ずっしり厚みのあるフラットバーをそのまま形にした「ステンレスの手摺」。手摺り棒自体にしっかり強度があるため支えるブラケットを少なくでき、スーッと一本線が伸びていくような見た目を実現できる階段手摺でもあります。
せっかくなら、広い階段空間でその見栄えを体験してもらおう!ということで東京・目白ショールームでは実際の階段に取り付けて展示を行うことに。今回はその取り付けの様子をレポートします。
前提として、階段手摺は体重をあずける大事なパーツ。強度のある下地に確実に固定する必要があります。下地が仕込んであるかが分からない場所に後付けしたい場合は、プロに依頼することをおすすめします。
また、今回取り付けるのはコンクリート壁。そのまま同じ手順でDIYに挑戦する機会はまれだと思います。
「階段手摺ってこうやって取り付けるのね」「コンクリートにビス打つ時ってこうやるんだ」といった感じで読んでいただけたら嬉しいです。
施工するのは、ツールボックス工事班(TBK)のメンバーです。手摺りを支える必要があるため、2人で作業しました。
取り付ける壁面の状態を確認
今回取り付けるのはこちらの壁面。
冒頭でも触れましたが、取り付ける場合に一番重要なのが下地について。
木造の壁の場合、このようにブラケットを設置する位置に予め下地を仕込んでおく必要があります。
このように、壁の内部に中空層ができる木造に比べ、今回のコンクリート壁は中空層がないため、ビスを打つ位置が限定されません。下地のことは考えず設置を行います。
取り付ける位置を決めて、墨出しをする
手摺りを取り付ける位置を決めて、墨出しをします。
まず、設置する高さを決めます。今回は、970mmに設置することにしました。
土足で使う場所なのと、元々階段の対面にあった笠木の高さと合わせたかったので、少し高めの寸法になっています。
一般的に使いやすいとされている手摺りの高さは、腕を軽く伸ばして下げた状態で、手首がくる位置とされていて、だいたい750〜800mmくらいが目安となります。家の中で使用する手摺は、このくらいの高さに設定するのがおすすめです。
高さを決めたら、墨出しをしていきます。まず一段目の踏面(ふみづら)の中央から垂直にコンベックスを当てて高さを計ります。
マスキングテープを貼って、先ほど決めた高さ位置に鉛筆で印を打ちます。
一番上の段・中央の段でも同じ寸法を測り、3点の基準をとってみました。
マスキングテープを引っ張り、おもむろに走り出すモリソン。
先ほど付けた印に重ねて、マスキングテープを貼ります。
と、ここで気付いたのですが、なんだかマスキングテープが波打ってる……?
踏み面自体が平らでなくデコボコしていたため、どうやらその不陸が原因のようでした。
中央の高さは見ないことにして、上下2点の基準点を結んだ直線を正とすることにします。
墨出しをしたら、「ステンレスの手摺」を発注する長さを決めます。
測ってみたところ、一段目から最上段の段鼻までの距離は2,610mm。ギリギリの長さにするのではなく、上下にゆとりを持たせた寸法に。
下端は対面にある躯体の手摺の出と揃えています。全体のバランス的には、あと60mmほど長くしてもよかったのですが、3,000mm以上になるとブラケット4つで支えることに。
ブラケットを含めた最終的な見た目も考慮して、3,000mmでオーダーすることにしました。
「ステンレスの手摺」入場!
ではここで、本日の主役に登場してもらいましょう!
予想はしていましたが、やっぱり重かった「ステンレスの手摺」。今回作成した3,000mmサイズの重量は約9.7kg!
壁に立てかけて保管するのは、たわみの原因になったり、何より倒れてきたら怖いので、届いて中身を確認したら床に寝かせておきましょう。
ビス一点で仮止め
開梱した「ステンレスの手摺」を、先ほど貼ったマスキングテープに合わせて壁に当ててみます。
手摺全体のバランスも確認しつつ、取り付ける位置を決めたら、ブラケットにあいているビス穴に沿って鉛筆で印を付けます。
この位置で仮止めをした上で、全てのブラケットを止める位置を確定させていきます。
ここにビスを打っていく訳なのですが、コンクリートは木と違って直接ビスを打つことはできないので、このステップをふむことになります。
1.振動ドリルで下穴を開ける
2.アンカープラグを打ち込む
3.ビスを打つ
アンカープラグは、最終的に打つビスの径に適合するものを選びます。
「ステンレスの手摺」には取り付けるビスが付属しますが、木下地用。今回は別途手配したコンクリート壁用M4×40mmのビスに適合するサイズのアンカープラグを選びました。
数字がたくさん出てきて混乱しますが、こんなイメージです。
アンカープラグのドリル径に合ったドリルビットをセット。先ほど印を付けた場所に、下穴を開けて行きます。
と、その前に肝心な養生。振動ドリルでコンクリートを削ると、思った以上に粉塵が落ちてきます。壁を汚してしまわないよう、マスカーで覆っておきましょう。
壁の養生と合わせて、振動ドリルにも粉塵の飛散を防ぐパーツを装着!
