所要時間
5日
かかった費用
算出不能

主な材料・道具

スチールフレーム
スチールフレーム
支柱
支柱
左官材
左官材
コテ板&コテ
コテ板&コテ
  • 今回は他の工事と合わせて行ったので費用を算出できませんでした。

リビングを窓辺いっぱいまで使えるようにしたい

ツールボックス工事班(TBK)が実験的リノベーションに取り組んだ『studyroom#1』。築56年の中古マンションを自社で購入して、既存の和天井をくり抜いて折り上げ天井にリメイクしてみたり、色味が気に入らないフローリングを塗ってリメイクしてみるなど、「既存を極力壊さず、既存を活かしながら手を加えて空間全体を変える」をテーマに、さまざまな挑戦を盛り込みながらリノベーションしました。

「既存を極力壊さず活かす」というルールは間取りにも適用。間取りは大きく変えず、もともとは壁付けのI型だったキッチンを、2つに切ってL型にリメイクするという方法で、リビングとダイニングキッチンが対面式シンクで繋がる空間に変えました。

撮影:中村 晃

さらに、「間仕切り壁に穴を開ける」という方法も組み合わせて開放感をアップ。そうして、体感的には広くなったLDK。だけど平面でみると、リビングの面積がちょっとコンパクトに……。

そこで、窓辺いっぱいまでを“居場所”として有効活用したい!と考えて思いついたのが、「掃き出し窓の前にベンチをつくる」というアイデア。

バルコニーに面した掃き出し窓は、バルコニーへの出入りを考慮して、なかなか物や家具が置けない場所。でもこの家は、バルコニーに面した掃き出し窓がもう一箇所あるので、バルコニーへはそちらから出入りすることにすればいい。

さらにこの部屋は、バルコニーからの眺めが抜群!窓辺のベンチに座って、景色を眺めながらお茶をしてくつろいだり、夜景を見ながら晩酌するのもいい。ベンチがソファ的働きをしてくれる分、床にはラグやクッションを敷いて、リビングをゴロゴロスペースにしてもいいかも。そんなふうにシーンの妄想が広がったので、「掃き出し窓にベンチを添える」というアイデアを実現してみることにしました。

部屋全体のリノベーションと並行してベンチづくりをしていきます。

ベンチのサイズと仕上げを検討する

まずはベンチの高さや長さを決めます。掃き出し窓に板を添えて、感覚をシミュレーション。掃き出し窓の左側、エアコンのダクトホースが出ている部分は壁をふかすことにしたので、掃き出し窓の右側の出っ張りとふかし壁の間にちょうどおさまる、幅1950mm、奥行きはスリムにして280mm、高さは400mmのベンチをつくることにしました。

窓の開放感を遮らないよう、ベンチに足は付けず両サイドの壁に固定して、座面がふわりと浮いているような形にしようと考えました。置き型のベンチを作るのでもいいのだけれど、せっかくなら窓辺に造り付けて、“居場所”としての存在を確固なものにしたいと思ったのです。

そして、座面は左官仕上げにすることに。リビングに対面するキッチンの天板も左官仕上げなので、空間全体の一体感が出るよう同じ素材を使うことにしました。

左官仕上げのサンプル板。左のベージュがキッチン天板、ベンチは右の淡いグリーンで仕上げます。

下地を組む

ベンチの下地をつくっていきます。担当するのは大工さん。座面両袖の壁に下地を仕込んでいきます。

続いては、座面の下地づくり。長いベンチをフロート型で取り付けるので、座るとたわみが出やすくなります。たわみが出ると座面の左官仕上げにヒビが入ってしまう可能性が高くなるため、座面の下地は木材ではなく、スチールで作ったフレームを入れることにしました。

スチールフレームを取り付け、その上と小口(側面)に板を貼って、下地が完成!

左官仕上げをする

ここからは左官職人さんによる左官仕上げ。まずは、座面以外の箇所に左官材がつかないよう、しっかり養生。

左官材を塗る前に、パテを薄く下塗りして、小さな凸凹やビスの凹みを均していきます。仕上げの左官材をきれいに仕上げるための大事な作業です。下塗りをしたら、乾燥のために一日おきます。

翌日、仕上げ塗りに着手!あらかじめ調合してきた材料を練り合わせて、仕上げの左官材をつくりました。これを座面部分に塗っていきます。

コテ板に貼っているのは養生テープ。作業後はテープを剥がせば、コテ板の洗浄要らずというわけ。

天面、小口(側面)、そして裏側の木部分にも左官材を塗っていきます。

二度塗り後、数日乾燥させたら「磨き」と呼ばれる研磨の作業。表面の凸凹を紙やすりで均しつつ、磨いていきます。

磨きが終わったら、研磨で出てきた粉を濡れぶきんで丁寧に拭き取ります。最後に、表面を汚れから保護するためのトップコートを塗って、左官仕上げは完了。するりとした触り心地と表情の座面ができました。淡いグリーンもきれいに色が出てる!

