今回ご紹介するのは、コスモスイニシアとtoolbox、東京R不動産の3社で取り組んでいる企画型のリノベーションマンションプロジェクトの事例です。
このプロジェクトの最大の特徴は、住む人が自分の好みに合わせて間取りを「微調整」できるという点です。
手を加えずそのままの状態で住んでもいいし、リビングに壁を建て、個室を増やしてもいい。住まい手がライフスタイルに合わせて自由に手を加えられるよう、あえて余白を残した間取りにしています。
今回の物件はどんなふうに仕上がったのか。さっそくご紹介していきます。
“ジグザグ”を生かして、つながりつつも緩やかに仕切る
今回リノベーションを行ったのは、洗練されつつもどこか下町っぽさを感じる、街歩きが楽しい「三軒茶屋」にある築49年のビンテージマンションの一室。
区画の形状がジグザグと変形した間取りな上、壊せない躯体壁や梁位置などの制限が多い悩ましい物件でしたが、建物のユニークな特徴を生かしながら、住む人が自分らしい空間をつくっていけるフレキシブルな住まいの形を目指し、プランを進めていきました。
完成したのは、ジグザグした動線を生かした、つながりつつも緩やかに仕切られた空間です。
凹凸の壁によって出来た死角が、ゆるく空間を切り分けるので、ひと続きの空間ながらほどよい距離感を保ちつつ、おのおのが好きに過ごせる。心地よい距離感を持った空間が出来上がりました。
また、「一部屋を寝室にしてもう一部屋を仕事部屋にしたい」とか、二人暮らしの場合には「それぞれの個室をもちたい」など、「もう一部屋増やしたい」というニーズにも対応できるのが、この物件の面白いところ。
“間取りを微調整できるサービス”を利用することで、リビングに壁を立ち上げ、もう一部屋個室を追加することができるんです。壁を建てる費用は、物件価格にインクルードされているという仕組み。
廊下スペースは幅が広いため、写真のようにワークスペースとして使ったり、自転車フックを取り付けて、お気に入りのロードバイクを掛けておける場所にしたり、はたまた作り付けの棚やキャビネットを設けてギャラリーや収納スペースにしてみたり。
住まい手が自由にアレンジを楽しめる、フリースペースになっています。
洋室の建具は木製のガラス引き戸にして、仕切りつつもつながりを感じられる仕様に。視線が気になるという方は、チェッカーガラスに変更することも可能です。
素材感とこだわりのパーツが織りなす、上質な大人の空間
このプロジェクトの内装のコンセプトは、「主張しないけれども素材のあたたかさを感じる自然素材と、使うほどに愛着が増していくパーツでつくる、誰にとっても心地よい空間」。
空間に取り入れる自然素材を透明感のあるグレイッシュカラーで仕上げることで、木の温もりがさりげなく漂う、上質で落ち着いた空間に仕上げています。
ユニークな窓の形が印象的な、明るく気持ちの良いキッチンスペース。
コンパクトに納めざるを得なかったキッチンの使い勝手を考慮して、今回は木製のキッチンカウンターを増設。ワークトップとしてだけではなく、家電を置ける場所、食器を収納できる場所としても大活躍。
カウンターを追加したことで、こじんまりとしたサイズ感が逆に功を奏し、ほとんど移動することなく料理に集中できるキッチンになりました。
空間をアップデートしていける、ちょっとした余白
今回の物件では、フレキシブルに使えるジグザグとつながる間取りや、微調整ができるサービス以外にも、住まい手が自由に用途を決められるちょっとした余白を残しました。
その一つが、リビングの窓脇の凹んだスペース。
扉をつけて収納スペースにしてしまうのもいいけれども、おしゃれなスチールロッカーのような家具を置いて、自分の好きなインテリアを空間に取り込んでみたり、カウンターを設けてデスクスペースにしてみたり。
過ごし方の希望にあわせて、好きにアレンジを楽しめるよう、あえて余白のまま残しています。
寝室のウォークインクローゼットもそう。
場合によっては篭って作業ができるスペースとしても使えるように。用途が限定されないよう、壁を建てるだけの作り込みすぎないつくりにしています。
自分にちょうどいい住まいの形を見つけてほしい
丁寧に仕立てた、シンプルで心地よい空間。ただ、その住まいを最後に完成させるのは、実際にそこに住まわれるお客さま自身です。
人それぞれに異なる好みやニーズを受け入れられる余白を残すことで、間取りや内装の一部を最後に住まい手が”微調整”して完成する住まいの形。
シンプルなベースの上に、住まい手の好みや個性が反映されていく。その変化こそ、このプロジェクトの一番面白いところではないかと思います。