toolboxが行っている施工サービス。エンドユーザーに向けたリフォーム・リノベーションサービスの他にも、兄弟サイトである東京R不動産と手を組んで、賃貸物件のオーナーさんに向けて改装提案を行うことも。
今回紹介するのは、オーナー家族が住んでいた2階建ての戸建てをリノベーションして、賃貸で貸し出すという取り組みです。
東京R不動産が仲介を担当、toolboxが設計・施工を担当しました。
募集を開始したところ、想像以上のお問い合わせをいただき、2日後に入居の申し込みをいただきました。
こう書くと、よくある成功事例に聞こえるかもしれません。
サイトに掲載される写真の裏側では、「限られた予算で、物件の魅力を仕立てるには?」「選んだ方法は入居者さんにとって最善か?」など、常に自問自答しながら、オーナーさんの不安に向き合い、最適解へと導く工程が存在しています。
前編では、どのようなプロセスを経て、この答えに行き着いたのか?そして、後編では入居者さんはその答えをどう解釈したのか?実際にお邪魔して、お話を伺ってきた様子をお届けします。
「貸すからどうでも良い」ではなく、自分も住みたいと思えるか
お話をお伺いしたのは、この物件のオーナーである国田(くにた)さん。中古で購入、家族で暮らしていましたが、引っ越しを機に賃貸に出すことを決めました。
「キッチンとか、そろそろ取り替えた方が良いのかな?と思う部分もあって、何社かに相談をしていました。出てきたプランは一般的な賃貸相場からの逆算プラン。畳の部屋を洋室に、トイレや設備を新しくする。そんな普通の提案でしたね。
やっぱり、自分が所有する家だから、『貸すからどうでも良い』のではなくて、『自分も住みたい』と思える内容にしたかったんですよね。将来的に自分が住む可能性もあるでしょうし」
ただ丸っと新しいものに交換するのではなく、クリエイティブな提案を期待していたという国田さん。どういう経緯で私たちにご相談いただくことになったのでしょう?
「以前、職場の同僚に『ここ、知ってますか?面白い、笑っちゃうような物件が沢山あるんですよ』とR不動産のサイトを見せてもらったことがあって、存在自体は知っていて。それ以来、時々見たりしていました。でも、その時はそこに自分の物件を掲載するなんて発想はなかったんです。
今回改装を相談をしていた不動産屋さんに『募集する時は、いつもどこに掲載してるの?』と聞いた時に出てきたのが東京R不動産。『あ、なるほど。もしかしたら改装も含めて相談できるのかも』と思って連絡してみました」
いい意味で予想外なプランと、きちんとした裏付け
改装内容について、「ここをこうしたい」「予算はこれで」など特別要望を出すことはなく、相談後に「どうなるかな?まぁ、ダメだったら最初に相談していた会社にお願いしよう」くらいに考えていたそう。
私たちがオーナーさんから相談を受けてまず決めていくのは「どんな方に、どんな魅力を感じてもらって、いくらで借りてもらうのか」という大枠の部分。「それならば、こんな暮らし方じゃないか?」と間取りや仕様決めといった空間への落とし込みを行います。
そして、一番大切なのは事業としてきちんと成立させること。住まい手にとっての価値の優先順位を明確にした上で、メリット/デメリットとコストを天秤にかけて取捨選択をしていきます。
今回、そんなプロセスを経て導き出したのは「リビング一点集中」の改装プラン。既存の良い部分はそのまま活かし、予算をかけるポイントをリビングに絞った考え方でした。
提案内容について国田さんは「いい意味で予想外。他のどの会社も提案できない内容だった」と振り返ります。
「まず、プランの考え方。リビングを2間から1間にする提案はあっても、垂れ壁や袖壁までとってしまうという発想はなかったですね。部屋の影になる部分をとってしまうという……。へぇー、そういう発想で出てくるの?と驚きました」
「リビング一点集中」という考え方にも共感できたそう。
「2階の和室は気に入っているので、そこをそのまま活かすと提案されたのは良かった。洋室にする必要性も感じていなかったですしね。トイレはそろそろ変える時期なんじゃない?と思いつつ……変えなくて大丈夫と言ってくれたし。限られた予算の上手な使い方だなと感じました」
いくら入居者のためとはいえ、当然のことながら、予算はいくらでもかけられるものではありません。広さに対して全部手を入れるとなると家賃が上がってしまったり、中途半端な内装になってしまうことも。
「キッチンなど、水回りは無理でも、畳は気に入らなければ入居者さんでもカスタマイズできそう……」「サイトに掲載した時に、見て欲しいポイントはどこ?」というように、東京R不動産を見ているお客さんをイメージして、マストで手を入れる部分を見極めていきます。
このプロセスは結果として、ひとつの物件に向き合い、魅力を再構築することにも繋がるのです。
「他社の提案は『楽しいことをしたい』気持ちは伝わってくる部分はありつつ、そういうプランはとても高額……。想定家賃の根拠もなくて、ちょっと信じられないなと。
その点、R不動産とtoolboxさんが出してきたプランは、提案内容にきちんと裏付けがあった。素材やアイテム選びもターゲットを見据えたものだったり、どうしてその家賃が取れるのか、サイトの過去データだったり納得できるものを用意してくれていたので。投資事業としても非常に効率が良い内容だと判断できました」
「取り替える」ではなく「アップデート」?住まいなのに「編集する」??
