ヨーロッパの街を歩いた時に目にしたずっしりとした木の扉。海外の事例で目にした、暖炉のある邸宅の飴色になったドア。
その重厚感、深みを帯びた色味は、長い年月を経た風格を感じさせます。そんな経年変化をこだわり塗装で手に入れることができないだろうか……?
今回は、立体的なパネルの意匠が施された「トラッドパネルドア」を使って、理想の色・艶を追求してみました。
挑戦するのは「トラッドパネルドア」の開発担当者であるスタッフ山下!私たちPRスタッフは後ろで見守りつつ、その様子をレポートします。
木目穏やかな「ヘム」としっかり主張「レッドオーク」あなたはどっち派? 目指すイメージを固めよう!
「樹種を選ぶ」。フローリングや家具の世界では馴染みのある行為かもしれませんが、ドアの樹種を選ぶってあまりピンとこないですよね。
「トラッドパネルドア」の樹種は「ヘム」と「レッドオーク」の2種類。木目の入り具合だけでなく、塗装のしやすさにもそれぞれ特徴があるんです。
今回は、そんな樹種の特性を交えながら、目指すイメージを固めていきました。
このイメージを元に、使う塗料を考えていきました。
アンティーク家具の補修用塗料をセレクト!
今回セレクトしたのは、1884年創業のイギリスの老舗塗料メーカー「マイランズ」の塗料。英国王室からも認められた塗料で、アンティーク家具や歴史ある建造物のメンテナンスに使用されているそう。
家具の補修に使いやすいよう、250mlと少量ロットでも販売されています。
検討した結果、それぞれ、こちらの塗料を採用することにしました。
「ポリッシュ ガーネット」は、天然樹脂製の仕上げ用塗料です。
艶を出すだけでなく、琥珀色のような色味が出せるため、マホガニーやウォールナットなど木自体が赤みがかった樹種と相性が良いんだとか。
本来は仕上げ用として使われるものですが、今回はこの塗料のみで色味を重ねて仕上げていきたいと思います。
「ナイトロステイン ダークオーク」は、発色の良いオイルステイン塗料。
赤みの少ない濃い茶色で、オークのアンティーク家具でよく見かける、あの深煎りコーヒー豆のような色です。アンティーク家具補修ではこれが基準の色味になるんだそう。
正直、もっとリーズナブルな塗料は世の中にたくさんあると思います。
ただ今回塗装する「トラッドパネルドア」は、その形状に長い歴史を持つドア。使う塗料もその伝統に劣らない、背景のあるものを使ってみたいという想いもあり、この塗料を採用することにしました。
サンドペーパーで塗装面の下準備
塗装に入る前に、まずは塗装前の下準備。
「トラッドパネルドア」は表面にやすりをかけた状態でお届けしますが、より綺麗な仕上がりにするために、塗装前にサンドペーパーで研磨することをおすすめします。
使ったのは目の細かい#800のサンドペーパー。
今回のように、曲面や細かな凹凸が多いものをやする時は、スポンジ状のものや、後ほど紹介するスチールウールなど、弾力のあるものを使った方が、作業しやすいかもしれません。
塗装前にサンディングをする目的は、すべすべにするためではなく、木肌をあらすこと。
材の表面が、場所によって滑らかだったり、ささくれ立っていたりすると塗料の染み込み方にも違いが出て、ムラの原因になります。サンディングをして一定の粗さに揃えることで、塗料の吸い込み方を調整していきます。
目視や触覚では気づきにくい変化かもしれませんが、きっと仕上がりに影響してくるはず。
全面にペーパーを当てたら、ウエスで木くずを拭き取ります。
塗料を刷毛で塗り伸ばす
下準備が終わったら、いよいよ塗料を塗っていきます。
繊細な筆捌きが求められる「ヘム」
「ポリッシュ ガーネット」にはニス用の刷毛を使います。木目に沿って塗り伸ばしていきます。
オイルステインと違い、すぐに乾燥していくため、塗り戻しのないよう、一方向に塗り進めていくと良いと思います。
塗っている間に塗料が垂れてしまいました。
順に塗り進めようと少しの間おいていたのですが、気づくと乾きはじめて塗りムラが……!
作業したのは寒い日だったので、エアコンを付けて作業していたのですが、塗料の乾燥が進んでしまうため、途中で切りました。
最初の想定通り、やはり塗りムラが目立っています。この後2度塗り、3度塗りと塗装を重ねて、目立たなくなることを期待……!
