おむつ替えしたり、遊び場にしたり、夜は家族の寝室になったり。小さいお子様がいるご家族にとっては特に、畳のお部屋は重宝しますよね。
ただ、子供が成長して、自分のお部屋で寝るようになったり、在宅勤務が増えて自分のワークスペースが欲しいなど、環境の変化によって和室リフォームを考える方も多いのではないでしょうか?
持ち家一戸建てに住むスタッフ稲垣もそんな事情を抱える一人。
畳が古くなったなど色んな要因はありながら、一番は子供が成長し、遊び方が変化したこと。プラレールで遊ぶ時に柔らかい畳の上だと上手くいかず、子供がストレスを抱えてしまうことが何度かあったんだとか。
そんなことをきっかけに「畳をフローリングに変えたい!」と思い立ったそう。
そこで集まったのは、床貼り初心者のtoolboxスタッフたち。DIYで「スクールパーケット」を貼ってみました。
畳をはがして下地を確認
そもそも畳の下ってどうなってるの?
畳の張替え時や、DIY動画などで見たことがある方もいると思いますが、直接目にする機会ってめったにないですよね。
畳の下地として代表的なものを紹介すると、床を支えるための根太に下地合板(捨て張り合板)を張ったもの。
さて、スタッフ稲垣宅は、どうなっているのか……?
白いシートの下は……
あ、とっても綺麗なモルタル床!
あ、でも意外と汚れてる!!
マンションやRC造の戸建てでは、モルタル床の上に、緩衝材を敷いて下地にしていることが多いそう。
そして畳をはがすとお部屋の真ん中に現れた、圧倒的存在感のこの部分……
実は掘り炬燵の蓋なんだそうです!
今後掘り炬燵として使う予定もないため、今回はこの上から根太を張っていくことにしました。
はがした畳を処分しないことには作業が進みません。
畳屋さんに引き取ってもらったり、地域のゴミ処理センターに持ち込んだりと、処分方法はいくつかありますが、今回は粗大ゴミとして引き取ってもらいました。
粗大ゴミとして出す場合も、一度に回収してもらえる枚数に上限があったり、指定のサイズ以下になるように切って捨てる必要があったりと、地域によってルールが異なるようです。
事前にチェックしておくとその後の作業がスムーズに進められると思います。
仕上がりの高さをシミュレーション
さて、当然ながら畳を剥がした分、床のレベルは下がります。
敷居や建具との段差を無くしてフラットにするか、「このくらいの段差ならまあいいか」とするかで下地の寸法を決めていきます。
今回のケースでは、敷居との段差は60mm。
30mmの根太の上に厚み11mmの下地合板と15mmの「スクールパーケット」を貼ることにしました。
また、この時点でもう一つ確認しておきたいのが施工する床のデコボコ具合。一見真っ直ぐなように見えても、場所によって平らでなかったり、全体的に傾いていたりと、水平でないケースも多いです。
本来は水平器やレーザー墨出し器などを使って調べるのが理想ですが、今回は「各所にビー玉を置いて転がらないかをチェックする」という簡易的な方法で、水平であることを確認しました。
もし床が水平でない場合は、根太の下に薄いベニヤなどを挟んでデコボコを調整すると良いと思います。
この後の施工の流れとしてはこんな感じでしょうか。ちなみに、モルタル床以外のケースでも考え方としては一緒です。
「う〜ん、思ってたよりハードル高そうだぞ」と思い始めた方、まだ諦めないでください!畳の上から敷くだけでOKなフローリングもありますよ。
過去に、畳の部屋に『イージーロックフローリング』を敷いた様子を記事にしていますので、こちらも合わせてどうぞ。
防湿シートは「床下用」を使うべし
床の仕上がりレベルを決めたら、必要な材料を揃えて、下地を組んでいきます。
まず床下の湿気対策として、防湿シートを敷いて行きました。
画像を見てお気づきの方もいるかもしれませんが、間違えて外壁用の「透湿防水シート」を敷いていますね。
実は、防湿シートと一言に言っても、用途に応じて沢山の種類が存在します。
床下からの湿気を上に上げないことが目的であれば「床下用防湿シート」という様に、目的に応じて材料を選択する必要がありました。
今回は、この上から床下用防湿シートを敷いて、進めることにしました。
根太は303mm間隔で
防湿シートを敷いたら、根太を張っていきます。
根太はお部屋の端から303mmの間隔で設置していきます。予めお部屋の寸法を測っておき、必要な本数と寸法を確認しましょう。
基本的に根太はビスで固定していくのですが、今回はモルタル床なので直接ビスが打てません。振動ドリルなど必要な道具もなかったため、ビス打ちはしませんでした。
一般的でないやり方かもしれませんが、根太同士をタッカーで固定するなど、材がずれないようにしながら施工をしていきました。
基準となる一本目の根太位置を決めたら、303mmのところに印をつけていきます。
どうして303mmなのか?については、上の写真でもうお分かりの方もいるかもしれませんが、後ほど詳しく説明しますね。
断熱対策、どうします?