ちなみに、予めビスの長さにマスキングテープを巻いておくと下穴深さの目印になります。
万全の装備で、下穴あけに挑戦です。
ここで気をつけることは、先ほど印を付けた穴の中心にドリルビットの先端を合わせて、壁に対して垂直に下穴を開けていくこと。これがずれると、ビスが真っ直ぐ打ち込めないなど、後々の工程に響いてきます。
予め仮設置するのも、全ての穴位置に正確に墨出しするために大切なポイントです。
ギュルギュルと建物全体に響く重低音。見た目も名前もゴツい振動ドリル。その厳つさを裏切らない音のボリュームです。隣室からいきなりこの音がしてきたら、かなりびっくりしてしまいます。
プロ工事の場合、予め管理組合に申請して周辺挨拶に回ることも。共同住宅にお住まいで、振動ドリルを使う際には、事前の申請が必要かの確認と、近隣の方への配慮を忘れずに行いましょう。
下穴を開けたら、アンカープラグをねじ込んで、最後はハンマーで打ち込み、壁と平らになるようにします。
再び「ステンレスの手摺」を壁に当てて……
先ほどアンカーボルトを仕込んだ場所にビスを打ちます。
仮止め完了!正面から見て、位置出ししたマスキングテープの上端ときちんと揃っているかチェックしましょう。
ビス位置の墨出し
全てのブラケットのビス止め位置を墨出しして行きます。
先ほど仮止めした場所を基点に、マスキングテープと手摺棒が揃うように、正面・真横からチェックをします。
ブラケットに開いているビス穴に沿って鉛筆で印を付けます。ここでも穴位置がズレることないよう、できるだけ正確に、慎重に印を付けましょう。
ちなみに、上下のブラケットを仮止めした状態で手を離すと、真ん中のブラケットが重みでこれだけ下がります。
もちろん正しく取り付ければ、たわむことはありませんのでご安心を!ただ、持ち上げながらビスを打っていくことになるため、力と人手は必要です。
全てのビス位置に印を付けたら、仮止めしていた「ステンレスの手摺」を一旦外しておきましょう。
振動ドリルで下穴を開けて、アンカーボルトを打つ
ここからは、印を付けた場所に、ひたすら振動ドリルで下穴を開け、アンカーボルトを打ち込む作業を繰り返していきます。
仮止めの時と同じように、ドリルビットを印の中心、壁に対して垂直に当てて真っ直ぐ下穴を開けていきます。
また、力を入れすぎるとドリルビットが折れてしまいますので、トルクの勢いに任せつつ垂直に体重をかけるようなイメージで掘り進めていきます。
全てにアンカープラグを打ち込み終わりました。
粉塵が出る作業はここまでなので、養生は外してしまいます。
ビスで「ステンレスの手摺」を固定
ここまでできたら、あとは「ステンレスの手摺」をビスで固定していくだけです!
仮止めした時と同じように、マスキングテープの位置と手摺棒の高さを合わせてビス止めします。
各ブラケットを順番に一点ずつビス止めして仮で固定します。
ここまできたら完成まではあとわずか!
下穴の位置に対して真っ直ぐビスが入っていくように意識しながら、全てのブラケットを固定していきます。
ここでビスを締め付けすぎると、ビスの頭がねじ切れてしまうという最悪な状況に。やったことがある方は分かると思うのですが、専用の工具やペンチで切れた先のビスを引き出し、再度ビス打ちをし直すというやっかいな工程が待っています。
しっかり固定しつつ、締め付けすぎない具合の力加減でビス打ちをしていきましょう。
正面から見たところ。墨出しした通りに取り付けることができました!
しっかり取り付けられました
「完成ー!」と喜ぶかたわらで、お腹が痛い人みたいになるモリソン。
最後に、ちゃんと壁に取り付けられたかのチェックをしているところでした。
手摺棒に軽く体重をかけながら移動し、ぐらつきがないかチェックします。
チェックが完了したら、マスキングテープを剥がして完成です。
頑丈でしっかり支えてくれそうな見た目の手摺が取り付けられました。横からの分厚い見た目も迫力があります。
存在感のある手摺ですが、ブラケットの繰り返しが少ないためか圧迫感は感じません。自然と視線がその先へと誘導されていくようです。
広さのある階段に取り付けてみて、改めてその魅力を実感できました。
お手入れについては固く絞った雑巾などで拭いてあげてください。取り付けの際についた指紋の跡も綺麗に取れました。
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