最後に残った4部屋目
以前ご紹介した「職人たちの競演」。このリノベーションには続きがありました。
このアパートは全部で4部屋。前回、工事をした際には4部屋目の方が入居されていたので、3部屋のみの工事だったのですがその方が退去されたということで、オーナー様より再度招集がかかりました。
オーナー様からのご要望は「大きなキッチン」。 ワンルームで狭いのに大きなキッチンです。
意図として、オーナーさんご自身が料理好きということに加えて、自炊をしっかりする人は部屋も丁寧に扱って住んでくれるのでは、と思われたようです。実際に管理をしていくオーナーさんだからこその視点です。
部屋を縦断する3.4mのキッチン
一般的にワンルームにスペックされているキッチンの幅は1.2〜1.5m程度。小さいところだと90cmという場合もあります。狭い面積の中に置くので仕方ないと言えばそうなのですが、けれどもちゃんと料理をする人にとってはあまりにも使いづらい。シンクが小さかったり、コンロが一口だったり、まな板のスペースがなかったり。
今回のキッチンは3.4mです。大きいです。幅が長いのでもともとあったキッチンスペースからはみ出して、部屋の方まで突き出しています。部屋からキッチンが出っ張ってしまったら、今度は部屋が狭くなりそうですが、そこでひと工夫です。
キッチンの奥行きをぎりぎりまで小さくしました。それからシンクの隣は物入れに出来て、さらにその隣はカウンターにしています。そうすることで部屋からよく見える部分はキッチンじゃなく家具のようなしつらえにできて、かつ調理をするときは大きくキッチンとして使えて、調理以外の時はちょっとしたパソコンワークや食事くらいはできてしまう。そんなキッチンにしました。
光るセンスとプライド
やっぱりこのチームでの仕事は楽しい。集結2回目ということもあって、前回よりだいぶみんなが慣れた感じです。お互いの性格や得意技が分かってきて、前回より洗練されています。
先の大キッチン、これをつくってくれたのはANGULO石岡さん。toolboxの突板合板(チェリー)を上手に使って品のあるキッチンにまとめ上げてくれました。そして、部屋側の木の壁。こちらもチェリーで統一。実はこの木の板、1枚1枚2mmの隙間を空けて貼られているのです。最初は0mm、次は1mmの間を空けて貼ってみたけれども、どうも違うと言うことでやり直してくれたのです。すごく手間のかかる作業を自らこだわってやってくれる。脱帽の仕上がりです。
そして塗装。なかむらしゅうへいさんの壁は一見単なる白に見えるのですが、実は微妙な色違いで塗り分けられています。写真では伝わらないほどの繊細さ。この作業、巧妙な仕掛けでして、借り手が退去したときに汚れがひどい場合、原状回復として塗り替えが発生します。そのときに一部の汚れであれば塗り分けたところまでで塗り直すことができます。汚れがないところまで塗り替える必要がないのです。完成後まで考慮された塗り継がれる壁です。そして床。前回にも増してより良い具合になっています。
壁の木に負けないタイルを貼ってくれたのは瀬尾商店、瀬尾さん。分厚いタイルなのに寸法をピタッと合わせてつくってくれています。色にばらつきのある焼き物の風合いに愛着を感じます。
そして、ベッド兼収納コーナーと廊下を仕切る金網を仕上げてくれたのは、かなぐや青山さん。黒皮という塗装が施されているのですが、このかすれ具合をだすのは、さすがです。ただの黒に終わらせないこだわりに嬉しくなります。
今回、キッチンのスペースを広げるべく洗濯機の位置を玄関側に移動させたのですが、その大工作業をとんち工務店秋山さん、設備工事を穂積さんに行ってまいりました。予期しないハプニングにも柔軟に対応していただきました。
最後はルーヴィス福井さん。相変わらずの安定感と安心感。作業の連携が必要な部分をまとめあげてくれました。
新たなるワンルームリノベへ
完成後オーナーさんからは、改めてこのチームにお願いしてよかったとお褒めの言葉をいただきました。募集の方もR不動産に出すとすぐに複数のお問い合わせがあり、即決。借り手にもオーナーさんにも嬉しい結果となりました。これで4タイプ出そろったワンルームリノベ。このデザインは次なるプロジェクトへ移行していきます。監督がピッチにいない現場で、より効率的で、よりかっこよく、より自由に、を目指して、改善が加えられ進化していくことでしょう。
そして、ここで生まれた技や素材、サービスはtoolbox商品として発表されていく予定です。
今後の動きにもぜひご注目ください。 面白い展開になっていく!はずです。