toolboxの設計施工チーム「ツールボックス工事班」による、日々の現場での出来事をお伝えしていく『工事班の現場通信』。新たに始まったこの連載の初舞台となる現場は『studyroom #1』。工事班はいつもはお客様の住まいやオフィスをつくっているのですが、今回の現場は、toolboxが自社で購入した築50年越えのマンション。ここで、ある「実験」を始めるのです……!一体どんな実験なのか、プロジェクトの概要を現場からお伝えします。
壁は壊さず穴開けて、フローリングは塗って……キッチンは切っちゃう?
とある秋の日、都内にある古いマンションの一室に集まったツールボックス工事班。あっちこっちを行き来しながら、喧々諤々ブレストをしています。
「もっと開放的にしたいよね。間仕切り壁に穴を開けたらどうだろう」
「室内窓をはめ込んでみる?」
「新しくつくった壁と見た目が変わらなくなっちゃうと、面白くないなぁ」
「違う種類のフローリングが混ざって貼られてるの、なんとかしたいな」
「上からただ増し貼りするんじゃ、つまらないよね」
「既存フローリングを塗っちゃう?」
「このキッチンは、まだまだ使えるよね」
「キッチンをふたつに切っちゃえば、こういうレイアウトにできるんじゃない?」
「今あるステンレス天板も、違う表情にできないかな」
この日メンバーが集まった理由は、この部屋をどうリノベーションしていくか話し合うため。toolboxが自社で購入した築50年越えのマンションで、新しいプロジェクト「studyroom」をスタートするのです。
「studyroom」は、普段のクライアントワークではなかなかチャレンジできない手法に実際の空間でトライしてみよう、という試み。実験で得た気づきやアイデアを今後のサービスや空間づくりの提案につなげたい、という想いからプロジェクトが立ち上がりました。
今ある内装に向き合って、工作的に手を加えて、つくり変えていく
今回の物件はその第一弾!ここでどんな「実験」に取り組むのかというと、テーマに掲げたのは「ReMake(リメイク)」。中古マンションリノベーションといえば、既存の内装を全て撤去して、スケルトンにしてから新しく内装をつくっていく手法が定番化していますが、『studyroom #1』では、既存の内装を極力壊さず、そこにあるものを活かして、手を加えて変えていく空間づくりを行っていきます。
背景にあったのは、近年の都市部のマンションの価格高騰。中古マンションも、リフォーム済みやリノベーション済み物件の流通が増えています。そんな世相の中で、フルリノベーションですべてをつくり変えるやり方ってどうなんだろう?ほかにもやり方が見つけられないだろうか?と考えたことがきっかけでした。
「例えば、間仕切り壁を壊して間取りからつくり変えたり、フローリングは貼り替えたり。そんなふうに、既存内装を壊して新しくつくり変えることをリノベーションと呼んできたけど、“壊す”という考えを封印してみたら、既存の間取りや内装を利用価値のあるものとして捉え直すことができないか?どう手を加えたらそれができるのか、実際に空間づくりに取り組みながら、その手立てを見出してみたいと思ったんです」(ツールボックス工事班・一杉)
すべてを壊してつくり変えるのではなく、部分的なリフォームの集合で空間全体をつくり変えるアプローチにトライしてみよう、という今回の実験。そんな空間づくりに取り組むにあたって、ツールボックス工事班は二つのルールを決めました。
『既存を活かす』
壊すことを前提にせず、どうやったら活かせるかをまず考える。使えるものは残し、余分なものは更新する。
『工作的につくる』
考えながらつくり、つくりながら考える。バラしてから決める。手間をかける。
スケルトンにして、最初に全部を決めてつくっていく方がわかりやすいし、スムーズだとは思います。でも、既存に向き合って考え、手間ひまをかけてつくっていく過程から、ものづくりのひらめきやアイデアが生まれることを期待しています。ツールボックス工事班がいつもお世話になっている職人さんたちの知恵と技も借りながら、「ReMake」な空間づくりに挑戦します!
どこに手を加える? まずは妄想から
ここで、今回の実験の舞台となる物件について。建てられたのは1967年、下階に玄関があり、そこから階段を登って2LDKの間取り、という約56㎡のメゾネット住戸です。
「この物件は、内装がボロボロというわけでもなく、かっこよくリノベされているわけでもなく、普通のシステムキッチンやユニットバス、和室など、よくある中古マンションの内装だったのが決め手でした」(一杉)
築年数の割には綺麗なものの、床のフローリングがつぎはぎだったり、個室は二つとも和室だったり、お風呂は狭小、洗濯機置き場はバルコニーと、「ちょっとなぁ」というところがちらほら……。今の間取りを踏襲しつつ、暮らしやすさや気持ちよさをアップさせることを念頭に置いて、この空間のどこに「ReMake」を加えたいのかを決めていきました。
〈ReMakeしたいところ〉
狭い玄関と暗い階段
家に帰って一歩目の玄関は、もっと明るく開放感がある場所にしたい。位置も広さも変えられない中、どんなアプローチがあるだろう?
眺望と開放感を遮る間仕切り壁
壁を壊してしまうこともできるけど、天井や床も部分的に壊すことになって、手を加える範囲が増えてしまう。撤去しないで目線の抜けをつくることができないか試してみたい。
味気のないシステムキッチン
シンプルだけどあまり気分の上がらないキッチン。雰囲気を変えるだけなら扉交換という手法もあるけれど、レイアウトまで変えることができたら、キッチンリフォームの可能性が広がりそう。
オーソドックスな和室
和室は和室でいいのだけれど、昔のままの内装だとリビング空間のインテリアとのトーン差が気になる。畳、障子、和天井という既存の和の要素を活かしながら、現代的な空間にリメイクしてみたい。
狭くて機能の足りない水まわり
解体するのが大変なコンクリートブロックに囲まれた、間取り変更の余地のない水まわり。このスケールに洗濯機置き場と洗面を追加しながら、気持ちよさもある空間にしたい。
つぎはぎのフローリング
かつてのリフォームで部分的に貼り替えたのか、謎のつぎはぎ仕様のフローリング。いつもなら新しい床仕上げを増し貼りして隠すけれど、使えないほど傷んでいるわけじゃない。今ある床仕上げを活かしながら、見た目の問題を解決できないか?
この方針をもとに、各所を壊して確認しながら、どう手を加えていくのかを具体的に考えていきます。
とはいえ、これまでやったことのないチャレンジをしていくので、イメージしている通りにうまくいくかはわかりません。そのまま皆さんの家づくりの参考になるようなやり方でもないかもしれません。工事班のメンバー自身もできあがりがどうなるのかわからない、実験的リノベーション。この空間づくりの過程から、どんなひらめきが生まれるのか、どんなアイデアが生まれるのか、どんな空間ができあがるのか。その成り行きを見守っていただけたらうれしいです。
次回は早速、着工!解体工事を行います。今回は「既存を活かしてどこまでつくり変えられるか」という実験なので、「なるべく壊さない」ことが求められます。だけど、壊してみないとわからないことが多いのがリノベーション。どこまで壊すのか、どこまで活かせるのか、何が出てきてしまうのか……?次回も現場から、お届けします。
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。
住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
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※毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。