ツールボックス工事班によるリノベーションの実験『studyroom #1』。toolboxが自社で購入した築50年越えのマンションで、「ReMake」をテーマに掲げ、極力壊さず、既存の内装に手を加えて空間全体をつくり変えるアプローチにトライしています。今回着手するのは、既存フローリングとキッチンのステンレス天板のリメイク。フローリングは新たに溝を彫ってデザインパターンを変え、ステンレス天板は研磨して表情を変える試みにトライします。
絶対に止まれない、フローリングの溝彫り
元々のフローリングは、色も板の長さも違う2種類のフローリングが混ざって貼られたつぎはぎ仕様。傷んではないから使えるは使えるけれど、この見た目をなんとかしたい!
そこでまず思いついたのが、「フローリングを塗装する」という手。広い面積を占める床仕上げの変更は、コストもかかりがち。貼り替えたり増貼りをせずに印象を変える方法はないかと考えていた工事班が、かねてからやってみたかったリメイクアイデアでした。
でも、「色を塗る」だけじゃちょっと物足りない……どうせならデザインパターンも変えられないか?ということで、溝を彫ってみることにしたのです。
「フローリングに新たに溝を彫る」というミッションを請け負ってくれたのは、vol.3でレポートした「システムキッチンを切る」もやってくれた瀬尾商店の瀬尾さん。本職は家具職人なのですが、工事班からの特殊依頼請負人と化しています。
ガイド代わりの板を床にセットして、トリマーという切削工具で溝を彫っていきます。まずは長手方向から。ヨーイ、ドン!
「途中で止まると、そこだけ溝の太さが変わっちゃうから、一定のスピードで進めないといけないんだよ……」と、ジリジリ亀のようなスピードで慎重に溝を彫っていく瀬尾さん。
おっと!ここで障害物です!キッチンの排水管にぶつかってしまいました。どうするのでしょうか。
……が、ここはキッチンが置かれて隠れるので、彫れなくても問題なし!ということで障害物を回避して再スタート。スピードは安定しています。だんだんゴールが近づいてまいりました。
最後はベンチの下に潜り込んで、ゴーーーール!
結果は……しっかり彫れてる!元々のフローリングの溝よりも、深く太い溝が彫れました。
という作業を、縦ライン、横ラインで繰り返し……
時には、ベンチ下から這い出てのスタートも。「しんどい……」と言いながらも、トリマーを進める手は止めない、瀬尾さんのプロフェッショナルぶりに感服です。
一方、工事班の渋谷は、トリマーの刃が届かない床の端っこを、彫刻刀で地道に彫っていました。こちらも根気が要る作業……!
そうして、溝彫りミッションが完了!
正方形のパターンが浮かび上がって、パーケットフローリングのような見た目になりました。現状でも随分印象が違いますが、板の色違い問題も解消すべく、後日塗装をして、さらなるイメチェンを目指します。
エンボス仕上げのステンレス天板、削って印象リメイクできるかな?
キッチンで何やら作業を始めようとしているのは、通称・親方こと工事班の一杉。vol.3で、瀬尾さんに2つに切ってもらったシステムキッチン。レイアウトや面材も変える計画なのですが、この日、親方が行うのは「ステンレス天板のリメイク」。天板を研磨して、その表情を変えてみよう!という試みです。
「今の天板は、表面が凸凹してるエンボス仕上げで、ちょっとギラギラしているんだけど、バイブレーション仕上げのようなマットな光沢のある表情にしてみたい。工業製品として加工されたのじゃない、もっと“素材”っぽい印象にできたらなって」(一杉)
既存のキッチンを変えたいと思った時、toolboxでは「キッチン扉交換」という手法を生み出して面材のイメチェンをやってきたけれど、ステンレス天板はそうはいきません。
「モノ自体は使えるのに、天板の表情が気に入らないだけで捨てちゃうのはもったいない。表情を変えて活かすことができないか、前からやってみたかったんだよね」(一杉)
親方念願(?)のステンレス天板リメイクチャレンジ。果たして、その表情は変わるのでしょうか?
複数の研磨工具を使って、ステンレス天板の表面を削っていく親方。
「全然削れてる気がしない……。粉が手につくから、削れてはいるんだろうけど。さすがエンボス、傷に強いと謳うだけある。エンボス仕上げの耐久実験してる気持ちになってきた(笑)」(一杉)
しかし、親方は諦めません。ひたすら研磨し、研磨し、研磨し……
そうして丸一日かけて研磨されたステンレス天板の仕上がりは……ドン!
と、引きで見てもなかなか伝わらないと思うので(笑)、寄ってみましょう。おお!エンボスの凸凹が抑えられて、ちょっとマットな表情になっています!
「結構、いい感じの表情になったんじゃない?」と親方も満足げな様子。これが“正解”かはわからないけれど、クライアントワークではない、自分たちのやってみたいことを実験する空間だからこそ、自分たちが「いいじゃん」と思える仕上がりにこだわりたいのです。
もちろん、キッチンリメイクはこれで終わりではありません。ここからどんなキッチンに仕上がっていくのか、お楽しみに!
空間激変!塗装の力ってすごい
あくる日、現場へ来ると、印象が一変していました。塗装が進んでる!壁も天井も塗られて、一気に空間に「出来上がってきた」感が増してきました。
塗装工事を担当してくれたのは、塗装職人の工藤さんとその仲間たち。「アイアン塗料」などの特殊塗料を使った塗装から、内装、家具、外装の塗装まで、工事班がいつもお世話になっている職人さんです。
新しくつくった階段部分と土間の一部にも、工藤さんによる仕上げが施されていました。
「新しくつくった階段と既存の階段で段の高さや蹴込幅がちょっと違うから、安全面を考えて、新しい階段の仕上げを変えることで違いに意識を向けられないかなと思ったんだよね」(一杉)
この仕上げは、本来は下地調整材。工事班と工藤さんとで検討の結果、このグレーの色味がいいね、とそのまま仕上げとして使ってみました。
塗装は仕上げ塗りの段階に入り、どんどん仕上がっていく『studyroom #1』。それでは、次回も現場からお届けします。
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。
住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
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※毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。
瀬尾商店
toolboxの初期から活動を共にしてくれている造作家具屋さん。
家具が専門でありながら、リフォーム・リノベーションなど何でもオールマイティにこなしてくれる頼れる存在。
戸越では「瀬尾商店」という名の雑貨も買えるオーダー家具店を営んでいます。
塗りlabo+ 工藤文紀
アイアン塗料などの特殊塗装から、内装、家具、外部塗装まで、頼れる塗装職人さん。
例えば空の青がいいと言われた時に、その人の青はどんな青だろうというイメージのすり合わせのような言葉を交わして同じ青をみつける。そんなやり取りをずっと大切にしたいと思っています。