toolboxスタッフである、竹沢の自邸、新築・那須への地方移住実録です。土地探しから完成までを、全3話の連載でお届けします。

希望を書き出してみる

2021年7月、銀行に住宅ローンの相談に行ったりと、お金周りのことも進めつつ、まずは、どんな家にしたいだろうと理想の暮らしから妄想しました。

私の場合、

「家の中でも自然を感じられて、
それでいて夏は涼しく、冬は暖かく快適であること。
使い勝手がよく、内装が美しい、
リモートワークで籠っていてもストレスを感じない家。」

たった4行ですが、ものすごい欲張りな理想です。でも、自由設計なら叶えられそう。

次に、「あれしたい、これ欲しい」を書き出してみました。

・部屋干しするための家事室が欲しい
・夫婦で同時にリモート会議をしても聞こえない距離感の、それぞれのワークスペース
・夫の書斎は子供がいる時間帯でもうるさく無いよう個室にしたい
・子ども部屋は必ずLDKを通る間取りに
・パントリーにセカンド冷凍庫を置きたい(都会暮らしより外食減って冷凍庫がぱんぱん)
・食洗機と浄水器をつけたい
・toolbox商品のアレとコレを使いたい

など、具体的なことまでいろいろ書き出して打ち合わせに望みました。

内装・インテリアに関する、「こんなキッチンにしたい」や「収納はこうしたい」などは、前回の家づくりと同様にイメージボードにして工務店さんに伝えました。

理想をまとめたイメージボード。

また、今回は工務店さんとイメージを共有するツールとして、Pinterestを使ってみました。まずは工務店さんが施主の好きなイメージを知るために使い、その後の打ち合わせでは写真を見せながら「リビングドアはこの写真のようなプロポーションにしたい」「玄関と廊下はこの写真のような間接照明にしたい」など、どこが気に入ったのか伝えていました。

Pinterest共有は、その写真のどこが気に入ったのかはっきり伝えて誤解のないようにした方が良いと思います。

工務店さんと共有したピンタレストのボード。

間取りに関しては、基本は工務店さんから提案いただいた配置が気に入ったのですが、自分の生活動線や持ち物に合うように細かな部分を変更してもらいました。

細かい変更希望を図面にメモして、打ち合わせに持っていきました。

家事室はマスト

東京に住んでいた時から家事室のある暮らしが気に入っていたので、新居でもマストと考えていました。

花粉症で、急な雨や寒い日でもいつでも安心して洗濯物を干せるというのが理由でしたが、田舎へ来て、理由が2つ増えました。ひとつは虫。木に囲まれているため、見慣れない虫がたくさんいます。気づかないうちにクローゼットに連れてきてしまうのが怖い。そしてもう一つは那須ならではの理由。日本屈指の酪農地域のため、風向きによっては匂い……牛さんの香りが漂ってきます。

一年を通して、快適に部屋干しができる家事室。移住をして、ますますその必要性を感じることになりました。

また、洗面所とキッチンを行き来する動線と、冬場に湿気がLDKに流れるような位置関係を意識しました。

我が家を舞台に生まれた、「ランドリーハンガーパイプ」の開発コラムも合わせてご覧ください。

家事室を広めたい!室内物干し開発への挑戦
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1本使いから、L字配置やコの字配置へもカタチを拡張できる『ランドリーハンガーパイプ』。花粉症がひどく、以前から室内干しできる「家事室」の理想的なあり方を模索していたスタッフが、熱い思いをもって開発しました。

内装は「基本はシンプル」

基本は壁の色は統一してホワイトグレーに。前回の東京での家づくりと同じ考えで、奇抜な色などは使いませんでした。飾りたい絵や花瓶、オブジェもありますが、那須の家では、いちばんの絵は目の前の木立。それが際立つようにしたかったからです。

本当は東京の家と同じように塗装壁にしたかったのですが、田舎の戸建てなので、施工面積が大幅アップ。塗装では予算的に見合いませんでした。工務店さんは塗装壁の魅力もよく知ったうえで、おすすめの塗装壁風クロスを提案してくれました。

ちょうど工務店さんの他の物件の見学会があり、同じクロスが使われていたので、貼られた状態を確認できました。満足のいくクオリティのものだったので、そのまま採用することにしました。

