『ライティングガイド』Vol.3で取り上げるのは「直付け照明」。玄関や洗面室、キッチンやトイレ、廊下など、固定であかりがほしい空間に向いている照明です。
特に壁付け照明は、特徴的なデザインのものも多いのでインテリアのアクセントとして選ぶ楽しみがあります。
事例を参考にしながら、空間のデザインの要素として、設計段階から計画に取り込んでいきましょう。リノベーションならではの見せる露出配管や、おすすめの電球についても解説します。
前職では設計事務所でインテリアデザインに携わっていた、ライティングにはこだわりのあるtoolboxのリーダー。
洗面台をあかりでコーディネイト
「直付け照明」の出番が最も多いのは、洗面空間ではないでしょうか?
お気に入りの洗面器やタイル、鏡やタオル掛けなど、洗面空間にこだわるなら、設える照明器具も選び抜きたいもの。ただし、洗面空間は鏡を見ながら身だしなみを整えたり自分の姿をチェックする場所。照明器具選びの際はその見た目だけでなく、どんなあかりでどんなふうに照らすのかもきちんと考えて選ぶ必要があります。
シェード付きで雰囲気ある空間に
シェード付きの直付け照明で洗面台付近を照らした例。シェードの内側に光が反射して、顔に当たる光はシェードなしの場合より強くなります。
浴室一体の洗面では防水タイプを
クリアなグローブ付きの直付け照明で、天井面も洗面器付近も照らした事例。こちらは外部使用も可能な防水性があるタイプ。浴室と一体型の湿度の高い洗面にオススメ。
ミラーが横長の場合は複数灯使いで
鏡の上部に直付け照明を2灯取り付けた事例。1灯だけ取り付ける場合よりも、鏡の前に立ったときの人の顔に影ができにくくなります。
これぞ女優ライト!鏡を囲んで照らす
楽屋の化粧コーナーのようなライティングをした事例。鏡の上方と左右から照らすこの方法は「ブロードウェイライト」と呼ばれ、顔に影が出来ない照らし方。
照明計画の際には、照明器具を取り付ける位置だけ決めて電気配線工事を先に行い、照明器具は後から選ぶ、という進め方が行われることも少なくないのですが、選ぶ照明器具によってはキャビネットに干渉したり、配線の取り出し口が違ったりと、想定したあかりを得られない場合もあります。
着工前に器具を決めて、実際の形状やサイズをよく検討してから工事に取り掛かってもらうようにしましょう。
Check! 化粧のしやすさにもこだわりたい。 電球の色、顔映りの違いを比べてみました
あかりが1灯と2灯では顔の影の出方はどう違う?電球の色は昼白色と電球色、どっちがいい?実際のところを確認するために、セットをつくって比較実験をしてみました。
上部センターにシェード付き1灯
両脇に裸電球を2灯
結論!おすすめは、「鏡の両脇に2 灯」配置。電球の色はお好みですが、電球色がベターとなりました。
「上部のセンターに1灯」でも化粧をするには十分な明るさという印象でしたが、比べてみると「鏡の両脇に2灯」のほうが顔に影ができず明るくなりました。
あかりの色による顔映りの差は特に感じませんでしたが、「電球色」のほうが顔色が良く見え、部屋の雰囲気も落ち着いた印象になりました。
こだわりの造作キッチンには手元灯もひと工夫
こだわりを尽くした造作キッチン。手元灯が、普通のシステムキッチンにあるような蛍光灯タイプでは味気ないですよね。
手元灯もやっぱりキッチンのデザインを活かしてくれるタイプを選びたいもの。壁面や吊り戸棚下など、作業する際に邪魔にならない照明取付け位置とアイテムを選ぶことが大切です。
リビングダイニングと空間が一体になったオープンなキッチンの場合は、照明器具のデザインに加えて、電球の色味のバランスにも考慮を。
無骨なレセップでオープンキッチンを照らす
存在感大なシェード付きの直付け照明で壁を飾る
コンパクトなレセップ型直付け照明で狭い場所にもさりげなく
Check! 手元灯のスイッチとコンセント
キッチンの手元灯は、作業をする時だけさっとオンオフしたいもの。スイッチはキッチンに立った状態で操作できる位置に取り付けましょう。また、キッチン天板まわりにコンセントがあると、ブレンダーなどの調理器具を使う際に便利。
