空間ヒント、FROMカナダ
ごちゃまぜ感がかっこいい部屋が登場する映画を見つけました。空間演出のヒントが見つかる映画をご紹介するシリーズの第3弾は、カナダから届いた新作映画『テイク・ディス・ワルツ』。夫とは異なる魅力を持つ青年と恋に落ちてしまった女性の心の揺れを描いた切ないラブストーリーです。舞台となるのはトロントのウェストエンド。もともとは各国の移民が多く住み、多様な文化が融合醸成された、独特の情緒が漂う地域。ボヘミアンな雰囲気のギャラ リーや店がひしめき、近年ますます人気上昇中。
テイストミックス
この映画に登場する空間に先ず共通するのは、テイストミックス。インダストリアル+アンティーク+ミッドセンチュリー(+アジア)と、ひとつのスタイルに絞らず、自由にミックスしている点です。知能犯的に敢えてやっているというよりは、自分のアンテナに引っかかる「好きなもの」を素直に集積した結果、というかんじ。よく日本のインテリア雑誌にはテイスト別に空間や内装アイテムが紹介されていることが多いですが、枠におさまらずに自由に自分の好きなものを集めていくと、自然とその人らしい心地良い空間ができるのでは?と思います。
▼リビングは、壁には大型の現代アート写真をディスプレイしつつ、クラシカルなマントルピースやアンティークのスタンドライトに、カラフルなミッドセンチュリーの家具が配されていたり、年季の入った茶色い革ソファにはいろんな柄のクッションが置かれていたり・・・ごちゃまぜなのですが、不思議と居心地が良さそう。
▼夫婦の寝室には、アンティークの照明スタンド・ブラケットライト・ロッキングチェアに、工業系のワークデスク、モダンなベッドサイドランプが共存。
ルールにとらわれない壁
海外の映画でいつも目につくのは、鮮やかな色壁や、大胆な柄の壁紙。この作品にも、様々な色柄の壁が登場します。1つの家や部屋を、同じトーンの壁でまとめる必要はないのです。
▼リビングの壁はシャイニーな素材のグリーン系の壁紙でまとめつつ、大きなアーチ型窓の周りの壁のみ、レトロサイケな柄壁紙を使用。2種類の全く異なる柄の壁紙を使いつつも、色みを揃えているので意外としっくり
▼リビングとキッチンの間には、花柄の壁紙の続き間。壁にはフォトフレームやポストカードがたくさん飾ってあり、一気にノスタルジックな雰囲気。
▼壁紙メインの1階とは異なり、2階寝室は鮮やかな青の塗装壁(画像D/E/F)。2階のテーマカラーはブルーで、実はバスルームの窓枠もトイレも洗面台も水管も水色に塗装。
自由な発想のアイテム活用
本来の用途以外にモノを活かすのも、取り入れたい空間テクニックのひとつ。
TOP画像で、カーテン代わりに使っているのは何と竹スダレ。これは海外雑誌でもたまに見かけますが、日本人だと洋間+竹スダレってなかなか思いつきません。間仕切りは安価なポール+体育館で使われているような黒いネット。これは(私は)初めてみました。斬新です。文房具のクリップボードを壁に付け、イラストをクリップディスプレイするのは妙案。季節や気分によって、気軽に飾るイラストを交換できます。常識にとらわれず、お金をかけずに意外なアイテムを活用して楽しい部屋に仕上げています。
好きなものを集めると、不思議と統一感が生まれる
“トータルコーディネート”なんてことはあまり深く考えずに、自分の愛するモノを身の回りに集め、嫌いなものやどうでもいいものを排除して入れないようにする。すると、おのずと統一感が後からついてきて、良い空間になるのかもしれません。断捨離の理論にも通じるところがありますが、必ずしもモノを減らす必要はないと、私は思います。スッキリしたお部屋もいいけれど、たくさんのお気に入りのモノに囲まれる居心地の良さというのもあるのです。肩の力を抜いて、居心地の良い空間づくりを楽しみましょう!
2012年8月11日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
映画場面写真:© 2011 Joe’s Daughter Inc.All Rights Reserved
映画セット写真:© MATTHEW DAVIES PRODUCTION DESIGNER