ツールボックス工事班によるリノベーションの実験『studyroom #1』。築50年越えのマンションで、「ReMake」をテーマに掲げ、極力壊さず、既存の内装に手を加えながら空間全体をつくり変えるアプローチにトライしています。今回レポートするのは、vol.3で切ったフローリングを戻す作業と、切りっぱなしの和天井を仕上げる作業。大工工事完了後の空間もお披露目します!

きっと誰にも気づかれない気遣いが施された床戻し

下地づくりの大工工事が終盤に差し掛かったこの日の作業は、切って外していた既存フローリングを戻す作業。

配管を新たに引き直した時の様子。

普通のリノベーションでは、配管からやり直したい時は床仕上げを全て撤去してやり直すけど、今回のリノベでは、既存フローリングを活かしてリメイクしたい。ということで、フローリングを部分的に切って、配管をやり直したのです。

下地づくり担当の大工さんが下地を貼ってくれたところに、既存フローリングを戻していきます。

フローリング戻しの作業をしてくれるのは、フローリングを切って外す作業も担当した大工の渡邉さん。

「この板がここで〜、あれ?はまんないな。あっ、こうか!」(渡邉さん)

パズルのピースをはめるように、板に貼った番号を頼りに並びを確認していきます。戻す時にわからなくならないよう、板を剥がす時に番号をつけていてよかった!

はめ込む順番を考えながら、どんどん戻していきます。

順調順調、と思っていたら、突如、床の下地を切り始めた渡邉さん。細部にこだわる大工・渡邉さんのセンサーが何かを感知したようです。

「ここが床鳴りするんだよね」(渡邉さん)

床下を覗いて見ると、根太が外れていることが発覚。過去のリフォーム時に床下に何かしら手を入れ、その時に切られたようです。

あっという間に根太を作り直してくれました。既存のフローリングを活かすからこそ、こういう不具合はきちんと解消しておきたいところ。

「できた〜!今回の作業的にはこれがビフォーアフターのアフターなんだけど、この画(え)を見せても伝わらないよね(笑)」(渡邉さん)

確かに……(笑)。でも、渡邉さんの丁寧な仕事はここで伝えておきますので。既存フローリングリメイクの本番はこれから。今後をお楽しみに!

躯体の不陸に四苦八苦。和天井のリメイク仕上げ

続いての作業は、vol.3で切ってそのままだった和天井の仕上げ。「既存の和の要素を活かしながら、現代的な空間にリメイクする」というお題を掲げているこちらの和室。和天井の中にコンクリート躯体現しの天井が覗く「見たことのない景色」はつくれましたが、切断面も見えてしまっているのを綺麗に仕上げます。

切った直後の様子。切断面があらわになっていて、和天井もたわんでいました。

和天井とコンクリート躯体天井の間を、こちらの杉板で覆って仕上げます。

杉板を取り付けるための下地を躯体に取り付けたところで、渡邉さんがあることに気づきました。

「躯体の不陸が、やばい……」(渡邉さん)

「不陸」(ふりく、ふろく)は建築で使われる用語で、面が水平でなく、凸凹があることを指す言葉。躯体面に凸凹があるので、このまま杉板をはめても隙間ができてしまうのです。

そこで渡邉さんはどうしたかというと、数ミリレベルの凸凹をこまめに測って……

凸凹のラインに合わせて杉板を切って……

はめてみて、まだ隙間があったら外して、また測って、切って、はめてみて、削ってみて……

苦労の甲斐あって、躯体天井の凸凹にフィット!

今度はこっちの隅っこが絶妙にはまらない……!ぐぬぬ。

そんな地道な作業を繰り返すこと数時間。ついに、全ての面に杉板がはまりました!

「すごい!かっこいい!でもこのおさまりは……エグいですね(訳:やるのがとても大変ですね)」(工事班・渋谷)
「本当だよ(笑)」(渡邉さん)

完成した和天井を感慨深げに見上げる渡邉さん

ひと段落したのも束の間、今度は「切った和天井を土間の天井に移植」に取り掛かります。

「切り取った和天井を、こんなふうに野縁の間に取り付けたいんです。そこに照明器具を付けようと思ってて」(渋谷)

一体どんなビジュアルになるのでしょうか。

移植の過程を最後まで見守りたいところでしたが、すっかり日も傾き、この日は現場をお先に失礼することに……。和天井移植の出来栄えは、この後の大工工事後のお披露目で!

「解体途中」感からの脱却。大工工事が完了!

数日後、大工工事が終了した現場へ行ってみると……。おお!間柱の壁にボードが貼られてる!

開口部がトリミングされたことで、一層抜け感が際立った気がします。

土間側から一望するとこんな感じ。間柱が天井際まで見えているので、開放感があります。

先日、渡邉さんがやってくれた「和天井の移植」はこの通り。見事におさまっていました。

元からここにあった和天井を切り抜いたかのような、不思議な見た目になってます。

和室と浴室まわりの間にあった開口はボードで塞がれ、給水のポリ管がぴょこん!そうです、ここには洗面台が付くんです。

前回の工事班によるディテール検討会で、「どこまで見せる?」と話題になっていたブロック壁の断面はここ、洗面側に残されていました。

「この残し方!なかなかないよね!」と、モルタル補修後の断面の見え具合にテンションが上がる工事班・一杉。

特に劇的に変わった浴室まわり。ここは解体前のビフォーからおさらいしましょう。狭小ユニットバスにトイレ、洗面スペースなし、洗濯機置き場なし、という空間でした。

それが大工工事とFRP防水工事を経て、こんな空間に。仕上げ前ですが、すでに開放感を感じる空間になってます。

こちらはキッチンが設置されるスペース。vol.3で2つに切った既存のシステムキッチンをどうリメイクするのか、乞うご期待。

掃き出し窓の前には、ベンチが取り付けられました。バルコニーへの掃き出し窓は土間側にもあるので、こちらは眺めを楽しむ専用の窓辺にします。

やっと「解体途中」感を脱し、「部屋」感が出てきた『studyroom #1』。この後は、仕上げ工事を進めるとともに、既存フローリングや既存キッチンのリメイクにも着手していきます。それでは、次回も現場からお届けします。

ツールボックス工事班|TBK

toolboxの設計施工チーム。

住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。

 

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※毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。

株式会社Cabbage Truck / キャベジトラック 渡邉光

toolboxでもお世話になっている頼れる大工さん。
設計から施工までまとめて行ったり、建築家案件の施工などをしてます。
壁一枚から家一棟、店舗一式工事までお気軽に。

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テキスト:サトウ