空間の中でのドアの存在から考えよう
自分らしいドア選びを叶えるドアガイド。Vol.1ではたくさんの空間実例から「自分らしいドア」の妄想を膨らませてみましたが、Vol.2では、具体的にドアを選んでいくための方法を紹介します。
ドアと一言にいっても開き方や素材、仕上げなど色々あるんです。たくさんの選択肢から選んでいくために、まずは、「空間の中で、ドアをどんな存在として置きたいか?」を考えてみましょう。
どんなシーンでも「アイコンにするか・背景にするか?」「つなぐか・閉じるか?」の2点を整理してみることで、選択肢は絞られます。
Vol.2では「空間の中での存在」に焦点を当てたドア選びの考え方と、家の場所ごとの計画の仕方をお伝えします。
ドアの世界を案内してくれるのはtoolbox建具担当のこの3人。
それぞれのドアの特性や、選ぶ時に考えておくべきことを教えてもらいました。
(左から山下・仙波・一杉)
アイコンにするか・背景にするか?
ドア選びの最初のキーワードは「アイコンにするか・背景にするか」。
ドアは空間の世界観をつくり込むのに有効なパーツです。家の中でもメインの場所にあるドアは、空間の主役として存在感を持たせたい。一方で、主役を他の部分にもってくる場合、周囲の仕上げに馴染ませ、壁と一体に見せたいという考え方もあります。
そんなドアの存在感の強さは「面材の組み方」と「塗装の仕上げ」の掛け合わせによって決まります。
面材の組み方
ドアは面材の組み方によって呼び方が変わります。「フラッシュドア」「框ドア」というワード、聞いたことありますでしょうか?
フラッシュ =「平面の」という意味。
芯材の両側に合板などの面材を接着して表面を平らに仕上げたもの。凹凸が少ないので周囲に馴染む軽やかな見た目に。ドアノブなどのパーツや塗装の仕上げによって自分らしさを表現しやすいのが特徴です。
框材と呼ばれる枠でぐるりと囲い、その中に木やガラスなどの面材を入れてつくられる扉。構造そのものが伝統的な意匠として楽しめ、木の素材も色々な選択肢があります。
構成する要素が多いため、重厚感を演出したり、印象的に見せることができるドアです。
元々、ドアといえば框ドアが一般的でした。工業化が進む中で、生まれてきたのが安価に作れるフラッシュドア。比較的軽量であったり、木を使ったものでも反りづらいなどのメリットもあります。
一般的にフラッシュドアは、シートを使ったシンプルな仕上げのものが多いですが、toolboxでは素材感を楽しんでもらえるように、ラワンやシナといった素材感のある合板でつくっているのが特徴です。
塗装の仕上げ
一般的に販売されているドアの多くが、表面にシートが貼られた状態のもの。そのため、塗装仕上げについては考える機会が少ないかもしれません。
一方で、toolboxで取り扱っているのは本物の木を使ったドア。そして「無塗装」の状態で提供しているものが多くあります。表面に何も仕上げを施していない、いわば“すっぴん”の状態です。
その理由は、仕上げによって様々な印象づけを楽しめるようにしているから。仕上げ方については、こんな選択肢があります。
『ベンジャミンムーア』などの水性塗料を使って塗りつぶす仕上げ方。壁の色味とコントラストをつけたり、同じトーンで統一感を持たせたり……、選ぶ色味によって様々に印象を変化させることができます。
木目の凹凸がうっすらと浮き出るのは木のドアならでは。シートを使ったドアとは違う立体感があります。
工務店さんに相談しながら現場で塗ってもらったり、ちょっと頑張って自分たちで塗ったり。工場での塗装と違い、現場での塗装をするとムラも出てきたり、均一な仕上がりにするのは難しい部分もあります。そんな特性も、自然の木を使ったドアだからこそ。沢山の色の選択肢から、突き詰めて現場の色に合わせて仕上げられる喜びがあります。
自分たちでドアを塗装をしてみたhow to makeも参考にしてみてください。
ワトコオイルを調色して、自分好みの色をつくり、無塗装のドアに塗ってみた
こだわり塗装で飴色・重厚感を追求!『トラッドパネルドア』塗ってみた
一方で、イメージ通りのものを手に入れられる安心感があるのは塗装済みの商品。toolboxでは、木の個体差に合わせてオイルの色味を調整している『木製ユニットドア』、家具や内装のテイストに合わせて選んでもらえるよう、オリジナルで調色した『クラシックパネルドア』といった塗装済みのドアを用意しています。
ケーススタディ:アイコンのドア・背景のドア
「面材の組み方」と「塗装の仕上げ」の組み合わせによって、変化するドアの印象。例えばこちらの空間で、ドア部分だけを合成してイメージしてみます。
家具や飾ってあるものが際立つフラッシュドアと比較して、形状が複雑になる框ドアを使った事例は、ドア自体にも視線が向かいます。また、塗装についても壁・床とコントラストをつけるほど存在感が増しているのが分かると思います。
こちらの事例では、廊下側から見た時に他の空間のドアと連続して並ぶため「リビングのドア」と視認しやすいものにしようと、シンプルな形状の框ドアを造作。壁面に馴染ませた「オーダーフラッシュドア」とは見た目に差をつけました。
塗装の仕上げは『アイアン塗料』のチャコールグレーを選択。
フローリングやラワンの収納扉、ダイニングテーブルや椅子など、内装に木の要素が多くある中で、ドアは色と質感でコントラストをつけました。
このように、壁・床などの内装との関係だけでなく、家具や照明などお部屋を構成する要素全体をイメージした上で「ドアの存在感をどのくらい出したいか?」と考えていくと良いと思います。
つなぐか・閉じるか?
