フローリングで部屋のイメージを変える
部屋の印象の大部分を司るフローリング。床の印象さえ変わればもっと雰囲気の良い空間になるのに。そう思う部屋はよくあります。
ただ、賃貸では一般的に原状回復の原則があるので、工事を伴うフローリングの変更は、住まい手にとってはものすごくハードルの高いもの。
そんな悩みを解決すべく生まれたのが、釘、ボンドを使用せず、既存の床の上にはめて敷くだけの『イージーロックフローリング』です。
釘、ボンドを使用せずにフローリングを敷くことができるのは、フローリングの板同士をジョイントする部分、サネと呼ばれる箇所に工夫が。ここの雌ザネ(メザネ)と雄ザネ(オザネ)がフックのように引っかかる鉤型になっていて、お互いを連結し合う仕様になっているのです。
リニューアルしてさらに施工しやすくなりました
2017年に発売開始した「イージーロックフローリング」ですが、仕様をリニューアルしました。
一点目は、板の長さ。
乱尺といって長さがバラバラだったものを、長さ900mmの定尺サイズとしました。施工しやすくなり、梱包の箱もコンパクトに。搬入時の持ち運びも一人で出来ちゃいます。
もう一点目は、裏面の仕様。モルタル床等に直接敷くタイプの直貼りフローリングと同じカルプクッション材がついています。このクッション効果で、下地となる既存床との間のカタカタ音が軽減されます。
準備1:既存の床の状態、段差等をチェック
今回は築50年の一般的な2K、賃貸の部屋で「イージーロックフローリング」を敷いてみました。
この部屋はもともとフローリングの部屋でしたが、ペカペカした質感が住人の好みではないということで、イメージチェンジすることに。
まず、対象となる床面がある程度平滑で大きな沈み込みがないことを確認します。
元の床が木質フローリングやクッションフロアの場合はほぼ問題なし。毛足の長いカーペットや沈み込みの大きい畳、表面の凹凸が激しいモルタル床、波打ったコンクリートの床面への施工は、施工後の歩行感に著しい違和感を伴う可能性があるのでご注意を。
また、床板の厚さ分床の高さが上がってしまうので、敷居の段差や出入り口、収納扉や室内ドアへの干渉なども考慮しておく必要があります。
「イージーロックフローリング」の厚みは、薄めの12mmです。扉に影響がないかあらかじめ確認を。
準備2:必要数量は「畳数」からでなく実測で「平米数」を算出しよう
現場は段取り8割!商品の購入前にある程度のシュミレーションしておきましょう。
まずは対象の部屋の寸法を測ります。
間取り図の「○○帖」はあまりあてにならないので、必ず実測をし、部屋の面積を平米で算出します。
「イージーロックフローリング」はケース単位でしか入手できないので、1ケースあたりの施工面積を確認しつつ、板の割り付けや失敗に考慮して、部屋の実面積より少し多めに用意すると安心ですよ。
ちなみに今回の部屋の床面積は16.31㎡。
これをイージーロックの1ケースの入数1.512㎡で割ると16.31÷1.51㎡=10.8箱となり、少なくとも11ケース必要となりますが、念のため1ケース多めの合計12ケース分を用意しました。
準備3:フローリングを敷く方向のシュミレーション
次に、フローリングを敷く方向を検討しましょう。
フローリングの貼り方向は長手方向、つまり部屋の四角形の長い辺に対して平行に敷いていくのが一般的。ただ、後述しますが、DIYでやる場合は、短手方向に敷いたほうが、板のカットの手間が減って、難易度がグッと下がります。
また、一見、四角に見える部屋も、壁際が少し斜めになっていたり、妙な出っ張りがあったり、柱があったりするもの。
幅120mmの板を、壁際からスタートして平行に貼っていこうとした時、どこでカットが必要となり、どこにどういう問題が出そうかを一度シュミレーションしておくと良いです。
また、今回のような続き部屋の場合は、フローリングの縦ラインが揃っていたほうがきれいなので、それに配慮して敷き始めを決めるとよいでしょう。
今回は上の部屋と下の部屋、それぞれ図面右上の角からスタートし、部屋の短手方向に貼っていくことにしました。
貼る前に似た色味・木目で板を分類
このフローリングは表面に天然木を使っているため、同じケース内の板でも木目の色味や柄にばらつきがあります。
ケースを開封したらまず板を並べてみて、似たタイプごとに分類。極端に色味の違うものが隣り合わないように考慮しながら、板を選んではめていきましょう。
施工スタート 敷き始めは雄ザネが手前を向くように
貼る方向とスタート位置を決めたら、部屋の隅から早速置いていきます。
この時、雄ザネ(出っ張っているジョイント部分)が手前側に向くように置いていくため、必然的にスタートは壁に向かって左隅からとなります。左から右へとまずは一列置いていきます。
列の終わりの端部をカット
壁際に行き着いたら、壁までの残り寸法を測って、次に敷く板をカット。
この時、施工後の湿度による板の伸縮やはめやすさを考慮し、2〜3mm程度短めにカットしておくのが無難です。また、左右のジョイントの向きを間違えないようにカットしましょう。
時間はかかりますが、カットは手ノコが最も安全で安価です。
写真は素手ですが、慣れない方は必ず軍手着用を。
慣れている方、お持ちの方は丸ノコが早くて効率的です。手ノコに比べて圧倒的に早いので、広い面積を貼る場合は、丸ノコ導入がおすすめ。手ノコ以上に手元に十分ご注意を!
