toolboxでは、『イージーロックフローリング』や『無垢床タイル』など、敷くだけで施工できてしまう、賃貸でも使えるフローリングを取り扱っています。

かくいう私も、今住んでいる賃貸の部屋に『スクールパーケット』を敷きたいと思っているんですが、この先引越す可能性もなくはないので、今後どういう心づもりでフローリングと付き合えばいいのか、ちょっと悩んでいました。

そこで思い浮かんだのが、以前に『床に寝転がりたくなる部屋』『床に愛着をもって育てた部屋』『育てた床もお引越し』でご紹介したこちらのお宅。ひとり暮らしのワンルームの床に敷いていた『無垢床タイル』を、引越し先の賃貸にも持って行き、使い続けています。

「フローリングを持っていく」という発想が生まれるなんて、一体どんな暮らし方をしているのだろうと興味が湧き、先人のお話を参考にすべく、お宅へお邪魔してきました。

日焼けさせたり、入れ替えたり、愛でたり

石橋慶久さんと知美さんが暮らすのは目黒区にある44㎡の1LDK。賃貸には珍しい三角天井のLDKは、床一面に『無垢床タイル(ヒノキ)』が敷かれています。

ひとり暮らしをしていたワンルームの床に『無垢床タイル』を敷いていた慶久さん。知美さんとの結婚を機に現在の部屋へ引越すことになり、3年育てた床も持っていくことを選択。部屋が広くなった分、新たに購入したものと混ぜて使っています。

「前の家から使っているものと新しく買った分の色味を揃えるためにオイルで塗ろうと思っていたんですが、仮敷きしてみたら混ざっている状態もいい感じだったので、そのまま塗らずに使っています」(慶久さん)

経年変化して色が深まったもの、まだ白っぽさが残る新しいもの。新旧の『無垢床タイル』が混ざったことで、一枚一枚の木の自然な表情がより際立っています。

「経年変化が激しいものをいつも座るソファの前に持ってきたり、リビングを見た時に何となく目に付くところに節の強いものを置いてみたり。家具の配置を変えるときもですけど、何もないときも、思い立ったら入れ替えて楽しんでいます」(慶久さん)

なんと、一度敷いた後も、模様替え感覚で『無垢床タイル』を入れ替えていると言います。お二人にとって『無垢床タイル』は、椅子やラグなどの延長線上にあるようです。

さらに二人は「いつも外を感じて暮らしたい」という理由から、在宅時は晴れの日も雨の日も窓を開けっ放しにして生活しているのだそう。「床濡れちゃいますよね…?」と聞くと、

「雨に濡れたり、日焼けをしたりして、一枚一枚表情が変わっていくのを見るのも楽しいんです。無垢の木なので、濡れるとさすがに膨らみますが、開けっ放しで通気をよくしているせいかすぐに乾くし、反ったりもしていないですね」(慶久さん)

前の家で無塗装のまま使っていた理由も、「木本来の表情や経年変化を楽しみたい」という理由から。節が入った表情も、経年変化することも、慶久さんと知美さんにとってはかけがえのない魅力。“愛でる”ものとして『無垢床タイル』と付き合っている様子が伺えます。

空間の雰囲気は「敷くだけ」で変えられる

寝室はLDKと雰囲気を変えるために、『無垢床タイル(スギ)』をセレクト。家の中では裸足で過ごしているというお二人。歩き心地や足触りの良さも気に入っていると言います。

「賃貸でよくあるペカペカしたフローリングが好きじゃなくて。賃貸でも使える敷くだけのフローリングを探していて、『無垢床タイル』を見つけました」(慶久さん)

以前の慶久さんの部屋を大家さんが訪れた際、『無垢床タイル』が敷かれた床に感動して、「こんな風に素敵にしてくれるなら、壁も好きな色に塗っていいよ」と言われたそう。

「結局、壁に色は塗らなかったんですが、マスキングテープで貼る壁紙にトライしたりしました。でも本当に壁に塗るのとは違ってフェイク感があって…。『無垢床タイル』は本物の木をそのまま敷くだけ、というそのまま感が良かった」(慶久さん)

