「中古マンションを買ってリノベーション」と聞くと、既存内装を全て壊して、スケルトンから空間をつくり上げるというイメージを持つ方が多いかもしれません。そうやって、こだわりを詰め込んだ自分仕様な空間をいちからつくる方法もあるけれど、「ほどほどに手を加えられればいい」という考え方も、あると思います。
今ある空間を少しだけアレンジして、自分たちの暮らしにあった形にチューニングする。出来上がった家の形も一生物だとは思わず、その時の暮らしや気分に合わせて、手を加えて変えていく。そんなふうに等身大で住まいとの暮らしを重ねている井出さんにインタビューしてきました。
間取りも設備も既存を活かして、LDKを中心にリノベーション
「いちからDIYするのは面倒くさいんだけど、“ちょっと手を加えたら良さそうだな”というものを見つけていじるのが好きなんです。リサイクルショップで売られていた家具を、自分でリメイクしてみたりとかね。持っている家具も、メルカリで手に入れたものだったり、リサイクル品がほとんどです」
そう話すのは、toolboxのグループサイト、東京R不動産で働く井出さん。夫と長女と暮らす住まいは、築45年の団地。「古いからか、エレベーターなし階段棟だからか、すっごくお手頃だった」という約74㎡の住戸を購入し、リノベーションしました。
「元は3LDKだったんですけど、バルコニーに面した和室をリビングにつなげて2LDKにしたら、私たち家族にちょうどいいなと思ったんです。キッチンと洗面、お風呂、トイレは10年くらい前にリフォームされていて、そのまま活かせるなと思ったこともこの物件を選んだポイント。予算を低く抑えたいという理由もあったけど、気になるところだけをいじって、いい感じにできたらなと思って」
LDKに隣接していた和室は引き戸も建具枠も取払い、LDKごとフローリングを貼り替えてひと続きの空間にしました。こちらのスペースは、現在は長女の遊び場として使っているそう。
元は天袋付きの押し入れだった部分は、天井近くまで高さのある引き戸で仕切って、クローゼットにしました。
「これはやってもらって良かった。実際はそんなに天井が高い家ではないんだけど、引き戸の背が高い分、天井を高く感じるんですよね」
キッチンは既存のシステムキッチンをそのまま使いつつ、ダイニングとの間に『フリーカット無垢材』と『クラシックリブパネル』でカウンター収納を造作しました。
「料理をするときは集中したいから、対面キッチンにはしたくなかった。独立型にしたいくらいだったけど暗くなるから、カウンターと冷蔵庫収納で囲んで、ちょっと独立感をつくってもらいました」
カウンターの中は、電子レンジや食器をしまう収納に。冷蔵庫の上も、ストックを収納するスペースになっています。
「整理整頓が苦手だから、収納はあまりオープンにしたくなかった。でも、しまいこむと不便なものも多いから、リビング側からは中身が見えないカウンター収納と冷蔵庫収納は使い勝手がいいです」
気になるところだけ変える、「やりすぎない」リノベ
井出さんがリノベーションを依頼したのは、toolboxの施工チーム・ツールボックス工事班(TBK)。「全部を新しくするのではなく、既存を活かしつつ、気になるところだけ変えたい」という井出さんの望むリノベーションを、理解してくれそうだと思ったことが依頼した一番の理由だったと話します。
「キッチン自体はまだ新しかったしシンプルだったから、活かそうと思ってました。でもツヤツヤのキッチンパネルが貼られていて、それは好きじゃなかったんですよ。そうしたらTBKがマットな質感の『塗装のキッチンパネル』への交換を提案してくれて、それだけで随分いい感じになりました。キッチン収納の把手も『把手の金物』に付け替えました」
木目調シートが貼られていた個室のドアは、「嘘っぽくて嫌だなぁ」という井出さんの声に対して、扉を交換するのではなく塗装で塗り替えて印象を一新。トイレに付いていた収納ボックスも、ダークブラウンで重たい印象だったのを白く塗り替え、既存を活かしました。
玄関横にあった個室は壁紙を貼り替えただけ、玄関ホールや水まわりは壁床天井の仕上げをやり直しました。間取りをほとんど変えず、設備機器も既存を活かしたリノベーションは、スケルトンからのフルリノベーションをした場合に比べてコストを押さえることに繋がりました。
