小さい頃から興味があった家づくり
家づくりに興味を持ったのは、小学生の頃に友達の家に遊びに行ったことがきっかけでした。友達の家はカントリー調でメルヘンでこだわり満載。今まで見たことがなかった雰囲気の空間で、そこで初めて「家ってこんなに自由でいいんだ」「自分の好きにできるんだ」と思ったといいます。
それから色んな友達の家に遊びにいく中で、実家も実はこだわりのある家だったということにも気づきます。青い壁だったり、水色とピンクの造作家具に白い陶器のつまみがついていたり。
みんなとは違う我が家の良さに気づいたとともに、みんなそれぞれ家のあり方って違うんだなと。家づくりやインテリアへの興味が高まっていきました。
そのまま興味が続き、大学は建築学部で学び、店舗設計を行う会社に就職。その後仕事を辞めてニューヨークでインテリアを学んで、帰国してリフォーム内装会社に就職。そこからtoolboxへやってきたという経歴を持つ、建築やインテリアとずっと深く関わってきた東。
子供が生まれ、住んでいた賃貸の家が手狭になり、いつかはと妄想していた初めての家づくりが始まりました。
「自分が“好き”だと思うテイストはずっとあって、いつか訪れるといいなと思っていたマイホーム作りのためにPinterestやInstagramでイメージをずっと収集してきました」
中古物件を購入してリフォームすることを前提に、まずは物件探しからスタート。全部で50件ほど内見に行ったといいます。
「新築より、使い込まれた空間に魅力を感じるところもあって、中古一択で探していました。構造上間取りとか変更できなかったりもするけれど、私は既存を活かす事を楽しみたかったんです」
そんな考えが生まれたのは高校時代のイギリスへの短期留学と、社会人になってからのニューヨークへの留学が大きく関係しています。
イギリスへの短期留学では、100年以上住み継いでいるというお家にホームステイ。自分たちで手を加えながら住んでいて、昔ながらのものを大事にしていく文化に感銘を受けました。
それから、歴史があって、使いこまれた空間に憧れを抱き、そんな家に住みたいと思うように。
「綺麗すぎる場所だと小さなことがいろいろ気になって、綺麗に過ごさないといけないなと思っちゃう。だけど使い込まれた空間は、几帳面ではない私の雑さも受け入れてくれた。そこもよかったんです」
ニューヨーク留学は、シェアハウスで。インテリアの専門学校に通いながらインターンやアルバイトをして過ごしました。
「ニューヨークは建物を壊さない街で、外観は同じようでも中に入ると全然違う。それぞれの色がでていて、手を入れながら暮らすことが普通でした。洗濯機置き場もなくて、エレベーターもない。コインランドリーに行くことが必須でしたが、コインランドリーにいく時間も日常生活に馴染んできて、それも含めて楽しかった。決して快適な生活ではなかったけれど、 “家は快適であるべき”でもないなと思ったんです。
古き良き街で、住み継がれてきたことに意味がある。不便さに文句を言う人はいなかったし、みんなで建物を守っていて、建物を愛しているんだなというのが伝わってきました」
海外への留学は、歴史があるという豊かさに触れた時間。この時の体験が今回の家に反映されています。
物件探しはフィーリングを大切に。
この家に内見にきたときは、「ここはこうしよう」「あそこはああしよう」が頭に降ってきて、すぐにこの物件に決めたといいます。
施工パートナーは、TBK(ツールボックス工事班)。普段から一緒に仕事をするお互いによく知るスタッフと、自分の「好き」を深掘りして実現させていく家づくりが始まりました。
家に帰ってきた時の景色が好き
今回決めた物件は壁式構造ということもあり、間取りの変更は難しい。そのため、間取りの変更は一箇所のみで、表層を変えていくことに重点を置いた、リフォームを行いました。
購入の決め手にもなったという、お気に入りの玄関から紹介していきます。
好きなポイントは、間口が広くて奥行きのあるゆったりとしたスペースと、洗面や階段などお気に入りの場所が見渡せること。
家に帰ってきた時に見えるこの景色が一番好きだといいます。
元々タイル貼りだった玄関は、タイルを剥がして躯体現しに。特別手を加えることなく、剥がしたままのこの荒々しさが求めていたものでした。
祖父からもらった黒い椅子やお気に入りのお店から受け継いだというランプなど、今まで一緒に時を過ごしてきた思い入れ深いものたちが迎えてくれます。
シューズクローゼットとなるルーバーの収納は既存のまま。大きくてしっかりした把手がお気に入りです。
昔から憧れていた黒い床
この家の大きな特徴となるのは、黒い床。
「留学した時に見たアンティークショップのジムフローリングの、使い込まれたハゲ感や艶感に惚れたことをきっかけに、海外の床を塗装している事例を見たりして、床を黒くすることが “いつか家を購入したらしたいことリスト” の1位になっていたんです」
玄関からリビング、そして階段までこの黒い床が続いているのですが、これは既存のフローリングの上に黒く塗装を施しています。
