塗る場所と注意点
少しずつ手を加えてアップデートさせてきた、築46年戸建の我が家。
今回はずっと「何か手を加えたいな」と思っていた、造り付けの収納タンスを塗装しようと思います。
収納があるのはとてもありがたかったのですが、つるっとした素材感と薄明るい色味がなんだか気に入らなかったのです。
もっと濃い色でかっこよくしたい。その思いを叶えます。
でも、この把手はお気に入り。これは塗装した後も使い続けようと思います。
今回、選んだ塗料は『アイアン塗料』。
塗るだけでざらっと鉄の質感になる油性塗料で、鉄やアルミ、木、プラスチックにも使用できるものです。
無骨で素材感のあるものやアンティークの味のあるものが好きな私にぴったりの塗料だと思い、こちらを選択しました。
でも、この塗料は扱う上で、色々注意が必要です。
最大の注意ポイントは、一般的な水性塗料よりも扱いづらい「ラッカー系」の特殊な塗料ということ。油性の中にも油性とラッカー系というのがあって、ラッカー系の方が強力で、匂いも強い。
あらかじめペンキで塗られたものに塗ってしまうと、塗装する対象物をも溶かしてしまう可能性もあります。そのため、塗りたいものが塗装可能かどうかしっかり確認することが大切になります。
それでも塗ってみたい!ということで、真夏でしたが窓を全開にして、気合いを入れてチャレンジすることにしました。
塗料を混ぜて好みの割合を見つけ出す
「アイアン塗料」は色を混ぜてオリジナルの色をつくることができるのも魅力の一つ。
塗料を探していても、この色だ!という理想的なものになかなか出会えないので、自分で調色して、理想の色で塗装していくことにしました。
「アイアン塗料」は全部で7色あるので、調色する前にwebサイトをみてこんな色がいいかなと妄想を膨らませてみました。
コッパーとブラックを混ぜたもの。
この色合いも好きだけど、もう少しブラックが強い方が好きかも。
次にブラック。ブラックも意外と真っ黒じゃないし、いいかもな〜なんて思いながら。
他の事例写真をみてみると……。
同じブラックでも、写真によっては結構真っ黒に見えるな。なんて思ったり。
toolboxショールームのチャコールグレーで塗装された扉の色も好きだなと思ったり。
そんな色妄想をしているうちに使用してみたいカラーが絞れたので、それらを混ぜて試していこうと思います。
選抜したのは、4色。
左から「コッパー」「チャコールグレー」「ブラック」「モスグリーン」です。
作業をしたのは、toolboxショールームの「ミキシング・バー」という、塗料の試し塗りができる場所。色を混ぜ、オリジナルの色をつくることもできます。
それぞれの塗料を少しずつ混ぜて、ミニ板パネルに塗装して試作サンプルを作成します。
完成したものを会社でみてみると、光によって見え方がかなり違ったので、自宅に持って帰ってきて検討することに。
バラバラとしたサンプルを全部持って帰ってきたので、綺麗に整えて。
左から順に、「ブラック」「ブラック1:コッパー1」「コッパー1:チャコールグレー1」「モスグリーン1:チャコールグレー1」「チャコールグレー」。
実際に塗装する場所に照らし合わせてみます。
この色だ!
薄い色よりも濃い色で空間を締めたいけど、重たくなりすぎないようにしたいという思いから、「ブラック」と「コッパー」を1:1で混ぜ合わせたものに決定。
作業する日の前にやっておくこと
カラーを決めたら、注文に取り掛かります。
クローゼットは縦174cm×横78cm。「アイアン塗料」の1Lの塗装面積は約5㎡(2度塗り想定)なので、2色足して合計2Lあれば余裕そう。
各カラー1Lずつ購入して、当日に備えます。
また、塗料と一緒にオプションで「ラッカー薄め液」を購入するのもお忘れなく。
塗料をなめらかにするために「ラッカー薄め液」を使用します。油性塗料で使用する「ペイント薄め液」とはものが違いますので、必ず「ラッカー薄め液」を用意してください。
その他、当日までに用意しておくべきものは、ハケやバケット、養生。
その中でも注意するのは、ハケ。ナイロン系のハケはラッカー薄め液で毛が溶けるので、油性の塗料が使用可能なハケを購入します。
近所のホームセンターには見当たらなかったので、ネットで購入しました。
私は広い面用に50mmと、細かいところ用に30mmのサイズを購入しましたが、大きな面をハケ塗りするときは70mmくらい幅の広いハケの方が便利かも。早く大きくハケむら少なく塗れます。
時系列は変わりまして、アイアン塗料が届いたら、塗装の対象物がラッカーで溶けないものであるか確認します。
「アイアン塗料」は塗装のかかっていない素地の対象物に塗るのが基本ですが、今回塗装の対象としていたものは、見た目が少しツヤっとしているのです。
塗るのに問題ないか不安だったので、塗料が家に届いたタイミングで、見えない部分に試し塗り。
塗った時も、少し時間を置いても、問題はなかったので、全体に塗ってみることにしました。このように不安な場合は念のため、全体に塗る前に確認するのをおすすめします。
作業当日の下準備!