提案内容について、共感していただいた国田さん。その後、プランに微調整を加えるものの、最初の段階でほぼFIXしました。
とはいえ、完成形をイメージしにくい空間づくり。具体的に計画を進めていく中で「え?ここってどうなの…?」と不安に思ったことや驚いたことはなかったのでしょうか?
「提案時に出していただいた資料は、入居者がつくことが想像できる、伝わりやすいものでした。これはどうなってるのか?と聞かなくても資料にまとまっていた。私自身、自宅のリフォームを今まで2〜3回経験していますけど、それと比べても完成形のイメージが理解しやすかったと思います」
空間をつくる上で、目に見える表層部分だけでなく「どうしてこの方法なのか」まで納得して進めていくことは大事なポイントです。
そのため、「R不動産のお客様の価値観は」という部分を理解していただいたり、図面だけでは判断しにくいものは、過去の事例を見ていただくなど、できるだけその背景まで共有できるように心がけています。
「理解できなかったのは……なんか、塗るんですよね。窓枠だったり、収納の扉も。現状が汚いわけでもないし、それでスペックが向上するでもない。最初は『なんで?』と思ってました。」
塗装の選択は、空間で見た時に、印象を左右する重要な部分。今回のケースでは、目立たせたくない窓枠は、白で塗って周りになじむように。既存を活かした建具はお部屋の雰囲気になじみよく、かつさりげないアクセントになるようにとニュアンスカラーを選択しています。
「『結果的に客づけに繋がる、感度の高い人に届くから』と説得されて。完成してみて『塗装をして全体をまとめるって、こういうことか!』と理解しました。空間としても広く感じるし、良いですよね。
取り替えた方が良いのかな?と思うインターホンは既存のまま。でも、まだ使えるリビングの照明器具はとっちゃう。今思えば、そうやって、R不動産のお客さんの感性に合わないものを全て取り除いていく作業だったんだなと」
塗装以外にも、工事が進む中で「ここはどうする?」という判断はどうしても発生するもの。提案を進めた設計者自身が現場を監督し、信頼できる職人さんたちと直接コミュニケーションがとれるから、スピード感を持って「こうしよう」と提案ができるのです。
そしてもう一つ、国田さんが驚いたこと。それは、会話の中で出てくる言葉でした。
「みなさん言葉遣いが斬新なんですよね、でも意味が伝わるというか……。
例えば”取り替える、工事する”というのを”更新、アップデートする”っていうんです。
コンセントプレートの交換を提案されて『そんなとこ取り替えるの?』と言ったら、『いいえ、国田さん。アップデートするんですよ』って。(笑)」
例えば「このつまみは活かせるけど、この巾木はこのままだと残念がるだろうな……」というように、古くても味のあるものは残して、そうでないものはアップデートする。
東京R不動産を見ている人と同じ感覚を持って現場で判断し、「汚い/古い」と「味」の線引きを行うことで「そうそう、そういうこと!」と共感してもらえるポイントをつくり出しています。
「それと、自分が暮らすイメージを持った時に『ここタオル掛けあった方が便利じゃない?』と言ったら『いえ、R不動産を見ている人たちは、必要なら自分で好きなものを用意できるんです。編集力がある人なんです』って。住宅の分野で”編集”って言葉が出てくるのか!と感心しましたね」
支払った金額に見合う価値
東京R不動産では、物件ごとに担当者が付き、物件を紹介する写真の撮影・コラムの作成、お客様をご案内するまで一貫して行います。
「募集開始までの仕事が早かったと思います。確か、工事完了後、2日開けずに撮影して、一週間もしないうちにコラムをあげてきたんじゃないかな」
コラムを確認していただいて、いよいよ募集開始。しかし国田さんは「そんな甘くないだろうな」と思っていたそう。
「まあ、実際は募集かけても1ヶ月は決まらないんだろうな、そのうち家賃値引き交渉もされるのかな……と、正直思っていました。
それが、掲載して2日めに申し込みがきましたって報告受けて『え!?』って」
「R不動産らしい表現、プロらしい導きのおかげだと思いました。仕事の質にこだわっている会社、スタッフだと感じましたね。そういうこだわりが、伝わる人に伝わっているのかな」
実は国田さん、改装費の見積もりで「現場管理費ってこんなに高いの?」と感じつつ「いいものをつくるにはそれなりのお金がかかるんだろう」と依頼を決めたそう。
設計含めた提案内容や、工事が進んでいく中でのコミュニケーションの質、そして募集開始に至るまでの迅速さを見て、「結果、支払った価値のある内容だったな」と納得がいったと言います。
次の住まい手はどんな人?想定外だったターゲット
国田さんが「家族で気に入っていた」というウッドデッキでは、花火大会にお友達を招待して楽しんだり、BBQをしたり。日当たりの良い和室では昼寝をしたり……。国田さん自身にとっても思い出のある大切な住まい。
そんなお家の「次の住まい手」である入居者さんと初めて会ったのは契約後、引き渡しのタイミングでした。
「実際、募集条件として『ペットOK・ガレージ付き』だから、そういう人が住むのかなーと思っていたけれど、車なし、ペットも飼ってない……と、ターゲットとは違う方だった。最近は『せっかくだから、ペット飼ってみたら?』って勧めたりしてる(笑)」
国田さんの引っ越し先がご近所ということもあり、入居者さんとは交流が続いてるそう。
「契約上、改装可にしているけれど、どうなんだろう?きっとプラスなアップデートをしてくれると思っています。入居者さんの暮らしを拝見して、家族も『こんなに変わるんだ』と驚いていましたよ」
後編では、そんな入居者さんの暮らしを覗きに、実際にお邪魔した様子をお届けします!
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