私たちの一番身近に存在している金属「鉄」。内装のパーツや家具として、家の中に取り入れている人も多いと思います。
toolboxでもたくさん取り扱いのある鉄のアイテムですが、お手入れ方法を知ることで、より愛着をもって付き合っていくことができるのではないでしょうか。
今回は、製作過程でサビてしまい、商品として弾かれていた『把手の金物』を使い、様々なお手入れ方法を試してみました。
鉄にもいろいろ。黒皮鉄って何?
お手入れを始める前に、今回お手入れをする対象のアイテム「把手の金物」がどのような鉄でできているのか、説明をしておきたいと思います。
「把手の金物」は「黒皮鉄」と呼ばれる鉄でできています。その名の通り、表面に黒皮と呼ばれる黒色の膜(酸化皮膜)が張られている状態の鉄のことで、黒皮は別名「ミルスケール(mill scale)」とも呼ばれています。
黒皮は意図的に付けられているものではなく、鉄が作られる過程で高温に熱せられ、鉄の表面が空気に触れることで自然発生しているものです。
この状態から黒皮を除去し、塗装やメッキを施すのが一般的な鉄製品ですが、「把手の金物」は、塗装やメッキでは表現することのできない、鉄本来の表情を楽しむために、あえて黒皮鉄のままお届けしています。
黒皮鉄は塗装やメッキ仕上げとは異なり、しっかりした塗膜に守られている状態ではなく、肉眼では見えない小さな穴が開いている状態のため、そこから空気中の水分や手の汗が入りこみ経年変化が起こります。よく触る部分は色が濃くなったり、それこそ、サビが発生してしまうこともあります。
だからこそ、風合いの変化を楽しむことのできる素材でもあるのですが、変化していくならば、自分好みに育てていきたいものですよね。
そんな思いから、今回の実験の目的は、ただサビを綺麗に落とすだけではなく、黒皮の質感を生かした、自分好みのお手入れ方法を探ることに重点をおいていきたいと思います!
鉄サビのお手入れにはたくさんの方法が
「鉄サビ お手入れ」などで検索したり、100円ショップや生活雑貨屋に足を運ぶと、本当にたくさんのアイテムが世の中にはあるようです……。
どれが、良いものか。
迷った結果、サビに効くと言われている、いろいろな方法を試してみることにしました。
・蜜ろうワックス
・オリーブオイル
・レモン水
・ケチャップ
・サビアウト
・やすり(400番 1000番 2000番)
・サビ取り消しゴム
・さび落としクリーム
・ピカール
・KURE 5-56
書き出してみるといろいろ試したものです(笑)。
今回はいろいろ試してみたので、それぞれ説明する前に結論から言ってしまいます!
まず、“サビを落とす”という目的だけでみれば、落ち具合に差はあれど、どれも効果はありました。ただ、「黒皮鉄をより魅力的にしていくためのお手入れ」と考えた時に個人的におすすめなのは『蜜ろうワックス』です!
この後の章から、「蜜ろうワックス」ってそもそもどんなものなのか、おすすめな理由、その他のアイテムをどのように試したのか、その結果についても順々に紹介していきたいと思います。
ちなみに、お手入れしている把手の金物は、それぞれ別の「サビている把手」を使って行っています。(サビサビ把手をたくさん用意しました!)
before写真をそれぞれ載せても違いがわからないと思うので、お手入れ前のサビている状態は下の写真のような具合と思ってこれから後はご覧ください!
液体に浸して放置してみるとどうなる?
「蜜ろうワックス」がおすすめと言いましたが、その姿はお楽しみとして、その他のアイテムを使った結果からご覧ください。
「レモン水」「ケチャップ」「サビアウト」は、黒皮がまだらに剥がれる
まずは「レモン水」「ケチャップ」「サビアウト」の3つ。これらは酸性でできており、酸がサビを落とす効果があるということで試してみました。
サランラップとウエスの上に「把手の金物」をのせ、それぞれをかけて30分ほど放置してみました。
それぞれをしっかり水で洗い流した後の様子がこちら ↓
どれもシルバー色に!黒かったあの子はどこにいってしまったのでしょう……。
「レモン水」「ケチャップ」「サビアウト」
酸がサビを溶かしてくれたのは間違いないのですが、それと一緒に黒皮も剥がれてしまうようです。
削って表面のサビだけ落とせるか?
