プロも好む経年変化の奥深さ
経年変化による素材の味わいを感じることができる、古材や鉄。
例えば古材は、大工さんが刻んだノミの跡だったり、受け継がれてきた歴史を感じることができたり、鉄は無骨な荒々しさを楽しめます。InstagramやPinterestでも古材や鉄を使った素敵な事例が多く、toolboxに集まる事例でも、古材や鉄が使われた事例がたくさんあります。
今回は「古材、鉄、素材感」の空間づくりが得意な『エイトデザイン』にインタビュー。どんな流れで素材を選び、どうやって空間に落とし込んでるのか、実際の事例を伺いながら深掘りしていきます。自分も取り入れたいという方はぜひ参考にしてください!
「楽しむ」から繋がるエイトデザインの素材選び
今回お伺いしたのは、名古屋を拠点に街と一緒に事業を展開するエイトデザイン。その事業の幅は、リノベーションや新築住宅、店舗内装はもちろん、インテリアショップやカフェ、さらにまちづくりまで多岐に渡っています。
中でもユニークなのが、毎年「8まつり」という周辺地域のみんなが楽しめるイベントを主催して、街の交流の場をつくっていること。
子どもが喜ぶスーパーボールすくいや射的などの縁日イベント、エイトデザインと馴染みがある作家さんや人気のごはん屋さんを集めたマルシェ。リノベーションの相談やワークショップも同時開催するなど、たくさんの催し物が用意されています。ただ、コロナ禍になってからは「HACHI MARCHE」という形で規模を縮小して開催をしています。
ちなみに、なぜ「8まつり」かというと、エイトデザインの会長のお名前が「はち」なんです(ワン)。
2022年9月に、愛知県豊田市に街に開いた新しい住宅展示場「MATSURIBA」をオープンしています。お近くの方はぜひ遊びに行ってみてください!
そんなエイトデザインは、「何事も楽しむ」ことをポリシーにしています。だから自分たちの事業を、お客様や関係しているクリエイターはもちろん、地域の人たちも巻き込んでみんなで楽しむ。
そのスタンスはエイトデザインの家づくりにおいても同様で、例えば、材料選びもお客様と一緒になってとことん楽しみます。そのほうがお客様の暮らしが深く理解できるからと、担当スタッフがお客様と素材選びにショールームやお店に出向くこともよくあります。
結果、古材・鉄といった素材が選ばれる
エイトデザインの事例を見ていると、古材や鉄など素材感のあるものが多く使われていますが、「エイトデザイン側からは、使う素材の限定はしていません。ご希望の材料やテイストがあれば、あらゆる材料の中から見つけ出していきます」と、エイトデザインの設計担当さん。
エイトデザインは、まず最初に、お客様がどんな暮らしをしていて、どんな暮らしを望んでいるのか、様々な角度からヒアリングしていくことから始めます。お客様の好みやライフスタイルを伺っていった結果、木、鉄、左官などの素材感あるものが採用されていく。そして、その事例を別のお客様が見て気に入って、そうした素材たちが採用されていく。そうやって素材感のある材料が好きなお客様が自然とエイトデザインのもとに集まっているようです。
「ただ私たちとしても、素材の経年変化を楽しんでもらいたいという思いはありますね。素材の劣化ではなくて、変化を感じることをぜひ楽しんでもらいたいです」
築40年の中古住宅を古民家に変える
「古材や鉄を取り入れる」と一言でいっても、その取り入れ方はさまざま。こちらは、建物自体も「素材」と捉え、古い建物をリノベーションして古民家を再現した事例です。
ご夫婦とわんちゃんの3人家族。もともとご夫婦は古民家好きで、古民家に暮らすことに憧れがあったそう。自分たちの理想の暮らしを叶えるため、思い切って憧れだった山村に移住を決意。エイトデザインは、物件探しからお手伝いをしてきました。
一般的に古民家と聞くと、築50年以上は経った建物がイメージされます。しかし、そういった物件は耐震補強や断熱化が必要になり、住宅性能を整えるための初期費用がかかりがちです。そこでこちらのご家族は、築40年の躯体や構造がしっかりした中古住宅を購入し、内装で理想の古民家暮らしに近づけていくことにしました。