「引越し先に持って行く」という発想が生まれたのも、“敷くだけ”のフローリングだったからこそ。部屋が広くなった分の『無垢床タイル』を追加で買うほうが、違う床材を新たに買うよりお金がかからなかったこともあり、持ってくることにしたそうです。

引越しの際は、入居前に無垢床タイルを数枚新居に持ってきて、建具に干渉しないか確認。クローゼットの扉だけ引っかかってしまうので、そこだけ普通のヒノキ板を敷いています。

キッチンの床にも『無垢床タイル』。洗面室にはPタイルを敷いています。

「この部屋はもともとの内装もレトロでいい感じだったんですが、そのままだと“古い物件に住んでるだけ”になってしまう。何々風とか、型にはまった空間が嫌だったので、何か新しい要素を加えたかったんです」(知美さん)

そう言われてお部屋を見渡すと、置かれている家具のテイストも素材もさまざま。アアルトのテーブルとYチェアのダイニング、カリモク60のソファ、粟辻博のタペストリー、SANAAのチェアにアンティークのドレッサー、鉄パイプのハンガーラック、DIY家具もミックスされています。そこにこの部屋本来のレトロ感も加わっているのですが、そのどれもに『無垢床タイル』がしっくり馴染んでいて、空間をまとめあげています。

「いろんなテイストの家具を受け入れてくれるとこも気に入っています。床を変えるだけで空間の雰囲気をガラリと変えられるのに、賃貸だとそういう発想がない人が多いんですよね。遊びに来る友人みんなに床を変えることをプレゼンしています(笑)」(知美さん)

床と一緒に「自分たちらしい空間」を育てる

三角屋根の天井と窓からの開放的な眺めが気に入って、この部屋に決めたという慶久さんと知美さん。ともに設計事務所にお勤めしている二人は、新築のデザインマンションやリノベーション物件に住んだこともあるそうですが、築30年超えの現在の家の方が暮らしていて楽しいと言います。

「新しい家はいろんな機能が付いていて便利でした。でも、空間のテイストも使い方も全部出来上がっていて、暮らし方が決められている感じに窮屈さを覚えたんです。今の家は不便なことも多いんですが、だからこそ“ここはこうしよう”と工夫ができる。そうやって、自分たち仕様の部屋に育てていけるのが楽しいですね」(慶久さん)

慶久さんと知美さんにとって賃貸暮らしは、自分たちらしい暮らし方を見つけていくためのトライアンドエラーの場所。だから、完成され尽くした空間よりも、自分たちに心地よい空間に育てていける余地がある空間がいい。お二人のそうした考え方と『無垢床タイル』との付き合い方には、通じるものがあります。

「“捨てられる”のもいいところ。“敷くだけ”だから気分が変わったら変えればいいと思えるので、楽な気持ちで付き合えるんだと思います」(知美さん)

模様替え感覚で板を入れ替えたり、たくさんのグリーンを床に直置きしたり、さまざまなテイストの家具を取り入れてみたり。普通の賃貸の床だったら、こうした空間にはなっていなかったのではないでしょうか。

床材の「固定するもの」というイメージにも、フローリングへの「汚したり傷つけてはいけない」というイメージにも捉われず、自由な感覚で『無垢床タイル』と付き合っている慶久さんと知美さん。暮らす人の使い方次第で、建材の在り方は変わる。そんな気づきをくれた事例でした。

以前にもこちらのお家は『床に寝転がりたくなる部屋』『床に愛着をもって育てた部屋』『育てた床もお引越し』でもご紹介しています。床材の成長していく様子が見れますので、よければご覧ください。

(テキスト&撮影:サトウ)

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