toolboxが行っている施工サービス。エンドユーザーに向けたリフォーム・リノベーションサービスの他にも、兄弟サイトである東京R不動産と手を組んで、賃貸物件のオーナーさんに向けて改装提案を行うことも。

そんな取り組みの中で生まれた、こちらの戸建て改装事例。東京R不動産が企画した内容を受けて、toolboxが設計・施工を担当しました。

こちらが募集時の写真。(小物を置いて撮影しています)

多くのお問い合わせがあり、掲載2日後には今回紹介する入居者さんから、入居の申し込みをいただきました。

前編では物件を賃貸募集するにあたり、改装するための最適解を見つける過程をお届けしましたが、入居者さんはどう受け止め、どんな風に住みこなしているのでしょうか?実際にお邪魔し、インタビューしてきました。

自分たちにとっては、100点の物件

出迎えてくれたのは入居者の(左)田山さんと(右)戸田さん。そしてお二人と話をしているのが今回、この物件を担当した東京R不動産の古橋。

お二人は同棲することをきっかけに家探しをはじめました。

家探しの条件は
・川が近くにあること
・日当たりの良いバルコニー
・無垢床を使っていること

何件か内覧するものの、なかなか二人の条件を満たす物件には出会えなかったそう。

雰囲気や眺望が気に入っても、川の近くじゃなかったり。川が近くても、シートフローリングを使った内装が好みじゃなかったり……。

戸田さん

田山はインテリアの仕事をやっていることもあって、多分、物件サイトの条件チェックで検索できる類じゃないものに判断基準があったんじゃないかって思います。

沢山のサイトを駆使しながらも、難航する物件探し。

そんな中、この物件との出会いが訪れます。

田山さん

この家を見た時は『ここしかない!』って。多分、情報が出た日の夜中に見たんですよね。もう彼に聞く前に『申し込みます!』って連絡入れて。

東京R不動産 古橋

本当に早かったですよね。普通は内覧希望とかのお問合せなんですけど『見る前に申し込みできますか?』くらいの勢いで。『一応、見てからに……』とご説明させていただいて(笑)

お二人も「ラッキーだった」というように、物件との出会いって難しいもの。

更新時期との兼ね合いで探す期間が限られる上、人気物件にはすぐに申し込みが。「100点満点の家なんてないよな」と、妥協して決めた後にもっといい物件が出てきたり……。悔し涙で枕を濡らした夜、みなさんにもあるんじゃないでしょうか。

戸田さん

それでいうと、この家は結構100点なんじゃないかな。

田山さん

うん、100点です。

実際内覧をした感想は、サイトで見てた以上に「良かった」そう。「窓を開けた時に隣と目線が合わないのも良いギャップだった。その情報って写真だとわからないから」

すっきり暮らすリビングと、ガレージの意外な活用法

リビングで過ごす時間が好きと話す田山さん。いろんなものをあちこち入れ替えたり、家具の配置替えをして楽しんでいるそう。

田山さん

ダイニングのチェアとテーブルはこの家に合わせて購入しました。淡いナチュラル系のものにするか、濃い色味のものにするか迷ったんですけど、結局床に合わせて濃いものに。

床材は『継ぎ無垢フローリング アカシア』。「濃淡があるから淡くても、濃くても合わせやすいのかな。モダンにはなりにくいですけど、ナチュラルだったり、民藝っぽい雰囲気にも合いそうな気がします。」(田山さん)

どんな雰囲気にするか、内覧時にはあまりイメージはなかったものの、入居が決まってからはインテリアのイメージをコラージュして計画。一番楽しい時間だったそう。

田山さん

ダイニングチェアとテーブル、最近加わったラグ以外は元々使っていたものですね。

東京R不動産 古橋

訪れてみて意外だったのが、置き家具、小さめのものが多いんですね。それでもスッキリ暮らされているのですごいなって。

目に見える場所は、高さが低めなシェルフで統一されていました。余白のある空間の使い方は、とても居心地良く感じます。

田山さん

ガレージにある物置のおかげです。すごい助かってて。本当はこの物件、(オーナーの)国田さんはガレージがあるっていうことで、購入されたらしいんですけど、私たち全然ガレージを活用できていないっていう。

