全4回に渡ってお届けしてきた「フローリングガイド」。自分らしいインテリアづくりの基礎となる、フローリング選びのポイントを紹介してきました。
最終回のVol.4は「フローリングの機能」について。「こんなフローリング空間にしたい」と思っていても、マンションでは使用する床材に遮音性能を求められたり、床暖房にするなら床暖房対応のフローリングを使う必要があるなど、自分が理想とするフローリングのイメージと必要な機能とのすり合わせが必要になってきます。今回は、さまざまな機能を持つフローリングを紹介しながら、それらを使う際のポイントもお話ししていきます。
フローリングの商品開発を担当し、施工部隊のリーダーも務めるtoolboxメンバー。
下の階に音を響かせない「遮音性能」
マンションでは、一定の遮音性能がある床材を使うことが管理規約で決められていることがあります。求められる遮音等級は管理規約で決まっているので、必ず管理規約をチェックしてください。また、そうした取り決めがなくても、小さなお子さんやペットがいたり、下階に生活音が響くのを軽減したいという場合には、遮音フローリングが強い味方になります。
遮音フローリングとは
遮音フローリングとはその名の通り、音の伝達を遮断することができるフローリングのことです。床に伝わる音には大きくわけて軽量衝撃音と重量衝撃音の2種類があり、軽量衝撃音とは軽い物の落下や家具を引いたりするときの衝撃音のことで、重量衝撃音とは人が飛び跳ねたりするときに発生する重くて鈍い音のことです。
遮音フローリングの構造
木質性の表面材と音を吸収するクッション材、その間にはさまる合板でできています。
合板には溝が入っており、しなるようなつくりになっています。このしなりが、クッション性を高め、音の伝達を軽減させます。
遮音性能にはレベルがあります
遮音フローリングで防げるものは主に軽量衝撃音で、防げる度合いをL値という数字で定めています。
L値は数字が少ないほど遮音性能が高く、マンションの規約で適用されるのは「椅子などの移動音や鞄などの落下音が小さく聞こえる程度」とされるL-45が一般的です。
遮音フローリングはクッション材がついているため、その上を歩くとフカフカとした感触があります。こればかりはどうすることもできませんが、どうしてもこの歩行感が嫌だという方には「置き床工法」という、フローリング以外で遮音性能を確保する手段もあります。
ただし、この方法の場合はフローリングだけではなく、下地から作り替えないといけないため、リノベーションの場合コストが高くつくことがあります。また、多少はフカフカはしますが、遮音フローリングより感触が抑えられ、置き床工法よりは床厚が薄く、天井の高さを確保できる方法として、遮音性能のある下地(遮音マット)を使用するという方法があります。
遮音マットが一番コストがかかる傾向にありますが、予算や使いたいフローリングと兼ね合わせて検討することが必要です。
L-45の遮音性能を満たす、天然木を使った 遮音フローリング
裏面に緩衝材が貼り付けられており、L-45の遮音性能があるフローリングです。
樹脂シートが一般的な遮音フローリングのなかで、こちらは表面に0.5mmのオークの天然木を使用しており、貼り上がりに深みのある木の表情を演出することができます。
天井高を確保したいなら「直貼りタイプ」
鉄筋コンクリート造の建物の場合、コンクリート(厳密にはモルタル)の床の上に、木材などでフローリングを貼るための下地をつくる工事方法が一般的ですが、下地をつくるとその分床の高さが上がり、天井高が低くなってしまいます。もともと天井高があまりない建物などで、「天井高を確保したい」というときに役立つのが「直貼りフローリング」です。
床下地について詳しく知りたい方は下記の記事もあわせてご覧ください。
直貼りフローリングとは
コンクリート躯体の上に直接接着剤のみで貼ることができるフローリングのことです。
下地を組まず、釘も使わず、接着剤だけで工事できてしまうため、天井高さを確保しやすいことのほか、床下地を作る必要がないので工事手間が少なくコスト削減にも一役買ってくれます。
直貼りフローリングの構造
木質性の表面材と、遮音フローリングほどフカフカはしていませんが、裏側にクッション材が貼り付けてあります。このクッション材がコンクリートの凸凹を吸収し、平に貼ることを可能にしています。
