荒波で揉まれたカタチ
パーツ好きの方にご注目いただきたい、存在感のある建具回りの金物たちを集めました。
実はこれらは、現役で船の上で使われているパーツたち。レバーハンドルやドアノブは一見、住宅向けの金物と変わらないように見えますが、本来使われているのは潮風に晒され常に波に揺れている海の上。実際に手に触れると分かるその重みと小気味好い操作性。独自に進化したその機能には、船舶用ならではの理由がありました。
例えば、「レバーハンドル」のグリップエンド(持ち手の先端)が「クッ」とカーブしているのは、揺れている時に握りやすくするため。エンジン室などでの使用も想定し、緊急時にオイルの付いた手でも滑りにくい形状にデザインされています。また、急なトラブルにも対応できるように、正面からビスが見えていて、すぐ外せるようになっていたり、パーツ同士を溶接せずにボルトで固定してしていたりと、とても実用的。そうしたメンテナンス性への考慮から生まれた構造も、デザインの一部になっています。
必要から生まれたカタチはまさに機能美。シンプルな仕様の室内で、パーツでアクセントをつけたい時にはもってこい。船だけで使われているのはもったいない!と、住宅やオフィス、店舗でも使えるものを集めました。
頼れる金属「真鍮」と磨きたくなるクロームの輝き
手に取ると感じる「詰まっている感」のある重み。それはパーツを構成する素材の多くが、真鍮とステンレスでできているため。
真鍮とステンレスを使っている理由は、塩分を含む海水や潮風による腐食をなるべく少なくするためであり、真鍮をクロームメッキ処理して、さらに耐食性を上げている部分もあります。
ドアの中に設置する目に見えない部品であるバックセット、ノブやレバーをつなぐ芯棒も太くしっかりとしたつくりで、重みがあります。ドアノブを回した時の、「カチャ」という軽快なラッチ音はビンテージカーのを操作を思わせます。表示錠のロックのつまみ部分も、思わずつまみたくなるような、あまり見かけないチャーミングな形状です。
業務用のアイテムと聞くとサイズが大きめなイメージがありますが、「レバーハンドル」「ドアノブ」は普通の住宅で使っても違和感のないサイズ。
キラリと主張するその存在感は、『オーダーフラッシュドア』や『木製パインドア』などシンプルな形状のドアとも好相性。ぽってりと厚みのあるクロームの仕上げは、毎日ピカピカ磨きたくなります。
遊び心を刺激します
「レバーハンドル」「ドアノブ」以外にも、住宅で使ったらアクセントになりそうなドア回りのパーツをピックアップしました。
開き戸の上に取り付ける「アジャスター」は、ダイヤルを回してドアを一定角度で固定しておくための金物。風通してとしてドアを数10cmだけ開けておきたいという時はもちろん、ペットを飼ってる皆さん、留守の時のペットの通り抜け用としていかがでしょう。
「サイレントフック」は、開いたドアを閉じないように固定するためのフックです。厨房のドアや、イベントスペースのドアなど、人の出入りの多いドアにいかがでしょう。
「ラバークッション」は、ドアの全開時にドアやレバーハンドルが壁などにあたる場所に使用します。ラバー部分がクッションになり建具や壁を守ります。
壁に取り付けた様はなんだか愛嬌があって、よくある透明で目立たせない「涙目」と違い、あえて見せたくなるパーツです。
歴史とロマンのあるパーツ
この金物シリーズは、昭和6年から半世紀以上も船舶向けにパーツを作り続けているメーカーのものです。海上という過酷な環境に耐えうるように、材料を選び改良を重ねつくり続けられています。
一時は世界シェア80パーセントを占めるまで広がりをみせ、現在でも世界各国の船舶に使われていることが、その性能が信頼されている証拠です。
フェリーや貨物船で使われ、世界各国を旅しているロマン溢れるパーツでもあります。異国の地で乗った船の中で、自宅と同じパーツに出会う。そんな素敵な出来事が起こることもあるかもしれません。