やっと暑さも落ち着き、秋らしい季節に……ってもう2024年も残り2ヶ月?

異常気象に振り回され季節感を肌で感じるのが、ますます難しくなってきたと感じる今日この頃。いかがお過ごしですか?

去年10月末にオープンした大阪・中津ショールームは1周年。移転した翌年、コロナ禍となった東京・目白ショールームは5周年を迎えることができました。先月行われた周年記念祭には、両ショールームともたくさんの方にご来場いただき、嬉しい記念日となりました。

そんな目まぐるしい日々の中、最新カタログがついに完成!

毎年変わる表紙のテーマを含め、最新カタログに込めた思いをお伝えさせていただきます。

表紙のテーマは、「妄想の家ナイト」でのスタッフの思いや世相を反映

妄想の家のイラストを表紙にしたカタログをつくりだして、今年で6年目。表紙づくりのスタートは、スタッフほぼ全員参加の「妄想の家ナイト」からはじまります。

毎年、事前に「自分が住みたいと思う家」を妄想してきてもらい、一人一人発表していく社内の一大イベント。世の中に対する課題や不満をユニークに解決できるという視点をもって発表してもらうのですが、今年は新たに、「Back to the Future」というテーマも追加。もしあの時に○○がなかったら、いまの、未来の在り方は違っていたんじゃないか。そんな常識にしばられず、俯瞰した視点も加えて考えてきてもらうことに。

お酒を飲みながら、発表時間は一人2分30秒。イラストで表現するもよし、イメージ写真で伝えるもよし。今年は生成AIにチャレンジしたスタッフも多かったのが特徴的でした。

大阪ショールームメンバーもいるので、リアルとオンラインのハイブリッド開催!この発表のアイデア、カタログのどこかに反映されています。

新しく入ってきたスタッフの意外な絵心を知ったり、大胆な野望が垣間見れたり。普段の業務とは違う一面を見れるのも楽しいところ。

休憩をはさみつつの約3時間。最後に、みんなから出た案をなんとなく近いテーマごとに分けていくと、その年のみんなの気分のようなものが見えてくるのですが、今年はかなり難航……

みんなのアイデアをリアルタイムでテーマ別に分類しているところ。

なんといいますか、今年は、「新築、リノベーション問わず、家の中は自由につくれる、いわゆるハード面はいかようにでも変えられるのはわかっている。ただ、それでは、どうにもならない昔につくられた制度や慣習といったソフト面に対し、今まで何とか押し込んでやりすごしてきたけど、ハード面で変えていくのはもうお手上げの段階です」という思いが溢れ出ている人が多い状況でした。

多様な生き方の時代といわれつつ、家族としての慣習、家父長制度的な価値観はまだ残っている。じゃあ、個室はありつつ、家族だったり友人同士だったりとシェアできるスペースがある家はどうだろう。2拠点居住に飽き足らず、多拠点居住するために、住宅ローンの在り方を変えられないか。夫婦でないと組みづらい住宅ペアローンの仕組みが変わったら、友人とセカンドハウスを持つもありえるよね。急激な円安、温暖化による異常気象、環境問題に対し、ポジティブに向き合える仕掛けがつくれないか、などなど。

家じゃないところから変えたい。家の中だけじゃ解決できない何か。色々考えて結局、原点回帰で昔のものがいいんだな、となってしまったり。古い田舎の家への望郷、新素材への提案などが多かったんです。さぁ、これらをどうまとめていきましょう……PRチームの仕事がはじまります。

「砂漠でゼロからのスタート、未来の息吹を表現したい」

過去5年、妄想=脳みそからはじまり、サボテン、貝殻、風船、電車といまあるモノを活かして家に見立ててきました。じゃあ、いまtoolboxが過去にしばられず、ゼロから家づくりを考えるなら?