必要なものが揃ったので、いよいよ作業当日。
塗装をする前にまずやるべきことは、塗装面の清掃。ほこりや油汚れやシールの残りなど、できるだけ除去しておきます。
その次に養生。
養生の前にまず、把手は塗装しないので、最初に外しておきます。
把手を外したら、そこだけ色が薄い!普段目にした時、面材全体が薄い色だなと思っていましたが、最初はもっと薄い色で、私が普段見ていた色は日に焼けていた色だったのだと判明。
こんなに日に焼けるものなのですね。
次に、金具を綺麗に養生するのが難しそうだと思ったので、扉を外そうと試みたのですが……。
ドライバーではびくともせず、むしろビス穴が滑て(なめて)しまったので、取るのは断念。細かなところまで養生を頑張ることにしました。
悩みながら作業をするとスムーズに進まなくなるので、外したい把手や扉がどう止められているかを確認したり、それを外すのに必要な道具を揃えておくのも前日までの準備で必要だなとここで再認識。
事前に準備できるよう、もう少し頑張りたいです。
今回塗りたいのは色が薄い部分だけ。
外側の縁の部分は塗りたくないので、まずはそこから「マスキングテープ」で養生していきます。
目が悪くてよく見えなくて、気づいたらどんどん至近距離になっていく!
下まで全部の枠をマスキングテープで囲います。
ミリ単位で境目ぴったりに貼っていったので、この作業が意外と時間がかかります……。しかし、ここがかなり重要なのでこの先も気を抜かずに頑張ります!
マスキングテープを貼った後は、床や壁に塗料が飛んだり垂れたりしてつかないよう、「マスカー」を使って覆います。
マスキングテープの上に重ねて、隙間ができないように。
ちなみに、「マスカー」とは、緑のテープにビニールシートがついているもので、最初はシートが折り畳まれています。
全て貼り終えたら、ビニール部分を広げていきます。
シートの長さは30㎝・50㎝・1mのものとあるので、どのくらいの範囲を守りたいかで使い分けてみてください。
今回は、周りを絶対に汚したくなかったので、余裕をもって50cmを選んでみました。
この広げていく作業は、なかなか楽しい。
広げたら先で、はじをマスキングテープで止めておきます。
周りを守れたら次は細かいところ。
把手を取ったところの穴を守ります。
この辺りは家にあるものを駆使して、爪楊枝を使用。
そのままではゆるゆるで抜けてしまったので、マスキングテープを巻きつけて、ぴったり穴にハマるように調整します。
すると、こんなにぴったり!ちょっぴり嬉しかった瞬間でした。
その次は金具を守る作業。
マスキングテープを貼って、そのあと、カットしながら調整していきます。
ちなみに、この時使った道具はその場にあったマイナスドライバー。この道具を使うのが正しいとは言えないですが、押さえつけながらカットしてみました。
地道に頑張って、出来栄えはこんな感じ!意外とうまくカバーできた気がします。
あとは、扉の小口もカバー。
ちなみに、ここは養生するかどうか迷いましたが、プラスチックなのか塗ることができないゴム製なのか素材がわからなかったので、迷った末に養生することに決めたのです。
こちらも境目ぴったりになるように慎重に貼っていきます。
あと少し!頑張りどころです。
今回は塗料がつかないようにしたいところをカバーしていますが、もしサッシに塗装する場合は、ゴムには塗ることができない塗料なので、ゴムパッキンに塗料がつかないように養生をしっかり行ってください。
2つの色を混ぜ合わせる
準備が完了したら、いよいよ塗料の出番!
事前に決めていたカラーを混ぜ合わせます。油性塗料は手につくとラッカーシンナーを使わないと落ちないので、この工程から手袋を着用します。
私は軍手を用意していたので、塗料が手まで染みてきちゃいました。そのため、『基本の道具工具 作業グローブ』のように綿だけでなく、しっかりカバーできるものが良さそうです。
顔料が沈殿しているので、缶を開ける前によく振ります。
「アイアン塗料」は匂いが強いので、開けるタイミングで換気するのもお忘れなく。開けられる窓を全部全開にして風通しをよくします。また、このタイミングで植物たちも別の部屋に移しておきます。
暑いのが得意な私でもこの日は真夏で流石に暑すぎたので、クーラーを付けながら窓を開けるという手段に出ました。
しっかり振れたら、開封!
