実例に学ぶ!あの人のドアを見せてもらおう
改めて見てみると、家の中には、思ったよりもたくさんのドアが存在します。
ドアは、本体の形状・素材だけでなく、ドアノブや枠など、構成する要素が多く、アレンジの幅が広いパーツ。だからこそ自分のイメージを具現化しやすい空間の中でも、とても大切な存在。
選択肢がたくさんある中で、自分が本当に求めているドアってどんなものだろう?と迷ってしまうこともありますよね。
床と色を合わせた方が間違いない、主張の少ないデザインが無難……などついつい「失敗しない方法」に目を向けてしまうけれど、実際はドア選びにセオリーなんてなし!自分らしく、もっと自由に選んでもいいんです。
そんなことを思わせてくれた、imageboxに掲載されている事例の数々。まずはたくさんの空間実例から「自分らしいドア」の妄想を膨らませることから始めましょう。
imageboxとは
空間づくりのイメージ集。写真から空間づくりのアイデア・使われている素材や技術、つくり手の情報を見つけることができます。
一杉伊織
toolboxの設計施工チーム、TBK(ツールボックス工事班)の親方。建具の商品開発にも携わる。
今回は、空間の中にドアを効果的に取り入れるためのポイントを聞いてみました。
配色で遊ぶ
ビビットな色で空間のスパイスにしたり、グレイッシュカラーで周囲に馴染ませつつ洗練された空間に仕立てたり。色を使ったドアの持つパワーは思ったよりも強いんです!
一枚のドアを単色で塗るだけではなく、色を組み合わせたり、異素材とのツートーンで水平ラインを強調している事例も。『アイアン塗料』を使って、色だけでなくざらっとしたアイアンの質感も取り入れるという方法もあります。
色を使ったドアを取り入れる時にぜひ考えてもらいたいのは、背景に馴染ませるのかアクセントにしたいのか。
床・壁・天井などの内装だけでなく、手持ちの家具や小物との関係も大切なので、空間全体をイメージしてドアの存在感を決めていけるといいと思います。
ドアが複数枚並ぶ時は、目立たせたい入り口だけ色味を変えてみるというのも効果的です。
木の素材感を取り入れる
特別なことをしていなくても、一枚あるだけで、空間に柔らかな空気を生み出してくれる木の扉。空間を隔てるというより、その先へあたたかく迎えてくれるような温もりを感じられるのが木のドアの良さではないでしょうか。
床や壁、棚板などの木部と色味を合わせ統一感を持たせたり、逆に周囲とドアの素材・色味を変えてみることで、様々なテイストの家具と馴染みよくするという方法も。
木のドアは、樹種ごとの木目の表情や、無塗装品であれば仕上げに使う塗料によって空間の印象も大きく変わるので、その選択も含めて楽しめる素材です。
オイルステイン塗料は樹種によって発色が異なるので、無塗装品の色味を検討する時は、事前に同じ樹種で試し塗りをしておくと、よりイメージに近い仕上がりになると思います。
ドア形状で魅せる
周囲の壁面とピシッと揃うフラットなドアや、ルーバーやパネルなど、凝った形状のドア。お部屋のコンセプトや欲しい空間のイメージが明確な場合、ドアはその世界観をつくり込むのにとても効果的なパーツです。
一目惚れした海外の事例や、映画の世界、行きつけのショップのあの入り口など、使いたいドアを主役に周囲の空間を組み立てていく……なんてプロセスだってありなんです。
モールディングなど装飾が施されたドアを取り入れるのに勇気がいる方も多いようです。「空間全体も、同じように加飾をしないと似合わないのでは?」と思うかもしれませんが、躯体現しの中に一枚合わせてみるだけでもハマります。
「このドアにはこのテイスト」と決めつけず、より自分らしい使い方を見つけてもらえたら嬉しいです。
パーツ選びに光るこだわり
毎日触れるドアノブ・ドアハンドル。操作のしやすさも、もちろん大切ですが、自分が好きな見た目であることも同じくらい大切。アクセサリーのように、そのドアのキャラクターを決めるパーツでもあります。
ドアのパーツを選ぶ上で一番大切なのは、使いたいものが取り付けられるのか?
