間仕切り壁を壊さないで、開放的な空間にしたい!
ツールボックス工事班(TBK)が、「リメイク」をテーマに掲げ、既存内装を極力壊さず、手を加えて変えていく実験的リノベーションに取り組んだ『studyroom#1』。「壁付けのI型キッチンを2つに切ってL型キッチンにリメイク」してみたり、「和天井を切り抜いて折り上げ天井にしてみる」など、これまでにやったことのないさまざまな試みを詰め込みました。
今回レポートするトライも、そんな実験的試みのひとつ。古いマンションって、部屋が細かく仕切られていることが多いですよね。最近のマンションでも、細かく仕切ることで部屋数を確保している物件を見かけます。部屋数はあるに越したことはないかもしれないけど、空間が閉塞的なのは、ちょっといただけない。
『studyroom#1』も、元の間取りは2LDKで、リビングと和室の間にある間仕切り壁が、空間に閉塞感を生んでいました。この間仕切り壁がなかったら、バルコニーまで視線が抜けるのに……!
「じゃあ、間仕切り壁を壊しちゃえばいいじゃん!」と思うところですが、そうすると、間仕切り壁が床と天井に接している部分をどうする?という問題が。
一般的に間仕切り壁は、間柱にプラスターボードを貼ってつくった下地に、壁紙を貼ったり塗装をして仕上げられています。間柱は、床の下地や天井の下地にも絡んでいて、間柱ごと壁を壊すとなると、繋がっている床と天井部分のつくり直しが必要になってくるんです。
『studyroom#1』では、リビング側の床は既存をそのまま活かして手を加えたいと思っていたので、床を貼り直したり補修が発生するのは避けたい。でも、開放感はつくりたい。
そんなワガママを叶えるために考えたのが、「間仕切り壁に穴を開ける」という方法。下地のプラスターボードを切り抜いて、間柱が露出した開口をつくろう!というわけです。
果たして空間の開放感をアップさせることはできるのか。プロの職人さんたちの力を借りて、レッツトライ!
間仕切り壁の状態を確認する
壁を切って穴を開ける前に、まずは壁の状態の確認です。リビング側も和室側も、表面は壁紙で仕上げられていました。
これを、壁紙ごとプラスターボードを切って、塗装し直そうと思っていたのですが……ここで重大な事実が発覚!
解体予定の別の箇所の間仕切り壁を壊してみたところ、中から現れたのはプラスターボードではなく、ベニヤ板だったのです。
近年の住宅ではプラスターボードが主流ですが、昭和の時代はベニヤ板が主流でした。そういえばこの部屋は1967年生まれ。バリバリの昭和世代でした……。
薄いベニヤ板は間柱に貼り付けたままの状態だと切りにくく、切れてもバリ(出っ張りやトゲ)が出やすいため、ベニヤ板を活かすことは断念。ベニヤ板は取り去って、開口部を設けながら新たにプラスターボードを貼る方法にチェンジすることにしました。
「壊しながら、手を加えながら、どうするか考えていく」という工作的アプローチで空間づくりに取り組んだ『studyroom#1』。こんな想定外も、想定内です。
壁の素材をあらかじめ確認する方法には、コンセントボックスやスイッチプレートを外すと、壁のつくりを確認できる場合があります。
電気配線や給排水管、ガス管など、うっかり切ったりビスを打ってしまうと大変なものが壁裏に潜んでいる可能性もあります。貼った状態のプラスターボードを切る際は、竣工図面を確認したり、その間仕切り壁にガス・電気・水道に絡む設備がないか確認した上で、慎重に行いましょう。
ベニヤ板を撤去する
気を取り直して、ベニヤ板の撤去に取り掛かります。ベニヤ板は撤去したいけど、間柱も床も天井も壊したくないという、要望の細かい解体。今回は他の部分の解体もあったのと、ここで失敗したくなかったので、解体屋さんに作業をお願いしました。
ベニヤ板の撤去を進めると、想定外のうれしい発見もありました。間柱に「横胴縁」がついていたのです。
横胴縁とは、縦に走る間柱に対して横に取り付けられた材のこと。プラスターボードを使う最近は間柱だけのケースが多いけれど、下地にベニヤが使われていた時代は、薄いベニヤをしっかり留めるために横胴縁も入れるのが一般的でした。
この横胴縁、珍しいことに間柱を凹型にくり抜いた「欠き込み」と呼ばれる方法で接合されていました。この「ひと手間」がかけられた造作も丸ごと見せたい!と、横胴縁もこのまま活かすことにしました。
そうして、ベニヤ板の撤去が完了!間柱を残しながらも、以前とは比べ物にならない開放感が生まれました。
電気配線の仕込みをする
新たなボードを貼り上げる前に、電気配線を仕込みます。作業を担当するのは電気工事士さん。プラスターボードを貼ってから配線工事をするケースもありますが、壁の中に配線を隠したかったので、プラスターボードを貼る前に仕込みの作業を行いました。
コンセントと、TVもレイアウトできるようにテレビ線も配線。間柱によって生まれる壁の中のスペースは、こんなふうに配線をおさめるスペースとしても活躍してるんです。
開口部をつくりながらプラスターボードを貼る
電気配線の仕込みが終わったら、間柱に新たにプラスターボードを貼っていきます。
「開放感が欲しいなら、プラスターボードを貼らないで間柱を全部現しにしたままでもいいのでは?」という考えも浮かびますが、壁に沿って家具を置く場面や、隣り合う居室それぞれの居心地のことも考えて、全面開口にはしないことにしました。
開口サイズが決まったら、大工さんにお願いして、プラスターボードを施工してもらいました。「3×6(サブロク)サイズ」のプラスターボードを太刃カッターでカットして、貼り付けていきます。
プラスターボードが貼り上がりました!
