伝統の職人技と技術のコラボで生まれた新素材
トップの写真で、照明の背後できらめいているのは「箔(はく)」。
箔とは、金属を薄く叩いて紙状に伸ばしたもので、紀元前からつくられていたともされる伝統的な装飾材です。この箔を貼ることを「箔押し」といい、その作業には熟練の技が必要とされます。
職人の手で箔押しされた本物の金属箔を、表面に特殊なトップコート、裏面には粘着剤を施し、手軽に装飾に用いれるようシート化したのがこちらの『箔シート』。
長くカッティングシートを生産してきたメーカーが、「経年変化を楽しめる装飾シートを開発したい」と挑戦し、2016年2月に誕生しました。
箔というと、神社や寺院、伝統工芸品などで使われている金箔や銀箔を思い浮かべる方が多いかと思いますが、伸ばせる金属ならなんでも箔にできます。
今回は、金・銀以外に、日用品にもよく用いられている銅・錫(すず)・洋金・真鍮の箔、銀をいぶして色を出した赤銀箔・青銀箔をシート化しました。
箔シートは、さまざまなサイズの箔を箔押ししてつくられています。
手作業ゆえに箔の一枚一枚が異なる表情を持ち、その均質化されていない面持ちも箔シートの魅力です。
薄さ0.09mmがもたらす可能性
箔シートの厚みは約0.09mm。薄いので、ハサミ・カッターで簡単にカットができます。
カッティングシートのように、裏紙を剥がしてシールのように貼れるので、施工も手軽。壁一面のような大きい面への施工は、装飾シート施工に慣れた職人さんにお願いしてください。
その薄さゆえに下地となる貼る面のデコボコを拾いますが、熱で伸びる特性もあり、ドライヤーなどで熱を当てることで立体的な場所や曲面にも施工ができます。
サイズは、シートタイプが幅1010mm×長さ1m/2m/3mの3種類、サインなどの少量使いにおすすめの300×300mmの4展開。テープタイプは幅25mmと幅50mmの展開で、どちらも長さは1m。
シートタイプは壁天井への面使いに、テープタイプは部分使いしたり、テープ形状のまま装飾に用いることもできます。室内の水濡れしない場所でご利用ください。
時間とともにうつろう
表面はトップコートで保護されていますが、経年変化していくことも箔シートの大きな特徴。
直接手に触れたり物が触れたりしない場面では、3年間は酸化変色しないことが使用テストで実証済みですが、本来の金属と同様にゆっくりと時間をかけて変化していきます。
ただし、常に手で触れるところに貼った場合には、コートの劣化が早まり、箔も徐々に取れていってしまうので、触れる場面のない箇所での使用が向いています。
さて、どう使いましょう
店舗などの商業空間なら、壁紙代わりに壁一面に箔シートを貼ってアクセントに、なんて使い方はいかがでしょう。手軽に切って貼れるこの特性は、住宅などの日常空間での使用にも向いています。
一番上の写真の事例は、箔シートの洋金を円形に切り取り、照明の背景として貼ったもの。薄明かりの中に一枚一枚、箔の輪郭が浮かび上がります。
照明などの光と組み合わせての使用は、金属箔ならではのきらめきを楽しむことができおすすめです。こうした面使いをすると、パッチワークのように貼られた箔の一枚一枚ごとに異なる表情が際立ってきます。
そして取り入れやすい使い方の例が、看板や切り文字サインとしての利用。シートの裏面に施された粘着剤は透明なので、ガラス面に貼った場合には裏からも箔の表情が楽しめます。
下地のデコボコを拾う特性と熱で伸びる特性をいかし、キャンバス地や木目の強い板などに貼って、下地の表情との組み合わせを楽しむというのも手です。
テープタイプやシートタイプの300mm×300mmは扱いやすいサイズとお求めやすい価格なので、壁にフレームのように貼ったり、箱を装飾してみるなど、気軽にインテリアに取り入れてみてはいかがでしょう。
自由な発想で使いこなして欲しい新素材。「こんな使い方をしてみた」というアイデアがありましたら、ぜひお知らせください。