味気のない壁付けキッチン、レイアウトごと変えられないかな?
最近は、リフォーム済みやリノベーション済みの中古物件の流通が増えていますよね。中でもキッチンは、リフォーム済みで新しいものに変わっていることが多いと思います。でもその内容は、コスト重視で選ばれたのであろう味気ないシステムキッチンであることも……。
toolboxの設計施工チーム、ツールボックス工事班(TBK)が「リメイク」をテーマに実験的リノベーションに取り組んだ『studyroom#1』(詳細はこちら)。その舞台となった築57年のマンションのキッチンもまさにそれで、数年前にリフォームされていたキッチンは設備としてはまだまだ使えるものの、ちょっとワクワクしない姿形。
toolboxではこれまでも「キッチン扉交換」というキッチンリフォームの手立てを提供してきたけれど、何か新しい方法を確立することができないか?ということで今回、TBKが思いついたのが、「I型キッチンを切ってL型キッチンに変える」というアイデア。
「キッチンを切る」なんて聞いたことありませんが、それができたら、確かにキッチンリフォームの可能性はグッと広がりそうです。職人さんたちの力を借りて、初めてのキッチン切断リフォームにレッツトライ!
既存のキッチンを取り外す
まずは「材料」の準備として、キッチンを取り外す作業から。今回は解体屋さんに作業を依頼。キッチン本体を傷つけないように慎重に作業してくれました。吊り戸棚は使用しないことにしたので撤去。レンジフードとコンロも交換するので、既存のものは取り外しました。
無事に取り外してもらうことができました。今回のキッチンはシンク側とコンロ側の2台にキャビネットが分かれている仕様でした。
ステンレス天板を切る準備をする
キッチンを取り外したら、早速「キッチン切断」に取り掛かります。
天板カットを担当してくれたのは家具職人さん。キャビネットが分かれている位置に合わせて、ステンレス天板をカットします。丸ノコで真っ直ぐカットするためのガイドをセッティング。ずれないようにクランプでしっかり固定しましょう。
丸ノコにチップソー(ノコ刃)をセットします。今回使うのは、鉄・ステンレス用のもの。違う材料用のものを使うと危険なので、必ず鉄・ステンレス用のチップソーを使ってください。
まるでオリーブオイルのように振りかけているのは、鉄工用ドリルオイル。ステンレス天板の切断箇所に振りかけます。これを使うと、電ノコの刃との摩擦が抑えられ、火花が飛び散りにくくなるのだそう。「薄いステンレスは切断面が刃に巻き込まれやすいから、鉄工用ドリルオイルは必須」と職人さん。
ステンレス天板を切る
丸ノコの回転数は「静音モード」にします。硬い金属を切るのでパワーモードの方がいいのでは?と思ったら、回転数が少ない静音モードの方が刃が金属板に食いつきやすくなるんだそう。なるほど〜!
ガイドがしっかり固定されていることを確認したら、いよいよ切断!
金属同士がぶつかる「ギィィィィィィィィン」という音が響きます。
と、ここで職人さん「保護メガネ忘れた……」。摩擦対策しているとはいえ多少の火花は飛ぶので、金属板を切る時は保護メガネがあると安心でしたね……。
切断面がガタガタにならないように、一定のスピードで丸ノコを進めていきます。ゆっくり慎重に、ステンレス板にしっかり刃を噛み付かせながら切っていきます。火花にも気をつけてくださいね。
端から端まで電ノコを走らせ終えました。果たして切れているのでしょうか……?
切れてる!!!
バックガードに電ノコの刃がうまく届くか心配でしたが、ちゃんと切れていました。職人さんも満面の笑み。
一方の手前側、ステンレス天板がぐるりと小口を覆っている部分は、裏側まで刃が届かず切れていませんでした。手ノコで切断を試みます。
とはいえステンレス板。手ノコではまったく歯が立ちませんでした。丸ノコに持ち替えてカットします。
手前の小口も切れて、ステンレス天板が2つに分かれました!