テーマは「素材を活かしながら、伸びやかに暮らす住まい」。もともとアンティークなものが好きというご夫婦。どんな家具を置き、どんなふうに暮らしたいか伺いながら、内装に使う材料を一緒に検討していきます。
古材に見えるフローリングは、実は古材ではありません。本当は古材が欲しい。でもかなりの数量を仕入れるとなると、本物の古材では入手が難しくコストもかかり、素足での踏み心地を考えたときにも懸念があります。そこでエイトデザインは、節が多く独特の木目が出るパイン材を選定。もともと自然な鋸目のエイジング加工を施したフローリングを採用しました。パインは、油分が多く含まれているので、経年変化で艶が生まれて飴色になっていく過程も楽しめます。
ただ漠然と古材を採用するのではなく、住み心地やコストにも配慮しながら、アイデアで「ほしい空間」を実現していきます。
既存の梁や小屋裏を現しにした空間。その年月を感じさせる素材感に、古材の建具を合わせたり、エイジング加工したフローリングを合わせることで、古民家を感じさせる味わいをつくり出しました。また、手に触れる建具やフローリングに経年の変化する素材を取り入れることで、触り心地からも素材を感じ取れるようにしています。
古材を求めて現地に足を運んだり、目指す古民家の雰囲気に馴染むよう材料にひと手間をかけたり。そのプロセスに、お客様の理想の古民家に近づけるための、エイトデザインのこだわりが伝わってきます。
親しみのある材料と好きな場所
次に紹介するのは、鉄を取り入れたリノベーション事例です。
お客様のご要望は、「ライブハウスのような家に住みたい」。
二人でライブに行くのが大好きだそうで、家にライブハウスをつくってしまいたいというご夫婦。また、ご主人が仕事で販売をしてる鉄のフレームを我が家でも使いたいというご要望でした。
そこで今回は、鉄のフレームをキーマテリアルに採用。鉄とも相性のいい躯体現しの壁も、ライブハウスを彷彿とさせる要素になっています。
エイトデザインでは、お客様にプランや仕上げの参考にしてもらうため、リノベーションした先輩の家を見学する機会もつくっているそう。実際の住まいの中で使われ、数年経った素材がどう変化しているかを確かめることができます。
こちらの事例では、使いたい鉄の素材が先に決まっていて、それを空間に落とし込んでいくことから内装イメージを広げていきました。
主張の強い鉄という素材をどう空間に馴染ませていくかがポイントになりましたが、鉄を設えた壁面を躯体現しにすることで、工業的だったものがスタイリッシュなパーテーションや棚へと印象を変え、生活スペースに馴染みました。また、そこに緩和材として白塗装を入れることで、無骨の中にも柔らかさが加わっています。
平日は夫婦それぞれ仕事が忙しく時間が合わない。そこで、休みの日にふたりの時間をオンにして、ミラーボールを回して音楽を流しながら、キッチンでお酒を楽しむ。自分にとっての身近な材料と好きな暮らしの掛け合わせ。既製品では得られないデザインをしてくれるエイトデザインだからこそ出来たお家。
内装に使う素材選びは、パートナー次第で自由に無限になることを気づかせてくれる事例です。
素材選びは、「住まい心地」を大事にしてくれるプロと一緒に
いわゆる建材メーカーで扱っているような、規格化された商品にはない、不均一な素材感が魅力の古材や鉄。また、ひと口に古材や鉄といっても、その一点一点は味わいが違います。
だからこそ古材や鉄に惹かれるわけですが、主張の強い素材でもあるため、その素材感をどう活かし、どう空間に落とし込んでいくかで、空間の心地よさは変わってきます。
エイトデザインなら、自分たちも好きな素材であるからこそ、お客様と一緒になって素材選びから納まりまで、こだわりを持って向き合ってくれます。
pro list(プロリスト)
toolboxでは、商品を使ってくれたり、imageboxに空間づくりのアイデアを提供してくれる全国の家づくりのプロを「pro list(プロリスト)」で紹介しています。
toolboxの「pro list(プロリスト)」の特徴は、「スケルトンで魅せる」「DIY歓迎」「築古得意」など、各プロの長所や得意技を示す“ユニークタグ”で検索できること。
(「pro list(プロリスト)」については、コラム「家をつくるパートナーはユニークに探すべし!」もご覧ください。)