名脇役のシルバーパーツ
洗面室やキッチンは、家の中でも特に設備機器やパーツ類が多いスペース。床壁天井などの仕上げが決まっても、そこに取り付けるものによって空間の印象も変わります。
「なんかいいなぁ」と感じる空間は、実は細かいパーツが醸し出す雰囲気が影響していることも。ファッションでいうところのアクセサリー。ワンポイントや差し色の効かせ方でその人の人柄を感じたりします。
今回ご紹介するものは現役で船の上で使われているパーツたち。
手に取ると感じる「詰まっている感」のある重み。それはパーツを構成する素材の多くが、真鍮とステンレスでできているため。その理由は、塩分を含む海水や潮風による腐食をなるべく少なくするためであり、クロームメッキ処理して、さらに耐食性を上げている部分もあります。
キラリと光るシルバーパーツは、シンプルな内装であってもさり気なく主張する名脇役です。
工夫の機能美
これらのパーツが本来使われているのは、常に潮風に晒され波に揺れている海の上。独自に進化したその機能には、船舶用ならではの理由がありました。
例えば「スイングタオルハンガー」はバーの先端がスプリング式のクリップになっていて、波で船が揺れてもタオルが滑り落ちない構造になっています。
また、「ソープディッシュ」や「ワイヤースポンジラック」は限られたスペースを有効活用できるように壁に取り付ける仕様。石鹸を置く部分は取り外しできて、左右どちらでも設置できる気の利いたつくり。
取り付け部分は船上での急なトラブルにも対応できるように、正面からビスが見えていて、すぐ外せるようになっていたり、パーツ同士を溶接せずにボルトで固定してしていたりと、とても実用的。そうしたメンテナンス性への考慮から生まれた構造も、デザインの一部になっています。
必要から生まれたカタチ、素材はまさに機能美。シンプルな仕様の室内で、パーツでアクセントをつけたい時にはもってこい。船だけで使われているのはもったいない! 住宅や店舗でも使えるパーツ群です。
海で育った歴史とロマン
この金物シリーズは、昭和6年から半世紀以上も船舶向けにパーツを作り続けているメーカーのものです。海上という過酷な環境に耐えうるように、材料を選び改良を重ねつくり続けられています。一時は世界シェア80%を占めるまで広がりをみせ、現在でも世界各国の船舶に使われていることが、その性能が信頼されている証拠です。
フェリーや貨物船で使われ、世界各国を旅しているロマン溢れるパーツでもあります。異国の地で乗った船の中で、自宅と同じパーツに出会う。そんな素敵な出来事が起こることもあるかもしれません。