特にドアノブ・レバーハンドルはドアの厚さ、構造によって様々な角度から検討されるとても難解な場所なので、使用したいものがあるときには、早めに施工する工務店さんにご相談しておくことをおすすめします。
ガラス越しに気配を繋ぐ
お部屋の奥まで光を届けてくれたり、帰ってきた家族の気配を伝えてくれるガラス入りのドア。空気や音など目に見えないものだけを仕切ってくれるのが大きな特徴です。
また、室内窓と組み合わせて視界を広げる方法も!寝室や書斎など、小さな空間の仕切り方として取り入れている方が多いようです。
ガラス入りのドアを検討する場合、ガラスの種類にも注目!
寝室や収納、水回りなど「視線は通したくないけれど、光だけ届けたい」といったケースではチェッカーガラスや曇りガラスという選択肢もあります。
その後の暮らしもイメージして「ガラス越しの景色をどう見せたいか?」を考えておけると良いと思います。
家づくり経験者に聞く「ドア選び、実際のところどうしてました?」
いかがでしたでしょうか?記事を書いている私は若干のドア酔いを起こしています。
それほどドアの世界は広い!「ドア」に着目して空間事例を見てみると、いろんな可能性が広がっていることに気付かされます。
しかし、「あれもできる」「これもできそう」と妄想が膨らんでも、叶うものには限りがあるので、家全体のバランスを考えるのも大事。実際の家づくりで必要になってくるのは、優先順位の付け方なのかもしれません。
最後に、家づくり経験者であるtoolboxスタッフ2名に「ドア選び」について話を聞いてみました。
case1 toolboxスタッフ・竹沢邸
家づくりの中で、使うドアはどんな風に決めていきましたか?
以前住んでいた家が寒かったこともあって、今度の家は広くなるし、土地柄寒くなる日も多いので、できるだけ小さく閉じておけるように扉の位置や枚数を決めていきました。また、引き戸・開戸など扉の形状も「パントリーはいつも開けておいて、来客時だけ閉めれるように引き戸にする」など、住んでからの暮らしを想像しながら、初期の段階で決めていました。
具体的にどんなドアを選ぶかについては、壁・床・天井が決まった段階で考え始めたと思います。
自由設計のため、好きなドアが選べる環境ではありましたが「絶対これを使いたい」といった強いこだわりはなく、家具やキッチンなど、空間の主役を決めて、それを引き立たせてくれるような存在として考えていきました。
基本は工務店さんにおすすめしてもらった仕様で揃えていって、リビングに繋がる入り口だけ、こだわることに。
工務店さんにおすすめされた仕様で揃えた理由は何ですか?
我が家の設計施行を担当してくれた工務店さんには、いつも仕事をお願いしている建具屋さんがいて、造作で建具をつくってくれる体制でした。
そのため、いわゆる標準仕様というのはないのですが、家づくり計画前に参加した見学会で「最近、多く採用されているのはこんな仕様のドアですよ」というのを見せてもらっていて。それが理にかなったシンプルなものだったので、この仕様で揃えていこうと決めました。
家の中のドアを同じサイズ、同じ素材や仕様で揃えたのは、見た目が揃うし、工務店さんも工程的につくりやすかったりとメリットがあると判断したからです。
リビングドアで、こだわったポイントを教えてください。
リビングドアはガラスで、濃い色にしたいなと思っていました。Pinterestで具体的なイメージを集めて工務店さんに伝えました。
悩んだのはガラスの大きさ。上下いっぱいにガラスのはまっているドアも考えたのですが、以前住んでいた家のガラスドアで、子供の指紋がつくのが気になっていたんですよね。
それと、ドアを境に違う種類のフローリングを使っていて。床の切り替えがあると、足元の見え方も変わりそうだなと思って、上部だけガラスのあるタイプにしました。
レバーハンドルは海外製のものを施主支給しました。取り付ける部材が足りなかったり、バックセットの寸法が取り付けたいドアと合わないこともあるようなので、施主支給する際は、早めに工務店さんに確認してもらうと良いと思います。
※竹沢邸の家づくりは、こちらの連載コラムでも詳細をご覧いただけます。
case2 toolboxスタッフ・小尾邸
小尾邸のドアギャラリー
トイレの扉は『オーダーフラッシュドア』を塗装してシンプルに。好きなものを施主支給した表示錠が、キャラクターになっている。
小尾が以前にリノベーションした住まい。この時は「おばあちゃん家みたいな雰囲気」をコンセプトに、『木製ガラス引き戸』を採用していた。
家づくりの中で、使うドアはどんな風に決めていきましたか?
