飽きがこない部屋≠無難な部屋/飽きがこない部屋=自分らしい部屋
よく、「飽きがこないシンプルで無難な部屋」という表現を目に耳にします。
なんだかなーと思います。無難な部屋って、飽きがこないのではなく、最初から飽きているのでは。空前の片付けブームですが、ダンシャリなんてしたくない。確かにやたらモノが多いけど、でもどれも「ときめく」し、モノの集積にこそ人間性が滲み出ると信じているから(モノがないのもまた人間性)、無理に捨てるなんて・・・無理!
・・・ということで、今回は、そんな自分の思いの追い風になってくれるような映画を3作品集めてみました。どれも、個性的なヒロインたちのキャラ全開の、攻めてるな〜!という空間です。一番無難になりがちな床壁だって自分色!
皆さまの空間づくりの勇気とインスピレーションに繋がれば幸いです。
『ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ』の居間と執務室
TOP画像で真っ赤な居間の中心で悠然と微笑む、赤いドレスに身を包んだ熟女――彼女の名前はダイアナ・ヴリーランド(1903-1989)。ファッション界では知る人ぞ知る存在。1937年からハーパース・バザー誌のファッション・エディターとして活躍、1962-1971年にライバル誌VOGUEの編集長に就任し、その抜群の美的センスと先見の明で、数々の若き才能を世に知らしめたことで知られます。
そんな彼女の居間は“地獄の庭”と名付けられ、鮮血のごとき赤で埋め尽くされています。よくよく見ると、内装材や調度品のテイストは、クラシカル×サイケ×カントリー×ファンシー・・・と大胆にミックスされていますが、「赤色」という共通項があれば、不思議とまとまりが生まれます。又、彼女の執務室の壁は、沢山の写真で埋め尽くされていて圧巻。徹底的に埋め尽くすことで、壁に迫力が生まれます。空間からも、彼女の編集能力の高さが窺われます。
『(500日)のサマー』:服だけでなく、部屋もシグネチャーカラーで統一
欧米では、自分の肌や髪や瞳の色、雰囲気に合った“シグネチャーカラー(パーソナルカラーとも言います)”を決めている人が多いです。映画『(500日)のサマー』で主人公を振り回す小悪魔的なヒロインのシグネチャーカラーは、ブルー。瞳の色に合わせて、洋服もブルーで徹底。自宅のインテリアも青のカーテン、青い柄の壁紙・・・と青で統一されています。ただ、一言に青といっても、色の濃淡やトーンが異なるので、安易な印象は受けません。
自分のワードローブを見てみて、飛び抜けて多い色があれば、それは自分に似合う、好きだと思っている色だから、その色で部屋をまとめてみてはどうでしょう。ちなみに私は紫・青・緑でしたから、寒色グラデーションの部屋にしようかなと目論んでいます。冬寒々しい、とか、食欲減退色、とか、気にせずに。
又、この映画の主人公は建築家志望の青年なので彼の部屋もなかなか良いかんじ。恋人同士でIKEAで新婚生活ごっこをするシーンも印象的です。
『ヘルタースケルター』:極彩色の部屋
沢尻エリカ演じる、全身整形で美貌とスターの座を手に入れたエゴイスティックなヒロイン“りりこ”の部屋は、赤を基調とした毒々しく禍々しく絢爛豪華な女王部屋。浴室の床壁は、真っ赤なタイル。バスタブは、表面にプラチナムゴールドのベネチアガラスモザイクを施したイタリア製。リビングにもキッチンにもシャンデリアを複数使い。感覚的にも、コスト的にも、常人には追随しがたいものがあります・・・。
ただ、各部屋で異なる色柄の輸入壁紙を貼ったり、いろとりどりのクッションをふんだんに並べたり、蝶の標本箱や鹿の剥製を壁に飾る・・・というアイデアは◎。キッチュなキリスト像をたくさんディスプレイする、というのは、ソフィア・コッポラの監督デビュー作『ヴァージン・スーサイズ』のヒロイン姉妹の部屋でも目にして印象的でした。
「セットの半分が私物のため、家に帰ると家財道具が何もなくて寂しいですが、スタジオにいると、まるで自分の部屋にいるようで落ち着きます」とは、映画撮影時の蜷川実花監督談。写真集『The Selby is in your place』で、蜷川さんの自宅&スタジオ写真を目にしたことがありますが、こちらも“りりこ”部屋に負けないくらいの極彩色。赤いドア、赤い棚、赤い壁に沢山の額装・・・写真や映画で目にするニナガワワールドを体現していますが、実際に人が日々暮らし働く部屋だけあって、リアルな魅力漂い、こちらも必見の空間です。
自我のある女は赤がお好き?
それにしても、ダイアナ・ヴリーランド、りりこ、蜷川監督・・・と赤い部屋が多い!そういえば『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラの邸宅の玄関ホールのカーテンと階段・床の絨毯は真紅だったし、我が道を歩む『アメリ』のヒロインの寝室の壁も深い赤。赤といえば生命力・攻撃性・浪費性・積極性を象徴すると言われていますが、なかなか興味深い傾向です。
自分らしい空間づくりに大切なのはやっぱり・・・
余談ですが。とあるファブリックレーベルで定番の孔雀の羽根柄の布地があるのですが。私はベッドカバーが欲しいのですが、大判商品だとカーテンしか売っていない。ベッドカバーはないんですよね?とお店の方に尋ねると、「ないんですけど、××さん(ゴシックテイスト好きの歌姫)はカーテンをほどいて縫い直してカバーにすると仰ってましたよ」と言われたことがあります。ああ、あの人は、自分の好きな世界の部屋にするために手間暇を惜しまないんだなあ、えらいなあ、と感心してしまいました。お金だけではなく、やはり労力と情熱が大事です、理想の空間づくりって。
■ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ
2012年12月22日(土)より、シネマライズ、TOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国順次ロードショー
配給:シネマライズ×ギャガ
© MAGO MEDIA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
■(500)日のサマー
フォックス・スーパープライス・ブルーレイ WAVE6ブルーレイ発売中¥2,381(税込¥2,500)
20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン
© 2010 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
■ヘルタースケルター
2012年12月21日(金)ブルーレイ&DVD発売
BD:¥5,250(税込)DVD:¥4,095(税込)
© 2012映画『ヘルタースケルター』製作委員会 © 岡崎京子/祥伝社