今回は、設計施工チームのメンバーとして2021年に入社した矢板(通称やいちゃん:写真左)と2022年に入社した徳山(通称とくちゃん:写真右)の対談スタイル。もともと組織設計と商業設計という「住宅」とは異なる世界で空間づくりに関わっていたふたりに、TOOLBOXの住まいづくりの現場や働き方がどのように映っているのか聞いてみました。

新卒で組織設計と商業設計の世界へ

ー TOOLBOXに入社するまでのキャリアについて教えてください。
やいちゃん

建築学部の大学院を卒業して、新卒で入社した組織設計の会社で7年間働きました。組織設計に進んだ理由は、たくさんの人が利用する大規模な公共施設の設計に関わりたかったからです。組織設計は、案件が多く知識量が豊富なイメージもあります。いわゆるアトリエ系やゼネコンも選択肢としてはありましたが、自分のライフスタイルややりたいこととは少し違うな、と感じていました。

とくちゃん

私も大学で建築を学びましたが、在学中に空間ディスプレイや内装デザインに関わりたいという気持ちが芽生えてきて、新卒で商業設計の世界に進みました。色々な空間を作れるプラットフォームに身を置く、ということを第一に考えていたので、ジャンルが幅広くて見せ方も多様な店舗設計ならそれを叶えられるとも思いました。

ー 前職ではどのようなしごとを手掛けていましたか?
とくちゃん

全国に100店舗以上出店している小売店の設計、内装施工管理などを担当していました。

やいちゃん

僕は、図書館や学校、市庁舎といった公共施設の設計をやっていました。

それぞれの気づきと、10年後への漠然とした不安

ー 同じ「設計」でも、まったく違うものをつくってきたんですね。そんなお二人が今、TOOLBOXで同じチームで働いているのはなんだか不思議な気もします。希望して入った業界から転職を考えたのはなぜでしょう?
とくちゃん

「お店を作る」という仕事自体はやりたかったことですし、完成したときの満足度は高いのですが、一方でどうしても「お店だから仕方ない部分」というのがありました。そこと折り合いがつかなくなったというのが主な理由です。

たとえば、店舗の工事は基本的に閉店後にしかできないから、だいたい夜間工事になってしまうこと。お店や商業施設には営業時間があるので仕方ないのですが、肉体的にきついと感じることが多くて。また、テナントは入れ替わることが前提のものなので、せっかく作ったお店が3ヶ月後にはなくなってしまう、なんてこともよくありました。

やいちゃん

作ったものがすぐになくなってしまう、というのは組織設計ではあまり考えられないことですが、時間の話は頷けます。夕方以降に現場から会社に戻って、そこからデスクワークをして、家に帰れるのは終電間際ということも日常でした。でも、あるときふと、現場から会社に戻る時間が、一般的な会社員の「退社時間」と同じだということに気づいてしまったんです。「この人たちは、ここから自由な時間なのか!」と、世界が違うんだなと感じました。

また、大きな建築ということもあって施主=建物を使う人ではなかったため、どんなに頑張って仕事をしても設計したものを喜んで貰えているという実感があまりなく、少し寂しい思いはありましたね。

とくちゃん

私なんて、現場から帰れるのはみんなの出勤時間でしたよ。笑

そういう働き方をするなかで、5〜6歳年上の先輩たちを見たとき、女性が全然いないことに気づいてしまって。男性でゴリゴリやっている人しか長く働けない、しかも作ったものが残らない…これをずっとやっていけるのだろうかと考えたのが、27歳の頃でした。10年後の自分の未来が、見えなくなってしまったんです。

やいちゃん

僕も、30歳になった時、40歳の自分はどうしてるかな?と10年後の自分を想像しました。40歳ぐらいの先輩を見たら、体力と気力でどうにかやっていけている人たちが多くて、慕っていたマネージャーもそんなタイプの人。自分にそれができるだろうか?と考えたときに、難しいかもしれないと思ったんです。

TOOLBOXとの出会いはキャンプ場!

ー 関わっている事業の性質や業界の構造上仕方のない部分かもしれませんが、自分の考え方やライフスタイルとのズレは出てくると思います。体力や気力にも個人差はありますよね。それぞれの居場所から、どういった経緯でTOOLBOXに移って来たのでしょうか?
やいちゃん

転職を考えた当初は、セルフビルドやDIYに関する仕事をしたい、と思っていました。組織設計の世界に身を置き、少し寂しさを感じるなかで「もっと生活に近い、直接施主の方とやりとりできるようなところで仕事をした方が、幸せを感じられそう」と思ったからです。そんなときに、友人からtoolboxの施工チームがスタッフを募集していることを教えてもらい、応募しました。設計・施工という業務としては前職と地続きですが、リノベーションはもちろん住宅の設計もやったことがない自分にとっては、「業種を変えた」と言えるくらいインパクトのある転職でした。

とくちゃん

前職を辞めて少しのんびりしたあとに、TOOLBOXが参加していたイベント『かこむ仕事百貨』(主催:日本仕事百貨)に行ってみたんです。キャンプ場で開催される企業説明会イベントで、TOOLBOXのスタッフや代表の荒川さんが、楽しそうに自分たちの仕事について話をしていました。その一方で、独自のフィロソフィーや、ものづくりに対するストイックな姿勢、住宅業界や建築業界に対する問題意識もしっかり持っている。とてもバランスが良い会社だなぁと感じました。

リフォーム産業フェアへの出展に向けて、サインを製作するふたり。

仕事が「楽しい、嬉しい、面白い!」

ー 事業の社会的価値を感じながら、創造性を発揮して、気持ちよく働ける環境がTOOLBOXにはあるのかもしれませんね。今はどのような働き方をしていますか?
とくちゃん