私たちが購入した中古戸建は、内装が綺麗な状態でした。ドアも使える状態ではありましたが、質感がツルツルしていて、イメージと合わないなと思ったので、全て取り替えることに。
家の中でもドアは、入り口として結構印象が強いので、費用のことはおいといて、まず「ドアを開けた先のイメージをどう持たせたいか?」を大事にしようと考えていました。
自分たちもそうですが、ゲストの目線も考えて、家のコンセプトである「南仏」に合わせて家の入り口である玄関から、各居室につながる入り口を開ける時にどんな思い・印象を抱いて欲しいか?を想像しながら妄想を膨らませていましたね。
そこから雑誌や好きな本を沢山見て、合いそうなイメージを拾っては付箋を付けて、具体的なイメージに落とし込んでいきました。
引き戸はなんとなく和のイメージがあるから、最初の段階で検討からは外して、全て開き戸で。
費用感と、やりたいこと、自分の知っている材料で実現できるのが『木製パインドア』でした。同じシリーズをつかいながら、色付けで違いを出して行くことに。
ドア選びで、こだわったポイントを教えてください。
一番こだわったのは家の入り口である玄関ドア。そこに予算もかけているので、家の中全てをこだわるよりも、全体のバランスを考えながら、形や仕様を決めていきました。
1階は白ベースで塗装しています。リビングだけ、緊張感を生みたくなくて、壁と同じ白ではなく、アイボリーを選択しました。2階は少し雰囲気を変えて、山小屋の印象をつくりたいなと思って。雑誌から見つけてきたイメージで、階段をグレーにしたのですが、その塗料が余ったので、それを使って塗ってもらいました。
迷ったのは、枠を塗るのか塗らないか?結局枠は壁と同じ白にしてもらったのですが、今思えば枠まで塗ってもよかったかなとも感じています。そのお部屋に入る前の印象をドアで演出したいという時に、枠も白だと、白塗装の壁の中に収まってしまう感じがして、ドア自体の主張が弱まってしまう感じがしたんです。
一方で、トイレや水回りはそんなにこだわらなくて良いかなと「オーダーフラッシュドア」でシンプルに仕上げてもらいました。
やりたかったけれど、あきらめたことはありますか?
今思えば、ドアノブにもっと変化をつけたかったです。
その当時はtoolboxでも扱っているドアノブの種類も少なくて、とりあえず「木製パインドア」のオプションで選べるものから選定しました。
使ってみたいドアノブもあったのですが、現場でドアへの加工が必要になってしまうので……。自分の理解もないと説明の仕方が難しいなと思って採用を断念しました。
私は、使いたいものを施主支給でお願いしていたのですが、何かあったときに対応ができるように、自分がきちんと理解しているものから選びたかったんです。今だったらtoolboxで取り扱う商品も増えたので、また違った選択になっていたと思いますね。
また、ドアを施主支給するにあたっては、使う候補が決まった段階で早めに工務店さんに相談するなど、前もって情報共有するように気をつけていました。
※小尾邸の家づくりは、こちらのコラムでも詳細をご覧いただけます。
「ドアガイド」 Vol.1では、ドア選びの第一歩として、空間に馴染ませるのか主役に置くのか、ドアをどんな存在とするのかを考える手助けとして空間実例や、家づくりの経験者のインタビューをお伝えしました。
しかし、一筋縄では行かないのがドア選び。工事の体制に関わることも多いため、施主支給・施主指定する場合には、早い段階で施工をするパートナーに情報を共有しておくことも大切です。
Vol.2ではそのポイントも踏まえ、ドアを選ぶために抑えておくべきキホンについてご紹介します。
※こちらの「施主支給ガイド」も参考にしてみてください。