はじまりは2020年の秋頃
都内のマンション暮らしをしていた私たち家族は、4歳の息子との3人暮らし。仕事柄、夫婦ともに住宅関連の情報に触れることは多く、その日も何となく色々な不動産ポータルサイトを見ていました。
ふと、目に止まった戸建て。
そこは木立の中に建ち、窓から緑しか見えないようなロケーション。
「めちゃくちゃ好み!!こんな家に住みたいね!」と夫婦2人でテンション爆上がりでした。
「ちなみに場所は……軽井沢……そうだよね。別荘だよね。てか東京にこんな家あってもとても買えないし(笑)」
普段ならそこでこの話題は終了。なのだけど、どうも何かが引っかかる。
(この家かどうかはともかく、軽井沢って場所的に本当に住めないんだっけ?)
(リモートワーク中心になって、毎日会社に通わなくなったし、新幹線が通っていれば、どうにかなるのでは?)
ちょっと真剣に、東京の外で暮らすことを考えてみようか?
そんなところから、我が家の移住計画がスタートしたのでした。
東京から離れる理由、ある?
もともと住んでいたのは東京・世田谷区の駒沢。
築40年の中古マンションを購入し、リノベーションをした住まいを家族全員とても気に入っていっていました。近くに公園があるし、商店街もあるし、保育園は歩いて3分だし。とにかくこの家、この環境が大好きでした。
その時の家づくりの様子はこちら↓
マンション購入から4年弱。住宅ローンはたっぷり30年以上残っている。
2人とも東京の会社に勤務で、リモートOKとはいえ月に何回かはオフィス行く必要がある。電車とバスの公共交通機関があれば、ほとんどの用事は済むし、子連れで遊ぶ場所にも困らない。
これだけ制約や都合の良い条件が揃っていて、東京から離れるべき理由を述べよと言われたら、正直見当たらなかったかもしれません。
結局、移住の一番の理由は......
「家づくりをもう一度したい」
他にも移住の理由を挙げようと思えば挙げられるのですが、結局ここに行き着くと思います。
私はtoolbox、夫はcowcamoというサービスを運営している会社へ勤めているので、住まいへの熱は人より高い方です。
リノベーションを何度か体験していたり、仕事柄リノベには詳しいかと自負しています。しかし、新築となると、途端に知らないことばかり。
「新築戸建てを経験したら仕事に役立つはず」
なんて大義名分もありましたが、結局は単純に家が好きなのです。
理想的な戸建てに魅せられ、東京から離れたらスケールの違う家づくりが出来そうだという発見があったからこそ、それにチャレンジしてみたくなったのでした。
地方移住に向けトライしたい6つのチャレンジ
・持ち家売却を経験する
・不動産の流動性が低いと言われる地方で戸建てを持ってみる
・イチから家を建てる経験をする
・車10分で、いつでもマインドフルネス出来そうな環境に身を置いてみる
・自然豊かな環境で子供を育てる。なるべく「本物」を経験してもらう
・オフィスから離れて働くことでの弊害があるか経験する
リモートワークが一般的になってきているとはいえ、オフィスに行くことの習慣は簡単に変わりそうにありません。でも、だからこそ、新しい働き方に挑戦してみたいというワクワクがありました。
我が家では、上記のような経験をすることで暮らしや働くことに新しい発見を見出したいと思っています。
選んだのは、もっと面白くなりそうな余白のあるまち
なんで那須なの?とよく聞かれます。
私たちが選んだ土地は栃木県那須塩原市。御用邸があり別荘地として知られていますが、実は街中にも魅力がたくさんあるのです。主に「黒磯」という地域を中心に移住者が感度の高いお店を展開していて、東京のようなおしゃれさを捨てきれない私たちには魅力的に映りました。
それでいて自然が近いので、車で10〜30分程度で牧場に行ったり、澄んだ水の川に行ったり、遊園地や動物園に行くことができます。
道の駅など直売所が多く、新鮮な野菜が低価格で買えたり、酪農が盛んなのでチーズやアイスが美味しい!
