住宅街にキューブ型の家現る
「規格住宅」って、どんなイメージをお持ちですか?
自由設計に比べ、制約がある?ありきたりでつまらない?
完成品を丸っと手に入れることが出来て、らくちん?
今回、取材したのは、そんな疑問を吹き飛ばしてくれる、家づくり大好きファミリー。2019年にtoolboxが企画設計に参加し、住宅ブランド「LIFE LABEL」と一緒につくりあげた、新築の規格住宅にお住まいです。
簡単にご紹介しますと、この規格住宅「ZERO-CUBE TOOLS」は、キューブ型の2階建ての家。間取りは決まっていて、素材感あるtoolboxアイテムがたくさんちりばめられています。オプションで「+SKY BALCONY」と呼ばれる屋上と、「+BOX」と呼ばれる趣味で使える小部屋をポコっと付け足すことが出来るというもの。
ですが、この家は間取りも仕上げも大幅にカスタマイズ。
カラフルな風船の家が目印の2022−2023のtoolboxカタログ、前半ページの「妄想を実現した人たち」にも登場した、戸建て暮らしの様子をお伝えします。
建築の仕事に携わる夫婦が規格住宅を選んだ理由は?
この家に住むのは、妻の沙矢加(さやか)さんと夫の広純(ひろずみ)さん、小学校4年生の小蒔(こまき)ちゃんと猫のニシさんという3人と1匹暮らし。元々は千葉県の新築マンションに住んでいました。
広純さんはゼネコン勤務。沙矢加さんもかつてはCADオペレーターの仕事をしていたりと、建築知識があるお二人。自由設計でなく、この規格住宅を選んだのは、どうしてだったのでしょう?
- 沙矢加さん
前の家でもDIYで床に足場板を敷いたりと質感ある素材が好きだったので、いわゆる真っ白な普通の新築の戸建てには、あまり興味がなくて。元々、20代の頃から東京R不動産(toolboxのグループ会社)のことが好きだったんです。そこからtoolboxも知って。その流れで、この「ZERO-CUBE TOOLS」という規格住宅のことも知りました。
夫は設計の仕事をしているとはいえ、住宅設計が専門でないし、仕事を抱えながら家のことを1から決めてやっていくのは大変。だから、私たちにはあらかじめ、全容が見えている規格住宅というのがすごく都合がよかったんです。
あと、建設会社と私たちの好みにズレがあると、それはすごいストレスになるだろうなと。それだったら、好みが近いtoolboxが企画したこの住宅がラクなんじゃないかと思いました。
- 広純さん
それで、まずは実際のモデルルームを見に行ったんです。真新しい、いわゆる”新築らしくない”のがよくて。帰りの車の中で、この家をベースに家をつくろうと決めてました。場所も決まっていないのに、先に住宅の契約をして、土地探しをはじめたんです(笑)
その言葉に、同行していた「ZERO-CUBE TOOLS」のディレクション担当のスタッフ・石田は大喜び!「そうなんです。”新築らしくない新築をつくろう”がこの新築住宅企画のスタートだったんですよ〜」と盛り上がりました。
取材に訪れたのは、住み始めてから丸1年が経った頃。このファミリーは、そんな規格住宅に、建設時と住んでからもカスタマイズを加え続けていました。
リビングはどこを見渡しても、見事に白いものがない、落ち着く空間となっています。
リビングのフローリングも、オークのフローリングから「足場板」を変更しました。前の新築マンション時代も、床暖房の入ったツルピカフローリングの上にDIYで「5mm厚の足場板」を敷いていて、その風合いが気に入っていたのだそう。今回も、自分たちの持ち物に馴染む、慣れ親しんだ「足場板」を採用しました。
- 沙矢加さん
TRUCK FUNITUREのソファとギャッベのラグ。足場板なら、なにを置いても映えるんですよ。
と、お気に入りの理由を教えてくれました。
好きなものを気軽に飾れるようにと玄関からリビングに続く壁に有孔ボードを多用しているのも、この規格住宅の特徴の一つ。前の家でも有孔ボードを愛用していたそうで、飾っているドライフラワーもそのまま持ってきました。ワトコオイルで着色したラワンの色味と、落ち着いたドライフラワーの色合いがすごく似合ってます。
何が好きで、何が気に入らないのか、自分たちは何を優先させたいのか。ベースがあるからこそ、嫌なところだけ編集しやすいのも規格住宅のいいところ。そのこだわりどころを詳しく見ていきましょう。
キッチンは、隠すと見せるを使い分け
リビングには、対面型の「オーダーフレームキッチン」が設置されます。リビング側からもグリーンを飾ったりできるようにと、キッチン下部の棚板がオープンなつくりなのですが、沙矢加さんは「オープンなキッチンをうまく見せつつ使いこなす自信がない」と、入居後にホームセンターで買ったOSB合板でカウンターの棚を作り、設置しました。
キッチン背面は、よく使うものたちをオープンに収納。ここは、見えてもいいデザインのアイテムを意識して置いているそう。
キッチンの廊下をはさんだ隣は、特注でつくったパントリーになっています。昔は器を扱うオンラインショップを運営していたこともあるという沙矢加さん。思い入れのある素敵な器たちが取り出しやすく陳列されていました。
このパントリーに面した廊下は、壁の一部をくぼませて、猫のトイレを設置。お向かいは、人間のトイレです。
キッチン横の壁に、くぼませ隠しテクがもう一ヶ所さりげなくあるのも見逃しませんでしたよ。
壁に小さな布が掛けられてるなと、ぺらっとめくると、なんとインターホンが!