直貼りフローリングを使わず、下地をつくる通常の貼り方の場合、床は大体10㎝ほど上がります。
10㎝なんて大したことない高さに感じるかもしれませんが、天井高が10cm上がると空間は随分伸びやかな印象になります。
天井をできるだけ高く見せたいという方には直貼りフローリングがおすすめです。
こんな直貼りフローリングも スクールパーケット
板材の裏面にクッション材が貼られており、釘打ちが要らず、接着剤だけでコンクリートに貼ることができる直貼りタイプのフローリングです。
かつて学校の床としてよく使用されていたもので、どこか懐かしい味わいのあるパーケットフローリングです。
「床暖機能」も天然木もどっちも欲しいなら
床暖房にすると、足元は暖かく、床から部屋全体が暖かくなり、冬でも快適に過ごせます。ただし、床暖房にするには適したフローリング材を選ばなくてはいけません。
床暖房の仕組みと、床暖房対応フローリングのつくりを説明します。
床暖房のしくみは主に2種類
床暖房と一概に言っても細かく分類すると暖かくする方法は様々。大きくは、「電気ヒーター式」と「温水循環式」の2種類があり、フローリングに与える影響や、初期費用、ランニングコストに違いがあります。
床暖房対応のフローリングとは
通常のフローリングは床暖房にすることで温度変化が起こり、フローリングの反りやひび割れを引き起こすリスクがあります。
床暖房対応品として販売されているフローリングは、熱の影響を最小限に抑えるための加工がなされたもので、メーカーごとのテストを通過しています。
床暖房に対応するための加工
加工の例としては、サネの部分が特殊な形になっているものや、反りの原因になりやすい水分を抜いてしっかり乾燥させたもの、左の写真のようにフローリングの中に溝を作り、反りにくくしたものなどがあります。
床暖房対応品と言っても、天然木を使った床暖房対応品の場合は熱の影響を絶対受けないとは言い切れません。
天然木はいわば水分を含んだ生きている木です。床暖房で天然木のフローリングを使う場合は、ある程度の寛容さを持って使うことをおすすめします。
DIYで床の雰囲気を変えるには
予算の関係で自分でフローリングを貼りたいと考えている人や、手軽に休日DIYで部屋の雰囲気を変えたいと考えている人。フローリングと聞くと、DIYで貼るのはかなり難易度が高く感じられるものですが、DIYしやすい機能を兼ね備えたフローリングもあるんです。
置いてはめるだけでいい理由は鉤型のサネ
ボンドも釘も使わず施工ができる理由は、サネ(接合部分)にあります。
フローリングの側面には、片側は出っ張っている雄サネ、もう片側にはへこんだ形状の雌サネがついており、雌サネに雄サネをはめ込むことで接合させます。
でもそれだけでは反りなどを理由に板同士が外れてしまう可能性があるので、サネ部分に釘を打って下地と固定させるのが、通常のフローリングの工事方法。
『イージーロックフローリング』の雄サネと雌サネは鉤型になっていて、サネがフックのように引っかかることで板同士を連結させます。そのため、釘を打ったりボンドで接着することなく、板同士を固定することができるのです。
畳の上から実際に貼ってみました
toolboxのスタッフが暮らす築40年の賃貸アパートで実際に試してみました。
よくある和室がたった数時間で見違えるような空間になりました。
畳の上に置いているだけなので、改装不可の賃貸でも原状回復を気にする必要がないことも「イージーロックフローリング」の嬉しいところ。
畳の上に使った場合は、多少フカフカはしてしまいますが、慣れてしまえば気にならず、サネが外れてしまうこともありません。
スタッフは、フローリングの空間になってインテリアを楽しみやすくなったそうです。詳しいやり方は下記のコラムから。
空間の中で広い面積を占める床は、理想のインテリアづくりのベースになるもの。
どんなフローリングを選ぶかによって、その後の住み心地が決まってきます。
見た目の好みはもちろん、持っている機能、施工性や費用、暮らし始めてからの付き合い方など、選定のポイントはさまざまありますが、総合的なバランスを見極めることがフローリング選びで最も大切です。
それぞれのポイントについての理解を深めた上で、自分が叶えたい空間や暮らしはどんなものなのかをしっかりイメージし、フローリング選びに取り組んでほしいです。