ひと塗りで木目模様が浮き立つ「レッドオーク」
続いて「レッドオーク」を塗っていきます!塗り方としては「ヘム」と同じ。
「マイランズ ナイトロステイン ダークオーク」を油性塗料用の刷毛で、木目に沿って塗り伸ばします。
「ヘム」に比べて、こちらは木目模様がしっかりしているので、塗料の塗りムラを感じにくいです。ひと塗りごとに浮き出す力強い木目にテンションが上がります。
今回、撮影のために縦半分に割って塗り進めてもらいましたが、本当は、この順番の方が塗りやすかっただろうなと思います。
「ヘム」と「レッドオーク」どちらも塗り終えたら、このまま乾燥させます。乾燥時間は最低1時間を目安にしてください」。
ちなみに、今回は片面を無塗装のまま残したかったため、裏面の塗装はしていません。両面を塗装する際は、塗料がよく乾燥したことを確認して裏返し、同じように塗装をしてください。
塗料を重ねる前に研磨
このまま塗料を2度塗りして仕上げる方法もありますが、今回は研磨して塗膜を平滑にしてから塗料を重ねていきます。
ここで使うのはスチールウールです。
お鍋の焦げやサビ落としとして、台所用品としてよく見かけるやつですね!ただキッチン用として売られているものは強力に削れる粗目のもの。塗装の仕上げとして使うのは超極細と呼ばれる#000番台のものを使用します。
より柔らかく、曲面に添いやすいためスチールウールをセレクトしていますが、目の細かいものであれば、スポンジ研磨シートやサンディングペーパーでも代用できます!
ごしごし力を込めてやするのは塗装が剥げてしまうので、NGです。ムラになっている部分は何往復かさせて、過剰についてしまった塗料だけを落としていきます。
塗料が垂れたまま固まってしまったり、厚塗りされて液が溜まってしまっているところは、#400程度の目の粗いやすりで削って、その後スチールウールや#800のサンドペーパーで磨いてみるといいそうです。
「塗って・磨く」を繰り返す
以上の手順を、繰り返して風合いを出していきます。どこまで繰り返し追求するのか?山下曰く「自分がここだ!と納得するまでですね」とのこと。(痺れるー!)
それでは、手塩にかけた変化の様子をダイジェストでどうぞ!
ヘム
今回の塗装作業の工程をまとめると
- サンドペーパー#800 で塗装前の下準備
- 「マイランズ ポリッシュ ガーネット」刷毛で塗装後、1時間乾燥
- スチールウール#000で磨く
- マイランズ ポリッシュ ガーネット刷毛で塗装後、1時間乾燥
- マイランズ ポリッシュ ガーネット刷毛で塗装後、1時間乾燥
- スチールウール#000で磨く
頑張って重ね塗りしたものの、最終的にどうしても塗りムラが残ってしまう結果に……。個人的にはこの濃淡のある仕上がりも好みの質感ではあるのですが、より綺麗な仕上がりを目指すにはより良い手法があるみたいです。
後日、塗装職人さんにこんなアドバイスをもらいました。
・最初に研磨するやすりは#240〜#320くらいまでの荒いやすりでもよかったかも
・無塗装の時点で細かく磨き上げてから、とにかく薄ーく塗料を塗り重ねることが大事
・すぐに乾燥するのを防ぐため、ドライヤーで表面を温めたり湯煎をしながら塗るといい
・アルコールがベースの塗料なので、刷毛で塗った後に、アルコールで一度拭き取り乾いたら磨き上げるを繰り返すのも有効
濃い色の木であればそこまで気を使う必要もないのですが、今回は白木に丁寧に塗る際の補足です。
こちらは、再度この手法で挑戦し、続編としてレポートできればと思います!
レッドオーク
塗装作業の工程をまとめると
- サンドペーパー#800 で塗装前の下準備
- 「マイランズ ナイトロステイン ダークオーク」刷毛で塗装後、1時間乾燥
- スチールウール#000で磨く
- 「マイランズ ナイトロステイン ダークオーク」刷毛で塗装後、1時間乾燥
- スチールウール#000で磨く
塗料を重ねれば重ねるほど、深い色味になっていきますが、大体2回ほど繰り返せば充分ではないでしょうか。その後、数年に一度塗装が乾いてきたタイミングでケアをしていくことで、さらに深い色味に育ってくれそうです。
思い描いた風合いの一枚に
さて、改めて頑張った成果を見てみましょう。
どうですか、この艶感、重厚感!!
扉一枚では空間のイメージが沸かないかと思いますので、実際に取り付けてみた写真もどうぞ。
扉一枚で、しっかり空間全体の雰囲気をつくってくれる「クラシックパネルドア」。
好みの仕上がりを追求すると時間も手間もそれなりにかかりますが、その分愛着も深まります!古い家、アンティーク家具でしか手に入らないと思っていた風格を、扉で取り入れてみるのもいいかもしれません。
ちなみに、今回ご紹介した塗料の別の色味も試し塗りしています。その結果とレシピをまとめておきますのでこちらも参考までにどうぞ。