戸田さん

確かに。自転車しか置いてないもんね(笑)

実はオーナーの国田さん、プランニングの時に「収納が少なくて大丈夫かな?」と心配していたそう。建材のサンプルやカタログなど、仕事で使うものがどうしても多くなってしまうという田山さんは、ガレージの意外な活用法でその問題を解決していました。

田山さんのワークスペースはリビングの一角に。

そして家探しの時に、無垢床に加えて、気にかけていたポイントを教えてもらいました。

田山さん

そこまで重きは置いていなかったですが、結構、壁紙とかも塗りとか、クロスでも無地のものが良いなと思っていました。ここの壁は無地に近いようなクロスなのでよかったです。

東京R不動産 古橋

それはよかったです!本当は塗装が良いんですけど、コストや割れもあるので、なるべく塗りの質感に近いものを選びました。賃貸でよくある、汚れが目立ちづらいボコボコになっているようなものじゃなく。

既存の扉を活かして塗装した扉も「かわいいと思った」と田山さん。家具やグリーンとの色合いがとても印象的でした。

ちょっと大変でも、こっちのキッチンを選びたい

『塗装のキッチンパネル』のマットな質感がお部屋と調和するキッチン。

キッチンは『オーダーキッチン天板』。フローティングタイプのキッチンです。

キッチンの下まで床が続いているので空間が広く見えるというメリットがある一方で、下部に収納のないオープンなキッチンは、住み手が使いこなす工夫が必要ということもあってか、賃貸では少し珍しい形かもしれません。

田山さんも、物の置き場所が決まるまで試行錯誤があったそう。

田山さん

本当にどうやったらいいのか、最初全然分からなくって。入居して2ヶ月くらい、下に段ボールを置いたままで暮らしてて、徐々に今の形に。今もあちこち入れ替えたりしてるんですけど。

キッチン下にちょうど収まるラックをあれこれ探し、今の形に落ち着いたそう。

キッチンに収まらない食材のストックは、置き家具やリビング収納も活用して。

目を引くのが窓台にある造作棚。食器の幅ピッタリに作られています。

田山さん

引っ越してからしばらく、2ヶ月くらい段ボールで暮らしていたときに、そこに食器がどんどん積み重なって、溜まってきたので『ここ、食器棚になっちゃった方が使い勝手良いのかな?』って。初めてDIYしたんです。

「左の端っこ空いちゃって……すごい悔しいんです。」いやいや、むしろ最初から計算されていたかのように、電子レンジのパンがジャストフィット!

キッチンのタオル掛けには『ハンガーバー』。オーナーさんに相談の上、後から自分たちで取り付けました。

仕事柄、さまざまなキッチンに触れてきた田山さん。せっかくなので、もう少し踏み込んだ話を聞いてみました。

東京R不動産 古橋

逆にお聞きしたかったのが、キッチンのデザイン。

こういったフローティングタイプだと雰囲気良いのですが、賃貸で使われているのは、収納一体型でツルッとした素材のキッチンが多いと思います。予算と見た目を考慮して『これだったらギリいけるか……?』と悩んだりすることもあって。

この家に使われているのがそういった賃貸用のキッチンでも入居決めていました?

田山さん

うーん、それだと、ちょっと厳しいかなー?

東京R不動産 古橋

やっぱりそこは、キッチンに関してもデザインされたものを選びたい?