「フローリングの塗装は剥がれてしまうというデメリットもある。でも、私はむしろ剥がしていきたい!剥がれていく過程を楽しみたいと思っているんです」
フローリングの上から塗装をするというのはスタンダードな方法ではないですが、TBKが実験的リノベーションに取り組んだ『studyroom#1』で、フローリングに塗装していたのをみたのが後押しにもなったといいます。
メリットもデメリットも理解した上で自分の軸で決断をする。東の「こうしたい!」という思いが垣間見えました。
飾りの一部のような洗面にしたい
玄関入ってすぐ正面に見えるのは洗面。
ここには元々壁があって、その壁の裏に水回りスペースが集約されていました。
「この家は南北が抜けていて開放感があるのが特徴としてあった。そこで、この壁を壊して洗面に光を入れたいと妄想をしました。生活スペースも丸見えになるし多分なんで?と思うような妄想だったけど、この話をTBKにした時に、いいじゃん!と肯定的に捉えてくれてジーンとしたのを覚えています」
そんな強い希望の元、唯一ここだけ間取りを変更して正面にあった壁を無くすことにしました。
玄関入ってすぐのオープンな空間になるので、見せられる洗面台がいいなと妄想。そんな空間にぴったりだと思い採用したのが『スクールシンク』でした。
その上にある収納棚は、自身で設置。
洗面所感を無くすために洗面台も飾りの一部のような見た目にしたいと考え、鏡や照明は壁に設置するのではなく、棚の上に飾る形にしました。
今後はもっと飾りを増やして、玄関や洗面、お風呂の境界が曖昧な空間にしていきたいといいます。
棚受けのブラケットはグリーンで、床はイエロー。そして、お風呂に続く場所には赤いカーテンがかけられています。
「ニューヨークに留学していた時のイギリス人のルームメイトが赤いカーテンを使っていて、それを見ていいなと思っていました。これもいつか取り入れてみたかったことの1つだったんです」
赤いカーテンを軸にして選ばれた、鮮やかな色たち。今までの経験から思い描いた理想がここでも実現しました。
白いキッチンは汚れやすいというけれど
続いてはダイニングキッチンエリア。今回のリフォームの中で一番改装に重きを置いた場所です。
「幼い頃、父や母がキッチンに立っているとつまみ食いしに行ったり、何を作っているのか確認しに行ったり、冷蔵庫のチェックは欠かさなかったので、よくキッチンエリアに滞在していました。そんなこともあり、家族が集う場所=キッチンだと思っていたので、キッチンが主役になれる、そんな家を作りたいなと幼少期から思っていました」
新たに、真っ白なキッチンに入れ替え。本体は『ユニキッチンシステム』のキャビネットを開き戸と引き出しタイプを組み合わせ、食洗機も入れて採用しました。
天板はクォーツストーン。天然石英(クォーツ)を主成分としているのが特徴で、人工大理石よりもより天然素材に近く、色柄のバリエーションも豊富なものです。そのクォーツストーンを天板だけでなく壁側まで伸ばしたのが特徴です。
「私が幼い頃は、キッチンが家の顔になるのではなく隠す事例が多いなかで、海外の事例を見ていると、キッチンが“私が主役です”ばりの存在感があった。そんな海外のキッチンに憧れていたんです。
使っているパーツにもこだわりがあったと思うけど、その中でもバーン!と貼ってある天然の大理石天板の印象が強く残っていた。天板だけではなく壁面にも貼ることで、マーブル模様が見えて空間を上品に見せてくれるし、良い背景になっていました」
シンクは『クォーツシンク』。洗剤を入れるための『キッチンディスペンサー』も設置してすっきりと。
「白いキッチンは汚れやすいという印象もあるかもしれないけど、私は逆にそれがよかったと思っている。汚れたら目につくから、すぐに掃除をする。前よりこまめに掃除をするようになってむしろ綺麗なキッチンを保てている気がします」
そんな白いキッチンの中でいいアクセントとなっているのが、赤い棚。
ここにはキッチン用品だけでなく、今まで集めてきた思い出のコレクションも飾られていて、これも東ならではのキッチンの姿です。
振り返ると円テーブルと椅子が置かれた食事スペースがあります。
奥にあるのはニッチに合わせて造作されたベンチコーナー。元からあった凹みを見た時にアクセントとして、ずっと目につけていた『クラシックリブパネル』を入れるんだ!と決めたそう。
「クラシックリブパネル」のエッジを貼って彩り、そこに黒い板を設置して象徴的なベンチに仕上げています。
「最初は壁の窪みにベンチが収まったらいいかなと思っていたけど、TBKから少し壁から出して角に丸みを出してみては?と提案をもらった。それをイメージすると、ベンチとしての主張もできそうだし、ただ板をはみ出すだけでなくアールをつけることによって、黒だけどゴツい感じにはならず上品な見た目になりそうだと。自分が実現したかったイメージにすんなりマッチして気持ちがスッとしたんです。
細かい仕様にはなかなか自分では気がつけないので、納まりやちょっとしたアクセントを提案してもらえたの、はとてもありがたかったです」
そして気になるのは、ブルーの床!こちらも既存のフローリングの上から塗装しています。