ここでもマイナスドライバーを活用して開けます。
開けてみると、まだ缶の周辺がどろっとしていたので、割り箸でかき混ぜます。
缶を開けてみて感じたのが、想像していたよりも匂いがきつくないということ。
事前に匂いがすごいきついだろうと身構えていたので、きついはきついですが、思ったよりは耐えられそうかもと思いました。
「アイアン塗料」は揮発性が高いので、空気に触れていると溶剤が揮発してドロドロしてきます。そのため、すぐに塗れる分だけ、容器に移していくのがポイント。
今回は違うカラーのものを混ぜていくので、割合がなるべく変わらないように、しっかり分量をみながらミニバケットにいれます。
メモリのついてるバケットを用意するとスムーズに作業が進みます。
1:1でミニバケットに移せたので、次は大きなバケットに。
全部入れたら……。
混ぜる!
流石に割り箸1本ではなかなか混ざらないので、このあと2本で混ぜました。
混ぜ合わさったら、サンプル板に塗って理想の色になっているか確認。
乾いたら少し色が落ち着くのはありますが、理想の色に比べてコッパー色が強そう。
量も少なそうだったので、ブラックを多めにして全体的に塗料を追加します。
ミニバケットで測って、大きなバケットに入れて混ぜ合わせます。
ブラック多めといいましたが、ブラック5:コッパー4くらいの割合にしてみました。
完成したものを塗って並べてみたのがこちら。
先ほどのものよりもブラック色が強くなって、理想の色に近づいた気がします。この塗料で塗って行こうと思います!
ここで、使わない分は、しっかり蓋を閉めておくのもお忘れなく。
ハケで塗っていく
塗料の準備ができたので、いよいよ塗っていく作業です。
ナイロン系のハケはシンナーが毛を溶かしてしまうので避けて、油性用のハケを使っていきます。
ハケを使用する前に忘れてはいけないのは、毛抜きです。
塗ってる最中に毛が塗料に入らないように、今の段階で抜ける毛は抜いておきます。
手にハケをシャッシャとはらうと、ぱらぱらと毛が床に。想像以上に抜けてびっくりしたのと同時に、欠かせない作業だと実感しました。
特に「アイアン塗料」のように粘度の高い塗料を塗るときは、毛抜けが多くなるので、気持ち長めに時間をかけて行いましょう。
引き出しは最後に別で塗るので、引き出しを取って、あまり目立たなそうな部分から塗っていきたいと思います。
ついに本番!
「ラッカー薄め液」を加えて塗料をなめらかにしてから、ハケに塗料が付きすぎないよう、バケットに適切な分の塗料を落とします。
そしたら、さささーっと塗ってきます。
アイアン風にしようと思うあまりに、最初からボテッと塗ってしまうと、表面の硬化が早いために、塗膜の中がいつまで経っても乾きません。
そのため、塗料を引っ張るように薄く薄くを繰り返すこと。これが塗り方のポイントです!
水性の塗料に比べて、塗料が重たくて塗りづらさを感じましたが、滑り出しは上々。
力を入れすぎず、向きを揃えて塗っていきます。
下の部分が塗れたら、今度は上の扉に差し掛かります。
こちらの方がより目につくので、塗り始めは緊張の一瞬……。
塗る向きを横向きにするか縦向きで揃えるか悩みましたが、元々の木目に合わせて、縦向きで揃えて塗っていくことに。
大きな面が塗れたら、縁や金具付近の細かいところを、先ほどよりも小さめのハケで塗っていきます。
小さなハケといっても、私が購入したのはそんなに小さくもなく……。細かなところが上手く塗れなくて、上から塗り重ねていく感じになってしまったので、表面がかなり凸凹になってしまいました。
塗る前に、どの順で塗ったらいいかをもっとよく考えるべきだったと反省。
本当は液垂れや飛び散りに気付いて修正ができるように、塗装は上から、かつ塗りづらいところから、というのが基本的な考えだそうです。
その反省を早速活かして、反対側は縁から塗り進めていくことに。
なるべく塗る範囲が広がりすぎないように、細長く縁だけを塗っていくイメージです。
縁が塗れたら、今度は中心を塗っていきます。
写真で伝わりますでしょうか……。塗り始めて時間が経ってくると、塗料が固くなっていき、どんどん塗りづらさが高まっていきます。伸びがすごく悪くなっていくのです。
そんなふうに塗料が固くなってしまったら、事前に一緒に購入していた「ラッカー薄め液」を加えて、塗料をなめらかに。
少しずつ加えて希釈すると、だいぶ塗りやすくなります。
塗り残しがないように最後まで気を抜かずに慎重に。
そんなこんなで、全体が塗り終わりました。後にやった右側の方が綺麗に塗れた気がします。
いい感じ!