田山さん

そうですね。元々あったやつで、古くて味が出てていいみたいのだったら良いですけど。新品のシステムキッチンがドンってあるとちょっと、そこだけ浮いちゃうような……。

ちょっと大変でも、こっちの方が私は良いな。

ダイニングにはフィンランド(ユキ・ヌンミ)の照明をセレクト。背景のキッチンは、良い意味でキッチンとしての存在感を消しています。

前編のオーナー国田(くにた)さんのお話でも出てきた「編集する」というキーワード。

誰にでも使いやすく作られているものと比較して、自分で決めていく分、考えたり・手を動かしたりする手間がかかります。

でも、その経験って、自分の暮らしや癖に向き合う大切なプロセスでもあると思うのです。

残していてくれて、よかった

リビングやキッチン、新たに生まれ変わった場所と同じくらい気に入っているポイントとして挙げていただいたのは、元々のよさを活かした部分。

田山さん

寒い時期と真夏を除いて、外で朝ごはん食べてて。テラス、大活躍です!位置もいいですよね、食事もすぐ持って行けて。

「これからグリーンを増やしていきたいな」と話してくれました。こんな風に、外との繋がりが感じられる暮らし……憧れます。

戸田さん

自分は2階で過ごすのが一番好きですね。和室になっていて。仕事の合間にストレッチをするっていう変な癖があるんですけど、和室だとそのまま床でできる。前の家はフローリングだったので、ヨガマット引いてやってたんですが。開放感もあって気持ち良い。

田山さん

残していてくれてよかったなって。

国田さんが「昼寝に最適」と話していた和室は、戸田さんの仕事場として使われていました。天窓からも光が差し込むので、とても明るい!

古さで不便を感じたり、気になった部分はなかったのでしょうか?

田山さん

いや、むしろ、かわいい……みたいな。玄関の辺りとかも。

東京R不動産 古橋

よかった。変に取り替えてちぐはぐになっちゃってもな……というのはあって、迷ったところは色々あるんですけど。本当に玄関は最小限だけ手を加えて。元々もう少しクラシックな靴箱が置いてあったんですけど、オープンな棚にして、少しだけ今時っぽい要素を入れてます

収納としてだけではなく、飾って楽しむこともできるオープンな棚。照明やニッチなど、レトロさをチャームポイントとして捉え、楽しんでいる様子が伝わってきます。

インターホンなどの設備は「気にしたこともなかった!」とお二人口を揃えておっしゃっていました。

こちらの物件は、入居者さんで改装OKという契約条件ですが、お二人は今のままで充分気に入っているそう。

田山さん

建物自体に手を入れていきたいとかはないんですけど、家具をラックじゃなくて収納家具置きたいなとか、そんな感じです。建物自体はこのままで好きなので。和室もこのままで。

収納の引き出しを本棚にするオーナーさんのアイデア。そのままの使い方で受け継がれていました。

家を貸す人と借りる人の関係性

前編のコラムで登場いただいた、オーナーの国田さん。

入居者さんとの関係性について、こんな風に話していました。

「オーナーと入居者って、もっとドライな……、なんなら敵対関係みたいなイメージがあったんですよね。自分自身も、以前賃貸で住んだ時に嫌な思いをしたこともあったし。もっとシビアかと思っていた。

初めて、まぁ最初で最後かもしれないけれど、こんなにギスギスしない関係でいられたのは。でも、商売って、本来こんな関係なのかもしれない。こんな関係ならいいなと思いましたね」

入居者のお二人からも、国田さんとのエピソードが。

「国田さんは、近所まで来たついでだからと、鰹節くれたり、苺の鉢くれたり。本当によくしていただいて」

近所に住んでいることもあり、「ここの魚屋美味しいよ」「お米買うならここがおすすめ」など、ローカル情報を交換する仲間という関係性なんだとか。

ずっと賃貸暮らしの私ですが、大家さんと顔を合わせたこともなければ、言葉を交わしたこともなく、正直この友好な関係性には驚いてしまいました。皆さんはどうでしょう?

東京R不動産の場合、そんなお付き合いが珍しくないんだそうです。

今回、オーナーさんと入居者さん、それぞれにお話を聞いてみて、物件の価値を正しく共有できるからこその関係性なんだなと感じました。

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ツールボックス工事班|TBK

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