自己満足は、妄想から。
「自分らしいキッチン空間」を考える時、どこから考えますか?
まず、広さや配置は最初に決まってくるケースが多いのかもしれません。そこで今回は、幅1500mmと、少し小さめのサイズ設定で、その周りの設えを考えていくことに挑戦してみました。
本体のサイズが小さい分、壁や床面のつくり込みで、どう自分のこだわりを反映できるか?という点も見どころです。
何はともあれ、“家づくりは妄想から”!そこで過ごす時間、その空間に立つイメージを膨らませるために、同じようなサイズ感のキッチン事例を集めることから始めてみました。
一面にタイルを使ったり、大胆な色使いや、意外な素材の組み合わせを楽しんだり。そこには色とりどり、ちょっと小さめでも豊かなキッチンのカタチがありました。
「狭さ」って、欠点として捉えられがちだけど、視点のもち方次第では逆に大きな魅力にもなるのでは?なんてことに気付かされます。
そんな妄想を経て、3つのキッチンの輪郭が見えてきました。
空間づくりのギアがあがる瞬間
人それぞれにそんな瞬間があると思いますが、個人的に、今回一番ボルテージが上がったのはショールームで素材サンプルを組み合わせてみた時でした。
頭の中で描いていたものが手の中に……!
「あ、意外とこの合わせ方もありかも」「うーん、もう少し遊んでみようかな」と写真や図面上では予想もしていなかった組み合わせが生まれてくる。
そんなひらめきを取り入れながら、ブラッシュアップしていきます。
そんな過程を経て、出来上がったキッチンたち。コーディネートのポイントと共にご紹介します。
case1
背景のつくり方で空間に広がりを生む。朝日が差し込む、東向きのキッチン室
イメージしたのは、朝日が差し込む、東向きのキッチン室。マットなタイルが自然光を柔らかく映して、グリーンや生花、ガラスや竹素材の道具を活き活きと見せてくれる。キッチン本体がコンパクトでも、『業務用キッチン』の調理台や『木製キッチンカウンター』を組み合わせれば、作業スペースを拡張できる。自分にとって使いやすいようにつくり込むのも楽しそう。
point
- 背景をひとまわり広くつくり込むことで、空間全体に広がりがうまれます。
- 吊り戸は、キッチン本体と同じ素材を使うことで統一感を持たせて。レンジフードと高さを揃えてスッキリと見せる。
- タイルは縦横の目地を一直線に揃える「芋目地」で、整然とした印象に。
- 水栓はキッチン天板に合わせて鈍い光沢のものを選択。
- フラットな扉は、潔くつまみを付けないという選択も有り。もしプラスするなら、マットな真鍮など、異素材で色味を取り入れてみるのも楽しい。
使っている商品
case2
好きな素材、惜しみなく足し算!本と音楽とお酒好きのキッチン
日中は仕事でほとんど外に。キッチンに立つのはゆっくりできる夜か休日だけ。ならばキッチンには、椅子を置いて、飾り棚やダイニングテーブルのように使っても良いのでは?そんな発想から、深い森みたいなグリーンのタイルを背景に、本や音楽、お酒を楽しむ場所に設えてみました。所々に古美色の真鍮を取り入れれば、集めている古い器や工芸品との相性も良し!
point
- ゆっくり過ごす灯りに選んだのは『硝子の吊照明』。手吹き硝子のゆらめきを眺めながら、一人晩酌を楽しみたい!
- 濃色のタイルは、白目地でコントラストをつけることで、重くなりすぎず、ちょっと爽やかな印象に。
- タイル目地に合わせて、棚受けやレンジフード、水栓もホワイトで統一。
- コンセントはアルミダイカスト製のものをチョイス。鈍い光沢が古い道具と似合います。
- つまみや、バーなどキッチンアクセサリーは真鍮で。使うほどに古色を帯びて深みを増していきます。
使っている商品
case3
北欧カラーに和の茶道具。 振り幅を許容する、チャコールのキッチン
そんなに沢山モノは持っていない。かと言って、モノに興味がない訳じゃない。時間をかけてしっかり選んだものだから、仕舞い込まずに並べていたい。そんな思考の持ち主が、キッチンをつくるとしたら?デンマークの器に、和の茶器たち。背景の異なる2つの道具を繋ぐのは、ブラックと言うよりチャコールに近い色味のキッチン。そこにアーモンド色のタイルやステンレスを取り入れることで、渋い色味もビビットなものも受け止めてくれる懐の深いキッチンができました。
point
- 高さのあるレンジフードで、縦のラインを強調。全体のバランスもよく見える。
- お茶にスパイス、マグカップなど。これから増えていくかもしれないモノも、棚が増やせる仕様なら安心。
- 『水彩タイル』のボーダーを縦使いで。アーモンドの色味に、グレーの目地材を合わせて大人っぽく。
- 天板はバックガード有りを選択。高さわずか2cmのステンレスが、キッチン扉とタイル壁の見切り材のようにも機能。
- 床は『チェッカーパーケット』をチャコールのオイルで塗装。その場をグッと引き締めながら、木の素材感も取り入れられる。
使っている商品
住み手の個性を反映させた3つのキッチン、いかがでしたでしょうか?そこでの過ごし方から考えて、まとめ上げていく過程は、沢山悩むけれど、とっても楽しいもの。
キッチンと自分の関係性から考えることで「キッチンは、こんな風に使ったっていいよね」と、気付けたり。実際に使う素材と向き合うことで、新しい「好き」に出会えたり。そんな経験も含めて、自分らしいキッチンづくりに繋がっていくんだな、と改めて思います。