左端のグレーを採用。これだけグレーでも壁全体に貼ると白に見えます。品番はサンゲツSGB2272

2種類のフローリング

今回、最初にイメージしたのは床。

vol.1で「こんな家に住みたい」と一目惚れした戸建てが、LDKが白い幅広のフローリング、寝室個室はちょうど「燻蒸フローリング」のようなスモーキーなオークのフローリングの2種類の床。どちらも海外のような雰囲気が素敵で憧れました。

同じ家で2色のフローリングを使うのは高度だと思いつつ、うまく見切ればいけるだろうと、よくわからない自信がありました。

フローリングの色を決めるため、サンプルを取り寄せて試し塗り。オスモカラーの#2708ペブルグレーを採用。

海外みたいなキッチンに憧れて

そしてインテリアとして一番こだわったのは、やっぱりキッチン。

Pinterestの海外事例で目に止まった、石天板の木製キッチンを見て、「この雰囲気を家のメインにしたい!」と決めました。

オーダーメイドのキッチンは予想通り高額でしたが、ここは職業的にも将来の投資だと思って、やりたい仕様を優先しました。日本のキッチンメーカーで見たことがない意匠を試してみたかったのです。

それから、レンジフードは天井埋め込みにすることに。軽やかな「フラットレンジフード」を、さらに存在感を消してみました!

しかし、これは写真では分かりづらいのですが、天井面とレンジフード本体との間にどうしてもわずかな隙間が出来てしまうというデメリットもあります。お客さんにすすめられるかは別として、自分的には満足です。そんなことができるのは、自分の家だけですからね。

そのほか今回の家にもtoolboxの商品をいろいろと使いましたが、そちらは完成後の写真で紹介するとします。

ここまで、内装やインテリアの希望を伝えることに関しては、マンションリノベとさほど変わりませんでした。そして妄想としてはいちばん楽しい部分でした。

一方で、一番難しかったのが「夏は涼しく、冬は暖かく快適であること」の部分でした。

希望を叶えるには高気密高断熱の家にすることなのですが、なかなかマニアックなお話。お住まいの地域によっても興味が別れるところなので、特別編として後日掲載にしたいと思います。

予算のかけどころと、抑えどころ

造作キッチンや気密断熱施工でお金がかかる分、どこかで節約しないと破産します(笑)。

なんせ戸建ては庭や駐車場にもお金がかかりますから。

キッチンは石天板(大理石やクォーツストーン)だと予算オーバーしすぎるので、コーリアンという人工大理石にしました。一応、高額なものも含め、サンプルを取り寄せて確認したのですが、コーリアンの色味で気に入ったものがあったのでよかったです。

キッチントップは見た目だけでなく、耐熱性やお手入れも考えて選ぶのが良いと思います。

中段の右端が採用したもの。品番:コーリアン クラムシェルⅡ。

お風呂は普通のユニットバスです。棚オプションを無くしたり、自動洗浄や大きいミラーなど、スペックに拘らないことに。それから、窮屈に感じるのは子供と一緒に入る時だけだろうと、1616サイズにしました。トイレも最低限で1畳サイズにしています。

広かったり棚があると掃除が面倒というズボラ心と利害が一致したので、とくに「諦めた感」もありませんでした。

シンプルな1616サイズのユニットバス。

他には、パントリーの棚は造り付けからIKEAの置き家具に変更して半額以下になりました。

朝陽が差し込むパントリー。

ダイニングの造り付け収納は棚を最低限にしておいて、足りなければ引越し後にホームセンターで合板のカットサービスを利用することにしました。

ちかくに大きいホームセンターがあるのも田舎の特権。やっぱり棚板足りなくて購入。

一方ガレージは、予算オーバーだったけど、建物と一体化させることに。

車から降りて、雨に濡れずに家に入れること、市販のカーポートで気に入るものがなかったことが理由ですが、結果、外観が横長でめちゃくちゃ格好良いプロポーションになりました。

夜は真っ暗なので、人感センサーで点く照明も便利。

今はガソリン車ですが、将来のことを考えてEVコンセントも付けておきました。2万円程度なので、付けておくと安心です。

また、雪の降る地域では、車に雪が積もらないというのはだいぶ助かります。移住後の賃貸の駐車場が屋根なしだったので気付かされました。那須は雪国ではないので積もっても数cm程度ですが、出発前の除雪は面倒です。