次に考えておくべきキーワードは「つなぐか・閉じるか」。
リビングなどみんなが集まる場所では「音や空気は仕切りたいけれど、光は届けたい」というように、ドアで完全に閉じたくない場合があります。逆に、寝室やサニタリーなど、プライベートな空間はしっかり閉じておきたいといった考え方も。
そんな空間のつながり度合いは「開き方」と「面材の種類」でコントロールできます。
開き方
空間のつながり方を左右するドアの開き方。よく耳にするのは「開き戸」「引き戸」と言ったワードですが、その中にも色々な種類の開き方があるんです。
普段開放しておきたい場合、引き戸を選択するのが一般的です。一方で、四方を枠で囲う開き戸は気密性が高く、しっかり閉じて起きたい場所に有効です。
開き戸・折れ戸は扉の開閉スペースを考えておいたり、引き戸は壁面に扉の収納スペースが必要だったりと、開き方によって施工の仕方や間取りの組み立て方も変わってきます。
引き戸の中にも2種類の取り付け方があります。床にあるレール上で扉をスライドさせて開閉させるタイプと、天井の上側につけたレールに扉を吊るして開閉する「上吊り」タイプです。
「上吊り」は足元のレールを無くすことができるため、開放時に、より空間のつながりを感じられると思います。
面材の種類
つながり方を左右するのは、開き方だけじゃない!面材の種類の選択によって「光だけ」「空気だけ」を通すことだってできちゃいます。
光と視界を広げてくれるガラスドアは、ガラスの大きさや種類でもつながり方をコントロールできます。空気を通し、湿気が気になる場所の通気性を高めてくれるルーバーは、フラットな壁面に変化をつけてくれるなど、見た目にも効果的です。
場所ごとのケーススタディ
ここからは、家の場所ごとに、実際にどうやって計画に落とし込んでいくのかをお伝えします。
リビング
人が集まる家の中心となる場所。そんな場所につながる入り口は、他の場所とは差をつけて、象徴的な一枚にしてみるのがおすすめです。
寝室や子供部屋などの個室
家族だけが出入りするプライベートな空間は、しっかり閉じておけるドアを選ぶケースが多いです。家族の中で生活時間帯が異なる場合は、光や音が漏れない計画にしておくことも忘れずに。
書斎
オンオフをきちんと分けて、しっかり集中するための場所。小さなスペースにつくる場合、光を届けてくれるドアを選ぶのも手ですが、会議の時など、他の部屋の音を気にしなくてよいように閉じておけるドアを選ぶのがベターです。
洗面やウォークインクローゼット
家全体でみた時にはそこまで優先度が高くないため、価格重視で選択することが多い場所ですが、カラー塗装やドアノブなどの小物で遊んでみるのがおすすめです。ルーバーやガラリを使うと通気性を良くすることができます。
収納扉
壁面に占める面積が大きい収納スペースの扉。通気性の良いルーバーは何もない壁面に変化をつけることができるのも良いところ。逆にそこまで印象をつけたくない場合はフラッシュドアでシンプルにつくるのもあり。
空間の中でのドアの役割から、選択肢を絞る方法をお伝えしました。Vol.3では、サイズオーダーやドアノブ、枠などのパーツ選びなど、現場の取り付け工事に関わる部分についてご紹介します。