とはいえ、そんなにメジャーではなく、まだまだ知られていないポテンシャルを秘めた土地だと思います。移住するならまちづくりにも参加できそうな場所が面白そうだと考えました。近しい価値観をもったコミュニティを作れるような環境、というのが選んだ一番の理由だと思います。
もちろん東京へのアクセスに困らないことは前提でした。那須塩原駅〜東京までは60分程度。必ず座れてコンセントもある新幹線での通勤は思いのほか快適です。
家の立地としては、せっかく田舎に住むなら、窓から素敵な木立が見えるのが理想だったので、あえて駅近は諦めました。それでも別荘地や山に住むのは不便なので、那須は思ったよりも平地が多いことも利点でした。
必ずチェックしてほしいこと
その他気にしたのは補助金と災害リスク。
那須に限った話ではありませんが、複数の行政で移住支援を目的とした補助金を出しているので目当ての地域の情報はチェックしないともったいない。
我が家では以下2つが当てはまりました。
・1年間の家賃補助(最大2.5万/月)
・最大100万円の支援金の支給
また、災害に対するリスクもしっかりと確認するようにしました。
海なし県なので、川の氾濫や土砂崩れ崖崩れ、火山活動についてを気にして土地を選びました。
工務店選びと土地探し
新築、と言っても、建売住宅、規格住宅、注文住宅、ハウスメーカー、地元の工務店、と選択肢はいろいろあります。
私は仕事柄、自由に間取りや建材を選びたかったので、完全オーダーメイドの注文住宅が希望でした。
実家があるわけでもなく、特に地縁も無い土地での家づくり。好きな建築事務所は他県ばかりでしたし、その土地の環境をよく知った人に相談したいと思い、地元の設計事務所や工務店をまずはネットで探しました。
「houzz」というサイトで目に止まった工務店さんは、設計施工でデザインセンスがずば抜けていました。そして土地探しから協力してくれるとのことで、さっそくアポをとり、会いに行きました。
田舎での土地探しで驚いたこと
今回の我々の希望は「素敵な木立が窓から見える土地」
後日、実際に車で何ヶ所か土地を案内してもらいました。土地勘の無い私たちに各エリアの説明をしてもらったのですが、googleストリートビューで予習をしていたものの、やっぱり実際の土地に立つと、感じる印象がまるで違います。
最初に紹介してもらった土地は、そこそこな交通量の道に面しているものの、想像以上に森の中!!
よく考えれば当然なのですが、木立の中に住むには、まず土地を整地(伐採・抜根)する必要があることを知りました…。
私と夫の実家は、どちらも田舎といえば田舎なのですが、普通の住宅密集地でした。同じ田舎でも、こんなに自然が近い環境に住んだことはありません。木立はとても美しかったのですが、この木々の管理をできるだろうか、いろんな野生動物が出てくる可能性大、と考えると、大自然にたじろぎ、ちょっと自信を失いました(笑)。
そして、土地の単位がバカでかい。別荘地でも街中でも無い土地だと「500坪」とか公共事業ですか?という単位で売っています。(那須でも駅近分譲地は70坪が一般的です)
たしかにオーナーさんにしてみれば、一気に手放したいだろうし、滅多に売れない立地を小分けに残されても困るというのは容易に理解できますが、普通の自宅で、そんな広さは使いきれません。お手入れとか管理するのにもお金がかかりますから。
最終的には工務店さんが紹介してくれた土地とは別の場所に決めたのですが、エリアの情報を教えてもらわなかったらそこには決めていないと思います。それから、子供の学校や、通学路なども確認して決めました。
そうして、その工務店さんに設計からお願いすることにしました。決め手になったのは、toolboxを知ってくれていたこと。すでに何回も利用してくれていて、意匠面でやりたいことをすんなり理解してくれそうでした。打ち合わせで利用したカフェも、その工務店さんが手がけていて、センスに安心感を感じられました。
森に囲まれた角地
探しに探して選んだのは、分譲地として整地されていながら、周りをたくさんの木で囲まれた立地。しかも周りは公共施設の土地なので、手入れも行き届き、数年後も変わらない安心感があります。
近所は永住者と別荘が半々で、暮らすにも不便がなく、別荘地の雰囲気もある。希望条件を全て満たした、理想的な環境でした。
【立地の希望】
・朝どれ新鮮野菜と、美味しいお肉が近場で買える
・那須塩原駅から車で15分程度まで
・ICが近い
・雪深くない平地
・ハザードマップで災害のない土地
・小学校に通える距離
でもやっぱり広さはオーバースペック(笑)。
3区画(家が3戸建つ広さ)を一括でないと売れない、とのことで、そんなにもいらないのですが、250坪の土地を購入することにしました。それでも価格はぜんぜん手の届く金額だったからです。世田谷区と比べたら桁が2つ違います。
自分では想像つかない提案
工務店さんとの打ち合わせも平行して進め、その土地に合わせたプランを提案してもらいました。描いていただいたパースは「これ家ですか?!」というような美術館かオーベルジュのような外観。
せっかくの大きな敷地なので、平家を希望したのですが、平家って外観がシンプルで味気なくなりがちと聞いていたので、さすがプロ!!と感動しました。
コンセプトは「森に暮らす」
家のどの窓からも木々が眺められる家です。
間取りについては、私が動線マニアのため、いろいろと希望をお伝えし自分仕様に変更してもらったのですが、外観のかっこよさを極力崩さないようにしました。
東京の自宅を売却
土地と工務店が決まったら、今住んでいる東京のマンションの売却の手配を進めました。
夫がcowcamoというリノベーションマンションの仲介サイトを運営している会社に勤めているため、そこは一択。売買の担当者に来てもらい、査定から、撮影、売り出しまでとてもスムーズでした。
自宅を売ってしまったら住むところがなくなってしまうので、同時に引越し先を探します。
新築ができるまでは、とりあえず賃貸暮らしですが、東京だとファミリー向け賃貸の選択肢が少なく、子供の保育園への送り迎えを考えると同じエリアにする必要がありました。
そうすると賃料がかなり高い!!
前述のとおり、那須塩原市から家賃補助もでるし、勉強のためにも現場を頻繁に見に行きたい。ということで、早々に移住することを決めました。
6月にマンションを売りに出し、すぐに引き継いでいただける人が決まり7月に契約、あれよあれよと、9月に引っ越すこととなったのでした。
つづく。
(竹沢)