根太まで組み上がったら、下地合板を張ってフローリングが貼れる状態になるわけですが、ここで考えておきたいのが床の断熱対策。
私の友人でノー断熱で過ごしているという強者もいますが、特に地面に近い1階に位置する場合などは、やはり断熱材を入れた方が良いのかもしれません。フローリングを一度貼るとやり直すのは大変ですしね。
今回使ったのは「スタイロフォーム」。カッターなどで簡単に加工ができる、発泡スチロールのような断熱材です。
厚みはいくつか種類があるので、根太からはみ出さないサイズを選びます。今回は30mmのものを選びました。
サイズは合板と同じ910×1820mmで売られていることがほとんど。これをカットして敷き詰めていきます。
根太の間にはめていきます。隙間がないほど、断熱効果が高まります。キュッキュッと押し込むくらいな感覚ではめ込みましょう。
と、簡単に説明してしまいましたが、寸法通りに真っ直ぐカットしてピッタリ収めるのは、意外と難しい……。根太との間に隙間ができたり、無理に押し込みすぎてパッキリ割れてしまったり。
そんな時には、スタイロフォームを敷き詰めた後に「気密テープ」で塞ぐという方法もあります。
今回は実施しなかったのですが、より断熱性能を高めたいという方は検討してみてください。
下地合板を張る
断熱材を入れたら、この上から蓋をするように、下地合板を張っていきます。
下地に使う合板のサイズは1820×910mmでつくられています。
先ほど根太を303mm間隔で組んでいきましたが、これは合板の短辺である910mmを3等分した寸法なんです。この寸法で根太を組んでいくと、下地合板を並べた時に、根太の真ん中に合板の端がくるので、ビスで止めることができるんです。
言葉だけで説明だけされても「?」ですよね。こんな感じです。
下地合板は、厚さ12mm以上の針葉樹合板やラワン合板を使うことが一般的ですが、今回は敷居との段差を考え厚さ11mmのものが欲しかったため、OSB合板を使うことにしました。
予め必要な大きさを測って、ホームセンターでカットしてもらっているので、並べていくだけです。
合板を固定するには、根太がある部分に20cm間隔ぐらいでビスを打っていくのですが、根太の位置が隠れてしまう場合は、この時点で合板に印をつけておくと良いです。
今回は一番端の根太に303mm間隔の印をつけておいたので、そこから根太の入っている位置を追っていきました。
ここで花札が登場。
合板を固定していく時には、ピッタリ突きつけるのではなく2〜3mmぐらいの隙間を開けてあげる必要があります。隙間がないと、歩行時に木部同士が擦れ合って、床鳴りの原因になるからです。
もちろん、厚み2〜3mm程度のものであれば花札でなくても構いません。不要なカードなどでも良いですし、大きなホームセンターではプラスチック製のスペーサーが売ってたりもします。
隙間を開けて配置をしたら、ビスで根太に固定していきます。
作業中、ちょっと油断するとすぐに子供たちの遊び場として占領されます。
スタッフ稲垣は、作業を振り返って「今はここ、立ち入り禁止だよって分かってもらうのが一番大変だった」と話してくれました。
「スクールパーケット」登場
ここではじめて、「スクールパーケット」が登場です。
フローリングを張る時は「どこを基準に貼っていくか?」を予め考えておく必要があります。
なんとなく「端から順に貼っていけばよい」と思うかもしれませんが、貼り終わりが中途半端になってしまったり、端の材を細長くカットする必要が出てくる場合も。
特に「スクールパーケット」のような柄物フローリングは、端っこに出てくる模様を考えて、真ん中を基準に割り付けていくことも多いそう。
