布でできた壁紙
『織物壁紙』は、綿や麻の天然素材の糸と糸を織った布の裏に、紙を張って厚く丈夫にしたもの。
現在はビニールクロスなど様々な壁紙が流通していますが、本来壁紙は「織物」でつくられていたもので、その歴史は長いのです。
「織物壁紙」の良さは、何と言っても質感の良さ。
綿や麻でできた天然素材ならではの素材感と、プリントや型押しでは表現できない布ならではの奥行きがあり、光を柔らかく受け止め、落ち着いた雰囲気を演出してくれます。
また、糸と糸を織り込んだ布からできているので、通気性や調湿性があり、さらっと気持ち良い空気をつくってくれるのも魅力。
表面に静電気が発生しないので、埃が吸着しにくく特別なお手入れは不要です。
ただし、飲み物をこぼしたりスイッチ周りで何度も手が触れて手垢がついて汚れてしまった時に、拭き掃除ができないので、使用する場所や扱い方には注意が必要になります。
こだわる人の無地
普段の暮らしになじむ上質さがある、無地の織物壁紙を用意しました。
選んだのは、「綿麻」と「ジュート」の2種類です。
ナチュラルカラーの「綿麻」は、少しグレーがかった色。織り目は細かめですが、織り込まれた糸は1色ではないので、まっさらな無地ではありません。あたたかいけど、ほっこりしすぎない。そんな雰囲気をもつ壁紙です。
真っ白な壁紙より汚れが目立ちにくいため、壁や天井にも安心して使えます。
キャメル色の「ジュート」は、壁紙では珍しいざっくりとした織り目が特徴。触り心地も少しざらっとしています。
本来キャビネットの扉に貼るために作られたものですが、それを壁に貼ってみたらかっこよかった!というのがきっかけで販売を決めました。
塗装壁やコンクリート壁と組み合わせても良いですし、床材や建具にもこだわりがあり、単調で無難な空間はどうも自分のスタイルに合わない、という方に使って欲しい壁紙です。
販売のきっかけは壁紙としての利用からでしたが、建具やキャビネットにという本来の使い方もやっぱり良い。
ジュートは、織り目がざっくりとしているだけでなく色も濃いめなので、小さな面積に使うと、アクセントとして空間に遊び心が生まれます。素材感のあるものが無機質な空間の中に取り入れられるとお互いの良さが際立つ気がします。
クラフト感のあるタイル壁とも好相性です。
知っていて欲しいこと
織物壁紙の住宅シェアが減った理由には、施工の難しさがあります。
天然素材は伸縮しますし織り目も特徴的なので、綺麗に貼っても、つなぎ目が目立ちやすい。また、下地処理を念入りにしたり、繊維質で切りづらかったりと注意を払うことが多く、技術のある職人さんでないと貼るのが難しい。そのため、一般的な壁紙よりも施工費が高いとされています。
この商品に限らずですが、織物壁紙の特徴をお施主さんに充分に理解していただかないと、工務店さんとしては積極的には扱えないのが本音。そんな背景があり、日本で使われている壁紙の9割が、施工性が良くて安いビニールクロスという状況が生まれたと言われています。
ビニールクロスが悪いということではないですが、心地よい空間をつくるのにはメリットもデメリットも理解して選択することが大切。
かくいう私はこの「織物壁紙」をどうしても自宅で使いたくて、DIYだったので失敗してしまうことも想定した上で襖に貼ってみました。つなぎ目がなかったことも大きく影響していますが、想像以上に綺麗に貼れて大満足の仕上がりに。メリットデメリットを理解した上で選択できてよかったなと実感しました。
みなさまにも、自分で考え、自分で選び、愛着の湧く空間をつくることを楽しんで欲しいと思います。