床をみてみると、ぽたぽたと塗料がこぼれてました。
今回は、裸足でやってしまいましたが、足についてしまうかもしれないことを考慮して、汚れてもいい靴下をはいた方が良さそうだなと思いました。
また、ふとした瞬間に腕についちゃうことも。気づいた時にすぐにアルコールティッシュで拭いたら取れましたが、夏場以外は汚れても良い長袖を着ると良さそうです。
扉が塗れたら最後に引き出し部分に差し掛かります。
時間に追われて急いで塗ったら、こんなに塗料が垂れてしまいました。でも、これはこれでなんだか眺めていたくなる表情。
少し惜しいですが、拭き取ります。
小口の面は、こぼれないように落ち着いて。絵を描くときのように繊細な筆捌きで塗っていきます。
塗り終わってから気づきましたが、引き出しの内側にも養生した方がよかったですね……。謎にいける!と思ったのと時間に追われて急いでやってしまいましたが、内側も養生することをおすすめします。
そして、無事に塗り終えました!
塗り始める前は、2度塗りしようと思っていたのですが、塗った後の様子をみたら色もしっかりついてるし、質感が気に入りました。ここからさらに塗り重ねたらかなりぼてっとしそうで怖かったので、1度塗りで終了することにしました。
お好みでテクスチャをつけたい場合は、ハケをランダム方向にひきづったり、叩いたり……。1回目が硬化してから2回目で試すとうまくいきやすいです。
すっきり爽快!養生はがし
塗り終わって、休憩がてら1時間ほど乾かしたら、養生をはがしていきます。
まずは気になる細かなところから。小口に貼ったマスキングテープを取っていきます。
取ってみると……、あれ、なんかガタガタしてる。
綺麗にマスキングテープを貼ったつもりだったのですが、そもそも表面に茶色い部分が見えてしまうことに気づきました。
引きで見てみても、やっぱりそこだけ茶色いのが気になります。
そのため、素材が溶けてしまわないか不安で養生したところですが、見た目重視で結局塗ることにしました。
そしたらこんな感じに。気になっていたところを解消できたので満足です。
気を取り直して、次に外側のマスカーをはがしていきます。
重めの塗料だったので、壁に飛び散ることはなかったのですが、表面を内側にしてビニール部分も回収していきます。
こんな感じで丸く内側に包み込んで。
次は、縁のマスキングテープを取っていきます。
取った後はこんな感じに。
綺麗に縁が残されていました!よくやった少し前の自分。
このマスキングテープを取る瞬間が、なかなか爽快!
綺麗にできていたので、テンションが上がりました。
ちなみに、頑張って貼った金具の部分はこちら。
完成!
少し乾燥したら、最初に取った把手をつけ直して。
完成!さらにお気に入りの空間になりました。
とはいえ、「アイアン塗料」が乾くのには時間を要します。まだ完全に乾いたわけではないので、換気もしつつ、物や自分がボンっとぶつからないように気をつけて過ごしたいと思います。
理想としていたパネルと合わせてみても、色の違いはなく理想通りの仕上がりです。予想以上に理想の色とぴったり!自分でもびっくりです。
ちなみに、この日はこの部屋で寝たら匂いがすごくて眠れなさそうかと思っていたのですが、私の部屋の風通りがいいこともあり、そこまで匂いが気にならなかったのでこの部屋で眠れました。塗料は、硬化後にシンナーが抜け切れば匂いはしなくなります。
そして、2日間は洋服も戻さず、触らずそのまま放置していましたが、その後は普通に生活しても問題はありませんでした。1回塗りだったのと、薄く薄くを意識したので乾くのも早かった気がします。
ずっと塗ってみたいと思っていた「アイアン塗料」。
今まで使用したことがある塗料に比べて、塗りづらかった印象でした。しかし、この塗料にしか出せない雰囲気や色味があって、頑張ってよかったなと思いました。あとは、本当に暑かったので、今後塗装することがあるなら、秋か春にしようと心に決めました。
この記事が少しでも皆様の参考になると嬉しく思います。
私の知識と技術も数を重ねてきて少しずつレベルアップしていると思うので、また次なる挑戦をしたいと思います。次回もお楽しみに!
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