そんな思いから、今年は象徴的なワンモチーフを決めることなく、荒廃しているようで、未来をみているようなSF的世界観。砂漠で未来の息吹を感じるような世界を描くことに。

左上から歴代のカタログ表紙たちを年代順に並べてみました。

毎年、イラストをお願いしている舞木和哉さんが、そんな難しいお題を形にしてくれました。表紙を裏面まで含め、じっくり見ていただくと過去の表紙のモチーフへのオマージュがちらほらと。舞木さんの遊び心、みなさんいくつ探せるでしょう?じっくり読み込んでみてください。

未来への息吹を感じられるような、朝日の昇るマジックアワーを表現する色合いがいいなと今年はグラデーションにチャレンジ!4つの色サンプルをみて悩んでいるところ。

今年は、ショールームでもらえるスペシャルエディションも

今年のメインカラーは、悩んだ末にマジックアワーを表現したピンクからブルーにかけてのグラデーションに決定!

なんですが、サンプルを見比べた時点でどうしても1つに絞るのを諦めきれず、さらに今回は特色でなくCMYK4色印刷で予算も変わらずいけるとのことで(大事なポイント!)特別バージョンとして少量ですが、砂漠のデザートカラーもつくってしまいました。

カタログ請求時は、マジックアワーの表紙が届きます。デザートカラーは、東京・目白と大阪・中津のショールーム、イベント時に限定配布。中身は一緒です。

みなさんは、どちらが好みですか?

表紙の色は、(左)マジックアワー (右)デザート と呼んでください。

毎年撮り下ろし!前半の妄想を実現した事例とモノづくりページ

中身の紹介にまいりましょう。

カタログ前半は、妄想を実現した人の家づくりを3件ご紹介。

今年も目の付け所が面白い、素敵なお家に訪問。じっくりお話を聞いてきました。その家の面白さを引き出す写真を撮ってくれるのはカメラマンの、兼下昌典さん。どんな妄想をしていたのかがパッと伝わる舞木さんのイラスト付き解説とともにご覧ください。

窓からの時間のうつろいを体感したいと夕暮れ前の時間に訪問。みんなでご飯と自作の円卓を準備中の様子を撮影。この後ちゃっかり、ご馳走になりました!(撮影:Masanori Kaneshita)

え!この奥が家なの?いわゆる再建築不可な物件をお宝と見いだしたSさんの家。ページをめくると現れる、室内との素敵なギャップをお楽しみに。(撮影:Masanori Kaneshita)

印象的な鉄、合板などのインダストリアルな素材たち。実は小さい頃の体験が素材選びに影響しているようで……(撮影:Masanori Kaneshita)

事例の後に続くピンク色の解説ページと見比べながら、それぞれの住まい手はどんな妄想を実現したのかをご覧ください。

毎年、住まい手の妄想を描いてくれる舞木和哉さんのイラスト。

その後に続くのは、私たちが大切にしているものづくりへの思いを伝えるページ。今年は2つの取引先の工場を訪問してきました。

職人さんの手さばきなど、一番いい瞬間を狙う、カメラマンの兼下さん。「木製室内窓」の工場にて。

いい写真ばかりで、写真選定会議は毎回白熱。「工業系レセップ」の工場の様子を選んでいるところ。

選び抜かれた写真がこちらです。

紙面の都合で小さいサイズになってしまうのが惜しい、いい写真ばかり。また、製作の背景などは、別途コラムでもご紹介したいと思います。

撮影:Masanori Kaneshita

撮影:Masanori Kaneshita

新商品も続々と。今年は事例写真もアップデート多めな商品カタログページ

商品ページは、全205シリーズ、約1000点を掲載。

最初のINDEXぺージでは、毎年の定番に加え、今回新しく追加したものを探しやすいように左ページにNEW ITEMがまとめられています。今回も新商品がたくさん追加されました。

一気につくるのではない、「After Reform」という選択肢

色々なアイテムを見ていただいたページの後半には、「After Reform」というメッセージを伝える見開きページがあります。

不動産の価格も建材の値段もあいかわらず上昇し続けている昨今。最初から全てをつくり込むのではなく、住みながら、暮らしに合わせて手を加えていく家づくりの手段があってもいいのでは?