落ち着いたサンドカラーの壁紙の壁に、インターホンのパネルは浮きますよね。こうした細かい工夫で、好みに合わない真新しい要素は、そっと隠されていました。
階段が面倒な場所からお気に入りの場所に
平屋ではないので、戸建てに階段はつきもの。実は沙矢加さん、実家暮らしの時は、「階段という存在が面倒くさくて苦手だった」そうなのですが、この家に暮らし始めてからは階段がお気に入りの場所になったと言います。
- 沙矢加さん
吹き抜け越しに、抜け感のある鉄骨階段を見上げるのが好きですね。夜に、猫がもう寝ようよと誘ってきて、駆け上がっていったり。2階からニャーニャー呼んできたり。猫にとっても良い運動場所になっているみたいです。
階段の吹き抜け回りは、有孔ボードの壁にお気に入りの小物をディスプレイしています。メインのダイニングテーブルとは別で、この階段を見上げられるお気に入りの場所にサブテーブルも置いています。たまに、ここでご飯を食べたり、お茶したりしているそう。
「私はこれでいい!」という決めが大事。個人の身体感覚を大事にした水回り
2階の水回りは、トイレ、お風呂、洗濯コーナー、洗面台がまとまっています。こちらは、toolboxのアイテムをつかってコーディネートしてくれました。
全面に「フロストタイル」を貼った洗面コーナーと、ランドリーコーナーは、わざと袖壁をつけて、世界観を切り分けました。
この袖壁の幅は、最後まで迷ったと言います。壁で洗面の両サイドを囲ってしまうことで、洗面コーナーに立った時に狭く感じるのでは?という指摘もあったそうですが……
結果、つるんとしたタイル貼りの壁が光を反射する、ホテルのように気持ちよい空間となりました。実験用の「アイアンスタンドシンク」、ステンレスのペーパーホルダー、「トグルスイッチ」など、男前なアイテムが効いています。窓枠と同じ木の素材が使われた「棚付きボックスミラー」で柔らかさをプラス。朝の光を浴びて、気持ちよく身支度が出来そうな空間です。
反対側には、トイレとユニットバス。
独身時代も、トイレとお風呂がひとつながりになった間取りの家に住んでいたという沙矢加さん。
- 沙矢加さん
1階にもトイレはあるし、ドアをつけると空間が狭くなるし、掃除もしづらい。使っていない時の解放感を優先して、あえて2階のトイレにドアはつけませんでした。
こういう感覚は、個人によって優先度がすごく異なってくる部分ですが、これまで住んできた家での経験から「自分はこれ!」と好き嫌いの価値観が定まっているところが、すごくいいですね。
家づくりの最中は、知らない方のInstagramの発信や、工務店さんのアドバイスなど、価値観が違う方の意見に惑わされ、迷子になっちゃうことも多いですが、私はこれでいい!という「決め」が大事だなとお話を聞いていて改めて思いました。
好きを突き詰めた個室たち。収納は家族分を廊下に集約
2階の水回りの奥は、娘、母、父、それぞれの個室となっています。
一番日当たりのよい部屋は、子供部屋。
明るく開放感を大事にと、大きな横長のFIX窓を付けたお部屋です。
ここは、親がテイストを決めてしまうのではなく、小蒔ちゃんが今後自分で趣味の世界をつくっていけるよう、色をつけず白い壁紙に、収納なども白で統一。床は、オークの「スティックフローリング」が敷かれています。
わざと収納の建具をつけず、ガーゼのカーテンにすることで、奥のミントグリーンがちら見えしていい感じです。
うっかり色を間違えて発注してしまったというベッドはこの後、DIYで真っ白く塗装。
1年ちょっと経ったいまは、真っ白いキャンバスが、絵と図工が大好きな小蒔ちゃんの作品によって、こんなにカラフルに!
