デザインのためだけではない、躯体現しが生まれた背景

「天井高をあげて、開放的な空間にしたい」
「梁や天井を躯体現しにして、無骨なテイストを取り入れたい」
こういった理由から、躯体現しを希望される方は多いのではないでしょうか。

今でこそ“躯体現し”は人気の仕上げとして取り入れられるようになっていますが、リノベーションでこの手法が使われ始めたのはコストを抑える目的からでした。

既存の天井板を撤去し、新たに天井板を張ってクロスや塗装などの仕上げを行うところを、天井板を撤去した後に出てきた躯体を現しにして、それを仕上げとする。本来行うはずだった工程を省くということは、当然、その分コスト削減につながります。さらに、天井高さを確保することも叶う。

“躯体現し”は、コストを抑えながら魅せる空間をつくる知恵なのです。

古さを新しさに変化させるルーヴィスの空間づくり

今回お伺いしたのは、リノベーションの黎明期から数多くのリノベーション物件を手掛け、toolboxも昔からお世話になっているルーヴィス。自社で設計施工を行うほか、設計事務所のプロジェクトの施工も請け負う、施工技術に定評がある工務店です。

最近では建物のリノベーションだけでなく、増える空き家問題に対して「カリアゲ」というサービスを立ち上げ、空き家を再生して流通させる取り組みも行っています。

ルーヴィスが設立された2005年頃は、まだ「リノベーション」という手法が今ほど広がっておらず、リノベーション費用についてのローンも充実していなかったことから、予算をかけられるお客様が少なかったそう。

「新しくボードを貼る予算がないのであれば、解体した後の既存の躯体をそのままを内装にしましょう」といった具合に、限られた予算の中で、どうしたらお客様の希望を叶えられるか。試行錯誤していく中で、知恵を絞るスキルやノウハウが磨かれていったそうです。

既存の使える部分はなるべく残し、変えるべき部分は思い切って変える。ただし、どこが既存なのかわからないよう「既存と新しい部分のバランスは、常に心がけて設計している」と言います。

快適に過ごせるよう配慮された、自由なオフィス

SPFウッドでカスタムメイドされたデスク。コストを抑えつつ、洋風のアンティークテーブルのような雰囲気に。

その考えは関内駅前にある、築55年の商業ビルの11階にあるルーヴィスの事務所にも現れています。スケルトン物件だった既存の空間をそのまま活かし、床壁天井のほとんどが躯体現しで仕上げられたオフィス。

オフィスの中心には大きなデスクが置かれ、それを取り囲むように、キッチン、MTGルーム、シャワー室、トレーニングジムや窓際にはリビングスペースまで、普通のオフィスには存在しないような住宅的要素が配置されています。

窓際のリビングスペース。

食事やスタンディングデスク、時にはお酒を飲んで交流できるカウンターキッチン。

まさかのトレーニングジムまで完備。

内装の潔い仕上げとは対照的に、過剰ともいえる設備たち。それは、「スタッフみんなが自分の時間を大切にしながら、自由に楽しく働けることが1番大切」という想いから。躯体現し仕上げでコストを抑え、その分をアメニティにまわすという考え方です。

インテリアも、座布団や大きな暖簾、ミッドセンチュリー期のヴィンテージ家具など、時代やテイストの異なるさまざまな要素が共存。「決まったテイストには、はめたくない」というルーヴィスの自由な考え方が、オフィスからもひしひしと伝わってきます。

長年放置された空き物件を再生、賃貸物件へ

ルーヴィスの「スケルトンで魅せる」手法は、前述の空き家活用でも活かされています。物件特性を生かしてコストを抑えつつ、建物の資産価値を向上しながら再生する改修を得意としています。

「手付かずのまま放置された築50年の木造戸建住宅を、賃貸に活用したい」とルーヴィスに相談にこられたお客様。

こちらのお客様のように、「空き家を賃貸として貸し出したいけれども、このままだと借り手がつかないし、改装費にそこまでお金もかけられない」とお困りのオーナーはたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