ジグソーをお持ちの方はジグソーでもカット可能です。
カットした端部はヤスリがけをすると丁寧です。
1列目と2列前のジョイントが肝心!
1列目の壁際で切った板の残りを、2列目のスタート位置にはめ、1列目と同様に左から右へとはめ込んでいきます。1列目の雄ザネと2列目の雌ザネをしっかり噛ませるようにはめていきます。
この1列目と2列目が最も重要!この2列が正確にはまっていないと3列目以降もぴったりはまらないまま進んでしまうため、最初の2列はお互いを引き寄せるようにはめ、この2列できっちりはめ合わせていくよう特に意識するのがポイントです。
ここさえ出来れば、あとは、ひたすらはめて、列を進め、端部をカットの繰り返し。
はめ合わせ方のコツ
一枚ずつ、板をはめていく時のコツをお伝えします。
パチッとはまった音がするわけではないので感覚を掴みづらいのですが、確実なのは、はめた最後に角材などで側面を軽く叩いて板同士をはめ合わせる方法です。
しっかりと雄ザネと雌ザネが全体的に噛んでいることを確認し
一度全体を強く押さえつけ
側面全体を叩いて板同士をはめ合わせます。こうすることで目に見えないレベルの隙間がなくなり、板が浮き上がってくるリスクを軽減できます。
壁際の凹凸部分の対処法
柱などの出っ張りは厄介ですが、カットする部分を採寸して板材にトレースし、不要部分をカットしてしまえば納まります。
細かなカットは丸ノコよりも手ノコあるいはジグソーが向いています。
この通りすっぽりと。
多少の隙間はご愛嬌。こだわると多分終わりません…。
最後の壁際の納め方
一番の難所は壁際の最後の1列。カットせずに板幅120mmのままスッポリハマることはまずないので、板の長手方向をカットしていかなければなりません。
まずは壁までの長さを測ります。この時、サネの先からではなく表面の板の端から測るようご注意を。
板の端から壁際の距離はピッタリ平行とは限らないので、何箇所か測るようにしましょう。また、壁際は極めてはめづらいので、気持ち3mmほど短くカットすると良いです。
壁際の出っ張りは、今回は僅かだったので許容することに。
ジグソーがあると縦方向のカットにも大活躍。丸ノコでの縦長カットは非常に危険なので避けた方が良いです。
壁際は一度はめてしまうと、もう一度取るのが大変なので、ちょっと慎重に。ジョイントがしっかりはまっていることを確認して、
ゆっくりとはめます。
上から軽く全体を叩きます。
指を入れる隙間がないので、ヘラや皮スキのようなものでグッと引き寄せると完璧です。
先ほど許容した出っ張り部分の隙間はこんな感じ。ここもこだわりすぎると終わりません。もう十分頑張った!
ついに完成
さすが天然木。ちょっと冷たさを感じる元のフローリングから比べると、温かみが出て空間に品が出ました。歩行感も全く問題なし。置いてあるだけとは思えません。
壁際の多少の隙間はご愛嬌。ここから先の精度はプロの領域…。どうせ壁際は家具を置いちゃいますし。
敷居の段差もこれなら問題なし。
今回は塗装品を使用しましたが、仕上げの塗装をご自分で楽しみたい場合は、敷き詰めた後に塗装する方が楽に作業を進められます。その際、あまりビチャビチャ塗装するとジョイント部分から元の床部分まで浸透してしまう可能性があるので、少量ずつ伸ばすように塗装しましょう。
また、複数人で行おうとしても、1列ずづ順番にはめていく必要があるため、人がたくさんいすぎても作業効率は上がりません。一人が敷く専門、一人がカット専門、部屋の広さによってもう一人くらいが効率がいいと思います。
家具も置いて引っ越し完了!マットな質感の天然木にグリーンが映えますね。
退去する時は、敷いた時と逆に端っこからぱたぱたと外していくだけ。次の引っ越し先にも持っていけます。
賃貸だからと気に入らない床に我慢して数年過ごすより、思いきってDIY!トライしてみてください。