支柱を追加することに

「フロート型でいこう!」と進めてきた窓辺のベンチづくり。左官仕上げまで進めたものの、座面のたわみが心配になってきてしまいました。「この美しい左官仕上げにヒビを入れるわけにはいかない!」ということで、やっぱり座面下に支柱を入れることにしました。

家具職人さんとTBKメンバーふたりがかりで作業

座面下に潜り込んで、スチールで作った一本脚の支柱を中心にセットしていきます。用意した支柱の高さは座面下高さピッタリ。座面に無理な圧力をかけて左官仕上げにヒビをつくってしまうことのないよう、慎重に慎重に、作業を進めます。

今回は左官仕上げ後に支柱を足すことになりましたが、最初から支柱を入れる計画にした場合は、下地組の段階で支柱を入れてください。

支柱を水平にスライドさせながらゆっくりじっくり座面中心にセットしていきます。

フーーーーッ!(深呼吸)息を詰めながら行った作業。座面の左官仕上げを守り抜きながら、座面中心に支柱をセットできました。座面のスチールフレームに支柱を固定して、出来上がりです。

「窓辺のベンチ」完成!

完成形を見ての感想は、「え……掃き出し窓の前にベンチがあるって、いいじゃん!」。窓の抜け感を損なうどころか、窓外の景色への意識が高められて、誘われるようにここに座りたくなる、そんな場所が出来上がりました。

リビング全景は、こんな感じ。ベンチを添えたことで、掃き出し窓の手前まで過ごす場所として使える空間になりました。急遽、追加することにした支柱ですが、スチールの細い一本脚にしたので、存在感は軽やか。フロート感のあるベンチになったと思います。

ベンチに座ってくつろぐこともできるし、ベンチをテーブル代わりにして使ってもいいですね。窓を開けて、ベランダ側に足を下ろして座ることもできます。読書をしたり、お茶をしたり、晩酌をしたり。妄想していた通り、色々な過ごし方をしてみたくなる場になりました。グリーンを育てたりウッドデッキにするなど、バルコニーを積極的に使ってみたくもなりました。

「掃き出し窓の前にベンチがあったら邪魔じゃないか」となるどころか、ただ掃き出し窓がある時よりも、窓辺を使おう・過ごそうという気持ちが高まる結果になったのは、面白い発見でした。掃き出し窓にベンチを添えて、窓辺をリメイク。掃き出し窓のまわりを有効活用できていないな〜というお住まいに、オススメです!

〈おまけ〉階段の元・出入り口にもベンチをつくってみた!

見出しを読んだだけではどういうことかまったくわからないと思いますので、ご説明します。今回のリメイクの舞台になった『studyroom#1』はメゾネット住戸で、下階の玄関から上階へのアクセスが曲がり階段になっていたのを、明るく開放的な玄関にするため、壁の一部を抜いて直線階段にリメイクしました。

曲がり階段から直線に変わった階段。(AFTER撮影:中村 晃)

そうすると、かつての階段出入り口をどうしよう……という問題が。

壁を立てて塞ぐという手もあるけれど、せっかく開放的にした階段に閉塞感が出てしまうし、「かつては階段の出入り口だった」という痕跡も残せたら面白いんじゃないか。そう考えて、元々の階段の踏み板と手摺を残したまま、ベンチを取り付けてみました。

撮影:中村 晃

近づいて見ると、元々あった手摺が座面を貫通しています!座面の下には、かつての階段もちらり。こちらも、開放感を活かしつつ、居場所をつくることができました。

撮影:中村 晃

「ベンチ」をプラスして、家の中で使い切れていないスペースを「過ごす場所」にリメイクするというアイデア。ぜひ参考にしてみてください。

「リメイク」をテーマに掲げ、既存内装を極力壊さず、手を加えて変えていく実験的リノベーションに取り組んだ『studyroom#1』。他のチャレンジも以下の記事にまとめていますので、チェックしていただけたらうれしいです。

〈How to make〉
I型のシステムキッチンを2つに切って、L型にリメイクしてみた
和室の天井を切って、折り上げ天井にリメイクしてみた!
フローリングを塗装でリメイクしてみた
コンクリートブロック壁に穴を開けて、洗面台をつくってみた
畳の下の荒板を使って、土間に縁側をつくってみた
間仕切り壁に穴を開けて、開放感をつくってみた

ツールボックス工事班|TBK

toolboxの設計施工チーム。

住宅のリフォーム・リノベーションを専門に、オフィスや賃貸案件も手がけています。
ご予算や目的に応じ、既存や素材をうまく活かしたご提案が特徴です。

 

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※毎週水曜日の13時から15時まで、東京・目白ショールームに施工チームがいます。工事に関するご相談も承っておりますので、この時間もご活用ください。

テキスト:サトウ