キッチンは明るい空間にしたかったということで、職人さんと一緒に悩んでこの色に決めました。
「普段から妄想をしていても、家の間取りや雰囲気は購入する家が決まるまでわからない。今までは漠然とLDKの間取りで妄想していたけど、今回出逢った家の間取りはダイニングキッチンとリビングが分かれていた。分かれていたからこそ、キッチンをカラフルにという自由な発想ができたと思っています」
余白を残したリビング
リビングは、床の塗装と壁のクロスの張り替えのみを行いました。一気に全ての部屋に手を加えるのではなく、ここはあえて余白を残した空間です。
特徴なのは天井に照明がないこと。明るすぎる空間が苦手ということもあり、あえて天井に照明はつけず、夜は間接照明のみで過ごしています。
壁際にはキュートなお子様の空間がつくられていました。
IKEAの収納の上に『フリーカット集成材』レッドパインの天板をわたしてミニデスクに。収納と合わせて自分でベージュ色に塗装しました。
もっともっと賑やかにしていきたいと日々妄想中です。
一目惚れした階段
すーっと伸びる壁に、美術館のような雰囲気を感じたという階段。
「5メートルの高さのある天井と光の入り方。その様子に一目惚れして購入を決意したといっても過言ではありません」
さらに魅力的だったのは、広い踊り場。
フロアランプを置いて、ここに座ってぼーっとしている自分の姿を妄想したといいます。
「最初は中古マンションを検討していたため、家の中で階段については特に重要視はしていませんでした。
でも、玄関が広くて明るくて入った瞬間「購入したい」と感じ、家の中に進んでみたら魅力的な階段が……。この階段でこれしたい、あれしたいが浮かんできて、これは購入確定だなと思いました」
階段自体には照明はなく、昼間は天窓から自然光を取り込み、夜は2階にある洗面の上の窓からあかりをとっています。
壁や天井に照明がついていない階段だからこそ、天井が高いという特徴の良さがより際立っていました。
モルタル床の寝室
寝室は元々畳が敷かれた部屋でしたが、その畳を外して下から出てきたモルタルに防塵塗装を施しました。
寝室というとカーペットやフローリングの床を思い浮かべてしまいがちでしたが、この機転を効かせた発想にはっとさせられました。
「金額的にも2階に手を付ける余裕がなくて、そしたら畳だけ取ってもらって躯体現しにしちゃおうと考えました。和な空間にエッジを効かせたかったんです。イメージ写真の中に躯体表しの空間があって、元々いいなと思っていたのも決断の決め手になりました」
和の雰囲気が好きというのとモルタルの下地と相性がいいのではと考え、障子は既存のままに。襖は、表面だけ壁紙で張り替えて、取っ手は元々付いていたものが気に入っていたので、それをそのまま流用する形にしました。
寝室も余白をあえて残した場所で、今後DIYでヘッドボードを作ったり、床にタイルを敷いたりしてもいいなと妄想を膨らませています。
最終決定は自分でする
東の家づくりで一貫していたのは、「最後は常に自分の価値観をもとに判断を下している」ということ。
TBK(ツールボックス工事班)の担当者に聞いた、施主としての東への感想も印象的でした。
「どうしようか悩んでいたら一般論を伝えることはするけど、それを知り理解した上で、“自分はやっぱりこれがいいんだ!”と立ち戻って判断してるところが一番いいなと思いました。そんな様子を見て私たちTBKは、一般論に流されず、自分の価値観を信じてした決断を後押しし、形にする存在でいられるよう心がけました」
今回リフォームするにあたって大事だったのは、今まで収集してきたイメージをTBKに共有する時間。イメージ写真を見ながら「何が好みなのか」をじっくり紐解いていきました。
その上でやりたいことを全て共有し、「今回やっておいた方がいい工事」と「住んだ後でもできること」を精査してリフォームする部分を決めていきました。
「精査するといっても単純に予算が足りないから諦めるのではなく、ここをポイントに変えていけば満足度が高くなるということを伝えてくれたので、「やる」「やらない」の選択がしやすかったです」
どの場所の話を聞いても、思いが溢れてくる家。納得しながら家づくりを進められたからこそ、自分の「好き」が詰まった空間になっているんだなと感じました。
「家づくりに “完成” はないと思っている。だからその時にできる “最適” を選択して、住みながらもずっと家づくりと向き合っていきたい。私が年をとるのと同じように家も年をとっていく中で、私の人生と一緒に歳をとっていけたらいいなと思う。最終的には私の人生が反映された家になっていることがゴールです」
最後にそう話した東が、今後の暮らしとともにどんな風に住まいをアップデートさせていくのか楽しみです。
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。
住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
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