キッチンまわりは意外と電気機器を使う場所なので、どんなものを使うのかをイメージしながらスイッチとコンセントを考えましょう。
玄関のあかりは「家の顔」
玄関のあかりは、建物の外観イメージに大きく影響する要素。そして、家族や訪問客を出迎えるためのあかりでもあります。なので建物の雰囲気や玄関まわりのデザインにぴったりくる照明器具を選びたいもの。
玄関ドアとの干渉や、ハンドルや鍵まわりを照らせる位置かどうかもよく検討して、器具選びと配置を計画しましょう。また、屋根付きの部分に取り付ける場合でも、風で雨が吹き込む場合があるので、屋外で使える「防雨型器具」であるかどうかしっかり確認を。
Check! 密閉型の器具には対応する電球を
『マリンデッキライト』や『ボールアームライト』のような、電球がグローブで覆われる照明器具を「密閉型器具」と言います。toolboxでは、密閉型器具でも使用いただける白熱電球を多く扱っています。LED電球を使用する場合は、電球から出る熱がこもってしまうため、密閉型器具対応の電球を使う必要があります。
電球の露出度が高い器具は電球選びも気を抜かず
電球がむき出しとなるレセップや、シェードの浅い照明は、電球と組み合わせてはじめて照明器具全体のバランスが取れます。
目的とデザイン性を考慮して、電球選びも楽しみましょう。見た目にこだわった個性的な電球もいろいろあります。
直付け照明の下に、アートや小物を飾ってみる。シェードが小さくシンプルな『アルミニウムブラケットライト』に、小ぶりなサイズでフィラメントが特徴的な『白熱アート電球』を合わせた事例。
ねずみ色のボディと、無骨な形状で、それだけでも十分存在感のある『工業系レセップ』。『ビンテージLED電球』を合わせるとよりインダストリアルな雰囲気に。
シェードを選べる『工業系照明』(※販売終了しました)をあえてシェードなしで使う場合は、存在感のある電球と組み合わせて。Φ95mm のボール電球と組み合わせれば、ラボのような雰囲気を演出できます。
Check! 目線に近いまぶしい場所にはフロストタイプの電球を
洗面台の鏡周り、キッチンの手元灯など、設置箇所が目線に近く光源が直接目に入る場所には『フロストLED電球』がおすすめです。
ガラス部分が白いシリカ電球とほぼ変わらない見た目なので、まぶしさを軽減してくれます。長寿命のLEDタイプでありながら調光器対応なのも嬉しいポイント。
露出配管×直付け照明で壁や天井をデザイン
電気の配線は通常、壁や天井の裏に通して照明器具やスイッチなどを取り付けます。ですが、リノベーションの場面では、コンクリート躯体現しの壁や天井など、配線を隠すことができない仕上げにしたい場合も。
そんな時は、照明器具が取り付けられる「丸形露出ボックス」を使って、露出の電線管とセットで壁面や天井面をデザインしてしまいましょう。
直付け照明を取り付けた丸形露出ボックスを電線管でつなげば、ラボのような雰囲気に。
丸形露出ボックスは電線管の取り付け口が1方向、2方向、3方向、4方向と4種類あるので、電気配線のレイアウトに合わせて電気屋さんに選んでもらいましょう。
丸形露出ボックスや電線管を目立たせたくない場合は、天井や壁の色に合わせて塗装してしまうという手もあります。照明器具を目立たせる手法としても有効です。
Check! 丸形露出ボックスに合わせる直付け照明の「座の径」を確認して
取付けの際は、丸形露出ボックスのサイズに、照明器具の座のサイズが合うかを確認しましょう。
天井面や壁面のデザインの一部として空間に組み込まれている直付け照明は、空間の完成度をぐっと上げてくれるアイテムでもあります。天井からだけでなく壁からのあかりも効果的に取り入れて、空間の質を高めていきましょう。
設計の段階から照明器具自体の選定だけでなく、器具との相性や、必要な明るさの確保を考慮した電球の組み合わせ方もしっかり検討したいですね。
次回は、フレキシブルな照明づかいに対応する「ライティングレール」についてお話しします。