和室の既存天井を活かしてリメイクしたい
古いマンションによくある和室。日本人として、和室には抗い難い心地よさを感じます。でも、古びた印象はなんとかしたい。畳は縁無しに変えたり、襖はポップな色の襖紙や柄壁紙に貼り替えたりできる。そんな中、今回和室の印象を変える方法として着目したのが「天井」。よくある和室の天井に手を加えて、現代的な印象の空間にアップデートするチャレンジをしてみました。
天井リメイクを行った部屋は、toolboxの設計施工チーム、ツールボックス工事班(TBK)がリノベーションした『studyroom#1』。築50年超えのマンションで、既存内装を極力壊さず、手を加えて変えていく実験的リノベーションに取り組みました。
この部屋では「既存のI型キッチンを2つに切ってL型にリメイク」してみたり、「既存フローリングを塗装でリメイク」してみたりと、さまざまなトライを盛り込んだ空間になっていますので、ぜひ以下の記事もチェックしてみてください!
元の和室は「ザ・昭和」。天井には「目透かし天井」と呼ばれる仕上げが施されていました。本格的な和室だと無垢の杉板などが使われますが、一般住宅で使われているのは大体プリント合板。この天井板もプリント合板でした。
で、これをどうリメイクするか。今回の『studyroom#1』の「既存に手を加える」というリノベーテーマから思いついたのは、「天井の真ん中を切り抜いて、折り上げ天井にする」というアイデア。
天井を切り抜いた部分は、コンクリート躯体を現しに。昔ながらの和室天井とコンクリート躯体現しのギャップ感で、新鮮な景色をつくれないかと考えました。
天井板を全て撤去して全面をコンクリート躯体現しにする手もあるけれど、解体すると、壁とかち合う部分をどうする?という問題が生まれてしまう。既存に塗装をするという方法もあるけれど、それじゃちょっとつまらない……と考えてたどり着いたアイデアでした。
一体どんな景色が生まれるのか。TBKの頼れるパートナー職人である大工・渡邉さんの力を借りて、レッツリメイク!してみました。
カットする位置に印をつける
まずは天井板をカットする位置に印をつけていきます。
天井は測りにくく、経年によりたわんでいることもあるので、床側でカットする位置を計測して、墨出しレーザーで天井に線を投射して印をつけることにしました。
レーザーの線を天井に投射したら、切り抜きたい四角の角部分にマスキングテープで印をつけていきます。
四角の角に印をつけ終えました。
天井板の真ん中を切る
真っ直ぐに切っていくために、定規代わりの板を天井に固定します。
この時、注意したいのがビスを打つ場所。穴が空いてしまうので、既存を残す側ではなく、取り外す側の天井にビスを打ちます。
ガイドを取り付けたら、早速カットしていきます。使うのは丸ノコ。粉塵が頭上から飛んでくることになるので、マスクや保護メガネがあると良さそう。
ちなみにガイドにしている板は大工さんの自作。2枚の板を重ねて段差を作って、丸ノコのガードがひっかかるようにした、便利グッズ。
角の近くは手ノコで。天井板が割れたり断面がガビガビにならないよう、ゆっくり慎重に切っていきます。
この作業を4辺で繰り返し……おっ、一枚外れた!
丸ノコで切りきれていない箇所を手ノコで切りながら、他の板も外していきます。
きれいに板を取り外すことができました!
コンクリート躯体に取り付けられている野縁(天井仕上げ材を固定するための木軸)も、見えている部分だけ切って取り外します。
パンパカパーン!天井板に四角い穴があきました。昭和な和の天井からコンクリート躯体が覗く、不思議な景色が生まれました。
回り縁の下地を取り付ける
四角く切り取ることはできましたが、躯体から天井を吊り下げていた野地材も切ってしまったので、天井板がたわんでいます。切断面も丸見えなので、これらを解消すべく、コンクリート躯体と天井板の間に杉板を回して仕上げていきます。
杉板を取り付けるための下地材を躯体に取り付けます。コンクリートの穴あけができる振動ドリルを使って、コンクリート用ビスを打っていきます。
天井板の切断面と下地材の面がピッタリ揃うようにしながら、下地材を固定していきます。
下地材の取り付けが完了しました。ここに杉板を取り付けて、天井板を引っ掛けていきます。
回り縁の杉板を取り付ける
……と、とっても順調に進んできたのですが、ここで問題が発覚。コンクリート躯体の不陸(ふりく:建築で使われる用語で、面が水平でなく、凸凹があることを指す言葉)が激しくて、このままだと杉板と躯体の間に隙間ができてしまうことがわかったのです。
大変ですが、躯体の凸凹をこまめに測って、杉板を小刻みに切っていくことにしました。
「コンクリート躯体が真っ平」ということはあまりないと思うので、多少の不陸や傾斜があることを想定しておくといいと思います。
各所を細かく測って、杉板を切っていきます。美しい仕上がりのために妥協はしない。大工・渡邉さんの職人魂に痺れます。
測って、切って、はめてみて。うまく凸凹にはまらなければ、また測って、切って……。
苦労の甲斐あって、不陸にピッタリハマりました!爽快!
杉板がぶつかり合う角の部分は、杉板の端を45度にカットして突き合わせます。
綺麗にハマりました!ちなみに、こうした角の留め方を「留め加工」と言います。
続いては、天井板を杉板裏側の溝にはめていきます。杉板に当て木をして、げんのうで叩いてはめ込みます。
天井板が杉板に引っ掛かったら、フィニッシュネイルで固定。
完成!
4辺すべてに杉板を取り付けることができました。天井板とコンクリート躯体の合間に杉板を回したら、格調のある雰囲気になりました。
10センチほどとわずかですが、部分的に天井が高くなったのもポイント。天井板を撤去してもあまり天井高さが変わらないシチュエーションの場合は、こうした部分アゲは頭上に抜け感をつくる方法として、有効だと思いました。
天井リメイクのほかに、和室は畳をベージュの縁無し畳に入れ替え、壁はアイボリーに塗装。別の和室にあった障子をクローゼットの引き戸に再利用しました。天井のコンクリート躯体の表情が、和の設えのアクセントになっています。
和室を現代的にアップデートする方法として、「天井」に着目した今回。既存の和室天井を「撤去する」「塗る」以外の新しい手法を見つけることができました。コンクリート躯体の不陸に杉板を合わせていくのが大変だったけど、手間をかけただけの見映えが実現できたと思います。
〈おまけ〉切った和室天井を土間の天井に移植!
さて、今回部分的に切り取った天井板。実はこちらも再利用して、別の部屋の天井仕上げに使いました。
使った先は、元は和室だった土間。この部屋の天井は、既存の天井板を撤去して野縁だけ残し、コンクリート躯体現しにしました。その残した野縁に、和室から持ってきた天井板を移植。そこへ照明器具を取り付け配線を隠して仕上げました。
移設した和室の天井が、既存のまま残した天袋や窓辺につくった縁側と相まって、こちらも現代的な和を感じる空間になりました。天井移植の詳細は、以下の記事でレポートしていますので、ぜひご覧ください。
床や壁に比べると、天井はあまり意識されることが少ないけど、天井に立体感をつくると空間にリズムが生まれます。空間づくりのアイデアとして、ぜひ参考にしてみてください。
既存の和室天井リメイクも天井移植も大成功!渡邉さん、ありがとうございました。
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。
住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
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