廃墟同然だった家を解体してみると、隠れていた美しい木の躯体が現れてきたため、それらを活かした開放的な空間になるよう計画を進めました。

柱や梁に合わせ、内装は「木」で揃えて整えながら、メインとなるリビングダイニングだけは土間やコンクリート風のタイルなど異素材を用いてメリハリを出しています。

シンプルな仕立てにも関わらず、築50年の木造住宅ならではの建物そのものの躯体の美しさが生かされた、訴求力のある賃貸物件に。

手のかけどころを見極め、効率よく魅せ場をつくることができれば、仕上げを重ねずとも空間の印象をガラリと変えることができるということがわかります。

築40年のハウスメーカーが建てた戸建てをリノベーション

続いて紹介するのは、構造に鉄骨が使われたハウスメーカー住宅のリノベーション事例。

Before

「依頼先を探すのが面倒」であったり「保証など安心できる」といった理由から、家を建てたハウスメーカーにリフォームを依頼する人は多いと思います。

今回のお客様は、元々のハウスメーカーが無くなっていたという特殊な事情もあって、実家を住み継ぐタイミングでルーヴィスにリノベーションの相談をされました。

After

天井高さを上げるために、天井を解体してでてきた“ブレース天井”の現しがとても印象的なリビング。ブレース天井が生きるよう、照明をライティングレールにしたり、シーリングファンを薄型にしてなるべくブレース内に馴染ませたりといった工夫をしています。

思わず見上げていたくなる表情豊かな天井のおかげで、空間の居心地が大きく変わったのが見て取れます。

「沢山植物がかけれていいわぁ」とお客様も気に入ってくれたのだそう。

「大谷石を取り入れたい。建具も全て交換したい」というお客様のこだわりたい部分にお金を割くために、フローリングや壁紙はなるべくコストを抑えたものをセレクト。

水回りを全て交換した上、1階の天井解体、床・壁紙の張り替え、建具とサッシの交換、2階はインナーサッシを追加し玄関建具まで交換していますが、工事費用は約1300万ほどに抑えられているそうです。

お客様こだわりの大谷石でできたカウンター。床は杉材のフローリング。

「玄関を開けてすぐ目の前に広いリビングが広がるので、遊びにきた家族がすごいびっくりするんです。そのおかげで妹と甥っ子が喜んでよく遊びにきてくれるようになって。今とっても幸せです」とお客様も大満足されたそう。

ダイニングの手前に引き戸を設ける予定が、取り合いが難しく断念。結果、ゆとりのある広々としたリビングに。

ハウスメーカーの住宅は図面が開示されなかったり、構造上制限される部分があったりと、少なからずやりにくい部分もあるといいます。

それでも「こうしたハウスメーカーが建てた住宅のリノベーション需要もどんどん増えてくると思うんですよね。お客様の選択肢が広がるし、こういう事例をもっと増やしていきたいと思ってるんです」

こだわりを叶える、課題解決のプロ

既存をなるべく生かすことで、こだわりたい部分や交換すべき箇所へ割くための余力をつくり、お客様の希望をできるだけ叶える。ルーヴィスはそういった手の掛けどころの見極めに長けています。

「躯体そのものの力強い表情」を空間に取り入れたいと考えている方はもちろん、「自分のこだわりにお金をかけたい」など、こだわりと予算の狭間で悩まれている方は、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。思わぬ角度から解決方法を提示してくれるかもしれません。

pro list(プロリスト)

toolboxでは、商品を使ってくれたり、imageboxに空間づくりのアイデアを提供してくれる全国の家づくりのプロを「pro list(プロリスト)」で紹介しています。

toolboxの「pro list(プロリスト)」の特徴は、「スケルトンで魅せる」「DIY歓迎」「築古得意」など、各プロの長所や得意技を示す“ユニークタグ”で検索できること。

(「pro list(プロリスト)」については、コラム「家をつくるパートナーはユニークに探すべし!」もご覧ください。)

株式会社ルーヴィス

古い建物を活用し、既存のいい部分は活かしながら「懐かしい新しさ」に変化させるリノベーションを行っています。
toolboxでも初期からお世話になっている施工パートナーです。

※お住まいになりながらの改修工事はお受けできません。