芯材はパーティクルボードでした。鉄工用ドリルオイルと静音モードでの切断のおかげで、切断面がガタつくこともなくきれいに切れました。
今回のリフォームの肝だった「キッチンを切る」。結果は思いのほかスムーズに切れたけれど、うまく切れなかった時のために念の為、別の加工方法も考えていました。新規で造作するのと違い、既存のものに加工をする場合は失敗するとやり直しが効きません。もしもうまくいかなかった時はどうするのかも考えて臨むのがいいと思います。
今回は職人さんの見事な手腕により「キッチン天板を切る」見事成功しました!
新しいレイアウトに合わせて各部を測り、造作部分を作る
無事にキッチンが2つに分かれたところで、新しいレイアウトでのキッチンを計画していきます。
写真は、切断したキッチンを移動して、新しいレイアウト位置に移動してシミュレーションしているところ。手前に見えているシンク側キャビネットの裏側は、新たに造作する収納で覆い隠します。
位置が決まったら、各部の位置を測ります。シンク側とコンロ側の間に作る造作収納と天板、シンク側背面の造作の計画を立てていきます。
造作収納は家具職人さんの工房で作って、後日現場で取り付けます。
給排水管を配管する
キッチンのレイアウトが決まったら、給排水管の配管をします。ここからは設備屋さんの仕事。シンク側キャビネットを設置する部分の床にドリルドライバーで穴を開けていきます。
給水のポリ管をグッグッと床下にねじ込んでいきます。
床下を通る冷水と温水のポリ管に接続できました。
続いては排水管。元々のキッチンの排水管は床上に配管されていたので、勾配を確保しつつ塩ビ管を延長して、新規のシンク位置に配管しました。
造作家具とキッチンを組み合わせる
お願いしていた造作収納が出来上がったので、2つに切ったキッチンと組み合わせていきます。
コンロ側キャビネットとシンク側キャビネットの間に造作した収納を固定したら、天板を載せます。
コンロ側キャビネットの引き出しは、ゴミ箱を収納できる引き出しにするために上下2つ分のスペースを合体させることにしました。
中段の引き出しを取り外して、下段の引き出しに、引き出し2つ分の大きさの合板を取り付け直しました。表面は他の面材と一緒に化粧フィルムを貼ります。
システムキッチンを使っていて、「ここの引き出しがもうちょっと深かったらこれが入るのに……」という不満を抱えている方、結構いると思うんですよね。こんな方法があったか!と目から鱗でした。
シンク側キャビネットもセットして、L型のキッチンが組み上がりました!
完成!
そうして「I型キッチンを切ってL型に変えてみる」リフォームが完了。ここで改めて、リフォーム前の姿をおさらいしてみましょう。壁に向かって作業をするI型だったキッチン。それが……
シンク側がリビングに向かって対面するL型に生まれ変わりました!窓外の景色を眺めながら気持ちよく作業ができそう。
継ぎ足した天板は左官で仕上げ、面材は化粧フィルムを貼り直し、把手を付け替えました。既存キッチンを再利用しつつ、まるで造作キッチンのような佇まいになりました。
「キッチンを切る」という斬新なアイデアで、I型からL型に生まれ変わったキッチン。レイアウトの変更だけじゃなく、造作収納や左官仕上げの天板をプラスすることで、大幅にイメージチェンジできました。既存のシステムキッチンの再利用でここまでできる!という、可能性を感じる結果になりました。
使えるものを活かしてリフォームしたいという時はもちろん、キッチンの長さを拡張したい時や、思い入れのあるキッチンをなんとか活かしたいという時の参考にもなるのではないでしょうか。
キッチン天板を切ってくれる職人さんを探すのがまずハードル高そうですが(笑)、ご興味のある方は、実績のあるTBKにぜひご相談ください。
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。
住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
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※毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。