できたてのガレージ。奥の2段上がったところが玄関です。

いちおう、売ることも視野に入れて

「この家は長く住むだろう。」

そう思っていても、東京の家のように、自分たちが想像してないことが起こり、また売却することになるかもしれない。そうなったときのために、売りやすい間取りにすることも少しだけ気にしました。

夫の書斎にクローゼットは本来不要ですが、次に住む人が寝室や子供部屋として使うのにあった方が良いと思ってつけました。私たちとしては防災備蓄や五月人形、季節家電などを入れる収納として設けました。

また、エアコン配管やコンセントなども、後から工事が難しいので、次に住むかもしれない人のことを意識しました。

新築ならではの経験

地盤調査や浄化槽を埋めないといけないことなど、マンション暮らしだと知らないことばかり。

地盤調査は、建物を土地のどこに配置するかが決定したタイミングで行いました。周りは住宅地で、川からも離れた平地なので、地盤はそこまで悪く無いだろうと思ってはいましたが、変なものが出てこないかちょっとだけ心配しました。土器や遺跡がでてくると、何ヶ月も工事が止まってしまうこともあるそうですよ。

地盤調査報告書の現場写真。

外壁や屋根を選ぶのも初めての経験。普段、内装材は選び慣れていますが、外観となると何が自分に合うのか想像がつきません。小さいサンプルから選ぶのはなかなか難しくて、希望の色と似たような家を、お散歩や画像検索で探してはイメージを膨らませました。

屋根、窓枠、外壁の色サンプル。正直これじゃわからない。

既に建っている物件が見られるリノベーションに比べ、窓からの自然光の入り具合がわからないのも新築ならでは。日中、部屋が暗くないか、直射日光で暑すぎないか、と心配でした。

工務店さんにお話すると、何時ごろにどこに陽が差すかのシミュレーションをCGで作ってくれて確認することができました。

1日の光の入り方をシュミレーションした動画。

難しかったのはLDKの照明計画。こちらもリノベーションと違って、実際の空間に入ることができないので、照明の配置と明るさが足りているかをイメージするのがとっても難しく感じました。ましてや、マンション暮らしの時と広さも天井の高さもまったく違うわけです。

傾斜天井で、一番高いところが5m以上もあるところに住んだことなんてありません。

似たような物件のモデルルームが見られると良いのでしょうが、自由設計だとなかなか難しいですね。

夫がCGソフトを駆使して作ったシミュレーション。明暗のバランスを確認しながら照明位置など決めました。

照明スイッチの位置に関しても、マンションと比べると照明の数が多いので、図面を眺めながら、朝から寝るまで1日の生活を想像してみて、こことここは位置がまとまっていた方が使いやすいかな、と考えながら決めていきました。

そうしてようやく地鎮祭。これも新築ならではです。

地鎮祭とは、工事が無事に終わるように神主さんを招いて安全祈願する儀式です。

天気予報は雨でしたが、現地に到着すると雨が止み、神主さんが祝詞をあげるとフワッと心地よい風が吹き、晴れ間が見えました。土地の神様に歓迎されているようで嬉しかったです。

着工前に那須へ移住

2021年9月、地鎮祭が終わってまもなく、着工前に那須塩原市へ引っ越しました。

家の計画と平行して、地味に大変だったのが、4歳児の保育園手続きと、教習所の手続き。実はわたし、ペーパーどころか運転免許を持っていませんでした。車がないと生活ができないので、免許取得が急務。

仕事を休むわけにもいかず、休日と夕方以降で教習所へ通いました。(かなり大変だった)

免許がない間も通勤ができるよう、新幹線の停車駅近くの賃貸にしたので、家から新幹線が見えることに息子は大喜びでした。

ただ、仲の良い友達と離れたのが寂しくて、しばらく保育園に行きたがらず、慣れるまでは大変でした……。そんな息子も今では那須に慣れ、拾った枝を振り回し、虫を追いかけてます。

次回はいよいよ着工です。

つづく。

(竹沢)

新居ができるまでの仮住まい。レンガの外装がイギリスっぽくて気に入っていました。後ろがマイカー。初心者でも扱いやすい軽自動車にしました。

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