「自分達だったらどう住みたいか」
再販案件のリノベーションに取り組むとき、僕たちの設計はいつもここから始まります。
再販案件というのは、中古の物件を取得して改装を施し再び販売するプロジェクトなので、売れる物件を作ることが目的です。そのアプローチは、普通なら周辺ニーズ調査だとかマーケット分析から始めるのですが、僕たちは自分達の実体験からスタートさせます。
物件は、昭和54年築、坂道の突き当たりに建つ51㎡の角部屋です。数年前に一度リノベーションされて売りに出された部屋を再度「ASSY」として手を加えてから販売するという依頼でした。
南側に面したところは所謂、先割れプランで洋室が2部屋に別れ、キッチンとダイニングの部屋はかろうじて日が入るところに位置しています。この部屋を調査した印象は、部屋が細切れで狭く暗いという印象でした。
ここで、冒頭の問いに立ち戻ります。
「自分達だったらどう住みたいか」
セオリーと自分の感覚を天秤にかける
元の間取りは「間数重視」というものです。洋室の数が多いことで、単身者から三人家族までが購入検討の対象者になります。たくさんの人の候補になることが、売りやすい物件のセオリーです。
けれども、僕たちは寝室を一部屋だけにしてリビングを広く取ることを選択しました。それは部屋の心地よさを最大限活かしたかったからです。せっかく二面採光が活かせる角部屋なのだから、これを物件の特徴にしない手はありません。
けれども、セオリーを無視して子供部屋が必要な家族をターゲットから外すというのは、実はとても勇気が要ります。自分達が培ってきた空間体験としての感覚を拠り所に方針を決めるわけですから、根拠となるデータは持ち合わせていません。
それでも、これまで接してきたお客さん達の顔を思い浮かべながら、セオリーと感覚を天秤にかけ間取りを決めていきます。
それは、個人的な欲求を突き詰めていくと、ときにセオリーを超えて、たくさんのお客さんに響いていくことを知っているからです。
そこでの暮らしに寄り添うよう丁寧に形作る
写真に映る家具や小物はこちらでスタイリングさせてもらったものたちです。
ダイニングテーブルとソファをしっかり置くことができて、3つの窓から光が入るとても明るい部屋になりました。その光が届くようになったキッチンは、通路幅にゆとりを持たせてゆったりとさせています。
キッチンの背面には食器を並べる棚を設け、その下には奥行きのあるカウンター収納を置けるようにスペースを確保。料理をする場所が自分好みのものでカスタマイズされていくことを想定して作られたキッチンです。
リビングのアクセントとして使った『ウッドウォールパネル』は、隠し扉になっていて、中は大容量の収納としました。
よくある間取りは、リビングに収納がありません。でも、リビングの近くに置いておきたいものは意外とたくさんあって、例えばかさばる掃除機とか、使うときには大きく広げたい季節のものとか、来客が多い我が家は折りたたみ椅子なんかもあります。
そういうものを、ごそっと突っ込んでおけるリビング収納はとても重宝します。
物の定位置となる仕掛けを用意する
家の中には、収納するというには大げさだったり、その必要すらない頻繁に使う小さなものが、たくさんあります。
仕事から帰ったときの鍵やカバン、気に入っているけど、かさばる形状のドライヤー、出かける前に、さっと取り出したい帽子やサングラス。
家全体のことを考えていると、考えが及びにくい日常の些細な行動に寄り添うように、有孔ボードを活用して、自由に引っ掛けられる場所を用意しました。
眠る前の過ごし方を考える
最後にASSYで作られた寝室を紹介します。ベッドに入ってまどろむ時間をみなさんはどう過ごしていますか。本を広げたり、スマフォで記事を読んでいたり、眠りに落ちる前の時間は静かに過ごしたいものです。
用意されたヘッドボードは、そんな眠る前のお供を置く場所として寄り添います。
床に使われているカーペットは、寝起きの一歩目を柔らかく支えてくれます。
ASSYでリノベーションした他の家についてもコラムで紹介しています。是非のぞいてみてください。
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フルリノベーションではなく、部分的にASSYを取り入れたいというご相談も受けつけております。部分リフォームを検討している方もお問い合わせください。