今回は予め柄の出方を確認した上で、お部屋の左端を基準に貼っていくことにしました。
早速一枚目から難題が。
写真の通り、柱の凹凸に合わせてカットしなければ、ピタッときれいに収まりません……。普通はこの微妙な寸法を計り、材にトレースした上でカットを行うのですが、私たちにはこんな秘密道具が。
これを材にトレースして、のこぎりで頑張って切ります。
サネ落としの洗礼
フローリングの側面は「サネ加工」が施されています。出っ張っているのが「雄実」対になるのが「雌実」です。
横長のフローリングの場合、最初の一枚目は、「雌実」側を壁に向けて敷き始め、あとは噛み合わせながら張り進めればいいのですが、「パーケットフローリング」はそうはいきません。
このように、市松模様で張り合わせていくために、どうしてもサネをカットする手間が増えてしまうのです。
丸鋸を使い慣れていない私たちは、のこぎりで挑みます。オークは硬く、しかもクラフト用の手のこを使っていたため、一枚サネを落とすのに10分ほどかかってしまいました。
本当はクラフト用ではなく、こちらののこぎりががおすすめです。(実体験をもとに、強くおすすめします。笑)
貼って、叩くの繰り返し
のこぎり組がサネをカットしている間、床貼り組はどんどん貼り進めていきます。
「スクールパーケット」は構造的には直貼りフローリングと呼ばれ、裏にクッション材が貼られているタイプ。直貼りフローリングは、ボンドだけでも施工ができるDIYで取り入れやすいフローリングです。
今回は、ボンドだけで貼る方法をご紹介しますが、より反りや暴れリスクを低減させるためには、スクリュー釘やフローリング用ビスをサネに打って、下地合板と根太に固定することをおすすめします。そうすることで、貼り進める間に、ズレが生じるのを防ぐことができます。
下地合板にボンドを塗り広げて貼っていく方法が一般的だと思いますが、私たちは不慣れで貼り進めるのに時間がかかってしまうため、一枚一枚、ボンドを塗ることにしました。
ちなみに、ボンドは2本用意していたのですが、貼っている途中で切らしてしまい、買い足しに行く必要がありました。結局使ったのは4本くらい。容量で当たりをつけつつ、少し多めに用意しておくのが良さそうです。
ボンドで貼った後に、サネがしっかり噛み合うように、げんのうで叩いて隙間を埋めていきます。
今回は、夏場で木材が膨張している時期ということもあり、隙間なくぴったりと敷き詰めました。
冬場など、木材が乾燥している時期は、下地合板を貼る時と同様に、スペーサーを入れてゆとりを持たせてください。
端の納め方
よほどキリよく貼れた場合は良いのですが、端はサネだけでなくフローリング自体もカットする必要が出てきます。
今回は「スクールパーケット」を一枚ずつバラして短冊状にしたものがぴったりはまる寸法だったので、この様な納め方に。
一度やり方を覚えてしまえば、あとはひたすら繰り返すのみ。
メンバーそれぞれが徐々に作業のコツを掴み、テンポよく貼り進めていきました。
最後の一列は「さすがにのこぎりじゃ厳しいか……」と、意を決して丸鋸を使いました。あまりに危なっかしい絵面のため、その時の模様は載せるのを控えさせていただきます。
残る1ピースは家主であるスタッフ稲垣が施工します。
隙間なくピッタリ貼っていくと、端の材のサネを噛み合わせるのが難しい場合があります。その時は、壁に傷がつかないように養生しつつ、ゴムハンマーで叩いて入れ込むと良いと思います。
何も塗られていない、素のままのオーク。「無塗装って美しいんだな」としばし見惚れてしまいました。
下地合板を張るところからここまでで、スタッフ5人がかりで約7時間かかりました。