現場があるときとないときで働き方が全然違います。現場があるときは朝イチで現場に行って、そのあとにオフィスに戻ってデスクワークをする感じですね。現場では、職人さんたちが仕事を進めやすいように立ち回る、ディレクターのような役割を果たしています。現場がないときはフレキシブルで、リモートワークの日もあるし、午後から出社することも。オフィスでは、次の案件の準備をしたり、事務作業をしたり…という感じです。

やいちゃん

働き方が自由な分、「今日は頑張ろう!」と決めたら逆にいくらでも頑張れてしまうので、自分でちゃんとスケジュールを組んで自己管理する能力は必要ですね。

PCに向かうやいちゃん。施工チームのメンバーがコラムを書くこともある。

ー 仕事の内容や組織に関して、前職と大きく違うと感じていることはありますか?
やいちゃん

住まい手であるお客さんと近い立場で、一緒に空間を作っていく感覚がとても新鮮です。楽しい、嬉しい、面白い!と思いました、仕事が!

あとは、実は奥さんが起きている時間に家に帰れることが一番大きく違うところかもしれません。

とくちゃん

それ、めちゃくちゃ大事じゃないですか。笑

私は、30代前半の方たちが「マネージャー」として活躍していることがすごいと思いました。前職は上司部下がすごくはっきりしていたのですが、TOOLBOXでは自分とそんなに年が違わない人が裁量をもっている。会社が社員一人ひとりを信用しているんだなぁ、と感じました。

やいちゃん

それは僕も感じます。あと、職人さんとすごく仲がいい!距離感が近くて、いい意味で同じ土俵に立っていることに、最初は驚きました。前職では考えられません。

とくちゃん

職人さんとも、仲間として一緒に仕事をしてる感じがします。たとえば「キッチンの壁面に電球をひとつ付けたい」と依頼したときに「手元灯として使うんだったら、この壁じゃなくて、こっちの方がいいんじゃない?ちょっと配線工夫すればできちゃうよ」みたいな提案をくれることもあります。お施主様のために一緒に考えてくれるんですよね。

お施主様、職人さん、担当者のみんながフラットな関係性で、仕事をしていて気持ちいい。私にとっての「健全な建築業界」だ!と感じています。

ー 私も10周年企画で職人さんたちを取材したときに、同じような印象を受けました。職人さん同士も仲が良いですよね。設計施工チームの雰囲気はどんな感じですか?

※10周年企画のコラムはこちら

やいちゃん

今はけっこう体育会系ですよ。経験の長い親方(一杉)がトップにいて、新しいメンバーが親方についていってる感じがあります。この2年間でチームの人数が倍以上に増えたので、ルールづくりはこれから。型にはめるというよりは、うまくやるにはどうしたらいいかな?と言い合える状況をみんなで作っています。将来的にチームの全員が主体的に動けるような環境づくりをしているところですね。

目白のオフィスにて、スタンディングデスクワーク中のとくちゃん。

一人ひとりが本質を見抜いて提案できるチームに

ー 親方の存在は大きいんですね。尊敬できるリーダーという感じでしょうか。
やいちゃん

親方の瞬時にポイントを見抜く能力が、研ぎ澄まされてるんです。要件や平面図で、この案件はここ!というポイントを見抜く力が的確。たとえば、「キッチンを変えたい」というお施主様に対して、結果的に「床」を変える提案をしたエピソードがあります。お施主様とやりとりをすると、気に入らないポイントはご自身が言うからわかるのですが、その「気に入らなさ」の根底にあるものを見抜いて具体的に提案・解決できるところがすごいです。
親方だけでなく、メンバーの一人ひとりが、リノベーションやリフォームの動機となっている「本質的な課題や目的」を見失うことなく、柔軟な発想と提案ができる。まだまだこれからですが、そんなチームに成長していきたいと思っています。

コラム「キッチンエクステンション!」 (コラムを書いたのはやいちゃんです)

ツールボックス工事班が工事を担当した、戸建のLDKリフォームの事例。
もともとはキッチンスペースのリフォームのご相談でしたが、まだ新しかったキッチン本体はそのまま使い、作業台を拡張、壁面を活かして収納を増やしました。さらにLDK全体の床を明るい色のフローリングに変えて、使いやすさと空間の印象がグッとアップデートされています。

途切れる暇がない、空間や建材への関心

ー 設計施工という仕事をしていると、目に映るあらゆる空間がインプット元になりそうです。プライベートと仕事は切り離せないですよね。
とくちゃん

時間で考えると割とはっきり分かれているんですが、気持ちの部分では全然分かれていません。家にいても建材のことを考えたりするし、お店で服を見ていたのに気づいたら電球を見ていたり。YouTubeを見ていても、背景の建材が気になったり。そうなりやすい業種ではありますね。笑

やいちゃん

もともとDIYやセルフビルドが好きだったから、休みの日に会社の工具を借りて自分で作業したりもします。仕事の延長に家があって、家の延長にも仕事がある。前は仕事場に行ったら仕事して、家に帰ったら家のことだったんですが、今の感じは「自然な感じ」です。

「話しかけやすい」とよく言われるし、人やものごとに対して寛容なんだと思います!とフレンドリーに話すとくちゃんと、1990年代のヴィンテージ雑貨が大好きでコレクションしているという凝り性のやいちゃん。一見全然違うタイプにも見える二人は、TOOLBOXというあたらしい居場所で、それぞれどんな10年後の未来を描いていくのでしょうか。

メンバーが増えてますますパワーアップする設計施工チーム。彼らがこれからつくりだす空間が楽しみです。