間柱だけの全面オープンな時よりも、開口部を狭めたこの状態の方が奥へ奥へと意識が向かって、“抜けてる”感を強く感じます。
開口部の小口もプラスターボードで塞ぎます。「壁に穴を開けたら間柱と横胴縁が出てきた」ような見た目を目指します。
プラスターボードを塗装する
新たにプラスターボードを貼ったところを塗装していきます。間柱と横胴縁は既存のままの姿を見せたいので、塗装なしに。しっかり養生して塗料がつかないようにします。
今回、使った塗料の色はクリーム色。真っ白にしなかったのは、既存の間柱や横胴縁が浮いてしまう気がしたから。どこか懐かしい雰囲気を感じるクリーム色が、経年して色が濃くなった材にうまく馴染んでくれました。
塗装が終わった段階で、電気工事の仕上げもしてもらいました。プラスターボードの一部を切り欠いて、壁の中に仕込んでおいた電気配線を壁面側の器具に繋げて設置します。
飾り棚を取り付ける
活かし方を考えていた横胴縁には、板を取り付けて、小物を飾れる棚にすることにしました。
棚板に選んだのは幅180mmの杉材。『studyroom#1』では、既存の和室の設えを活かす部分があったので、それらと馴染むよう、新しくつくる部分には和を感じる素材を取り入れました。
棚を取り付ける箇所の間柱と間柱の間隔を計り、同じ長さにカットした棚板を用意します。そしてもう一つ、横胴縁と横胴縁の間隔よりも細い角材を用意して、同じ長さに切りました。
この棚板と角材を、センター揃えで合体させます。
これを、角材が下になるように間柱の間に入れて、トントン叩いて下に落としていくと……
ズボッ!横胴縁と横胴縁の間に角材がぴったりハマり、棚板が固定されました!
とはいえ、横胴縁や間柱にビスで留めているわけではないので、棚にものを飾らない時は、簡単に取り外すことができます。使う人が気分で選べるように、このスタイルにしました。
同じ手順で、他の箇所にも棚板を取り付けていきます。ズボッ!と角材がハマるたびに快感を覚えました。
完成
「間仕切り壁を壊さないで、空間に開放感を生み出したい!」という思いから始まったトライ。間仕切り壁に穴を開けてみたら、こうなりました!
ちょっとビフォーも振り返ってみましょう。視線がバルコニーに面した窓まで抜けるようになって、伸びやかな空間になりました。階段にも開口をつくったので、全体の明るさと開放感が格段にアップしました。
リビングからフロア全体を眺めた時の視界も、開放的になりました。
隣の部屋へ視線は抜けるけど、床付近は見えないので、視界はスッキリ。
飾り棚に飾るものと合わせて、この壁まわりをどうスタイリングしていくか考えると、ワクワクします。
間仕切り壁を壊さなくても、開放感はつくれる!間仕切り壁を壊して、床も天井もつくり直すのは大変だけど、既存の間柱を活かすこの方法なら、手間もコストもちょっと軽くなるのではないでしょうか。TBKにとって、新しい空間づくりの技法の開発ができました。今後のリノベーションの現場でも取り入れていきたいアイデアです。
「リメイク」をテーマに掲げ、既存内装を極力壊さず、手を加えて変えていく実験的リノベーションに取り組んだ『studyroom#1』。他のチャレンジも以下の記事にまとめていますので、ぜひチェックしてみてください。
〈How to make〉
『I型のシステムキッチンを2つに切って、L型にリメイクしてみた』
『和室の天井を切って、折り上げ天井にリメイクしてみた!』
『フローリングを塗装でリメイクしてみた』
『コンクリートブロック壁に穴を開けて、洗面台をつくってみた』
『畳の下の荒板を使って、土間に縁側をつくってみた』
ツールボックス工事班|TBK
toolboxの設計施工チーム。
住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。
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※毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。