ちなみに、ボンドすらも使わず、ただ敷いただけで使っている事例もご紹介します。「もっと気軽に試してみたい」という方は、こんな方法もありかもしれません。
「ワトコオイル」で仕上げる
貼り終わって安心したのも束の間。
このままでは子供たちにお部屋を占拠されてしまいそうなので、急いで最後の工程に進みます。
無塗装で提供している「スクールパーケット」は、塗装次第で全く違った雰囲気になるのも魅力のひとつ。今回は、「ワトコオイル」のミディアムウォルナットを塗って仕上げることにしました。
「ワトコオイル」のように、木部に染み込むタイプの塗料を使う場合、色ムラなく綺麗に仕上げるために、大切なポイントがあります。
・塗装前にサンディング(やすりがけ)をする
表面を研磨して均一にならすことで、ムラなく塗布でき、木部に浸透しやすくなります。
・「塗装」と「ウェスで拭き取り」を2回行う、2度塗りがおすすめ
表面に残った余分な塗料を拭き取った後、足りない部分にオイルを載せ、また拭き取ることで、より均一に塗布することができます。
しかし、ここまでの工程で力を使い果たしていた私たち。サンディングなし、養生も甘め、一度塗りで一気に塗り進めてしまいました。
なので、ここからは「こんなやり方で、果たして仕上がりはどうなっちゃったんだろう……?」という視点でご覧いただければ嬉しいです。
ちなみに、別の塗料を使い、一度塗りで仕上げたケースですが、丁寧な施工の仕方はこちらの記事で紹介しています。ぜひ、参考にしてみてください。
ささっと塗り広げたところからスーッと浸透していく感じが心地よく、無心で塗れるのが楽しいです。
“木目に沿って塗る”というフローリング塗装のセオリーに従ってハケを動かしていたのですが、タテヨコ互い違いに組み合わさった「スクールパーケット」は時間がかかってしまい、地味に大変でした。
パーケットやヘリンボーンなど柄物フローリングの場合、塗る方向にはこだわらなくても良いかもしれません。
また、広い面を塗る時はハケではなくコテバケを使うのもおすすめです。
隣で見ていてよほど楽しそうだったのか「僕もやる〜」と、最後の部分をお手伝い。
6.5畳を塗るのにかかった時間は30分ほど。
翌朝までこのまま乾燥させ、木に染み込まず表面に残ったオイルをウエスで拭き取って仕上げました。
仕上がりの様子がこちら。
やはり塗料の染み込み方が均一でなく、所々に色ムラができていました。
ただ、よほど気にしなければ分からないレベル。そして、時間が経つにつれ、塗料も馴染んできたそうです。
和室のイメージ一新!
和の空間のイメージが一新!
かつての教室の床を彷彿とさせ、どこか懐かしさも感じる「スクールパーケット」は、和の設えとも自然と馴染んでくれます。塗装をすることで、既存の木部と近い色味になり、空間に一体感が生まれたように感じます。
今回、自分たちで床貼りをしてみて感じたのは、状況に応じて適切な方法を選択していく難しさ。
例えば、防水シートや下地合板、ビス一つとっても沢山の種類があり、施工の方法も様々。完成して終わりではなく、その後不具合が起こらないように考えると一体何が正解なんだろう?と戸惑うことが多くありました。
どんな状況でも、過去の経験と知識から一番適した手法を選択していけるのは、プロの世界なんですね。
とはいえ、初心者でこの仕上がりは大満足。
スタッフ稲垣も「最高!足触りサラサラしていてとっても良い」と、毎日嬉しい気持ちになるそうです。また、子供がプラレールで遊ぶ時にも、引っかかることがなくなり、一人でストレスなく遊べるようになったそう。
ラグを買ったり、友人を招いてダイニングとして使ったり。床が変わったことで、楽しみが広がった様です。
(岩崎)