縁の下の力持ち エンジニアード・ウッドとは?
雑誌コンフォルトとの連載企画vol.2。
今回は、「再編された木材」がテーマ。木材を単板、小片、ファイバー状に細分化し、接着剤によって再構築して大きな材料にしたものの総称を「エンジニアード・ウッド」と呼びます。
DIYユーザーにはなじみ深い「合板」は、丸太を大根の皮を剥くように外周部分をカツラ剥ぎにして薄い板(ベニヤ)にし、繊維方向を直行させて貼り合わせたもの。ホームセンター等でも扱われている「MDF」はファイバー状、「OSB」はチップ状の木材を接着して出来ています。
これらは、元々丸太を細分化することで、ロスなく材料が生み出されるという合理化の上に生み出され、普段は下地として使われる事が多いのですが、今回は、その中でも、仕上げ材として、見た目も面白い「エンジニアード・ウッド」 を求めて取材に出かけました。
「木に反(そ)ると書いて板」合理化の先にあるもの
1件目は、toolboxもお世話になっている、浅草で明治38年創業の老舗「佐久間木材」へ。お話を伺ったのは、数多くのエンジニアード・ウッドを取り扱い、オリジナルの合板づくりにもチャレンジする4代目の佐久間賢之さん。
「木に反ると書いて板。本来板は反るもの。その難点をうまく克服したのが合板。木材にも適材適所がある。合板=チープという固定概念を打ち破りたい。」と語る佐久間さんのオフィスには、このぺージのトップ写真にあるような数多くのエンジニアード・ウッドのサンプルがありました。
MDFカラー版、熊本のイグサを圧縮したもの、白い表面がキレイな桐とポプラの合板など試作品含め見た事がないものがたくさん。これ、○○にしたら面白そう。など、サンプルを手に話しがはずみます。
本来、合理化を求めて作られた均一な材料なのに、面材として再構築する中で、木や植物のもつ本来の質感や色の断面が見えてくるのが面白い。
コンフォルトの誌面では、その一部、8種類の写真や、材料の解説も詳しく載っているので、ぜひ合わせてご覧下さい。
「いましかできないものをつくりたい。」
2件目に伺ったのは、建築家の山代悟さん。
山代さんは、LVLという素材の面白さを見いだし、積極的にLVLの表情を生かした建築をつくっています。
LVLとは、木をカツラ剥きにした単板を、合板が繊維の方向を直行させるのに対し、方向を揃えて貼り合わせたもの。一般的にはあまり聞きなれない素材ですが、建築の柱や梁などの構造部材や建具や造作材として使われています。
「いまの時代に初めて出来るようになったことを形にするのが建築家の仕事です」と山代さん。LVLを使って防火認定が必要な外壁としての可能性を模索したり、素材や工法の研究と関わりながら、研究の成果をオープンにしようとハンドブックにまとめる作業も行ったりしながら、新しい空間をつくったりと、建築家としていま何が出来るのかを常に考えられています。
実際にLVLを使った空間を見る事のできる事例の一つが左写真の2012年9月にオープンしたレストラン「はとばキッチン」。 静岡県清水漁港近くにあります。壁や間仕切り兼棚など、あらゆるところにLVLが使われています。凸凹と立体的な積層の壁は、迫力満点。ビュッフェ形式で、美味しい野菜料理が売りだそうなので、清水を訪れた際は、ぜひ御邪魔したいと思いました。建築めぐりをして、美味しいものも食べられるなんて一度で二度美味しい。余談ですが建築家は、グルメな人が多いのです。
木口カラフルなペーパーウッドを作ってみました
色々見てきた中で、toolboxでも、何かつくってみたいと、佐久間木材で見せていただいた、木口(こぐち・木の切断した断面)がかわいいペーパーウッドを取り上げました。
ペーパーウッドとは、デザイナーさんの企画よって生み出された、単板の間に、カラフルな色紙を挟み込んだ新しい合板。(トップ写真の真ん中にあるものです)ピンク、ブルー、グリーンなど、木口がカラフルになるのが特徴です。
協力してくれたのは、コーポラティブハウスにお住まいで、まだまだお部屋づくりも進化途中というUさん宅。2歳の娘さんはやんちゃざかりで、整理整頓が追いつかず…という悩みを受け、キッチンカウンターの背面部分を使い、ブックラックを作ることにしました。娘さんの目線レベルにあった高さに2段とオトナ用に吊戸裏に1段。カウンターのコーナーを生かしてL字にしました。施工は、toolboxの工事サービスでおなじみのANGLO 石岡さん。事前に切ってきてくれた材料を現場で打ち付けていきます。
約半日で作業は完成。お気に入りの絵本やおもちゃを飾るスペースが出来たので、さっそく並び替え。プチギャラリーが出来ました。これからどう飾り替えが行われていくのか楽しみですね。このブックラックは、今後商品化予定です。気になる方はお問い合わせ下さい。(⇒販売開始しました!)
このように、木口が面白いもの、面として見せると面白いものなど、エンジニアード・ウッドは本当に種類色々。面白いと思う材料と出会ったら、テーブルに?棚板に?塗装する?など、どう料理するといいのか、じっくり頭の中で一人ブレストをしてみるのがオススメ。その魅力をどう生かすかは使う方のアイデア次第。ぜひ、オリジナルなモノを作り出してみてください。
専門的な切り口で今回の特集記事が掲載されています。ぜひ合わせてご覧下さい。
はとばキッチン(HP)
静岡県静岡市清水区入船町13-15 エスパルスドリームプラザ 1F