「基本の道具工具ガイド Vol.3 丸ノコ編」では、丸ノコの基本的な使い方や必要な道具、注意点などをご紹介しました。丸ノコはどうしても危険を伴う工具ですが、安全な使い方をマスターすれば、DIYの幅を大きく広げてくれる存在です。
今回は丸ノコができることを3つのパターンに分けて、使う道具や手順をご紹介。丸ノコができることの幅の広さが伝わると嬉しいです。丸ノコを実際に使う前の手順や揃える道具の確認の参考としてもお使いください。
森村慧(通称モリソン)
toolboxの設計施工チーム、TBK(ツールボックス工事班)のチームリーダー。左利き生まれの両利き。
case1:2×4材を直角に切る
DIYでもよく用いられる、2×4材を丸ノコで好みの長さにカットしてみます。使うのは、床と天井を突っ張って柱をつくれる『突っ張りウォールキット』の2×4材。天井の高さに合わせてカットする必要があります。
必要な道具
・安定した作業台
・鉛筆
実践
Vol.3でご紹介した安全確認を必ず行ってから、作業に取り掛かりましょう。
まず、コンセントを差す前に(重要!)、「ネジやボルトに緩みがないか」「ノコ刃に問題はないか」を確認。そして、刃の位置を材の厚みに合わせて設定します。
刃の後ろのネジを回すとベースが動き、切り込みの深さを調整できます。切り込みの深さは、「材の厚さ+3〜5mm」が基準。2×4材の厚みは38mmなので、差金を当てて42mm程度に設定し、ネジを緩みがないようにしっかりと締めます。
丸ノコの準備が終わったら、墨出しをします。コンベックスで長さを決めたら差し金か丸ノコガイドを使って線を繋いでおくと切りやすいです。ここまでの最初の動作は様々な切り方に共通するのでおさえておきましょう。
調達した材の木口が直角になっていないと、どんなに綺麗に墨出しをしても曲がった仕上がりになってしまいます。木口が曲がっていたり綺麗でない場合は、材の長さに余裕があれば、端を垂直に切り落としてから正式に墨出しをすることをおすすめします。
木口にバリが出ていたり、凹みがあったり、汚れている場合も同様。購入したままの材は木口にマーカーで印が書かれていたりと綺麗ではない場合も多いんです。
切断する場合、必ずノコ刃の厚み分(2mm程度)の切りしろが出ますが、これを考慮しないとカット寸法に誤差が生じます。墨出しするときは墨線のどこで切るかを必ず意識しましょう。
切り出したい寸法に墨線の内側がくるように墨出しをし、ノコ刃の内側を墨線の内側に合わせると、墨線が切り落とせて正確な寸法に切り出せます。
例えば以下のような感じです。
正確な長さを材の左側から測る場合
・正確な位置が墨線の左側に来るように線を引きます
・ノコ刃の左側を墨線の左側に合わせます
正確な長さを材の右側から測る場合
・正確な位置が墨線の右側に来るように線を引きます
・ノコ刃の右側を墨線の右側に合わせます
2×4材を作業台の手前においたら、丸ノコのベースにあるガイドに墨を合わせます。このときノコ刃を直接見て、墨線にあっているか確認しましょう。丸ノコの位置を決めたらベースの左側に丸ノコガイド、ベースの下に2×4材をぴったりと合わせます。
丸ノコガイドを左手、丸ノコを右手で使うのが基本姿勢。ノコ刃の真後ろに体がこないよう注意します。
材にノコ刃が当たらない位置から回転を開始し、ガイドにベースを沿わせてスライドさせます。
最後に切断面を軽くサンディングしたら完了です!
「バリ」とは、木などを切った際に木が割れて出るささくれや鋭い突起のこと。丸ノコで切断した時にバリが多く出てしまう場合はゆっくり目に丸ノコを動かしてみてください。
それでも仕上がりが気になる場合は、切断するところにマスキングテープを貼って、その上から墨出しをして切るとバリが出にくいです。少しバリが出てしまっても、仕上げにサンディングすると気にならなくなります。
case2:フローリングを納まりが良い形状に切る
次は、フローリングを切ってみます。
フローリングはDIYで施工しやすいものも増えてきていますが、部屋ぴったりに敷き詰めるには、絶対にカットする必要があります。短手方向のカットはcase1と同様でOKですが、壁の凹凸に合わせてカットしたり、貼り終わりの最後の一列がハマるように長手方向に切る必要があることが多く、難易度高めです。
手ノコやジグソーなどでも可能ですが、面積が広かったりする場合は丸ノコのスピード感が重宝します。また、丸ノコの方が切断面が綺麗に仕上がるというメリットも。
case2-1:凹凸に合わせて切り欠く
畳や既存のフローリングの上からDIYで施工できる『イージーロックフローリング』をカットしてみます。ボンドも釘もいらないので、切れさえすれば自分で施工できます。
部屋は四角に見えて色々な出っ張りがあるもの。柱などに干渉しないように90度に切り欠く場面は意外と多いです。
必要な道具
・安定した作業台
・鉛筆
切り欠く場合は丸ノコだけでは切り落とせません。最後まで切り落とさずに途中で止めるためです。ノコギリ(手ノコ)を併用しましょう。
実践
安全確認を必ず行ってから作業に取り掛かりましょう。
部屋の凹凸に合わせて墨出しをします。今回は、30×40mmに切り欠いてみます。
位置を確認したら、ノコ刃が材に当たる前の位置から回転を開始し、ノコ刃の先端が墨線の角に到達するまで進めて、一度回転を止めます。回転が完全に止まってから、次は材の向きを変えて反対側も同様に切り込みを入れます。
両側から切り込みを入れると表は切れていますが、裏は角の部分が切れていません。
ノコ刃の形状からして角はカットができないので、最後はのこぎりを使って切り落とします。
角にぴったり納まる切り欠きができました!
case2-2:長手方向に切る
フローリングの最後一枚を貼るときに直面するのが、フローリングの幅がハマらないということ。ぴったりの幅にするため、長手方向に切る必要があります。
幅120mmの『スティルオークフローリング』を長手方向にカットして幅80mmにしてみます。
必要な道具
・丸ノコ用T型定規(丸ノコに付属のものでもOK)New!
