタイル施工を学びます。ただ、職人としては遅いスタート。面積単価で仕切られる仕事は何か違う…と思っていたタイミングでTVで目にしたのが、モロッコのモスクのタイルを施工しているシーン。「これだ!」と単身モロッコに飛びます。
その後、タイミングよく王立の職業訓練校に入り、外国人ひとりという環境の中修業にあけくれます。インターンで現地の工房にも入り、文化も慣習も違う異国の地で、目から鱗の経験を重ねたそうです。
イスラム建築にほどこされる様々な幾何学模様は、各工房が柄や色の作り方を一子相伝で受け継いで出来たものだそう。なので、モザイクタイルの柄を見れば、これは○○工房の仕事だ!と分かるそう。
さらにすごいのが、あの小さなモザイクタイルは全て元の四角いタイルを一枚一枚切断して作っているということ。星柄、菱形、すべて一辺ずつ、先の尖ったハンマーで職人さんがコツコツ切断しているのです。なんて気の遠くなる作業。。。
モスクは、工期数十年といわれ、「いつ出来るのか、それは神しか分からない」という精神のもと、永遠に続く柄を作り出していくのです。
見飽きないオリジナルタイルの青色
日本に戻ってからオリジナルタイルの制作をはじめた白石さん。石膏型でクッキーのように一個ずつタイルを型抜きしていきます。
白石さんのタイルは、深みのある青がとても印象的。むらのあるいい表情と、幾何学模様がずっと見ていても見飽きない不思議な魅力を持っています。
釉薬は陶芸の世界で使うものを採用。タイルメーカーで使用しているものは通常もっと安いものを使っているそう。手間も含め、当然タイルの値段はあがりますが、タイルは耐久性があり、経年変化もなく長い時間使うことの出来るものですから、長い目でみれば、納得のいくものではないでしょうか。
より専門的な切り口で今回の特集記事が掲載されています。ぜひ合わせてご覧下さい。