「そもそも、“やりすぎないリノベ”をイメージしていたんですよね。夫は、天井を躯体現しにするとか、ゴリゴリの“リノベ感”がある空間にしたいと言ってたんですが、つくり込みすぎてしまうと、長く暮らすうちに飽きちゃうんじゃないかと思ったんです」
不動産屋という仕事柄、たくさんの住まいを見てきた井出さん。その中には、リノベーションでとことんつくり込まれた家も、元々の良さをそのまま活かした家もありました。そうした家々を見るうちに、「自分はこのぐらいがいいな」という価値観が育まれていたことは大きかったと話します。
「何もわからなかったら、とりあえずスケルトンにしていちからつくり込んでいたかも。でもこの物件は、そうしなくても活かせるところが多い物件だったから」
“ちょっと手を加えたら良さそうだな”というモノを見つけるのが得意な井出さんのその感性は、物件選びそのものにも生かされていたようです。
「窓の外の景色がいいから、家の中をそんなにつくり込まなくてもいいなと思ったのはあるかも。この眺めで十分いい家だなって。あと、元が古い団地じゃないですか。この団地の佇まいから受けるイメージと全然違う空間にしちゃうのは、自分的には違和感があったんですよね」
自分の住まい探しをするより前に、お客様のご案内でこの団地を訪れ、その時から「いい団地だな」と思っていたという井出さん。
「古いけれど管理が行き届いているし、たくさんの緑と広場がある。広場に行けば知らない子供同士でも自然と遊び出す距離感だったり、子供たちが危ないことをしていたら怒ってくれる大人がいる。あと、パソコンの解体教室だとか、個性的な趣味の教室をしている人たちもいて(笑)。いろんな世代のいろんな人が住んでいる、そんな団地ならではの環境にも良さを感じています」
後からも手を加えていく。気負わずおおらかに家と付き合う
「つくり込んだ家づくりをしなくてもいい」という考え方の背景には、「気になった時にまた手を加えていけばいい」という思いもあったと井出さん。住み始めて3年が経ち、すでに家の数箇所をアレンジしているそう。
「床は、赤みの抜けた乾いた表情が気に入って『スティルオークフローリング』を貼りました。窓から見えるヒマラヤ杉との相性もよくて、その景色を気に入ってたんですが、子供の食べこぼしでできた汚れが目立つようになっちゃって(笑)。ある日思い立って、『ワトコオイル』で濃い色に塗り替えたんです。サンダーがけは面倒でやらなかったけど(笑)、案外ちゃんと色がつきました」
キッチンカウンターの上に造作した可動収納棚は、元はカウンターと同じマホガニー色だったのを、思いつきでダークネイビーに塗装。ボックス型の棚も、井出さんがDIYで自作したそう。
洗面台は既存をそのまま使い、上部の収納棚だけIKEAのミラーキャビネットに変えていましたが、住んでいるうちに洗面台そのものも変えたくなって、セミオーダーできる洗面台をネット注文して交換しました。
「取り付けは別手配が必要だったので、ハウスクリーニングやリフォームなどの業者を探せるサイトで業者さんを探しました。お願いした業者さんは、組み上がっている洗面台を設置するだけだと思っていたようで、実際はパーツの組み上げからだったので四苦八苦してました……。今後はタイルでも貼ってみようかな」
この春、第二子が誕生した井出さん一家。家族構成の変化、子供の成長、井出さんの気分といったきっかけで、この家は今後も少しずつ手が加えられていくのでしょう。井出さんの住まいへの向き合い方は、家づくりは気負わずもっと気軽に楽しんでいいものなんだよと、教えてくれているようです。
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。
住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
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※毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。