「幅細」の魅⼒
フローリングの「板幅」が空間に与える印象を、考えたことありますでしょうか?
これまで長らく、フローリングの板幅は75〜90mmが⼀般的でした。
近年は広い幅が好まれる傾向にあり、120mmはもはや⼀般的、中には300mmを超えるものもあって、板幅の選択肢は”広い”⽅に広がりをみせています。幅が広い⽅が空間がのびのびと、そして贅沢に思えますからね。
toolboxでもかねてより「幅広」の魅⼒をお伝えしてきましたが、実は「幅細」も、使い⽅によってはとても品良く⾒えるんだよというご提案です。
応接間の「品」を⽬指して
個⼈的に、幅細のフローリングは⼩さな空間に向いていると思います。
イメージしたのは昔の邸宅に付随する応接間。
ちょっと特別感のある、佇まいに品を感じさせる空間づくりの要素にはさまざまありますが、「床」に着⽬したとき、僕のこれまでの経験上、板幅は「55mm」であることが多くありました。
当時の材料流通の都合などの関連を厳密に解明する術はありませんが、おそらく⼩空間ならではの演出性がある意匠を床に求めるとき、幅広よりもスティックのような幅細が向いたのだと思います。
現代では応接間を併設するお宅はなかなかありませんが、寝室や書斎、都市部のコンパクトなリビングといった⼩空間には、間違いなくハマりの良いフローリングだと思うのです。
一枚ごとに異なる表情の乱尺がつくるリズム
往年の応接間では、この幅の細いフローリングは、板の長さが均⼀であることがほとんど。一方、『スティックフローリング』は、「乱尺」と呼ばれる、板の⻑さがランダムな仕様。
⻑さを1本ずつランダムにすることで、貼り上がりに適度なリズム感が生まれ、幅細ゆえの「品」を保ちつつも、かしこまった印象を与える定尺に比べ、軽やかで楽しげな雰囲気を醸し出せるようにしました。
また、板のグレードは節を含むものをチョイスしているため、板の色味や木目の表情に一枚一枚個体差があり、よりカジュアルな印象に。
塗装品のほかに無塗装品もご⽤意しているため、クリア塗装で明るい表情に仕上げる以外に、深めのステイン染⾊で重厚な表情をつくることも可能です。
⼿間を重ねて
板の幅は、細い方より広い⽅が⾼価な気がします。
事実、材料としては幅広の⽅が、径が大きな太い木を必要とするので⾼価になるのですが、加工数の多さや不良品発生リスクなどの関係で、実は製造コストは細いほうが高くなる傾向にあります。フローリングを床に貼る⼿間も、板が細い⽅が、作業量は増えてしまいます。
ただ、幅広が主流のこの時世に、あえて幅細のフローリングをさりげなく使うというところに、「フローリング通」として、ちょっぴり自己満足感を覚えるのです。
床に限らず、天井やキッチンカウンターの腰壁、ベッドのヘッドボードなど、空間の格を少し⾼める材料として、ぜひご検討ください。