酸を使って剥がそうとすると、黒皮まで剥がれてしまうことがわかったので、お次は黒皮に影響を与えず、表面のサビだけ削って落とせないか?研磨によるサビ落としをいくつか試してみました。
ツヤツヤに仕上がってしまった「やすり2000番」
まずは、やすりでやさしく表面をなでるように研磨してみました。
やすりの粗さ違い3種類の結果から。
やすりの番手が違うと大きく見た目に変化がでました。
400番くらいですと、やすろうと一往復入れただけで表面のシルバー色が見えてしまいました。全体にわたったサビを綺麗に落とそうとするともはや完璧なシルバーに……。
また、1000番や2000番に関しては、うまくいけば表面のサビだけ剥がすことができそうな雰囲気はありましたが、サビが落ちると同時に表面が「ツヤッツヤ」になってしまいました。私の好きな鉄の質感ではないのですが、これはこれで好きな人はいるかも?
消しゴムタイプは優しく使えばいい感じ!
削るというテーマでは他に、サビ取り用で販売している消しゴムの「サビ取りゴシゴシ」というものも使ってみました。
ゴシゴシという商品名でしたが、「強い力だと黒皮まで剥がれる」ということを既に学んでいる私。普段「消しゴム」を使うよりもかなり優しく、スースーっとなでるように使ってみました。
うっすらと赤いサビが残っているようには見えますが、消しゴム側を見ても、見た目に嫌なサビは取れた気がします。
ちなみに、商品名の通りに「ゴシゴシ」すると案の定黒皮まで剥がれました。優しくがおすすめです。
鉄にも潤いが必要か?ワックスを塗布してみた
さて、結論は既に伝えてしまっていますが、ついに「蜜ろうワックス」を塗布していきたいと思います。
蜜ろうワックスで表面のサビが落ちる&予防にも
そもそも「蜜ろうワックス」って何かというと、木部用のメンテナンスにも使われる天然由来でできた内装用のワックスです。
見た目はバターのような固形物でウエスに少し取って塗り込んでいきます。
サビを拭うように普通に塗り込んでいくだけ。
サビが落ちて、鉄自体にも黒い良いツヤが!
結論を先に伝えてしまっていたので驚きはないかもしれませんが、しっとりした見た目含めてとってもいい感じです。
そもそも、黒皮鉄の「サビ予防」には、酸化皮膜に開いた小さい穴からの水の侵入を防ぐバリアが必要です。それにはワックスが効果的。サビを落としつつ、予防もかねれて個人的には満足な仕上がりに。
乾いてきたなと思うタイミングで定期的にワックスを塗布し直してあげることで、好みの質感を保つことができそうです。
お手入れの結果をまとめて発表
今回、お手入れの方法としていろいろ試してみましたが、紹介しきれなかったものもあるので、全てまとめて写真の一覧にしてみました。
どのアイテムも、「把手の金物」に使ってみた場合という前提条件はありますが、参考にご覧ください。
※下記写真はクリックで並べて見ることができます。
黒皮鉄のお手入れ結果
実際にご自宅のアイテムで試す際は、目立たない箇所で一度試してから全体に取り掛かると失敗がなくて良いかもしれません。
黒皮は自分で作れるのか?おまけでバーナーで炙ってみた
最後の最後に、思いつきで実験をしてみました。
「黒皮は鉄が熱せられるときに空気と結合して皮膜ができる」ということだったので、「もしや、バーナーで炙れば剥がれてしまった黒皮も回復できる!?」
「サビアウト」で綺麗に黒皮が剥がれてしまった「把手の金物」をバーナーで炙ってみました。
さて黒くなるか……!
30秒くらい炙ってみた結果。
少し焦げました。
結論:黒皮はそんなに簡単にはできない。
お付き合いいただきありがとうございました。
鉄と仲良く付き合っていく
いろいろ試してきましたが、よっぽどひどいサビが発生する前であれば、日々ワックスやオイルを使って鉄に潤いを与えれば、予防にもなり、ある程度のサビは取れる。という結果になりました。
塗装やメッキ仕上げをした鉄製品であれば経年変化することはなくなり、サビの予防についても考える必要はなくなるのでしょうが、今回「蜜ろうワックス」を塗って、サビていた鉄がしっとり綺麗になる姿を見るのはなかなか気持ちの良いものがありました。
「お手入れ」と何度も書きましたが、大袈裟に考えるより、「お花に水をあげる」くらいのライトな気持ちで日々鉄と付き合っていくと、暮らしの中の新しい習慣として、成長を見守る時間が楽しいものになるのかもしれません。
(橘川)