・クランプ New!
・安定した作業台
・鉛筆
丸ノコガイドよりも長く切る時は、丸ノコに付属していることが多い、「丸ノコ用T型定規」を使います。
実践
今回はわかりやすいように大きいものを使います。
丸ノコ用T型定規は剣のようになっていますが、竿を丸ノコのベースに固定し、突き当てを材に当てて平行をとるというわけです。
T型定規を使えば均一な幅で平行にカットできるので、何点か基準となる点を打っておきましょう。
丸ノコ用T型定規の使い方です。丸ノコを横から見るとベースに穴が2つ空いています。
丸ノコ用T型定規をベースの2つの穴に差します。
突き当てを材にぴったりと沿わせ、刃の位置を決めます。
位置が決まったら穴の上にあるネジをしっかりと締めて固定しましょう。
T型定規を使う場合も基本姿勢は、右手がT型定規の持ち手、左手が丸ノコです(T型定規が丸ノコの右に来る場合は逆になります)。しっかりとT型定規をおさえることを意識します。
切りはじめは今までの例と同じく、回転数が安定してから材にノコ刃を当てて、そのままスライドさせていきます。
材が安定しない場合は、クランプで固定するのがおすすめです。後ほど動画でご紹介しますが、切り進めていくとクランプに刃が当たってしまうので、途中で回転を止めて、クランプの位置を変える必要があります。
長尺を切る時以外でも押さえの補助として使うと便利なので持っておくといいでしょう。
大切なのは、突き当てが材の側面に沿っていて、丸ノコのベースが材の面にしっかりとあたった状態でスライドすること。この2点を意識しましょう!
綺麗な切り口!こういった長尺は手ノコだとかなり時間がかかる上、硬ければかなり大変なので、丸ノコがあるとかなり便利です。ちなみに卓上丸ノコは30cm程度までしか切れません。
長尺かつ水平のカットは、手持ちタイプの丸ノコに向いている作業の一つです。
切れ端を何ヶ所か測っても同じ幅で平行にカットできていました!
case3:平面・断面を斜めに切る
斜め切りはなかなかのレアケース。今までは丸ノコガイドを使って面を垂直に切っていましたが、垂直ではなく角度をつけたパターンと、木口を斜めに切るパターンを簡単にご紹介します。
例えば『ソーホースブラケット』を組み立てるときや、額縁の角のように留め切りをしたいときなんかに斜めのカットが必要になります。
case3-1:面に角度をつけて切る
今回は、2×2材に「ソーホースブラケット」をつけて使えるように、74度でカットしてみます。
必要な道具
・丸ノコ用角度切り定規 New!
・安定した作業台
・鉛筆
材を斜めに切りたい場合は、case1で使用した直角の丸ノコガイドではなく、「丸ノコ用角度切り定規」(角度をつけられる丸ノコガイド)を使います。45度と垂直(90度)の2つの角度に対応しているガイドなども流通しているので、用途に合わせて選ぶと良いです。
実践
丸ノコ用角度切り定規のネジを緩めてカットしたい角度で固定。
case1の使い方と同じように、丸ノコガイドを左手でおさえて切り進めます。
case3-2:木口を斜めに切る
ノコ刃を斜めにして木口に傾斜をつけて切ることができます。料理でいう削ぎ切りのようなイメージです。
例えばデスク天板の木口を斜めに切って軽やかに見せたり、額縁のように斜めの木口を突き合わせたり(留め切り)したいという場合に使える機能かなと思います。
ただし、断面を斜めに切ること自体、垂直に切るよりも反発する力がはたらきやすかったり、留め切りは精度が求められるので、難易度は高いと言えます。
試しにcase3-1と同様に面を斜めにカットしつつ、木口にも傾斜をつけて、面と木口をどちらも斜めに切ってみました。
・用途に応じた機能の丸ノコガイド
・安定した作業台
・鉛筆
傾斜切りは丸ノコ本体の機能で行えるので、基本的な道具が揃っていれば大丈夫です。
実践
ノコ刃の前方にある「角度調整用ネジ」を緩めると、ベースの角度を変えられるのです。
0と書いているところに合わせると垂直。この画像では40度に設定されています。
case1と同様に切っていけばOKですが、傾斜をつけて切るときは垂直に切るときよりも負荷がかかりやすいため、キックバックに注意して扱いましょう。
丸ノコの色々な使い方をご紹介しました。切るという行為をマスターすると、フローリングを貼ったり、壁材を貼ったりと、大掛かりなDIYにも挑戦できる土台になります。自分の手で実現できることが広がると、やりたいことはおのずと増えてくるもの。自分でやってみたい!と感じた方はぜひ一歩踏み出してみてください。
何度もお伝えしていますが、丸ノコは危険を伴う工具です。慣れてきたからと油断するのが一番危険!必ずVol.3でお伝えした注意事項と丸ノコの取扱説明書をよく読んでから作業に取り掛かるようにしてください。
今後も基本の道具・工具の使い方をご紹介していきます。それではみなさん、ご安全に〜!