住み替えしようと思っていたけど、予算に見合う家が見つからないから、今の家をアップデートしよう。そんな選択肢をする人も増えている気がします。

予算に合わせて色々諦めていくと、楽しいはずの家づくりに悲しい気持ちが増してしまう。それなら、一気につくり込まずあとから手を加えていくという「After Reform」という家づくりの考え方を通じて、ただ古くなったから新しくしたいだけではない、自分にとって譲れない思いは何なのかを考えるきっかけになれば幸いです。

紙のカタログの良いところは、やはり写真を見ながらジャンルを横断して、各商品を見比べられるところ。家づくりの予定がなくても、ただただぼーっと眺めて妄想を膨らませていただくもよし。ショールームでは、これから家づくりを始める方が、気になるアイテムに付箋をつけて、設計や工務店さんと、好きなテイストを共有するのに使っていただいてる姿をお見かけすることもあります。

家づくりの楽しさを体感していくお供として、ぜひ一家に一冊!無料でお配りしていますので、ご請求お待ちしております。

カタログ請求
https://www.r-toolbox.jp/catalog/

東京・目白と大阪・中津にあるショールームでも無料配布しております。

表紙のイラスト:Kazuya Mougi
事例撮影:Masanori Kaneshita
カタログデザイン:Daisuke Kano, Yuma Wada

おまけ1 今年のカタログ製作期間に出版され、同じ世相を感じた本たち

この夏から秋にかけてのカタログ表紙製作時期、はからずも2冊の書籍が発表され、それらが、私たちの砂漠の表紙とリンクするような内容になっていて、すごくドキっとしました。

ちょっと脱線しますが、せっかくなのでご紹介させてください。

1冊目は、いまの40代のスタッフたちが、その発売当時の10代後半、多大なる影響を受けた都築響一さんの「Tokyo Style」。30年以上の時を経て表紙を新装し復刊。書き下ろしの都築さんのあとがき翻訳「TOKYO STYLEの昔をいま」を読んでじーんときたり。当時の家には、スマホもパソコンも普及してなく、音楽や映画、本の配信サービスもなく、この本では、住み手の好きなものが圧倒的な物量として家に溢れ出ていた。それがその家の個性となり、ディスプレイとなり、私たちは、その世界にすごく魅了されていた。それがいまは……という内容です。こちらから読めます。

2冊目は、住宅業界の変化をリサーチして年に一度、気になるテーマを発表しているLIFULL HOME’S 総研のレポート。所長の島原万丈さんが取り上げた今年のテーマは、2014年の調査から10年ぶりの「STOCK & RENOVATION 2024 それでも、もっと住むことの自由」。

この10年での住み手の家に対する意識の変化などを読むと、こだわりすぎるのはかっこ悪い。コスパ、タイパを求め、家もファスト化している。自分がどんな家に住みたいか、どんな住まい方をしたいか、住生活に対する夢や憧れや理想像を考えることが面倒がられるようになっているという、なかなか衝撃的な内容。

もちろんこれは、広い層を対象にとったアンケートで、toolboxのサイトを訪れるお客様には必ずしも当てはまらないことだと思いつつ、世の中全体を俯瞰してみると、何か全体に同じようなムードを感じてしまい、砂漠の世界に思いを馳せたのでした。

とはいえ、私たちtoolboxは、自分の好きを反映させたい、みなさんの家づくりを全力サポートし続けます!

おまけ2 今年のプロモーション撮影の裏側

昨年は楽しく電車を走らせ、今年はやっぱり砂漠だよね……から始まったカタログのプロモーションどうしよう会議。いってきました、砂漠を求めて!

果てしなく広がる砂漠というか砂丘(笑)砂の上に何かちらばってます。これは一体……

靴の中が砂まみれになりながら真剣に撮影!

砂にちらばる、なぞな工作の正体はこちらでした。

舞木さんが描いてくれた表紙のモチーフたち。これらがどうなるのか、SNS用の楽しい動画になる予定ですのでお楽しみに!

テキスト:来生