廊下をはさんでお向かいにある沙矢加さんの部屋のテーマは「眠れる部屋」。
先ほどの、真っ白い空間とは打って変わって、シックに落ち着く全面ブラウンの部屋になっています。
2段あがった分は、床下収納になっています。季節物や保管が必要な機材の空箱は、この床下に収納。壁と天井もラワンで包まれた部屋は、他よりちょっと天井を低くしたこともあって、ほどよいお篭り感。この部屋は、ゆっくり落ち着いて眠れることを優先したそう。
ただ、いまは、小蒔ちゃんのお母さんと一緒に寝たいというリクエストで、結局子供部屋にマットを敷いて一緒に寝ているのだとか。
「静かで落ち着く」をテーマにしたというお父さんの部屋は、残念ながら非公開でした(笑)。
3部屋をつなぐ、ただの通路になりがちな廊下部分は、廊下側から使えるファミリークローゼットになっています。各自の部屋の中に収納を設けると、扉の開く分、物が置けないデッドスペースにもなってしまいます。アクセスしやすい廊下にあると、洗濯物などもしまいやすく、使いやすそうですね。
いつでも外あそび!外部空間は、時間をかけてカスタマイズ
個室のある2階からさらに階段をあがると広々とした屋上があります。オプションで屋上をつけられるのも、この規格住宅を選んだポイントの一つだったのだとか。
なかなか気軽に外出がしづらかった期間も、大きなプールを出したり、キャンプごっこをして楽しんだそう。
周りの目を気にせず遊べるスペースがあるのは、本当に戸建てならではの魅力ですね。
1階には、オプションの「+BOX」という趣味の部屋として使える小部屋をつけています。キューブ型の建物本体の外にポコっとくっついている、チャコールグレーのミニキューブの部分です。
この空間は、アトリエとして色々な制作作業をする時に使っているのだとか。学校の手芸部に入ったという小蒔ちゃん。今後はここでミシン作業などもしていくのかもしれませんね。
家を建てた当初は予算があまりかけられなかったという外構部分。住み始めてから、ちょっとずつ手を加えていきました。
家と「+BOX」の小部屋をつなぐ部分に貼られたウッドデッキのその先の木が植えられているゾーン。敷地の形状に沿って三角形となった部分は、広純さんの知り合いの外構屋さんに頼んで、金属のフレームの中にゴロタ石を詰め込んだ「ガビオン」と呼ばれる擁壁をつくってもらいまいた。その後土を入れ、自分たちでシマグミ、ユーカリ等の植栽を植えていきました。
ウッドデッキの塗料は、自分たちで塗ったそうなのですが、「色を間違えたなー。レッドシダーが活きていないなぁ」と、ちょっと後悔しているのだとか。ですが、1年経ったいま、すでに色がかすれてきており、良い感じです。
今後は、目隠しのフェンスを建てて、「+BOX」の扉を開け放っていてもいいようにする計画も立てているそう。
カタログの中で紹介している、この家の妄想を現したイラストには、キューブ型の家で遊ぶ猫のニシさん。
規格住宅というと、自由設計の家に比べ、面白みが足りない出来合いの世界というイメージを持っている方もいるかもしれません。けれど、好きな世界観のベースに、自分たちがこだわりたいところだけ、手を加える。時間も予算も段取りできる分、こだわりたいところに注力して家づくりが出来るのだなと、まさに、企画当初思い描いたような暮らしぶりを拝見できて、とても楽しい取材となりました。
ありがとうございました。
ZERO-CUBE TOOLS
toolbox内特設ページ
https://www.r-toolbox.jp/ex/zero-cube_tools/
LIFE LABEL内特設サイト
https://tools.lifelabel.jp/
※この事例は「ZERO-CUBE TOOLS」の標準仕様からカスタマイズしています。詳細はお問い合わせください。